カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ48話脚本:じわり伝わる人情

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:御厨恭輔氏、脚本:高屋敷英夫氏。

ヒラメ(チエの親友)の絵が、町の絵画コンクールで金賞に選ばれ、ヒラメは皆と共に表彰式に赴く。

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自分の絵が町の絵画コンクールで銀賞に選ばれ、大喜びのマサル(チエのクラスメート)は、腰巾着のタカシを連れ、チエに自慢しにくる。所作が幼い。宝島(演出)、あしたのジョー2(脚本)ほか、子供の子供らしさは強調される。

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だが、マサルに応対したのは、殺気立ったテツ(チエの父)。チエとおバァはん(チエの祖母)は、そんなテツをうどんでなだめようとする。飯テロは頻出。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、グラゼニ(脚本)と比較。

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ボクシングのプロテストに向かうテツの付き添いで、チエはマサルにかまっている暇がなく、(テツが食べなかった)うどんをマサルとタカシに渡して出かける。ここも幼い。ガイキング・宝島(演出)ほか、高屋敷氏は“幼さ”の描写が上手い。

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プロテストは、カルメラ兄弟(テツの弟分)の兄の方も受けることになっており、彼は早々にわざと相手に蹴りをかまし失格となる(無理にテツに付き合ってるだけなので)。ここは会話も流れもスムーズで、スピーディーな展開が見事。

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腹巻き無しだと腹痛になる対策として、テツは何も食べておらず、殺気立つ。それを見た対戦相手は怖がる。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)ほか、味のある脇役は印象に残る。

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試合が始まると、テツの凄まじい形相に、対戦相手は目を回して気絶。原作だと、この試合内容は、おバァはんが語るのみだが、アニメでは具体的に描かれる。あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)ほか、高屋敷氏はボクシングに思い入れがある。

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試合後、テツは食事処で山ほど料理を注文する。飯テロ同様、食いしん坊描写も、あしたのジョー2・ガンバの冒険(脚本)など、あらゆる作品で目立つ。

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一方、ヒラメ(チエの親友)は、出した覚えのない絵画コンクールの金賞の通知が来たと、(たまたま声をかけた)ヨシ江(チエの母)に相談。ヨシ江は、それはチエがヒラメの絵を出品したからだと話す。RIDEBACKおにいさまへ…(脚本)ほか、夕暮れの中、他者が寄り添う状況は印象的。

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ヒラメが金賞に選ばれた絵画コンクールの表彰式当日、付き添いのチエはおめかしし、最近、テツが「雷蔵の手紙」というワードに動揺することをヨシ江に話す。
ど根性ガエル(脚本)、宝島(演出)ほか、しっかりする所はしっかりしている子供の描写は目立つ。

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当のテツは、拳骨(テツの恩師)に、チエが事あるごとに「雷蔵の手紙」という言葉をちらつかせることを相談する。血の繋がりが無くても温かい関係性は、カイジ2期・あしたのジョー2(脚本)ほか、色々な作品で前面に出される。

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テツと拳骨は、ヒラメと丸太(ヒラメの兄)にバッタリ会う。テツはテツなりに、ヒラメと丸太を可愛がる。ここも、宝島(演出)、太陽の使者鉄人28号(脚本)などと同様、年の差があっても微笑ましい関係が前面に出ている。

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テツは丸太の名前を忘れていたが、何とか当てようとする。ここも、はじめの一歩3期(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)ほかで見られるような、年の差があるコンビの可愛さが出ている。

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ヒラメの母は、ヒラメの絵のモデルを務めたテツに、お礼として、かりんとう(テツの好物)を贈呈。テツは喜ぶ。ここも、怪物王女(脚本)や、ど根性ガエル(演出)などのように、食いしん坊描写が強調されている。

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チエ、テツ、ヨシ江、拳骨、ヒラメ、丸太、ヒラメの母は合流し、表彰式が行われる美術館に向かう。ここは、色々な組み合わせの会話を、うまく捌いているのが凄い。

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美術館にて、ヒラメとチエは、渉(拳骨の息子で、チエのクラスの担任)から、マサルが銀賞を取ったこと、彼がヒラメの金賞を知り体調が悪くなったことを知らされて喜ぶ。ストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)ほか、高屋敷氏は女の子の友情描写も上手い。

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一方、テツはヨシ江に、それとなく“雷蔵の手紙”のことを聞く。ヨシ江は、チエに“手紙”はまだ見られていないと答える。めぞん一刻(脚本)、宝島(演出)ほか、繊細な恋愛描写は結構見られる。

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表彰式が始まり、名前を呼ばれて緊張するヒラメに、テツは「やるやんけ」と景気をつける(拳骨がそうするよう促した)。
ど根性ガエル(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、コミュニティの温かさは強く打ち出される。

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審査員から、なぜ絵の中心人物(テツ)が腹巻きをしているのか聞かれたヒラメは、それにはうまく答えられなかったが、「ありがとう」と周りの人々に感謝を述べるのだった。ここも、人情が溢れる温かい一幕になっており、上手い。

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  • まとめ

 高屋敷氏のキャリア初期である、ど根性ガエル(演出)からの特徴、「コミュニティの義理人情の厚さ」が強く出ている。

 どうも高屋敷氏は山田洋次監督作品が好きなようで、『男はつらいよ』シリーズの柴又コミュニティのような温かさを、アニメでも表現したいように見える。あくまで推測ではあるが。

 思えば、あしたのジョー2(脚本)におけるドヤ街(丈の地元)の人々の温かさも、やけに強調されていた。特に、西(丈の旧友)の結婚式では、それが炸裂。また、ドヤ街の人々は、アニメオリジナルでの活躍も多かった。

あしたのジョー2の41話、西の結婚回(高屋敷氏脚本)については、以前書いたこちらを参照:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2021/03/28/135516

 本作においても、“西萩(チエの地元町)コミュニティ”の温かさは、事あるごとに強調されており、今回は、そのピークの一つとも言えるのではないだろうか。

 それと関連するが、高屋敷氏は、血の繋がりがなくとも厚い人情で結ばれた人間関係を強調する傾向がある。カイジ(脚本・シリーズ構成)でもそれが出ており、作品の根底を支えるものの一つとなっている。

 こういった「温もり」は、色々な高屋敷氏担当作で強烈なインパクトを残している。例えばカイジ(シリーズ構成・脚本)はギャンブルもの、あしたのジョー2(脚本)はボクシングものだが、胸を打つような温かい人情が、作品に深みを与えている。

 これのルーツが山田洋次監督作品にあったとしても、高屋敷氏の打ち出す「人情」は独特のものがある。今回もまた、「色々な人に支えられて、自分がいる」ことがじんわり伝わる、印象深い回だった。

 ちなみにネタバレすると、“雷蔵の手紙”とは、(テツとヨシ江が結婚する前に)市川雷蔵のファンであるヨシ江のため、テツが市川雷蔵の名で送ったラブレターのことである。