カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

F-エフ-10話脚本:若さゆえの焦燥

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテ/演出が古川順康氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

筑波サーキットでの練習走行時に、鼻持ちならない上位ランカー・砂井と乱闘した軍馬。聖(後の軍馬のライバル)は、色々とサーキット関係者に話をつけて、軍馬の起こしたトラブルの解決に奔走。全ては、タモツ(軍馬の親友で、メカニック)の才能に惚れ込んだためであった。その事を、軍馬はまだ知らない…

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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開幕、高屋敷氏の大きな特徴、「物」の意味深アップ。暗いのでわかりにくいが、聖(軍馬の後のライバル)がボールをお手玉している。画像は、「物」の意味深アップ集。今回、めぞん一刻・チエちゃん奮戦記・DAYS脚本。

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聖は、タモツ(軍馬の親友で、メカニック)の腕に惚れ込み、色々と根回しする。このシーンは、アニメオリジナル。聖は、恋人のルイ子に「興味があるのはマシン」と言うが、後の展開を考えると、色々考えさせられる。本作のオリジナル部分は、伏線の宝庫。

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森岡モータース(軍馬とタモツのバイト先)の店長・森岡は、筑波サーキットでの軍馬の大暴れの顛末をタモツから聞いて驚き、軍馬と色々話し合った方がいいと助言。森岡の煙草描写が丁寧な所に、高屋敷氏の特徴が出ている。カイジ・アカギ・めぞん一刻脚本と比較。

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一方軍馬は、前回怪我した左足を病院で診てもらう。幸い、骨折はなし。
どさくさに紛れて純子(同じアパートの住人)を口説こうとする軍馬だったが、純子はそれを回避(アニメオリジナル)。なんとなく、ルパン三世2nd演出/コンテと比較。どちらも男性が、女性にいなされる。

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原作では、軍馬は女医を口説き、純子を怒らせていたが、アニメでは、あくまで純子を口説いている。「男の純粋さ」を貫く節のある、高屋敷氏らしい改変。
どのみち純子は怒り、軍馬を病院に置き去りにするが、アニメでは、岸田(軍馬を慕うインテリ青年)が、軍馬を拾う。

さらにアニメオリジナル展開は続き、岸田と軍馬は喫茶店で話す。
軍馬が片手で豪快にパフェを食べており、高屋敷氏特徴の、食いしん坊描写が出ている。元祖天才バカボン演出/コンテ、ルパン三世3期・チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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岸田から、もうすぐFJ1600のレースがあることを聞いた軍馬は、自分もエントリーしたいから、金を貸してくれと岸田に迫る。金持ちの岸田は、最終的に金を貸す。
カイジ2期脚本にて、原作通りだが、遠藤から大金を借りるカイジが思い出される。軍馬もカイジも、人たらしな面がある。

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エントリーに行く途中、軍馬と岸田は、砂井(鼻持ちならない上位ランカー)に遭遇。この展開もオリジナル。
対峙する二人だったが、砂井は軍馬の杖を引っ張るなど、咄嗟の悪知恵を働かせる。悪知恵が冴えるキャラは、高屋敷氏の担当作には、実に多い。

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これ以上トラブルを起こすな、と聖に釘を刺されている砂井は、その場を去ろうとするが、軍馬は杖を砂井の車に投げつける。そして結局、乱闘へ。後の軍馬の談によれば、軍馬が勝ったようで、意外な結果。アニメでは、軍馬に少し華を持たせたのかもしれない(原作では、軍馬の乱闘の勝率は悪い)。

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夕刻、タモツがアパート(小森荘)に帰宅すると、聖が待ち構えていた。聖は、筑波サーキットにおける軍馬と砂井の乱闘の件について、軍馬が一筆書けば丸く収まるよう、サーキット関係者に話をつけてくれていた。だが軍馬は、乱闘は自分だけの責任ではないとして反発。ここの軍馬は、原作もアニメも幼い。

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砂井にも一筆書かせろと、軍馬はペンを聖の方に転がす。聖はそれを了解し、軍馬の方へペンを転がし返す。この演出はアニメオリジナルで、「手+物」の意味深な表現にこだわる、高屋敷氏らしい。
画像は「手+物」の意味深表現集。
今回、めぞん一刻・チエちゃん奮戦記脚本。

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軍馬は、頼みもしないのに、妙に親切で恩着せがましいと、聖を怪しむ。軍馬は本能的に、聖に何か魂胆があることだけは当てる。カイジ脚本では、さらに複雑な腹の探り合いが展開されていく。高屋敷氏は、多くの作品にて、心理戦を描写/強調している。

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軍馬の推理は半分当たったものの、ターゲットがタモツであることまでは見抜けず。そして、聖が買っているのは自分なのだと、軍馬は自画自賛し始める。聖は内心苦笑しながら、それを肯定。
気を良くした軍馬は、謝罪文を一筆書く。

軍馬は聖に、近々行われるレースに、自分も出ると宣戦布告。タモツは驚き、そして、軍馬が岸田にエントリー料を借りたことを知って愕然とする。
軍馬は、ガタガタ言うなと、タモツを突き飛ばす(アニメオリジナル展開)。
それを目にしながら、聖は小森荘を後にする。

タモツは真剣な顔つきになり、「何をそんなに焦ってるんだよ」と軍馬に問う。
軍馬は、「あ、焦ってなんかねーぜ!俺はな、お前みたいにつまんねーことでウジウジしたかねえんだよ」と返し、そっぽを向く。この会話もアニメオリジナル。高屋敷氏は、若者の感情のぶつけ合いを描くのが上手いと思う。

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一旦頭を冷やすため外に出たタモツに、聖が声をかける。聖は、タモツのメカニックの腕を褒め、友達になりたいと言い残して去る。
アニメオリジナルで、タモツと軍馬の口論を差し挟んだのが効いている。タモツと軍馬の間に、聖が入り込める隙を作っており、意義のあるオリジナルと言える。

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後日、聖はタモツに電話をかけ、あらためてタモツの才能を買っていることを告げ、今度ヨーロッパから来る、新しいマシンを見に来ないか…と誘う。
タモツを口説いている間、意味深にボールを持つ手が映る。「思いを込めた物を持つ手」のアップ・間は、高屋敷氏の作品に頻出。グラゼニMASTERキートンあしたのジョー2脚本と比較。

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聖は、風呂上がりのルイ子に向かい、彼(タモツ)は本物だ、と断言。ルイ子は、そんな聖に抱きつき、その拍子にバスタオルが落ちる(アニメオリジナル描写)。ここも、高屋敷氏の特徴である、意味深な「物」の描写。めぞん一刻あしたのジョー2・コボちゃん脚本と比較。

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一方軍馬は、病院に行く途中、ゲームセンターに立ち寄ってレースゲームをする。これもアニメオリジナル。ここでの軍馬の幼さは、ルイ子とのアダルトな関係を匂わせる聖と対照的。長年「幼さ」を描いて来た高屋敷氏の才が発揮されている。

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  • まとめ

タモツと軍馬の関係に、歪みやねじれが生じて来るわけだが、アニメオリジナルで岸田を投入したことが、うまく効いている。
岸田を絡めて発生した、軍馬とタモツのイザコザは、二人の間に聖が入り込む隙を作っている。こういった「意義のあるオリジナル」は本作に多く、感心する。

そして、オリジナル会話である、「何をそんなに焦ってるんだよ」「お前みたいにつまんねーことでウジウジしたかねえんだよ」―このあたりの感情のぶつかりあいは、実に「若さ」が出ていて良い。「幼さ」を描くのに長ける高屋敷氏は、「若さ」の表現も上手い、ということか。

最近、検索で知って驚いたのだが、高屋敷氏は高校の野球部の監督をしていた時期があったそうだ:

http://blog.livedoor.jp/yomei713/archives/51020566.html

そういった経験も、「若さ・幼さ」の表現の巧みさに繋がっているのかもしれない。

原作では、何でもいいから勝ちたくて、軍馬は病院の帰りにパチンコを打つのだが(結果、景品はゲットしている)、アニメでは岸田を絡ませ、砂井との喧嘩に勝つ流れになっている。複雑かつ上手い代替案だと思う。

軍馬は、若さゆえの焦燥を常に抱えており、それは聖の存在により、更に強まる。
その聖が目の前に現れたのだから、軍馬の焦燥感はピークに。タモツの言う、「何をそんなに焦ってるんだよ」は的を得ている。

高屋敷氏は、人間の心理、特に心の病について鋭い視点を持っていて驚かされるのだが、「若さゆえの、心の葛藤」についても、描写が上手いのだと感じた。
本作は、原作からして、「存在理由」や「父親越え」などの、心理系の要素が入っており、高屋敷氏との相性は良い。

相性が良いというより、高屋敷氏が得意とする要素を、原作から上手く引き出していると言うべきだろうか。
アニメにて、何を強調し、何を伝えていくべきか。原作つきアニメでは、ここが重要な点であり、難しい点でもある。高屋敷氏は、「アニメ版のテーマ」の仕込みが上手く、シリーズ構成作品では、それが更に巧妙。

本作にて、軍馬が原作より多少「幼く」なっているのは、やはり何らかの構成上の「仕掛け」を感じずにはいられない。ゲームセンターで遊ぶ軍馬と、聖・ルイ子の大人な関係の対比は、そのうちの1つであるのは明らか。

幼さ・若さ…そういった表現の巧みさの果てに、何が描かれるのだろうか。高屋敷氏の作品は、それが終盤になると怒涛のように明らかになる場合が多い。それを踏まえて、今後も見ていきたい。

グラゼニ シリーズ構成・脚本:感想ツイート集(1~3話)

2018年制作のグラゼニ(高屋敷英夫氏シリーズ構成・全話脚本。監督は渡辺歩氏)についての、私の感想ツイートをまとめた。今回は3話まで。

  • あらすじ

プロ野球投手・凡田夏之介は、年棒にこだわるタイプで、「グラウンドにはゼニが埋まっている(すなわちグラゼニ)」が信条。そんな彼の、悲喜こもごものプロ野球選手生活が描かれる。

1話

早速、高屋敷氏の特徴が出ている。

  • ナレーション多用
  • 名実況
  • 意思を持つような、物の意味深アップ
  • 信号機演出
  • 可愛い友情描写
  • ランプ演出

などなど。今年(2018)もこの特徴を確認できて感無量。

画像編

特徴である、「魂」があるような、物の意味深アップ集。

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信号機。これもよく出る。カイジ2期脚本、F-エフ-脚本と比較。

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頻出のランプ。はじめの一歩3期・カイジ・アカギ脚本、家なき子空手バカ一代演出と比較。

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何かを語るようなユニフォームの意味深アップ。(「物に魂」の一種)。DAYS脚本と比較。

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男の可愛い友情もおなじみ。

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1話しめくくりの、「魂」があるかのようなグラウンドのアップ。ある意味、タイトル(グラゼニ)回収。

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奇跡的な偶然だが、本作OPにも、本作と同じく高屋敷氏がシリーズ構成・全脚本を担当したF-エフ-OPにも大仏が出てくるのが感慨深い。本作は偶然だと思うが、F-エフ-のOP冒頭の言葉は、明らかに高屋敷氏のテイストが適用されている。シリーズ構成が、どこまでOPに関与できるかは謎だが。

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2話

今回も、高屋敷氏の特徴沢山。

  • 物の意味深アップ
  • 太陽やランプが役割を持つ
  • 男の可愛い/熱い友情

特に後半は、男の可愛くて熱い友情を長年描いてきた、高屋敷氏らしさが出ていた。サブタイトルもズバリ「友達」。

画像編

頻出のランプ。らんま脚本と比較。

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太陽の印象的な描写も、よく出る。元祖天才バカボン演出/コンテ、忍者戦士飛影はだしのゲン2脚本と比較。

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頻出の、物の意味深アップ。

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男の可愛い友情。F-エフ-脚本と比較。

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3話

今回も、高屋敷氏の特徴沢山。

  • 状況や感情と連動するランプ
  • 物の意味深アップ・間
  • 可愛いおじさん
  • 可愛い友情
  • 疑似家族
  • 喜び方が可愛い

など。特に、色々な作品(演出時代含む)で喜び方が可愛いのが気になる。

画像編

状況と連動するランプ(キャラが不調で、点灯していない)

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可愛いおじさん。

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意味深な「物」のアップ・間。

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可愛い友情。 

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喜び方が可愛い。
演出時代からある特徴。色々集めてみた。
今回、カイジ脚本、監督作忍者マン一平、怪物くん・チエちゃん奮戦記・ルパン三世2nd・太陽の使者鉄人28号・DAYS脚本。

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手から手へ思いを伝える。これも歴史は長い。
ワンナウツあしたのジョー2、ルパン三世3期脚本と比較。

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  • まとめ

金にシビアなプロ野球の世界を描いているとはいえ、人情や友情も、ふんだんに強調されている。そして、描かれる友情は、どこか無邪気で可愛い。長年、可愛い友情を描いてきた高屋敷氏の本領が発揮されている。

また、魂を持つような「物」の描写も、沢山出てくる。「脚本」なのに、視覚に訴えるという不思議な特徴は健在。これからもストーリーを追うのが楽しみだ。

F-エフ-9話脚本:人が童心に帰る、「勝負の世界」

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテが石山貴明氏、演出が谷田部勝義氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

筑波サーキットでの、FJ1600の練習走行が始まった。練習走行開始前に、左足を怪我した軍馬はクラッチを切れなくなり、低速走行を余儀なくされるが、なんと右足1本で運転を開始、上位ランカーの砂井に食い付く。意固地になる砂井に対しキレた軍馬は、靴やヘルメットを投げ、マシンを降りてもケンカを続けるのだった。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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左足の怪我が原因でクラッチが切れず、低速のままの軍馬を、聖(軍馬の後のライバル)が抜いていく。この場面はアニメオリジナルで、聖と軍馬の関係を強調したいという、構成の意図を感じる。

また、高屋敷氏の特徴である、状況や真実を映す「鏡」の活躍がある。あしたのジョー2・めぞん一刻脚本と比較。

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後ろをついて走る岸田(軍馬を慕う、金持ちインテリ青年)は、軍馬が左足を怪我していると悟り、ピットインするよう助言。
だが軍馬は、なんと右足だけで運転、加速。ここの軍馬は原作より幼い感じがあり、幼さや無邪気さの表現が上手い、高屋敷氏らしさが出ている。

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加速する軍馬は、鼻持ちならない上位ランカー・砂井に食い付く。砂井は、片足運転する軍馬を見て、「サーキットはサーカスじゃねえんだぞ」「とんだ道化師だぜ」と、内心毒づく。この砂井のモノローグはアニメオリジナルで、なかなかウィットに富んでいる。

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迫り来る軍馬に対し、意地になった砂井はタイヤを寄せて軍馬を妨害、「幼稚園の先生に三輪車の乗り方聞いてきな」と軍馬を煽る。この台詞もアニメオリジナル。主人公が保父になる、めぞん一刻(脚本・最終シリーズ構成)が元ネタかもしれない。

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キレた軍馬は、自分の靴を脱いで砂井にぶつける。
その後、軍馬の靴のアップ・間が出る。物の意味深なアップ・間は、高屋敷氏の作品に頻出。
グラゼニあしたのジョー2・カイジ2期脚本と比較。

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砂井を突き放したい軍馬は更に、もう片方の靴を投げるそぶりをする。
まんまと砂井はひっかかり、スピードダウン。
高屋敷氏の担当作には、なぜか知略や悪知恵を働かせるキャラが多い。
ベルサイユのばら(コンテ)のジャンヌ、カイジ(脚本)のカイジ元祖天才バカボン(演出や脚本)のパパ、ルパン三世2nd(演出や脚本)のルパンなど。

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軍馬が砂井を抜くのを見届けた岸田はピットイン。岸田には、小泉という老執事がついており、なかなか存在感がある。
高屋敷氏は、味のある老人を目立たせるのが得意。忍者戦士飛影はだしのゲン2・チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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岸田から事情を聞いたタモツ(軍馬の親友で、メカニック)は、悪い予感がする…と不安を募らせる。軍馬は、ハンデがあればあるほど燃える男だが、その「燃えかた」が尋常ではない事を知っているからだ。

一方聖は、ストレートでは聖のマシンに劣らない性能を持つ、軍馬のマシンに興味を持つ。聖は敢えて軍馬を待ち、軍馬と競争。この場面は、原作より強調されており、軍馬と聖の関係を前面に出したい、構成の意図が見える。

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聖は、軍馬のマシンの良さに驚き、チューンアップしたメカニックに興味を持つ。
だが、二人の競争は、砂井によって邪魔される。
砂井は、サーキットで拾った軍馬の靴をぶつけて、軍馬に仕返しする。

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キレた軍馬は、ヘルメットを脱いで砂井にぶつける。太陽を背負う構図は、高屋敷氏の担当作品に多い。忍者戦士飛影・太陽の使者鉄人28号はだしのゲン2脚本と比較。

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ピットインして車を降りても、軍馬と砂井のケンカは続く。ここも子供のケンカのようで、幼さ・無邪気さの表現に長ける、高屋敷氏らしさが出ている。画像は、幼いケンカ集。今回、カイジ2期・めぞん一刻脚本。

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一連の騒動を見守るタモツは、「悪夢にちがいねえ」と愕然とする。
「夢に決まってる」と、愕然とするカイジ2期脚本のカイジと、どこか重なる(言い回しも似通うものがある)。

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一方で聖は、軍馬のメカニックに益々興味を持つのだった(今後の伏線)。

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  • まとめ

今回も、原作より聖を目立たせており、聖と軍馬の関係を強調したいという、「シリーズ構成」としての高屋敷氏の一貫した意志を感じる。いつ何時でも、聖は軍馬のモチベーションを上げる存在として、うまく機能している。

また、軍馬と砂井が、子供のような争いを繰り広げる姿は、年齢問わず「幼さ」を描いてきた高屋敷氏の本領が発揮されている。1話では、軍馬に対して聖がムキになっていたが、今回は砂井が、その立場になる。じゃりン子チエ脚本でも、子供のようにケンカする、ミツル・カルメラ兄弟を描写している。

幼さ・無邪気さを強調する一方で、高屋敷氏は、「大人への成長・豹変」も描写する。この、「幼さ」と「大人への成長」のギャップは凄く、インパクトは絶大。
特筆すべきは家なき子最終回の演出だが、カイジにも使われている技術。
普段可愛い姿を見せておいて、成長するとなると豹変する様は、いつも驚かされる。

もともと演出時代から、高屋敷氏は可愛く幼い芝居付けが上手かったわけだが、出崎統監督作品での演出において、それを「仕掛け」として使うことを身につけたのではないか?と思う。家なき子(出崎統監督作品)では、高屋敷氏の演出回はキャラの可愛さが特徴だったが、最終回演出では、主人公のレミが一瞬、大人の男の顔に豹変する。

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これは、今までの演出傾向からのギャップが激しいが故に、非常にインパクトのある演出だった。
本作も、軍馬が幼さを発揮すればするほど、終盤で何か仕掛けを用意しているのではないか?と思えてくる。

また、あしたのジョー2脚本経験(最終回含む)などを生かし、「男の勝負の世界」は、良くも悪くも人を「童心に帰らせる」ものであることも、高屋敷氏は描いている。これも、物語が進むにつれ、更にハードになっていくことが予想される。

めぞん一刻脚本・最終シリーズ構成では、主人公の五代について、「いつまでたっても男の子」的な幼さを描く一方、「誰かの人生を支えることができる男」への成長も、見事に描ききった。

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本作のシリーズ構成も、そういった流れは期待できそうである。成長の中身や仕方は勿論、異なると思うが。

カイジのシリーズ構成においても、序盤にて、外車に洒落にならないイタズラをしたり、船井に騙されて泣いたりするカイジの姿を描く一方、勝負に生きる男として前を見据え(1期最終回)、全てを投げ打って人を助ける(2期最終回)姿が描かれた。

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そのギャップに胸打たれるわけだが、高屋敷氏は、そういった構成が非常に上手いと言える。

今回は、まだまだ序盤のため、軍馬の「幼さ」が前面に出ているが、他の高屋敷氏のシリーズ構成作品を考えるに、中盤や終盤に、あっと驚く「豹変」が待ち構えているような気がする。そういった意味でも、よく頭に叩き込んでおきたい回だった。

F-エフ-8話脚本:二人を繋げる合言葉

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、演出/コンテが澤井幸次氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

B・A級ライセンスを取得した軍馬は、FJ1600レースの練習走行のため、筑波サーキットへ。軍馬はそこで、岸田というインテリ青年に出会い、そして、聖(軍馬の後のライバル)と再会する。

聖に触発され、軍馬は他人のバイクでサーキットを走り、コースの感覚を確かめる。当然、バイクの持ち主に怒られ、その際、軍馬は左足を痛めてしまう。練習走行が始まるも、左足が痛くてクラッチが切れない軍馬は、ローギアのまま走らざるを得ない状況に…

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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B・A級ライセンスを取得し、ついにサーキットを走れることになった軍馬は、マシンを乗せたトラックを軽快に走らす。

それを見ながら、ヒロシ(同じアパートの住人)は、軍馬なら、レース事故で死んだ、純子(ヒロインの1人)の恋人である龍二が最期に見ていた、「何か」を見せてくれるかもしれない…と話す(6話参照)。

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6話に続き、死者の影がちらつく重さが出ている。あしたのジョー2脚本での力石(丈のライバル)の死や、めぞん一刻脚本での、惣一郎(ヒロイン・響子の夫)の死についての扱いが思い出される。

軍馬は、タモツ(軍馬の親友で、メカニック)から、モータースポーツでは人間関係やマナーが大事だと釘を刺され、軍馬もそれに同意はする。

筑波サーキットに到着し、タモツが手続きに出ている間、軍馬は、岸田というインテリ青年に出会う(専攻は心理学)。軍馬を熟練レーサーと勘違いした岸田は、軍馬を慕う。
なんとなく、ど根性ガエル(高屋敷氏演出参加)の、ひろしとゴロー(ひろしの後輩で、親友)の関係を彷彿とさせる。

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軍馬は、岸田に食事をおごってもらうことに。高屋敷氏の特徴として、山ほど出てくる飯テロが、ここでも出ており、原作より強調されている。
ミラクル☆ガールズ・DAYS・コボちゃんカイジ脚本と比較。

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岸田と話しているうちに、嘘八百がバレそうになる軍馬であったが、そこへ、聖と砂井(上位ランカー)がやってくる。
岸田は二人を見て舞い上がるが、軍馬は、「サーキットじゃな、お前より速い奴はゴマンといるんだぜ」と聖に言う。これは、1話で聖が軍馬に言った言葉。そしてこの展開は、アニメオリジナル。うまい改変だと思う。

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更にアニメオリジナル会話は続き、聖と軍馬は、互いをよく覚えていることになっている。これまで、アニメオリジナルで聖をちょくちょく登場させておいたことが効いている。また、「サーキットじゃな、お前より速いやつは…」は今後もアニメで重要な台詞になってくるようなので、覚えておきたい。

軍馬はついでに、砂井を挑発(ここからは原作通り)。機嫌を損ねた砂井は軍馬を殴り、軍馬も殴り返そうとする。
そこへ聖が割って入り、「吠えるのはエンジンだけにしておくんだな」と軍馬を牽制。

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やたらと尖る軍馬と、紳士的な聖の図式はやはり、高屋敷氏が脚本参加した、あしたのジョー1や2の、丈と力石・ホセ(丈のライバル)が重なってくる。

聖にイラつく軍馬は、空き缶を蹴る。カイジ2期1話脚本にて、(普通の)パチンコに負けて空き缶を蹴るカイジと被ってくる。今回のは原作通りだが、カイジ2期の方は、アニメオリジナル。

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軍馬は、一刻も早くコースを覚えようと焦り、他人のバイクを強引に拝借してサーキットを走る。それを見てざわめくモブが、結構存在感がある。高屋敷氏の演出・脚本作ともに、モブは優秀。カイジ2期脚本でも、モブは優秀だった。

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バイクの持ち主は、わざわざ新潟から来たのに…と軍馬に怒る。「新潟から来た」はアニメオリジナル台詞で、モブに存在感を与えようとする、高屋敷氏の意図が見える。

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揉み合いになった際、軍馬はバイクの下敷きになるも、駆けつけたタモツや純子らに呆れられる。

FJ1600の練習走行開始前、軍馬は、聖に楯突いた男として、周囲から白い目で見られるが、軍馬は「一番速いやつが一番偉いって聞いたぜ」と、更に皆を挑発する。

そうこうするうち、練習走行が開始されるが、軍馬は、バイクの下敷きになった際に左足を負傷したことに気付く。

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軍馬はクラッチを切れず、ローギアのまま走らざるを得なくなってしまう…という所で次回へ。

  • まとめ

今回の肝は、聖と軍馬の再会。1話の出会いから大分経っているものの、これまでの回で、聖を何度となくアニメオリジナルで登場させていたことが効き、二人が互いを意識していたことがわかるようになっている。

そして、「サーキットじゃな、お前より速いやつはゴマンといるんだぜ」という台詞。アニメでは、聖と軍馬をつなぐ言葉として意味を持ち始めている。この言葉は、終盤で、更に重い意味を持つようになるようだ。どこの時点でこれを意識するようになったかは不明だが、高屋敷氏の、シリーズ構成力の高さが出ている。

一つの台詞や言葉が、シリーズ全体で重要な意味を持つよう構成されているのは、高屋敷氏の他のシリーズ構成作品でも見られる。カイジ1期では「前へ」が、2期では「勝つ」が、シリーズ全体で強調されている。特にカイジ1期では、船・足・心が「前へ」進んで行く構成になっているのが印象的。演出参加の、家なき子のテーマの一つ、「前へ進め」ともかかっているのが感慨深い。

カイジ1~2期の根幹に流れる言葉として、「未来は僕らの手の中」があるのにも注目したい。1期開始時、「未来は僕らの手の中」の色紙が意味深に傾くが、2期ラストシーンでは、その色紙が、しっかりと映る。2期最終話のサブタイトルも、「未来は僕らの…」である。

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そう思うと、F-エフ-における、「サーキットじゃな、お前より速いやつはゴマンといるんだぜ」も、カイジにおける「未来は僕らの手の中」のような「重要な役割」を担っているのではないだろうか。
こういった、しっかりとしたテーマ設計があるのには、毎回驚かされる。

原作ものアニメでも、いや、原作ものアニメだからこそ、アニメ独自のテーマというのは重要になって来ると思う。高屋敷氏は、じゃりン子チエ脚本をはじめ、原作に沿いながら、独自テーマを上乗せするのが巧み。めぞん一刻最終シリーズ構成でも、「男の成長」を、原作とは違ったアプローチで強調していて驚いた(こちらを参照)。

今回は、軍馬と聖の再会のために設置した伏線が回収された回とも言える。二人の劇的な運命を考える上でも、「シリーズ構成」を考察する上でも、おそらく重要になってくる回と考えられるので、しっかりと覚えておきたい。

F-エフ-7話脚本:“今”を走る

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、演出/コンテが谷田部勝義氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

アニメオリジナルエピソード。
軍馬の異母兄・将馬に強引に迫られたユキ(軍馬を慕う、赤木家の使用人)は、赤木家を出て、軍馬の住むアパート・小森荘に転がり込む。
レースに出るためのA級ライセンスを取得する直前だった軍馬は、ユキに自分の夢を語り、ユキもそんな軍馬を益々慕う。
だが、色々な状況を汲み取ったユキは、アパートを去る。引き止めようとする軍馬だったが、ユキを迎えに来た将馬に邪魔される。二人は乱闘となるが、ユキは自ら、赤木家に戻ると言って将馬を止め、軍馬に「夢を叶えて」と言い残す。
A級ライセンスの実技試験にて、軍馬は改造トラクターで疾走し、ユキのためにも、世界最速の男になる事を誓うのだった。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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冒頭、将馬(軍馬の異母兄)がユキに強引に迫る描写があるが、踏みにじられる写真立て等、「物」が事象を代弁するつくりになっている。「物」が「語る」描写は、高屋敷氏の作品に頻出。蒼天航路コボちゃん忍者戦士飛影脚本と比較。

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この一件で居づらくなったユキは、赤木家を出て、軍馬の住むアパート・小森荘を訪ねる。

一方、軍馬とタモツ(軍馬の親友で、天才メカニック)が、A級ライセンス取得のためのトライアル走行から戻る道中、飛行船が映る。コボちゃん脚本でも、飛行船が映っており、意味深な情景や「間」を、(絵を管理できない)脚本からでも指定できることが窺える。

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A級ライセンス(取得は結構簡単)を取れればレースができる、と軍馬は喜び、タモツを抱き寄せてナデナデする。高屋敷氏が得意とする、可愛く無邪気な友情描写。ナデナデも、よく出てくる。
ど根性ガエル演出、じゃりン子チエ脚本と比較。

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帰宅した軍馬とタモツは、ユキの来訪に驚く。軍馬は、将馬と何かあったのだと察する(が、ユキは否定する)。
純子(小森荘の住人)は、(自覚は無いが)あからさまに嫉妬し、軍馬は困惑する。
更に、ユキを自分の部屋に泊める、と屈託無く言い出す軍馬に、小森荘の皆は騒然。
原作だと、軍馬とユキは肉体関係があったが、アニメでは、一緒に育った仲…といったニュアンスになっている。
純愛を好む傾向にある、高屋敷氏らしい改変。

軍馬はユキを改造トラクターに乗せ、夜の街を走る。あしたのジョー2脚本にて、葉子(ヒロインの一人)が丈を乗せて、スポーツカーで疾走する場面が思い出される。

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もうすぐレースに出れる軍馬は、世界最速の男になる、と自分の夢を語る。それを聞くユキは、益々軍馬に惹かれるが、その後に複雑な表情を浮かべる。

二人は港で語らうが、ここも、あしたのジョー2脚本の、海辺で語らう葉子と丈に重なっていく。

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ユキは、純子は素敵な人だと言い、軍馬と純子の心情を察する。ユキの背後を船が横切っていくが、長年、高屋敷氏と一緒に仕事した出崎統氏が、よくやる演出。高屋敷氏の場合は、脚本からでも、これをやれるのが不思議なところ。MASTERキートン・アカギ脚本、ルパン三世2nd演出/コンテと比較。

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ユキは、「軍馬様のバカ」と、軍馬をからかい、軍馬もそれに無邪気に反応する。ここも、あしたのジョー2脚本にて、無邪気に笑い合う丈と葉子の場面と重なる。高屋敷氏自身、相当に、あしたのジョー2脚本(30話)を意識しているのではないだろうか。また、無邪気なやり取りが、非常に高屋敷氏らしい。

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はしゃぎすぎて海に落っこちた軍馬は、自室で凍える。そこへタモツが訪ねて来て、ユキが赤木家を出たのは、よっぽどの事があったのではないか?と懸念する。
一方、ユキは純子の部屋で寝ることに。ここで、高屋敷氏がよく出す、「状況を映し出す鏡」が出てくる。めぞん一刻カイジ脚本、ベルサイユのばらコンテと比較。
ここでは、軍馬に惹かれている二人を客観的に映している。

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純子は、レースをやるということは、生半可なことではないが、もしタモツの言うように、軍馬が天才なら…と話し、ユキは、「軍馬様なら、きっとやります!」と熱くなる。が、ユキは我に返り、「私も夢を探さなくちゃ」と、床につく。だが、迫って来る将馬を思い出し、ユキは苦しむ。

翌朝、ユキは置き手紙を残して出て行ってしまう。手紙描写は、高屋敷氏の演出・脚本作ともに、実に多く、かつ印象的に描写される。カイジ2期脚本、家なき子演出と比較。

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入れ替わりに、将馬が小森荘を訪ね、ユキを連れ戻しに来たと言うが、軍馬は反発。だが、将馬の部下に殴り飛ばされる。
純子は、軍馬の家庭環境を目の当たりにして、複雑な表情を浮かべる。前回、純子の過去が明かされたことを考えると、面白い対比。

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森岡モータース(軍馬とタモツのバイト先)にて、タモツは、ユキが出て行ったのは、軍馬が純子を好きなことを察したからではないか?と鋭い推察をする。軍馬は素直に認めたがらず、赤面する。
ここも、「男の純粋さ」を好む、高屋敷氏らしい描写。画像は、「男の可愛さ」集。今回、カイジ2期・めぞん一刻脚本。

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A級ライセンス試験の日、筑波サーキットに向かおうとした軍馬と小森荘の皆は、途中でユキを見かける。横断歩道でユキを発見するという展開が、カイジ2期脚本(オリジナル部分)と重なる。高屋敷氏の好みのシチュエーションなのかもしれない。

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無茶な運転で車を破損させるも、軍馬達はユキに追いつく。孤独な人のもとに、仲間が来てくれる状況は、高屋敷氏の作品には多い。ど根性ガエル演出、コボちゃん脚本と比較。

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だが、そこへ将馬が現れて、ユキを連れ戻そうとし、軍馬と将馬は殴り合いに。高屋敷氏が、あしたのジョー2(最終回含む)の脚本を書いたことが思い出される。
ど根性ガエル演出、あしたのジョー2脚本と比較。

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ユキは二人を制止し、赤木家に戻ると申し出る。ユキは、「きっと夢をかなえて」と軍馬に言い残して将馬の車に乗り、去る。
タモツは、ユキの気持ちを無駄にしないよう、改造トラクターに乗り換えてA級ライセンス試験に行けと進言。

タモツの進言に従い、軍馬は改造トラクターで筑波サーキットを疾走(実技試験)。

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それを、聖(軍馬の後のライバル)が見つめ、「奴は“今”を走っている。若さ丸出しの走りでな」「死を恐れない、怒りの走り方だ」とルイ子(聖の恋人)に話す。
ここの聖はかっこよく、アニメ版の名台詞だと思う。

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軍馬は、ユキのためにも、「世界最速の男」になると誓うのだった。

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このように、アニメオリジナルパートは、軍馬のモチベーションを上げるものが多く、原作をうまく補完していっている。

  • まとめ

原作序盤(軍馬の上京前)にて、ユキは将馬に犯されているのだが、アニメでは(今のところ)明確になっていない。
原作では、ユキと軍馬は、再会するまで1年かかるが、アニメでは、今回会えている。

原作のユキは、どんどん不幸になって行ってしまうのだが、アニメでは、多少の救済が行われているように感じる。

軍馬とユキのデート場面が、あしたのジョー2脚本の、丈と葉子のデート(?)場面と重なるのは感慨深い。どちらも、「今しかない、束の間の楽しい一時」を過ごす。
あしたのジョー2の場合は丈の、本作の場合はユキの今後を考えると、非常に切ない。

高屋敷氏は、友情にしろ恋愛にしろ、「無邪気さ・可愛さ」の表現に長けている。その「無邪気さ」が、後の悲しい展開を引き立たせることがあり、今回もそれに該当する。
ユキが「今夜のこと、一生忘れない」と言うのも、後の悲しい展開の伏線になっている。

また、「孤独」「孤独救済」も高屋敷氏の持ち味であるが、「孤独救済に失敗すると、破滅が待っている」という悲劇展開もある。今回は「孤独救済失敗」にあたり、ユキは今後、破滅に向かう。ただ、ユキの運命は原作とアニメで大きく異なるようなので、今後を見守りたい。

今までも、アニメオリジナルパートは、軍馬の、レーサーになるというモチベーションを上げるものが多かったが、今回のオリジナルエピソードは、話全体で、軍馬のモチベーションを上げている。

前回、純子の過去が明かされたが、その上で、軍馬と純子の距離は縮まった。
そして今回、ユキの登場により、純子の心が揺れ動くようになっている。
ラブストーリーの面でも、構成の計算高さが出ていて面白い。

そして、聖の言う「奴は“今”を走っている」という台詞。“真っ白になるまで”、“今”を燃やし尽くした丈を描いた、あしたのジョー2最終回の脚本を、高屋敷氏が書いたことを考えると感慨深い。ちなみに、あしたのジョー2最終回のサブタイトルは、「青春は“いま”…燃えつきた」である。

更に聖の言う「死を恐れない、怒りの走り方」。あしたのジョー2脚本では、恐れを知らない丈の戦い方に、ホセ(丈の最後の対戦相手)が畏怖する場面があり、それが思い出される。また、聖の今後を考えると、重要な伏線になっているのも上手い。

軍馬は前回、純子の思いを背負う覚悟をし、今回、ユキの思いも背負った。そして、聖の言う通り、「今を」走る。

今回で、軍馬がレーサーとなることへの「重み」が加味された。その意味でも、「意義のある」アニメオリジナルエピソードだった。

F-エフ-6話脚本:生き甲斐を提示する側の「責任」

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテが真下監督、演出が杉島邦久氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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今回の話:
前回、免許取得直後に公道をレースカーで爆走した軍馬は一発免停。
そんな軍馬は、偶然目にしたビデオで、純子(同じアパートの住人)の恋人(龍二)が、レース中に事故死していたことを知る。
純子は、龍二が死の間際に見ていた「得体の知れない何か」を見届けるため生きていると、軍馬に告げる。軍馬は、その「何か」を自分が見せてやると宣言し、今日から仲間だと言うのだった。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

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免停中の軍馬は、親友でメカニックのタモツと共に、ビデオデッキのある純子(同じアパートの住人)の部屋で、レースのビデオを見る。
軍馬は、月をダシにして純子を口説こうとする(原作では雪)。月や太陽は、高屋敷氏の作品では大きな役割を持つ。
画像は三日月シリーズ。今回、チエちゃん奮戦記脚本、空手バカ一代演出、蒼天航路・チエちゃん奮戦記脚本。

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タモツが軍馬の免停を嘆くのだが、原作よりも軍馬とタモツのやり取りが幼く、可愛い友情描写が得意な高屋敷氏の特徴が出ている。めぞん一刻脚本、元祖天才バカボン演出/コンテ、忍者戦士飛影脚本、エースをねらえ!演出と比較。

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純子は、軍馬とタモツに、最終目標を尋ねる。タモツはF3000と言うが、軍馬は「当然、F1だ」と宣言。すると純子は一瞬、深刻な表情になる。限界を知らずに大怪我しても知らないから、と言う純子に対し、「そのうちモナコのお月様見せてやるぜ。ベッドの中からな」と、軍馬は軽口を叩く。この台詞はアニメオリジナルで、この「お月様」というのが何とも、月に重要な役割を与え続けてきた、高屋敷氏らしい。

純子は、そんな軍馬を強く諌める。驚いた軍馬は、みかんを落としかけるも、バランスを取ってみかんをモグモグする。高屋敷氏の特徴である、食いしん坊描写が出ている。ルパン三世3期・MASTERキートン脚本と比較。

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純子は、「命を落としたらどうするの」と言うが、軍馬に「“心の底から軽蔑してる(前回、純子が宣言)”男がどうなろうと知ったこっちゃないんじゃねーのか」と言われ、「それもそうね」と矛をおさめる。
ここも、みかんをモグモグしながら物を言う軍馬が、原作より幼い。とにかく高屋敷氏は、「幼さ」の表現に長けている。

翌朝、軍馬は、さゆり(アパートの大家で、純子の叔母)から、純子の部屋で資料映像を見ておくように、とのタモツの伝言を聞く。

少々遊ぶなどするも、しばらくは大人しくビデオを見ていた軍馬だったが、次第に飽きて、他のビデオを漁る。すると、棚の奥にある1本のビデオを発見、再生する。

一方純子は、電車の窓に顔を映しながら、過去を回想する(アニメオリジナル)。「自分と向き合う鏡演出」は、高屋敷氏の演出・脚本作ともに多い。めぞん一刻脚本、ベルサイユのばらコンテ、忍者戦士飛影脚本と比較。

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原作では、啓太・ヒロシ(純子のレース仲間)と共に喫茶店で過去を思い出しており、少々異なる。

ここからは純子の回想と、軍馬の見るビデオが、平行進行する。アニメオリジナル演出で、うまくできている。

ビデオには、純子の恋人・龍二が映っていた。彼はF3レーサーで、純子とは結婚寸前の仲だった。

アニメでは、純子の回想として、純子と龍二の仲睦まじさが追加描写されており、龍二は純子の手を握る。手から手へ「心」を伝えるのは、高屋敷氏の大きな特徴。
ルパン三世3期脚本、カイジ(シリーズ構成)、ワンナウツ脚本と比較。他も多数。

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回想の中で純子は、ビデオカメラを構える。生きているようなレンズのアップ・間があるのだが、「魂を持つような、物言わぬ物」のアップ・間は、高屋敷氏の作品には頻出。ロボットも、無口タイプが多い。
1980年版鉄腕アトム花田少年史MASTERキートン・1980年版鉄腕アトム脚本と比較。

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純子のビデオカメラは、龍二のマシンを捉える。だが龍二のマシンはトラブルでクラッシュ、爆発炎上してしまう。軍馬も、その瞬間をビデオで見て、衝撃を受ける。
後から入ってきたさゆりはビデオを止め、龍二は純子の最愛の男だったが、2年前に、この事故で死んだと告げる。そして、龍二が純子の中に住み着いている限り、純子を手に入れることは出来ないと指摘する。

翌朝、ランニングに出る際に軍馬は、龍二の名を呼びながらうなされる純子の言葉を耳にしてしまう。何故か無性に腹が立った軍馬は、純子の部屋の窓ガラスを叩き割ってしまう。

一方その頃、聖(軍馬の後のライバル)はジムでトレーニング。ここはアニメオリジナルで、極力、聖を出しておきたいという、シリーズ構成の意図が感じられる。

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その後、免停講習を受けに行った軍馬は、様々な自動車事故の写真を見ながら考え込む。ガムをふくらますのは原作通りだが、ガム風船が意味深に割れるのはアニメオリジナル。ここも高屋敷氏特徴の、「意思を持ち、動く物」の描写。めぞん一刻蒼天航路忍者戦士飛影マッドハウス版XMEN脚本と比較。

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講習後、森岡モータース(タモツの知人の店で、タモツと軍馬のバイト先)に、愛車の改造トラクターで寄った軍馬は、タモツを拾うと走り出す。
無事に免許を取り戻した軍馬は、レースをやるために必要なライセンスを一刻も早く取得してレースをやりたいと言い出す。
ここはアニメオリジナルで、軍馬の焦りが、よく表れている。

アパートでは、軍馬へのプレゼントを服の中に隠し持って、さゆりが軍馬の帰りを待っていた。高屋敷氏は、味のある老人描写が上手い。画像は、味のあるおばあさん集。
今回と、チエちゃん奮戦記・めぞん一刻MASTERキートン脚本。

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帰宅した軍馬は不機嫌で、純子に、「惚れた男が目の前で死んだのに、なんで死ななかったんだ」と、問い詰める。
軍馬はビデオを見たこと、うなされていたのを見たことも告げる。
場は険悪なムードになるが、さゆりは機転をきかせ、プレゼントのヘルメットを軍馬に被せる。
ヘルメットには、軍馬とタモツのイニシャルであるGとTがデザインされていた。
ところで、原作通りではあるが、「贈り物」は高屋敷氏の作品で強調される。贈り物は、「意思がこもった物」であるためと考えられる。

軍馬のフラストレーションは治まらず、彼はヘルメットを被ったまま純子を押し倒し、先ほどの質問を繰り返す。

純子は「死にたかったわよ」と言う。
それでも純子が死ねないのは、龍二が死ぬ直前、「得体の知れない何か」を見ていたからで、それを自分も見届けたいからだと言う。ジョー2脚本で、丈やホセが常人には見えないものを見ていたのが思い出される。

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軍馬は、純子の気概も、ヘルメットのデザインも気に入ったと言う。ただ、ヘルメットに「足りないものがある」と言って、純子の唇に口紅を塗り、そこにヘルメットを押し付け、口紅の痕をつける。
原作通りだが、口紅描写は高屋敷氏の作品に多い。ルパン三世演出/コンテ、蒼天航路めぞん一刻脚本と比較。

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ヘルメットに口紅をつけた意図は、純子、軍馬、タモツで、一緒に「得体の知れない何か」を見ようということ。
そして軍馬は、その「何か」を見せてやると宣言。
感情をぶつけ合いながら、チームを結成する様は、カイジ2期脚本にて、遠藤・坂崎・カイジがチームを結成する場面に重なるものがある。

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純子は「サイテー男」と言い、軍馬は「そのサイテー男が見せてやるぜ。だから今日から俺達は仲間だ」と返す。「サイテー男」「そのサイテー男が見せてやるぜ」は、アニメの追加台詞。ポンポン台詞をリレーさせるのは、高屋敷氏の脚本上の特徴。ここは、うまい追加だと思う。

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「仲間」と宣言することを強調するのも、カイジ2期脚本の、カイジ・遠藤・坂崎チーム結成シーンを彷彿とさせる。また、長年高屋敷氏が描写している、「孤独」「孤独救済」も表れている。

純子は「…見せて…もらうわ」と睨み返す。原作通りだが、「具体的な“生き甲斐”を提示することで、生きる気力を取り戻させる」という、高屋敷氏の、メンタルヘルスについての鋭い先見の明が窺える。他の作品でも、数多く描写されている。

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  • まとめ

ここに来て、「死」の描写が出てくるわけであるが、めぞん一刻(脚本・最終シリーズ構成)でも、ヒロイン・響子の夫、惣一郎の死を取り扱っている。

めぞん一刻の主人公・五代は、最終的に、「(響子の中にいる)惣一郎をひっくるめて、響子と結婚する」という決断に到る。

一方軍馬は、アニメでは、「常に前に行く」というポリシーを持つ男として描かれる。そんな軍馬は、「後ろ向き」な姿勢を見せた純子に苛立つ。

これは私の解釈だが、「後ろ向きに生きるくらいなら、前を向いて死んだ方がマシ」という考えから、「なんで死ななかったんだ」と、軍馬は純子に問い詰めたのではないだろうか。

だが純子は、龍二の見ていた「得体の知れない何か」(つまり命を賭けた勝負の先にあるもの)を見届けたいから生きていると答えた。それは軍馬の「気に入る」前向きな答え。だから軍馬は「仲間」だと言い、自分こそ「何か」を見せることができる男だと宣言した。

つまり軍馬は、荒療治ではあるが、純子に、自身の生きる意味を再認識させた。しかも、その上で、具体的な「生き甲斐」も提示した。
高屋敷氏は、自殺願望者や、生きる気力の無い人への対処として、具体的な生き甲斐の提示を行うことと、孤独にさせないことを描く。これは最初期演出の、ど根性ガエル演出の頃から描かれている。

このあたりは、高屋敷氏を探求する上で非常に興味深いところ。自殺や精神疾患に対する、鋭い先見の明が見られるのだ。認知行動療法に近いものもある。
特に、「具体的な」生き甲斐の提示を行うのは、自殺の止め方として現実的。そして、提示する側は、それなりの責任を持つ必要があることも描かれる。

軍馬の場合は、純子に「何か」を見せる責任を負うことになるし、カイジ2期(脚本・シリーズ構成)の場合は、カイジは、とんでもなく困難な勝負に勝たなければならないという責任を負っている。

カイジ2期(シリーズ構成・脚本)においてカイジは、幾多の困難を乗り越えて「勝つ」姿を見せることにより、仲間達に希望を見せることができた。
軍馬の場合も、まだこれからになるが、「得体の知れない何か」を純子に見届けさせるため、数々の修羅場をくぐることになるのだと思う。

そう思うと、「生き甲斐を提示する側」の覚悟と責任は尋常ではない。だが、それができるキャラ(主に主人公)であってほしいという、高屋敷氏の願いも込められているのだと思う。
まだ序盤ではあるが、純子や軍馬の「生きる」意味が重く描かれ、高屋敷氏のポリシーが色濃く感じられた回だった。

F-エフ-5話脚本:老人が築く絆

アニメ・F-エフ-は、六田登氏の漫画をアニメ化した作品。破天荒だが天才的なドライビングテクニックを持つ青年・赤木軍馬が、様々なドラマを経てレーサーとなり、数々の勝負を繰り広げていく姿を描く。
監督は真下耕一氏で、高屋敷氏はシリーズ構成・全話脚本を務める。
今回は、コンテ・演出が古川順康氏、脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

軍馬は免許を取るべく、自動車教習所の教官でもある純子(同じアパートの住人)の個人授業を受ける。下心丸出しの軍馬を何とかいなして、純子は色々と軍馬に叩き込むも、軍馬は、純子達の車で爆走したりと、やりたい放題。試験後に軍馬は、前回購入したレースカーで暴走。警察に咎められた軍馬は、得意気に取れたての免許を見せるも、皆に呆れられるのだった。

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本記事を含めた、当ブログにおけるF-エフ-の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-

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早朝、軍馬はトレーニングだと言って、タモツ(軍馬の親友で、天才メカニック)をランニングに誘う。草や水面、電車が意味深に描写されるが、自然や物に役割を与えるのは、高屋敷氏の特徴の1つ。めぞん一刻脚本(下記画像右)でもそうだった。

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ランニングがてら、タモツは、免許取得のための練習問題を軍馬に出題するが、軍馬の解答は尽く滅茶苦茶。
軍馬とタモツの描写が、原作より若干幼い。幼く無邪気な友情描写は、高屋敷氏の担当作には多い。めぞん一刻コボちゃん・DAYS脚本と比較。

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ランニング後の、蛇口のアップが意味深。顔を洗う軍馬とタモツの場面は、アニメオリジナル。前回(実は軍馬のための金とはいえ、軍馬がタモツの預金を勝手に下ろしてレースカーを購入)のわだかまりを、水に流そう的な意味かもしれない。
めぞん一刻脚本(下記画像右)にも、似たような意味深な蛇口の場面がある。

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純子(同じアパートの住人)は、前回タモツに懇願されたこともあり、軍馬に、自動車免許取得の為の個人授業をすることを引き受ける。さゆり(純子の叔母で、アパートの大家)も、一緒に個人授業を受けたいとせがむのは、アニメオリジナル。可愛い老人描写は、高屋敷氏の作品には多い。ベルサイユのばらコンテと比較。

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下心丸出しの軍馬は、タモツとさゆりを追い出し、純子と二人きりに。何とか純子を口説こうとするが、アニメでは、どう口説いたかが具体的に描かれている。口説き方が幼く、なんとなくルパン三世2nd演出/コンテの、ルパンと不二子が思い出される。

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個人授業の内容も、アニメではオリジナル追加要素がある。基本、軍馬が幼い。元祖天才バカボン演出/コンテで、パパが家庭教師をする回があるが、その話でも、パパと子供が非常に幼い。
年齢問わず、「幼さ」を描くのが、高屋敷氏は得意。

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軍馬の下心をいなすため、純子は、コーヒーカップを軍馬の頭上に置く。
これもアニメのオリジナル要素。ちょっとだけ頭を使う方法なのが、頓知やイカサマを多く表現してきた、高屋敷氏らしい。元祖天才バカボンの演出/コンテや脚本でも、パパが巧みな頓知やイカサマを多く使う。

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アパートの住人達とさゆりは、純子が無事に部屋から出てきたことを喜ぶ。高屋敷氏の作品では、演出作・脚本作ともに、何故か喜び方が幼く・可愛くなる。
監督作忍者マン一平、チエちゃん奮戦記・DAYS脚本と比較。

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そして、タモツが整備したばかりの、純子のレースチーム車に乗った軍馬は、キーが光るのを見て、エンジンをかけてしまう。
ここも、キーが意思を持つように描かれている。意思を持つような「物」の描写は、高屋敷氏の特徴の1つ。蒼天航路めぞん一刻脚本と比較。

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軍馬は、タモツ・純子、啓太とヒロシ(純子のレース仲間で、同じアパートの住人)を乗せたまま、街を爆走。流石の運転技術で、軍馬は落ちてくる積み荷を避けながら走行。ここの作画やカメラワークは凄い。

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だが、ガードレールをかすめたため、車はストップ。皆が気を失ったことを確認した軍馬は、この隙に純子にキスしようとするが、寸前で目覚めた純子からアッパーカットを食らうのだった。

後日。筆記試験にて、軍馬は、さゆりに鉛筆転がしの極意を教える。ここはアニメのオリジナルで、やはり老人との交流が微笑ましいのが、高屋敷氏らしい。ベルサイユのばらコンテ、めぞん一刻脚本と比較。

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さゆりは落ちたものの、軍馬は筆記試験を奇跡的に突破。実技試験の結果を待つ間、さゆりは赤飯を用意。ここでも赤飯の意味深な「間」がある。めぞん一刻・怪物くん・チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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試験から帰ってきた軍馬は沈んでおり、皆は、「落ちた」と思い込む。
原作通りではあるが、仲間達がいる、という「孤独救済」描写は、高屋敷氏の作品に数多い。ど根性ガエル演出、元祖天才バカボン演出/コンテと比較。

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軍馬は、(前回購入した)レースカーのエンジン音が聞きたいと言い出す。タモツはエンジンをかけてやりながら、「おめえらしくねえだよ、そういう態度」と言う。原作通りだが、強調されている。
めぞん一刻脚本でも、一ノ瀬が、「そんな顔似合わないよ」と響子を励ます場面が強調されている。
どちらも、厚い友情が描かれている。

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エンジンがかかると、軍馬はレースカーを発進させ、「何人たりとも俺の前は走らせねえ」と暴走。ここの映像も凄い。

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警察とのカーチェイスの結果、またもガードレールにぶつかり、レースカーは停止。取れたての免許を得意気に見せる軍馬だったが、警察にも、純子達にも呆れられるのだった。

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  • まとめ

さゆりの初登場時から感じていたことだが、高屋敷氏はこういった可愛い老人が好きなようで、原作より登場場面が多い。冷たい家庭環境にあった軍馬の孤独を、さゆりが癒していくような、そんなサイドストーリーも構築されていっている。

さゆりだけでなく、タモツ、森岡(タモツの知人で、モーターショップを営む)、純子、啓太、ヒロシなど、軍馬を取り巻く人々が増えて行く様も描かれる(まだまだ啓太・ヒロシと打ち解けるのは先だが)。
こういった「孤独救済」を、高屋敷氏は様々な作品で描いている。

今回の、軍馬の免許取得作戦は、原作よりも「仲間のつながり」を強調しているように感じた。タモツが懇願しなければ、純子が個人授業を引き受けることもなかったのをはじめ、皆がいたからこそ、軍馬は免許を取れた(軍馬にその自覚があるかは別として)。

「皆がいるから自分がいる」は、初期作の、ど根性ガエル演出をはじめ、実に多くの高屋敷氏の作品で強調されてきた。
元祖天才バカボン(演出/コンテや脚本)のパパは、軍馬顔負けの非常識キャラだが、温かい仲間や家族に囲まれている。
パパの場合、たまにそれを自覚し感謝するが、軍馬の場合は、どう描かれるのだろうか。

勿論、原作との兼ね合いもあるし、前回では、タモツと軍馬の、天才同士ならではのシビアな関係が描かれた。それでもなお、人と人との絆の温かさは、隙あらば強調したい意向が、高屋敷氏にはあるのではないだろうか。

忍者戦士飛影脚本でも、カイジ脚本でも、「友情」「信頼」に懐疑的なキャラが出て来ており、印象深く描写される。それでも、ジョウ(忍者戦士飛影主人公)もカイジも、人を信じることを止めない傾向にあり、そちらも強調される。
そういった主人公であってほしい、という、高屋敷氏の願いのようなものが込められているように感じる。

めぞん一刻最終回脚本や、あしたのジョー2脚本でも、主人公が、「皆がいるから自分がいる」ことを自覚する。ただ、それがわかるまでの道のりは長く、険しかった事も描かれる。本作の場合、この、高屋敷氏が長年取り組んでいるテーマがどう絡んで来るのだろうか。その点でも、興味は尽きない。