カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

じゃりン子チエ62話脚本:特性の把握

アニメ『じゃりン子チエ』は、はるき悦巳氏の漫画をアニメ化した作品。小学生ながらホルモン屋を切り盛りするチエを中心に、大阪下町の人間模様を描く。監督は高畑勲氏。

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本記事を含めた、じゃりン子チエに関する当ブログの記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%81%98%E3%82%83%E3%82%8A%E3%82%93%E5%AD%90%E3%83%81%E3%82%A8

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  • 今回の話:

演出:横田和善氏、脚本:高屋敷英夫氏。

カタギになったレイモンド飛田(元ヤクザ・地獄組の組長)と、その秘書が作った知恵の輪を切欠に、色々な騒動が巻き起こる。

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レイモンド飛田(元ヤクザ・地獄組の組長)と、その秘書は、チエ宅を訪ねる。
二人は、テツ(チエの父)に見つかったら、キャッチボールをしているふりをして逃げる算段をする。原作通りだが、高屋敷氏は野球好きで、ワンナウツグラゼニのシリーズ構成・脚本も務めている。

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そこにチエが帰宅。レイモンド飛田は、カタギになった今、テツには会いたくない旨を話す。チエは、テツは子供の頃、巨人の川上のホームランが頭に当たって以来、野球嫌いだと話す。ここも原作通りだが、グラゼニワンナウツ(脚本)同様、書き手の野球好きが窺える。

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レイモンド飛田達は、今は知恵の輪の職人をしており、チエに自作の知恵の輪をプレゼントする。
チエは密かにペンチを使い、全ての知恵の輪を解く。ずる賢さの重要性は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)やカイジ2期(脚本)でも出ている。

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その後、帰宅したテツは、一番簡単な知恵の輪にも難儀し、解けないようにできている知恵の輪なのではと、チエにいちゃもんをつける。宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか、子供っぽいおじさんは多い。

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夕刻、チエは常連客と、時間内に知恵の輪が解けたら代金はタダ、解けなければ、代金は倍という勝負をする。常連客は何とか知恵の輪を解くが、チエは、それは第一問に過ぎないと切り抜ける。ここも、ずる賢さが元祖天才バカボン(演出/コンテ)やカイジ2期(脚本)ぽい。

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常連客は、閉店時間を過ぎても知恵の輪チャレンジを続ける。チエは勝負をチャラにしていいと言うが、酔った常連客は諦めない。酔って失態を晒す場面は、カイジ2期・ガンバの冒険(脚本)ほか結構ある。

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小鉄(チエの飼い猫)もまた、知恵の輪にはまり、一番難しいものに悪戦苦闘する。
可愛い動物描写は、宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)など、色々な作品に出てくる。

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一方テツは、拳骨(テツの恩師)に知恵の輪勝負を持ちかけるが、逆に自分が知恵の輪チャレンジをする流れになり、拳骨に手玉に取られる。
カイジ2期・あしたのジョー2(脚本)ほか、年の差があるコンビの微笑ましさは強調される。

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テツは、まだまだある知恵の輪に悲鳴をあげる。それを覗いていたレイモンド飛田と、その秘書は、初めてテツに勝った、と感涙する。太陽の使者鉄人28号(脚本)、ど根性ガエル(演出)ほか、名コンビは様々な作品に見られる。

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翌朝、チエはテツを外に出さないことにする。小鉄はチエに協力し、テツをどついて気絶させる。宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、賢いペットの描写は印象に残る。

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一方チエは、学校の体育でドッジボールをする。ボールを取ったヒラメ(チエの親友)はマサル(チエのクラスメート)を狙うが、マサルは、腰巾着のタカシを盾にする。
忍者戦士飛影おにいさまへ…(脚本)ほか、地味な脇役はクローズアップされる。

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ボールが髪に当たったとして外野に回ったマサルは、外野からチエを狙い、チエはキャッチに失敗し当たってしまう。マサルは大喜びする。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ワンナウツ(脚本)など、喜ぶ姿に愛嬌がある場面は多い。

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その後マサルは、外野のチエ・内野のヒラメから挟みうちにされる。結局マサルはスタミナ切れを起こしダウン。
カイジ2期(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、敵役が気の毒になる描写は数々ある。

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ヒラメは勝利を喜ぶ。また、知恵の輪を持ってくるはずだったが持ってきていないチエに、いつでもいいと言う。
エースをねらえ!(演出)、おにいさまへ…(脚本)ほか、高屋敷氏は、女の子同士の友情描写も上手い。

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一方テツは、カルメラ兄弟(テツの弟分)の助けで外に出る。テツがチエに閉じ込められた理由は、解けない腹いせに知恵の輪を便所に捨ててしまったためで、テツは、カルメラ兄弟に知恵の輪を買うよう強要。
F-エフ-・ガンバの冒険(脚本)ほか、スキンシップは頻出。

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そこに、知恵の輪をひきずった猫・釜虎が現れる。テツは、釜虎から知恵の輪を強奪しようとする。
その後、小鉄はテツが「ヨレヨレになって帰ってきた」と不思議がる。ここは、テツが釜虎に返り討ちにあったことがわかりやすく、テンポがいい。

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引き続き、小鉄が知恵の輪に挑戦していると、ジュニア(お好み焼き屋・百合根の飼い猫)が遊びに来る。ここは2匹が微笑ましい。RAINBOW-二舎六房の七人-・陽だまりの樹(脚本)ほか、濃厚な友情描写は目を引く。

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帰宅したチエは、テツが小鉄にやられたと勘違いし、小鉄お好み焼きを奢ることにする。喜ぶ小鉄を見て、“人間に迎合しすぎると早く老いる”と語っていたくせに…とジュニアは呆れる。ここも、宝島・ど根性ガエル(演出)同様、可愛いペット描写の強調。

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その夜、チエ宅の前に釜虎が現れ、テツみたいなタイプは徹底的に叩き潰すべき、と火のついた木の枝をテツめがけて投げ込む。原作通りだが、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)ほか、高屋敷氏は“火”にこだわる。

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釜虎は、月下に佇むのだった(アニメオリジナル)。RIDEBACK・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)ほか、全てを見ているような月の描写は頻出。

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  • まとめ

 知恵の輪が出るのは原作通りなのだが、高屋敷氏は、家なき子で、知恵の輪を使ったペテンが出る回の演出を担当しており、比べると面白い。

 縁が縁を呼ぶのか、野球好きの高屋敷氏(元球児、高校野球部監督経験あり)に、原作通りとはいえ野球ネタが出る回がまわってくるのも楽しい。

高屋敷氏の野球経験については、以前まとめたこちらを紹介:
https://min.togetter.com/iUQxCbe

 あと、レイモンド飛田とその秘書、拳骨とテツ、マサルとタカシなど、色々なコンビのやりとりが微笑ましい。コンビ描写の巧みさのルーツは、やはり、あしたのジョー1(高屋敷氏無記名脚本参加)や、ど根性ガエル(同氏演出)あたりだろうか。

 また、引き続き、猫や子供、おじさん、といった色々なキャラの色々な「かわいさ」を引き出すのが上手い。これは、高屋敷氏が、それぞれのキャラの特性をわかっているからこそなのかもしれない。

 キャラといえば、後半から突如現れた釜虎も、強烈なインパクトがある。高屋敷氏はキャラの掘り下げに長けており、その本領が遺憾なく発揮されている。

 思えば本作は、メインからサブ、モブに至るまで、「立っていない」キャラはいないとも言える。高屋敷氏含め、本作のスタッフは、「このキャラはどういうキャラか」をバッチリ掴んでいたのではないだろうか。

 こういった「スタッフによるキャラの把握」が足りないと、作品自体の質も損なわれてしまう。振り返ってみると、高屋敷氏の担当作は、どれも「キャラ立ち」が凄い。徹底的にキャラと向き合う同氏の姿勢を思うと、同氏担当作に名作が多いのも納得する。