カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

家なき子23話演出:関係性の尊さ

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

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  • 今回の話:

サブタイトル:「素敵なお師匠さん」

脚本:伊東恒久氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

貴重な仲間の動物達を失いつつパリに着いたビタリス(レミの芸の師匠)達を、さらなる苦難が襲う。

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病の身で最期まで芸をし、壮絶な死を遂げたジョリクール(芸をする猿)が愛用していた帽子を、レミはジョリクールの墓に供え、撫でる。
F-エフ-(脚本)でも、主人公の軍馬が、亡きライバル・聖のヘルメットを撫でるアニメオリジナル場面がある。

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レミが墓に語りかけると、ジョリクールの帽子が風に揺れる。
めぞん一刻(脚本)でも、線香の煙が立ち昇り、死者が応えるような場面がある。

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苦しい中、ビタリス(レミの芸の師匠)は一座の再起を目指す意志があることをレミに話す。
焚き火を囲んでキャラ同士が交流を深める場面は、MASTERキートン(脚本)でも強調されている。

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ビタリスは一座の再建資金を稼ぐため、パリに着いたら、レミを2ヶ月ほど知人に預けて、他の仕事をするとレミに告げる。内心それが嫌なレミは、ビタリスの腕につかまる。
手での感情伝達は頻出。MASTERキートンワンダービートS(脚本)と比較。

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ひたすらビタリス達がパリを目指す中、鳥の群れが飛ぶ。
状況と連動する鳥の描写はよくある。
おにいさまへ…(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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ようやくパリに着いたビタリス達だったが、冬のどんよりとしたパリに、レミは衝撃を受ける。
金網による閉塞感の表現は、空手バカ一代(演出)やF-エフ-(脚本)にもある。

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しばし別れる前に、ビタリスはカフェでケーキを食べようと提案し、レミは喜ぶ。晴れやかな笑顔は色々な作品で印象深い。ガイキング(演出)、ストロベリーパニック忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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しかしカフェに向かう途中、レミは馬車がはねた水でずぶ濡れになってしまい、ビタリスはレミを拭く。
ストロベリーパニック(脚本)でも、主人公の渚砂が憧れの先輩・静馬から優しく顔を拭かれる場面がある。

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レミを拭く際に、レミの靴が壊れていることに気付いたビタリスは、それを言わなかったレミのいじらしさに胸を打たれ、レミを抱きしめる。
ハグは結構出る。1980年版鉄腕アトム(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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ビタリスは、レミを知人に預けるのをやめ、共に働くことにする。レミはビタリスと手をつなぐ。ここも、手による感情表現。めぞん一刻ストロベリーパニック・F-エフ-(脚本)と比較。

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ビタリスと一緒なら、どんな仕事でも平気だと、レミは陶器の破片を蹴って遊ぶ。高屋敷氏は、子供の無邪気な描写が上手い。宝島(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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ビタリスとレミは、歌い手の憧れであるオペラ座を見上げる。オペラ座の石像が映るが、像による「間」は多々見られる。
空手バカ一代(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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仕事を紹介してもらう予定だった、ビタリスの知人のディノは既に他界していた。
そこでビタリスは、かつての弟子で人気オペラ歌手のマルカーノを訪ねる。マルカーノは感涙する。ここも手による感情伝達。RIDEBACKあんみつ姫(脚本)と比較。

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マルカーノの後輩達は、先に帰れとマルカーノに言われ呆気に取られる。
味のあるモブは、空手バカ一代(演出/コンテ)、めぞん一刻らんま1/2(脚本)ほか、様々な作品で存在感を発揮している。

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レストランにて、ビタリスはマルカーノに、バイオリン教師の仕事を紹介してもらえないかと頼む。
ランプの描写はよくある。宝島・空手バカ一代(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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マルカーノは、仕事は紹介できるが、何故先生ほどの人が…と言うが、ビタリスは、過去の自分は捨てたとそれを制す。
ここも手による感情表現。F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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後日、ビタリスはバイオリン教師の仕事に向かう。
ビタリスとマルカーノが知り合いと聞き、感心するレミにビタリスは、友達は沢山作れと説く。
ここもレミが無邪気。まんが世界昔ばなし・元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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マルカーノ宅に着いたビタリス達は、カピ(芸をする犬。賢い)を外で待たせる。
犬による「間」は色々な作品に見られる。
コボちゃん花田少年史めぞん一刻番外編(脚本)と比較。

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別室にレミを待たせ、ビタリスは貴族の婦人達の待つ部屋に行くが、婦人達はビタリスを蔑む。
はだしのゲン2・MASTERキートン(脚本)ほか、あからさまに嫌なモブもまた、様々な作品でインパクトが強い。

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婦人達は、ビタリスを庇うマルカーノにも嫌な目線を向ける。
ビタリスは、マルカーノは遠い知人に過ぎないと敢えて言う。
屈辱を受ける場面は、DAYS・カイジ2期(脚本)などでも強調されている。

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ビタリスが動物に芸を仕込めると聞いた婦人達の一人は、自分の犬の相手をするようビタリスに命じ、彼はそれに従う。それを覗き見たレミは涙する。
中高年キャラの悲哀を見る主人公の姿は、カイジ2期(脚本)でも強調されている。

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はした金をビタリスに投げ、婦人達は去る。
マルカーノ夫妻は、今回の事を詫びるが、ビタリスは慣れていると言い、涙を流す。ここも中高年キャラの悲哀が上手い。あしたのジョー2・カイジ2期(脚本)と比較。

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吹雪の中、ビタリス、レミ、カピはマルカーノ宅を後にするのだった。
状況と連動する吹雪の場面は、しばしばある。
じゃりン子チエ忍者戦士飛影・1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。

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  • まとめ

 かなり悲しい成分の多い回になるが、それでもキャラの無邪気な面を際立たせようという、高屋敷氏の思いが感じられる。

 特に、レミが道端の破片を蹴って遊ぶ場面は、子供らしさが出ていて秀逸。
なんとしても朗らかな場面は入れておきたいという強い意志が出ている。

 また、レミとビタリスのような、血の繋がりがなく年の離れた関係は、高屋敷氏担当作でよくクローズアップされる。同氏が好む関係性なのではないかと推察できる。

 例えばF-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)では、黒井(主人公の軍馬が属するレーシングチーム代表)や英二郎(凄腕メカニック)といった中高年キャラと、軍馬との関係がアニメオリジナルで強化されており、拘りが見られる。

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 思うに高屋敷氏は、家族ではないが家族のように強い絆で結ばれている関係に憧れがあるのではないだろうか。あるいは、実体験があるのかもしれない。

 高屋敷氏の個人的背景は推察の域を出ないが、年の離れた中高年男性と少年/青年の図式が尊いものだという同氏の思いは、数々の担当作で十二分に伝わってくる。

 今回、ビタリスの悲哀をレミは目の当たりにするが、カイジカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)も、中高年男性の悲哀を見つめ、行動するカイジの魅力が光る構成になっている。

 今回のレミも、カイジカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)のカイジも、悲哀あふれる中高年男性に寄り添う。そういった主人公であってほしい、それがキャラとしての魅力なのだという高屋敷氏の主張がある気がする。

 実際、そういった主張を、時にさりげなく、時に強く(原作を変えることもある)絡めながら、主人公の魅力を高める技が、高屋敷氏は非常に高度である。

 特にシリーズ構成作では、高屋敷氏は主人公の魅力を段階的に上げ、クライマックスや終盤でそれが最高潮に達するよう綿密に計算する。それはカイジカイジ2期のシリーズ構成・脚本でも然り。

 そういった綿密な構成を組み上げる技術力の裏には、本作を含め数多くの演出経験と、何よりも「強い思い」があるのだと考えられ、やはり感銘を受ける。

  • こちらも紹介:

以前書いた、F-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)に関するブログ記事一覧↓

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-