カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

はじめの一歩3期13話脚本:飽くなきブラッシュアップ

アニメ『はじめの一歩 Rising』は、森川ジョージ氏原作の漫画『はじめの一歩』をアニメ化した作品の第3期。元は気弱だった幕の内一歩がボクシングに身を投じる様を描く。
(3期の)監督は宍戸淳氏と西村聡氏(22~25話)で、シリーズ構成は、ふでやすかずゆき氏。

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本記事を含む、当ブログの、はじめの一歩に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AE%E4%B8%80%E6%AD%A9

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  • 今回の話:

コンテ:中村橋橋乃丞氏、演出:Lee Jongh-yeon氏、脚本:高屋敷英夫氏。

フェザー級日本チャンピオンの一歩に、名古屋・鬼槍留(キャリル)ジムの沢村竜平が挑むタイトルマッチの決着が描かれる。

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渾身の一撃で沢村(一歩の対戦相手)をダウンさせた一歩を見て、伊達(元フェザー級日本/東洋太平洋王者)や宮田(一歩のライバル)は驚愕する。前回・前々回に続き、観客席の場面のテンポが良い。同じ技術が、あしたのジョー2(脚本)にも見られる。

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ダウンした沢村だったが、何とか起き上がる。敵役がやられる姿が気の毒になってくるコンセプトは、アンパンマンカイジ2期(脚本)にもある。

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沢村は何とか耐え、第6ラウンドが終了。一方、一歩も満身創痍。皆の応援を一身に受け、何とか持ちこたえる。印象的な光の描写は、しばしばある。あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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沢村は、もはや信じられるのは己の拳のみという境地に達し、自身を奮い立たせる。
敵役の苦労や苦心は、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)や、マイメロディ赤ずきん(脚本)でも、わかりやすく表現されている。

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第7ラウンド、ボロボロの沢村は、さりげなく足を出して一歩をスリップさせようとするが、一歩はそれを卓越した集中力で回避。敗色濃厚でも、頭を使って何とかしようとする敵役の姿に感心させられる作りは、アンパンマン(脚本)にも見られる。

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そして、発動中に急停止を何回もする、改良型デンプシーロール(一歩の必殺技)が炸裂し、ついに沢村は倒れる。主人公の強烈な攻撃で敵がやられるカタルシスは、アンパンマンカイジ2期(脚本)にもある。

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一歩は拳を握りしめ、ガッツポーズする。同時に、一歩のKO勝ちが確定。手による感情表現は頻出。カイジ2期・ワンナウツ・RAINBOW-二舎六房の七人-・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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色々あったが、観客は沢村の健闘を称え、沢村の恩師である河辺は感じ入る。
カイジ2期・ワンナウツストロベリーパニック(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、温かかったり、朗らかだったりするモブは、色々な作品で印象に残る。

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千堂(かつての一歩の対戦相手)、宮田、伊達もそれぞれ、白熱した試合を噛みしめる。ここもテンポがよく、原作からの台詞やモノローグの取捨選択が上手い。

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退場時に倒れた一歩だったが、選手生命に関わるダメージには至っておらず一安心。一歩はあらためて勝利を喜ぶ。原作通りだが、ここも手による感情表現。あしたのジョー2・MASTERキートン怪物王女おにいさまへ…(脚本)と比較。

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一方、重傷で病院に搬送された沢村を、千堂は見舞う。「人を孤独にさせない」というポリシーは、宝島(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ど根性ガエル(演出)、F-エフ-(脚本)など様々な作品で強調されている。

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一歩の拳は、人をやる気にさせる“活人の拳”だと沢村は語り、去る。月が映る。今回は原作通りだが、全てを見守るような月は頻出。あしたのジョー2・F-エフ-・RIDEBACKストロベリーパニック(脚本)と比較。

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一歩もまた、「やめられないんだ、ボクシング!」と月を見上げるのだった。ここでも、月の強調がある。ストロベリーパニックガンバの冒険・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)と比較。

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  • まとめ

前回・前々回(同じく高屋敷氏脚本)から言えることだが、とにかくテンポがいい。リズムを作るため、台詞やモノローグの厳選が見られる。それにより、アニメ独自のテンポに落とし込めている。

あと、これも前回・前々回から言えることだが、視聴者が沢村へシンパシーを感じるよう、色々な工夫がされている。その塩梅が巧みで、やはり話の組み立てが上手い。

激しい戦いが終わった後の、月夜の静かな場面展開も流石。今回は原作通りであるものの、数々の高屋敷氏担当作で目立つ「全てを見守る月」が出たのも感慨深い。

また、沢村を「孤独にさせない」という強い主張が感じられる。「孤独」は、キャリア初期の頃から高屋敷氏がずっと取り扱っている要素であり、こちらも同氏の歴史を追うと興味深い。

そして、今回・前回・前々回と、本作の脚本を3話続けて高屋敷氏が手がけたことと、同氏が、あしたのジョー2の最終3話の脚本を書いたことは、比較せずにはいられない。

高屋敷氏は、“シリーズ”の最小単位を3話と捉えている節がある。
本作11~13話も、“一歩対沢村”というシリーズと見てもいいと思う。その上で見ていくと、実によくできた構成になっている。

本作11~13話にしろ、あしたのジョー2最終3話にしろ、盛り上げ所、情緒を入れる所などがキッチリしており、非常に技巧的。また、時を経て、本作はテンポがかなりブラッシュアップされているのが良い。

あしたのジョー2最終3話(脚本)が名作なのは間違いないが、高屋敷氏はそこで終わる作家ではないことも、色々と担当作を見るとわかる。同氏は、常に最新作に持てる経験の全てをぶつけ、アップデートを怠らない。やはりその姿勢に拍手を送りたい。