カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

飛べ!イサミ5話脚本:鍛え上げられた術

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

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本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

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  • 今回の話:

サブタイトル:「怪人クモ男出現!」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ:池端隆史氏、演出:福本潔氏。

宝石「ナイルの瞳」盗難事件が発生。
一方イサミ達の学校では、他校で火の玉を見たという噂が飛び交い、イサミ達は興味を持つ。

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美術館に展示されていたエジプトの宝石「ナイルの瞳」が盗まれてしまう。
太陽の使者鉄人28号(脚本)では「マリーの瞳」という王冠が、謎のロボットに盗まれる話がある。

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ナイルの瞳盗難事件から一週間が経過するも、犯人が捕まらないというニュースを、イサミは見る。
おいしそうな食事場面は頻出。新ど根性ガエル(脚本)、忍者マン一平(監督)と比較。

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一方、数馬(イサミの叔父で刑事)は、ナイルの瞳窃盗犯が捕まらず悔しがる。
少し抜けているが負けず嫌いの警察官といえば、ルパン三世2nd(脚本)の銭形やキャッツアイ(脚本)の内海あたりと重なる。

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学校にてイサミは、他校で火の玉が出たという話を聞く。その話を聞き、トシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)は怖がる。
学校の怪談といえば、おにいさまへ…(脚本)の心中伝説(アニメオリジナル)も印象深い。

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なんとか話の矛盾をつき、トシは強がる。また、他のクラスメイトは、学校の名前や日にちが違う、同様の話を聞いたと言う。
ど根性ガエル(演出)、ストロベリーパニック(脚本)ほか、味のあるモブは多い。

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そこに、はるか(イサミ達のクラスの担任)が来て、懐中電灯で顔を照らして脅かす。
懐中電灯ネタは、らんま1/2カイジ2期(脚本)、忍者マン一平(監督)など、しばしば見られる。

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その後、イサミ宅の地下室で、イサミ達は火の玉情報の整理をする。ソウシ(イサミの同級生で、新撰組の子孫)は、単にイサミが幽霊を見たいだけではないかとトシに話す。
複数キャラのテンポ良い会話は、じゃりン子チエおにいさまへ…(脚本)なども上手い。

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イサミは、トシとソウシに、幽霊が怖いのかと煽る。ソウシは平静だが、トシは強がる。
トリオでのやりとりの上手さは、ルパン三世2nd(演出/コンテ)やキャッツアイ(脚本)などでも光る。

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夜、イサミ・トシ・ソウシ・ケイ(トシの弟)は学校に入る。皆はトシに学校の定番怪談を話して脅かすが、トシは強がって全否定する。
お化け関連では、コボちゃん(脚本)に肝試し回があり、宝島(演出)に幽霊海賊の話がある。

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すると火の玉が出現し、イサミとケイは喜び、ソウシとトシは驚く。
複数キャラの個性づけは、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも強調されており、わかりやすくなっている。

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火の玉は、クモの覆面をした人間(クモ男)であることが判明。
なら学校荒らし退治だと、まずソウシが高低差を使い攻撃するが、クモ男は伸縮する武器でソウシの竹刀をはじく。咄嗟に頭を使う戦い方は、アンパンマン・新ど根性ガエル(脚本)などにも見られる。

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二番手のトシは、サッカーボールでクモ男を攻撃するが、クモ男はボールを蹴り返す。
高屋敷氏が脚本参加したトンデケマンも、はやと(主人公)の攻撃方法がサッカーボール。

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三番手として、イサミはクモ男にパンチするが、クモ男は服に板を仕込んでおり、イサミは手が腫れる。
ど根性ガエル(演出)や新ど根性ガエル(脚本)でも、服の下に硬いものを仕込む戦法が出てくる。

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最後にケイが立ち向かうが、クモ男はケイとのリーチ差を利用しノーダメージ。
同じようなアクションが、家なき子(演出)にもある。

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こうなったらと、トシとソウシは、先祖が遺した、光る剣を荷物から出そうとするが、忘れたことが判明。
クモ男は、律儀に待ってくれる。割とフェアな所がある敵役は、カイジ2期・太陽の使者鉄人28号(脚本)などにも登場する。

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結局、閃光弾を使ってクモ男は逃走。
後日イサミ達は、それを数馬に話す。
数馬は、ナイルの瞳盗難事件の方が気がかりだと話すが、イサミに「干されたんでしょ」と図星を突かれる。
ここもルパン三世2nd(演出/コンテ)の銭形とかぶってくる。

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そこに、はるかが通りかかる。数馬は、はるかに一目惚れしてしまう。
教師にベタ惚れといえば、高屋敷氏が演出参加した、ど根性ガエルの梅さん(寿司職人)も強烈。

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そこに倉庫荒らしの報が入る。はるかのお陰で、その現場に行けたイサミ達は、学校と同じスピーカーがあること、その納品先に自分達の学校があることを突き止める。
データをうまく利用するのは、RIDEBACKワンナウツ(脚本)なども印象深い。

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さらに、ナイルの瞳が盗まれた美術館が、倉庫の近くにあることから、イサミ達は、事件が繋がっていることに気付く。
頭が切れるキャラといえば、ルパン三世2nd(演出/コンテ)のルパンやMASTERキートン(脚本)のキートンなどがいる。

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はるかを使い、数馬を上手くおだてて二人を美術館に向かわせた後、イサミ達は、今夜は決戦だと士気を高める。
チームの団結は、ルパン三世2nd・ガンバの冒険(脚本)等でも前面に出される。

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夜、学校に入ったイサミ達は、スピーカーを調べて回り、自分達のクラスのスピーカーからナイルの瞳を発見する(宝石を隠したスピーカーを、納品リストをもとにクモ男が探していたのが、火の玉の真相)。
一見関係ない事件を繋げるのは、ルパン三世3期(脚本)にもある。

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そこに、さりげなく現れたクモ男が、トシからナイルの瞳を奪う。クモ男はトシに、簡単に対象物を渡しちゃダメだよとアドバイスする。
色々な甘さにつけこむ敵役は、あんみつ姫カイジ(脚本)などもインパクトがある。

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再度クモ男は閃光弾を使い、車で逃走。自転車でそれを追うイサミ達は、地元の地理に詳しいことを利用して先回りし、歩道橋からゴミを降らせ、車を事故らせる。
ギミックを使う戦法は、ルパン三世2nd(演出/コンテ)や忍者マン一平(監督)ほか多い。

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クモ男は、工場跡に逃げ込む。彼はイサミ達を評価し、真の姿で挑むと宣言してムキムキの体を披露する。
ところで空手バカ一代(演出/コンテ)には、主人公の飛鳥が地下プロレスラーと戦う回がある。

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今度こそと、光る剣を出したイサミ達だったが、クモ男の伸縮武器の攻撃を受け、剣を落としてしまう。
一方、安全運転を徹したケイが漸く工場跡に到着。
小さな子供の活躍は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や忍者マン一平(監督)などでも目立つ。

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身を潜めた状態で、ケイはクモ男を煽り、その隙に剣を拾ってイサミ達に渡す。
体の小ささを有効利用した戦法は、宝島・ど根性ガエル(演出)などにも見られる。

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イサミ達が全員で剣を握ると、光る剣が発動。
手から手へ思いを伝える描写は頻出で、物を介したものも見られる。
ワンダービートS・DAYS(脚本)と比較。

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イサミとクモ男は互いに切り結ぶ…はずが、身長差のおかげでクモ男の攻撃は空振り。イサミはクモ男の足元を攻撃して痺れさせ、倒す。
剣のアクションについては、陽だまりの樹忍者戦士飛影(脚本)なども印象的。

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翌朝イサミは、クモ男が逮捕され、ナイルの瞳が戻ったニュースを見てVサイン。一方、悪の組織・黒天狗党は、事件解決の名乗りを上げた、しんせん組(イサミ達)の正体を探ろうとする。
Vサインは、ルパン三世(演出/コンテ)や、あしたのジョー2(脚本)などでも目立つ。

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  • まとめ

 一見たわいもない事件が、大きな事件と繋がるコンセプトは、ルパン三世3期9話(高屋敷氏脚本)の、ルパンが水虫に悩まされる話が、禁断のクローン技術の話へと繋がっていく回と共通する所がある。

 ルパン三世3期9話について、以前書いたブログ記事はこちら:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2016/11/28/132818

 これだけでなく、じゃりン子チエや、あんみつ姫の脚本などでも、高屋敷氏は、複数のプロットを走らせて、それらを最後に合流させるのを得意としている。今回もまた、それが十分に活かされている。

 また、相変わらずキャラの個性を際立たせることにも余念がない。
ポンポン進む複数キャラの会話劇も、高屋敷氏がキャラの個性をよく把握しているからこそだと思う。

 あと、先述の通り、過去作のオマージュやパロディが見られるのも面白い。宝物の盗難事件にしても、ルパン三世シリーズ(高屋敷氏演出/コンテ/脚本参加)、太陽の使者鉄人28号(同氏脚本)、キャッツアイ(同氏脚本)の要素が今回にあり、同氏の記憶力に感心する。

 このことからもやはり、高屋敷氏は持てる経験と技術を、目の前の最新作に全力でぶつけるタイプの作家だと考えられる。だからこそ、同氏の作品は年を経るごとにグレードアップしていく。

 そう思うと、カイジワンナウツ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)など、還暦を過ぎてからの担当作が素晴らしい出来なのも、(ある程度)納得が行く。
それにしても、年を経るごとに研ぎ澄まされていく高屋敷氏の技術は驚異的だ。

 本作(飛べ!イサミ)はオリジナル作品であるが、まるで漫画原作があるかのような味わいがある。
そこは、高屋敷氏が積んできた、原作つきアニメの膨大な経験も大いに貢献していると思う。

 他人の作品のキャラ性や話のテーマを探ってアニメに落とし込む作業は、相当にキャラメイキングや話の構成についての造詣が深くなるし、高屋敷氏がやってきた、その仕事量は膨大。そうなれば、同氏の持つポテンシャルは凄まじいものであるのは想像に難くない。

 F-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)や、おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)のアニメオリジナル回も非常に秀逸。また、陽だまりの樹(同氏脚本陣)に至っては、アニメオリジナル要素と原作要素が溶け込みすぎて、原作を知らなければ、判別が困難なほどだ。

 そういったことを鑑みると、高屋敷氏が鍛えてきた「キャラメイキング・ストーリーテリング」力は化け物級であり、その蓄積と経験、才能はやはり尊く貴重なものである。