カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ58話脚本:スタッフの尽力

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:御厨恭輔氏、脚本:高屋敷英夫氏。

渉(チエの父・テツの恩師である拳骨の息子で、チエのクラスの担任)の婚約者・朝子に、テツらは振り回される。

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渉(チエの父・テツの恩師である拳骨の息子で、チエのクラスの担任)の婚約者・朝子が、チエ宅を訪ねてくる。朝子は妙に明るく、チエは戸惑う。独特の明るさを持つ女性キャラは、ストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)などでも印象的。

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そこにテツが帰宅。朝子から「テッちゃん」と呼ばれたテツは調子が狂うも、つむじが2つある女はろくでもないと反撃。しかし朝子に、テツもつむじが2つあると言い返される。子供っぽいやりとりは、ワンナウツダンクーガ(脚本)などでも目立つ。

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朝子は、テツとチエを喫茶店に誘うが、チエは断る。テツは、朝子のおごりと聞いて、喫茶店に行くことに。ここも、ガンバの冒険グラゼニ(脚本)と同じく、やりとりが幼い。

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夕刻、カルメラ兄弟(テツの弟分)がチエの店に来る。彼等は、いつものようにテツを「テッちゃん」と呼んだらテツに殴られたと嘆く。そこに来たミツル(テツの幼馴染で、警官)は、カルメラ兄弟と喧嘩になり、チエは呆れる。低レベルな喧嘩は、ど根性ガエル・宝島(演出)などでも描かれる。

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小突かれたとして、ミツルは公務執行妨害だとカルメラ(弟)をしょっぴく。それに怒ったカルメラ(兄)は、ミツルに椅子をぶつける。ここも、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や、めぞん一刻(脚本)のように、子供っぽい。

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結局カルメラ兄弟は揃って、ミツルにしょっぴかれる。テツは、百合根(お好み焼き屋)にその話をして笑う。ここの会話は、流れるように展開され、テンポがいい。

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テツは、百合根と一緒に、拘留中のカルメラ兄弟の面会に行くことにする。
テツがミツルのいる派出所を訪ねると、ミツルは、最近は非番の日にラグビーをやっていると語る。ここはミツルとテツが微笑ましい。グラゼニ・F-エフ-(脚本)ほか、親友同士のイチャイチャは多い。

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カルメラ兄弟は署に拘留されていると聞き、テツは面会をやめる。実は、辛子入りのお好み焼きを差し入れしてカルメラ兄弟を驚かす算段だった。それを聞き、ミツルは呆れる。イタズラ好きなキャラは、元祖天才バカボン(演出/コンテ)やアンパンマン(脚本)など多く出る。

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ミツルは、署のシニアの人達と共にラグビーをやっており、そのコーチは朝子。それを知り、テツは驚く。
宝島(演出)、F-エフ-(脚本)ほか、元気な中高年はクローズアップされる。

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その夜テツは、朝子は色々よくないと拳骨に訴え、拳骨にどつかれる。
ここは、カイジ2期(脚本)、宝島(演出)などと同様、年の差があるコンビが微笑ましく描かれている。

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翌朝、ジュニア(百合根の飼い猫)と小鉄(チエの飼い猫)は、拾ってきたラグビーボールで遊ぶ。ガンバの冒険(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、動物の可愛さは色々な作品で目立つ。

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運悪く、小鉄とジュニアはチエにボールをぶつけてしまい、チエから説教を食らう。ここも可愛い。ガンバの冒険ハローキティのおやゆびひめ(脚本)ほか、とにかく高屋敷氏の担当作は、キャラの愛らしさが際立つ。

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小鉄は、そもそもジュニアがボールを拾ったのだとジュニアを責め、チエにゴチャゴチャ言うなと突っ込まれる(猫の言葉はチエに通じていない)。ここも、ハローキティのおやゆびひめ(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)などと同様、可愛い。

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小鉄とジュニアからラグビーボール(ミツルの所有物)を没収したチエは、親友のヒラメを公園に誘う。それにテツがついてくるが、チエは無視。ここもテツが子供っぽい。宝島(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、子供っぽいおじさんは多い。

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チエ達は、釈放されたカルメラ兄弟とばったり会う。テツは、カルメラ兄弟と、お好み焼き屋で駄弁ることにする。ここも会話のテンポがよく、キャラの様々な行動・言動が上手く捌かれている。

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その後チエとヒラメは、ラグビーボールで遊ぶ。ここのやりとりも可愛い。ガイキング(演出)、あんみつ姫(脚本)ほか、子供の子供らしい描写が上手い。

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一方朝子は警官ラグビーチームの対戦相手を探しており、渉をラグビーに誘う。
結婚前の男女カップルの微笑ましさは、めぞん一刻グラゼニ(脚本)など、結構描かれている。

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朝子と渉は、遊んでいるうち泥だらけになったチエ・ヒラメにたまたま会い、彼女達をラグビーに誘う。泥だらけになって遊ぶ場面は、ガンバの冒険(脚本)にもあり、やはり子供っぽさの表現が上手い。

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何でも強引な朝子に、渉は抗議しようとするが、ヒラメに制止される。
めぞん一刻あしたのジョー2(脚本)ほか、純心な子供の機転はクローズアップされる。

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一方、お好み焼き屋にてテツは、ミツルにリベンジするようカルメラ兄弟を煽る。ここのテツ・カルメラ兄弟・百合根のやりとりもポンポン進み、小気味がいい。

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そこに朝子が来て、皆をラグビーに誘う。カルメラ兄弟はミツルら警察を、テツは拳骨を、試合のどさくさに紛れて叩き潰そうと息巻くのだった。ここもコミカルでテンポがよく、うまくまとまっている。

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  • まとめ

 どこを切り取っても、キャラの幼さ・可愛さが際立つ。とにかく高屋敷氏は、色々なタイプの「可愛さ」を表現することに長ける。

 これは、本当に高屋敷氏の強み・魅力の一つ。何も意識しなくても、「今回は妙にキャラが可愛いな」という印象を視聴者に与える。実際私も、同氏の担当作を見ていく上で、早めにそれに気付いた。

 あと、複数あるキャラの動向を裁き、最後に合流させる脚本技術も、相変わらず見事。キャラの多い本作は、そういう技術が必要不可欠であり、高屋敷氏も、本作で相当に技術力が磨かれたと思う。

 今回は、ちょこちょこ原作のエピソードがカットされているのだが、結構うまく繋がっている。
本作は原作に忠実だが、必要な時はカットや改変が行われる。それも上手いので、スタッフが単に原作をなぞっているだけではないのがわかる。

 つくづく原作つきアニメは、原作をなぞれば名作になるわけではないことが、本作を見ていくとわかる。本作は、高畑勲監督はじめ各スタッフが、「漫画とアニメ」の違いを理解した上で、原作の魅力を損なわぬよう尽力している。

 本作が今日まで残り、名作たりえているのは、その尽力の賜物であると思う。原作つきアニメの「意義」といったことについて、本作を見る度に考えさせられる。

 アニメを「原作の単なる販促」と捉え、ダラダラと原作通りに流しても、スタッフの自己主張の場と捉え、オリジナルだらけにしても、「名作」とはなりえない。
本作は、落とし処が絶妙であると言える。

 原作をどうアニメに落とし込んで、どう原作の魅力を引き出すか。高屋敷氏含め、本作のスタッフは、その技術が高かったと考えられる。原作つきアニメも、高度な技術が求められることは、もっと意識されるべきだと思う。