カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

らんま1/2 13話脚本:性別問わず発揮される「男の美学」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

らんま1/2は、高橋留美子原作の格闘ラブコメ。高校生の格闘家・早乙女乱馬は、修行中の事故が原因で、水をかぶると女に、お湯をかぶると男に戻る体質になってしまった。
あらゆる格闘勝負をこなす乱馬は今回、女の姿で九能小太刀と格闘新体操対決をする。

のっけから特徴である、太陽やランプの意味深アップ・間が発生(天やランプは、全てを“見ている”重要キャラ)。
下記画像は今回、ジョー2脚本、元祖天才バカボン演出、ワンナウツ脚本。

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下記画像は今回、RIDEBACKカイジ2期・ジョー2脚本。

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前回、小太刀に隙を突かれて、子ブタのPちゃん(乱馬のライバル・良牙の変身した姿。湯をかけると元に戻る)と鎖で繋がれてしまった女らんまは、苦戦を強いられる。だが、その鎖を回転させ、らんまは様々な攻撃をする。ど根性ガエル演出(出崎哲氏コンテ)と比較。 

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小太刀は男乱馬に惚れているが、目の前にいる女らんまが乱馬と同一人物とは知らない。
更に小太刀は、らんまが男乱馬を好いていると誤解。奇妙な体勢でらんまを煽る。一歩3期脚本・DAYS脚本と比較。 

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小太刀の兄、九能帯刀(女らんまにベタ惚れ)も乱入し、事態はさらにややこしくなる。らんまは「俺と乱馬は一心同体なんだ」と意味深発言をし、誤解は加速。「一心同体」を強調するあたり、ど根性ガエルスタッフだった同氏の思い出が窺える。

互いの実力は拮抗し、試合は白熱する。格闘新体操は、道具を使って攻撃するのがルール。物=魂のあるキャラと捉える高屋敷氏のポリシーとマッチし、道具が生き物のように描写される。
また、実況は、どんな事があっても実況をやめない名実況。ジョー2脚本の実況と比較。 

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そして一旦、試合会場の外の様子が描写される。外からでもマイクで実況の声が聞こえ、これが早口長台詞名調子(特徴)。
驚いたことに、ここで出崎演出的な鳥の描写が出てくる(特徴:長年一緒に仕事した出崎氏の演出持ち込み)。家なき子演出、じゃりん子チエ・カイジ脚本と比較。

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らんまのしぶとさに業を煮やした小太刀は熱湯攻撃をしかける。
らんまは必死に逃げ回るが、ついにお湯をかけられ、一瞬男に戻ってしまう。しかし危機一髪、セコンドのあかね(乱馬の許嫁)がホースで放水し、女の姿を維持。
元祖天才バカボン演出、チエ・カイジ2期脚本と比較。

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らんまの根性により、試合は続行。
同氏の過去作・未来作と画像が似てくる怪現象が多発。脚本は絵を管理できないので毎回不思議。
下記は今回、ジョー2・カイジ脚本。

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下記は今回、カイジ2期脚本。

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下記は今回、ジョー2・一歩3期脚本。

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場面は転じ、リング下で待機する、小太刀の手下達が描写される。ここはアニオリで、モブ達が秀逸(特徴)。
画像は懐中電灯あそび集。今回、カイジ2期脚本、監督作忍者マン一平。 

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モブ達の会話が楽屋ネタ的。あくまで想像だが、下記のように推測(敬称略)。
ひろし:ど根性ガエルから=ど根性ガエル総作監で、らんま監督(途中降板)の芝山努
ミッチ:望月智充(らんま監督)
ジュンコ:アニメーター池田淳子
サチ子:ジョーから=高屋敷英夫
ユッコ:演出家の須田裕美子
松下:松下洋子P

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このモブ達が何故リング下にいるかというと、リングを動かして、小太刀をリングアウトさせないようにするため(特徴:仲間愛)。
リングアウトしそうになった小太刀はこの大技を使うが、らんまにばれて、マットが破壊される。モブ達は退散。ここもモブ描写が秀逸(特徴)。

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足場がなくなって、どちらかがコーナーポストから落ちれば負けの状態に。
熱くなったらんまは、小太刀を蹴落とそうとするが、これは道具を使っていないためルール違反。
画像は、錯乱して反則をしてしまう人達。今回、ジョー2・一歩3期・カイジ2期脚本。 

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そこでらんまは知略(特徴)を使い、小太刀の立っているポストを折る。道具を使ったと認められ、小太刀のリングアウト負けとなる。
死闘を制したらんまは満身創痍に。ジョー2脚本と比較。

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試合に負けたら、男乱馬への想いを絶つ約束だった小太刀は、約束を履行すると言うも、涙を流す。それを見たらんまは、女の子を泣かせてしまった…というような気まずい表情に(特徴:男の美学にこだわる)。 

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試合後、夕陽の間が発生する(特徴)。
下記は今回、家なき子演出、ベルばらコンテ、元祖天才バカボン演出。

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帰宅後、らんまとPちゃんは風呂に入り、男に戻る(特徴:脱衣演出としての裸)。DAYS脚本と比較 。

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夜、池の側に佇む乱馬は、男状態の時に九能帯刀から赤バラを、女状態の時に小太刀から黒バラを託される(特徴:贈り物)。それぞれの異性にあたる乱馬に花を渡してほしいとのこと。迷惑な贈り物ということで、監督作忍者マン一平と比較。 

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小太刀は、今までの乱馬への想いを諦め、新しい乱馬への想いに燃えることにしたのだった(特徴:不屈の精神)。
九能兄弟の想いを乗せ、赤バラ・黒バラの花びらが風に舞うのだった(特徴:自然もキャラと捉える)。めぞん一刻脚本、監督作忍者マン一平と比較。 

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  • まとめ

高屋敷氏のらんま脚本は、これ1回きりなのだが、特徴が満載の上、過去作・未来作とのシンクロ現象が起こりまくる。大分前に視聴済みだったのだが、見る度に戦慄。

特に冒頭の太陽やランプのアップ・間が、演出時代から変わらない特徴で驚く。

この、絵を管理できない「脚本」からでも、過去作・未来作と映像がシンクロしてくる怪現象について自分なりに推測すると、画を想像しやすい脚本なので、シチュエーションが合えば、完成映像が似てくる…ということなのかもしれない。

また、コンテや演出が同氏と縁が深い人達だと、更にシンクロ怪現象が多発する。切っても切れない縁の出崎兄弟や、今回の演出コンテの望月智充監督(もう一人の監督の芝山努氏は多忙のため降板)などは、同氏の好きな表現を熟知している感がある。

ちなみに高屋敷氏監督作の忍者マン一平にて、望月智充氏は演出を1回だけ務めている。
そして、ときめきトゥナイトの望月氏の演出回を見るに、結構出崎演出に影響を受けているように思えた。
そうなると、高屋敷氏と望月氏の想像する画はかなり共通したかもしれない。

あと今回、名演を披露した実況役の井上遥さんは、高屋敷氏監督作の忍者マン一平にて、主役の一平の声を務めている。なんというか、この1話内に色々と高屋敷氏の縁のある人達が集まっているのも奇跡。

話の内容では、高屋敷氏がこだわる「男の美学」が見えてくる。これは性別・容姿・年齢問わず発揮され、めぞん一刻脚本でも、女子高生の八神などが時折男らしさを発揮していた。
演出参加したエースをねらえ!も、出崎統監督のポリシーで、男メンタルの女子が多い。

らんまは女の姿ながら、小太刀を傷つけずに勝利したし、女の子を泣かせてしまった事を申し訳なく思うなど男らしく、それが強調されている。
エースをねらえ!では、男らしい女子キャラに当惑することが多かったが、らんまの体質なら自然に男らしさを発揮できる。

高屋敷氏の持つ「男の世界」「男の美学」はどんな作品に対しても適用されており、めぞん一刻脚本・最終シリーズ構成でも如何なく発揮されていた。
アカギやワンナウツカイジ(シリーズ構成・脚本)は男ばかりの世界なので、さらに相性が良いのかもしれない。

今回はリング上の勝負ということで、ジョー2脚本経験者の高屋敷氏が得意分野を生かせている。
そして今回も、台詞ではなく映像で魅せる脚本になっている。
多発するシンクロ怪現象も、同氏が常に映像を意識した脚本を心がけているからだと、あらためて思えた。

めぞん一刻96話(最終回)脚本:愛ある限り「生きている」一刻館

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、アパート一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。

前回まで:

才能を生かし保育士となった五代は、響子にプロポーズ。少しでもいいから自分より長生きしてほしい、という条件で響子はプロポーズを受ける。

結婚後しばらくは、一刻館の管理人室に住むことにした五代と響子は、荷物の整理をする。その最中、響子は亡き夫・総一郎の遺品を見つめる。ここも高屋敷氏特徴の、意思を持つような物のアップがある。遺品つながりで、ルパン三世3期脚本と比較。  

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響子は、けじめをつけるために遺品を惣一郎の実家(音無家)に返すことにする。その報告をしに、響子は惣一郎の墓に行く。
だがそこには、墓に線香をあげる五代の姿があった。響子はこっそり様子を窺う。

五代は、惣一郎の墓に語りかける。心の中に惣一郎がいる響子を好きになったのだから、「あなたもひっくるめて、響子さんをもらいます」と。
その言葉に胸を打たれた響子は、「この人に出会えたこと、喜んでくれるわよね」と、惣一郎に心で語りかける。

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すると響子に応えるように、惣一郎の墓のアップになり、線香の煙が立ち昇る。高屋敷氏特徴の、「魂をもつもの」の真骨頂。監督作・忍者マン一平でも墓石が生き物のように動く場面がある。風に舞う桜も、特徴が出ている(自然もキャラクター)。

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響子は五代の前に姿を現して五代の手を握り、「あなたに会えて、本当によかった」と言う。
画像は、同氏の大きな特徴である、手から手に想いを伝える場面集。今回、あしたのジョー2脚本、ルパン三世3期脚本、カイジ脚本・シリ構、ワンナウツ脚本。

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桜の花びらが舞い、天に昇っていく。ここも、同氏特徴で、桜や風をキャラクターとして捉えている。
画像は今回、ベルばらコンテ、らんま脚本。 

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結婚式当日、美しい花嫁衣装に身を包んだ響子は、惣一郎の父から「うんと幸せになりなさい」と祝福を受ける。同氏特徴の、優しいおじいさん。
味のあるおじいさんは、同氏作品によく出る。画像は今回、はだしのゲン2脚本、DAYS脚本。

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そして結婚式が始まる。あしたのジョー2にて、高屋敷氏は西と紀ちゃんの結婚回の脚本を担当しているが、それを彷彿とさせる。

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結婚式後、スナック・茶々丸(皆のたまり場)にて二次会が催され、二人に関わった人達が一同に会する。ここも、祝福する人達の温かさに、同氏特徴が出ている(仲間愛・優秀モブ)。画像は今回、あしたのジョー2脚本、カイジ2期脚本。 

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五代は皆に感謝し、「響子と二人で一生懸命生きて行きます」とスピーチする。
ここも同氏テーマの一つである「みんながいるから自分がいる」が出ている。
あしたのジョー2脚本でも、泪橋の皆が自分の心にしっかりといる、と丈が語る場面がある。

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二次会後、響子と五代は、ホテルではなく一刻館に泊まることに。住人達は歓迎。

住人達は口々に「ただいま」と言って一刻館に入り、一刻館に明かりが灯る。ここも、一刻館が魂を持つかのように描写され、特徴が出ている。はだしのゲン2脚本の、子供達を見守る原爆ドームと比較。 

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それから月日は流れ、皆の近況が五代のナレーションで語られる(特徴:ナレも重要キャラ)。
こずえは名古屋で新婚生活。
三鷹夫婦は双子を授かる。
八神は女子大生に。
朱美は茶々丸のマスターから求婚され、同居中。

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そしてまた、桜の季節がやって来て… 

五代と響子の間に娘(春香)が生まれる。生まれたばかりの春香を連れ、五代と響子は「ただいま」と一刻館に帰ってくる。住人達は歓迎し、祝福する。
試練を乗り越えて仲間に歓迎されるカイジ2期最終回と比較。 

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響子は春香に、「お家に帰ってきたのよ。ここはね…パパとママが初めて会った場所なの」と語りかける。
そしてタイトル「めぞん一刻」が真っ白な画面に浮かびあがり、桜の花びらが一枚、舞い降りてくる。花びらが着地したところで「完」。

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  • まとめ

まずサブタイトルの「この愛ある限り!一刻館は永遠に…!!」だが、あしたのジョー2サブタイ法則、「必ず“…”を入れる」を適用している。
これはカイジ2期でも適用されていて、カイジ2期最終回サブタイは「未来は僕らの…」である。

この最終回では全編にわたり「桜」が大活躍しており、ラストシーンまで活躍。自然や物をキャラクターとして扱う高屋敷氏らしさが非常に強く出ている。はだしのゲン2脚本やRIDEBACK脚本と比較。あらゆる事象を「見守っている」迫力がある。 

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また、驚いたのは、まるで生きているような一刻館の描写。
はだしのゲン2脚本の、「子供達を育て、見守る」原爆ドームや、他作品から見るに、この最終シリーズ構成では「一刻館」をキーキャラクターとしているのでは?と私は推察していたが、大当たりだった。

「生き物のような建物」といえば、一刻館のほかに、前述はだしのゲン2脚本の原爆ドームワンナウツ脚本の、イカサマだらけの「トリックスタジアム」、カイジ脚本の「スターサイドホテル」、「カジノビル」などがあり、どれも迫真。

あと、最終シリーズ構成方針として、「男としての五代の成長」も強く描写されていた。
「無邪気で幼い“男の子”から、大人の“男”への豹変」を描写していくのは、高屋敷氏の大きな特徴。画像は豹変集。本作、カイジ脚本・シリ構、DAYS脚本、家なき子演出。

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家なき子最終回演出や、ジョー2最終回、カイジ2期最終回については、「未来に向けての男の旅立ち」が示唆されているが、五代は一刻館に留まる。(子供が生まれたら引っ越す予定だったが、四谷曰く“居着いた”)。
だが五代は、次世代を作るという偉業を成す。

あしたのジョー2脚本にて、丈は“旅に出ても必ず泪橋に帰ってくる”と言っているが、今回脚本では、各キャラが一刻館に「ただいま」と言って帰ってくる。
あしたのジョー2の西夫妻も、本作の五代夫妻も、「皆が帰ってくる場所を作る人達」なのではないだろうか。

そしてサブタイ通り、一刻館は「この愛ある限り永遠に」、生き続ける。
本作のタイトルが、何故「めぞん一刻」なのか…と考えた時、アニメスタッフは「一刻館は生きている」という答えに到ったのではないだろうか。そしてそれは高屋敷氏の得意分野である。

まるで生きているように一刻館に明かりが灯るシーンは、アニメ版めぞん一刻の名場面だと思ったし、非常に高屋敷氏らしさが出ていて戦慄した。 そして今回も「脚本」なのに、桜や建物など「物いわぬもの」の活躍が目立ち、同氏特徴が炸裂していた最終回だった。

火の鳥鳳凰編 脚本(金春氏との共著):人の業を見守る月

高屋敷・金春氏脚本の、火の鳥鳳凰編を見た。共著ということで詳しい特集は見送るが、多分4つくらいのパートに分けて、担当パートを決めて書いているのかな?と感じた。
収穫はなんといってもこれ。
腕を切られた我王と、耳を切ったカイジ(高屋敷氏脚本)の対比。

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他もシンクロや特徴多数だった。

やはり、「魂をもつ物」がクローズアップされていて、鳳凰像に火の鳥が憑依して火事を起こし、茜丸に罰を与える場面に高屋敷氏の特徴が出ている。

ラストも月の意味深アップで、月が人の業を見ている。そこに高屋敷氏の特徴を感じた(特徴:月は重要キャラ)

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「物に魂が宿り、人に罰を与える」については、高屋敷氏演出の元祖天才バカボンにて、ノコギリがパパに罰を与える話がある。その話では、ノコギリがパパの足を切っている。

火の鳥鳳凰編では、茜丸も我王も腕を切られるあたり、共通項を感じる。

彫刻の実力で我王に負けた茜丸が、「我王は悪党だ」と主張して勝敗をひっくりかえす場面は、カイジ(脚本・シリ構)の、対兵藤戦にてカイジが「勝つならこんな悪党よりオレだ」とオカルトに頼ってしまった場面に通じる。

ちなみに我王も兵藤も鼻が醜い。 

結果として我王は残っていた右腕を切られ両腕を失い、茜丸火の鳥に身を焼かれる。

一方カイジは耳を切り、指を切られる。
我王は今までの罪が巡りめぐって腕を、茜丸は闇落ちの罰として命を、カイジは失策によって指を失っている。

もともと火の鳥カイジも「人の業」について着目していて、高屋敷氏がこれらの原作の脚本を書く上で、注目した箇所が共通しているのだろう。

それにしても、火の鳥鳳凰編のラストが「全てを見守る月のアップ」なのがなんとも高屋敷氏の特徴が出ていた。

めぞん一刻93話脚本:二人の心をつなぐ「雪」

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、アパート一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。

前回まで:

様々な誤解・すれ違いが元で、管理人業務を停止し実家にこもった響子だったが、色々なドラマを経て、ようやく一刻館に戻って来た。

冬の朝、響子は惣一郎(犬)と散歩する。

そんな中、響子は五代の真摯な告白を回想する。
並木道や鳥の表現が出崎演出的。脚本でも時々生じる怪現象。エースをねらえ!演出や、

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家なき子演出と比較。この回は吉永監督のコンテ。

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一方五代は、皆に送り出され、大学の卒業試験の結果を見に行く。

結果は合格。五代はその結果を受け、以前バイトしていた保育園を訪ねる。園長は、求人している保育園を紹介してくれる。
また、バイト先のキャバレーの面々は、五代を祝福してくれる(特徴:仲間愛)。

バイト先の面々の祝福と、家なき子演出での皆の祝福との比較。どちらもモブの温かさが印象深い(特徴:優秀モブ)。ちなみにホステス役の一人を、TARAKOさんが演じている。

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色々タイミングが合わず、五代からの連絡を受け取れなかった一刻館の面々は、五代が試験に落ちたのだと思っていたが、帰ってきた五代から直接吉報を聞く。一刻館の面々も祝福の宴を開く(特徴:疑似家族)。そんな中、朱美は、五代と響子の関係がじれったいと言い出す。

朱美は響子に、亡き夫の事が忘れられないのか、と問い詰める。響子は、忘れられないのは事実だと言い、自室に逃げる。

自室にて響子は、震える手で口紅を引き、口紅を取り落とす。物の意味深なアップ・間が同氏特徴的。ルパン演出・ジョー2脚本と比較。

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翌日五代は、紹介された保育園の面接に行く。そこで五代は、同じく面接を受けに来た中本と、その息子に会う。五代は、中本が面接している間、息子の面倒を見てあげる(特徴:義理人情)。
ブランコが出てくるが、同氏担当作品によく出る。エースをねらえ!演出と比較。

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中本は、妻に逃げられて、男手一つで息子を育てていた。それでも中本は、五代が採用されるはずだと言う。

人生の苦渋を舐めた中年と、未来を掴もうとする青年との出会いは、よく同氏作品に出る。カイジ(シリーズ構成・脚本)と比較。 

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五代は複雑な思いで帰路につく。途中、雨が降ってきて、そしてどしゃ降りとなる(特徴:天もキャラクターとして扱う)。
駅に着くと、響子が傘を持って待ってくれていた。
ジョー2脚本の、丈を待つ葉子と比較。葉子の場合、丈に会えないが。 
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五代は響子に、面接で出会った中本の話をする。そんな折、面接結果の電話がかかってくる。結果は、五代が不合格、中本が採用だった。
五代は複雑な心境ながらも、どこかホッとする。五代はそんな思いを、響子に話す。ポットのアップが同氏特徴的。XMEN脚本と比較。 
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五代と響子は話し込み、響子の亡き夫・惣一郎の話をする。響子は、自分の中から惣一郎を消すことはできないかもしれない、惣一郎と過ごした日々は幸せだった…と語る。
五代は、同じ幸せはあげられないけど、自分なりのやり方で、違う幸せを響子にあげたい、と言う。

響子は、そんな五代の手を握り、同じものが欲しいなんて思っていない、と言う。
手から手へ想いを伝える描写も、同氏作品によく出てくる。挙げればキリがないが、ワンナウツ脚本と比較。 

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そこへ、朱美から電話がかかってくる。スナック・茶々丸(皆のたまり場)で一刻館の皆と飲んでいるので来ないか、という要件だった。また、朱美は素直に、昨晩の事を謝った。
外を見ると雪が降っており、五代と響子は感嘆する(特徴:天もキャラ)。家なき子演出と比較。

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響子は惣一郎(犬)のことを口走る。単にご飯がまだだった事を思い出しただけだが、一瞬五代は、響子の亡き夫の方の惣一郎と勘違い。響子は「犬の事ですよ」と言い、二人は可笑しくなって笑い合う。ジョー2脚本で、丈と葉子が無邪気に笑い合う場面を彷彿とさせる。

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五代は素直に、惣一郎と響子の事を考えると不安になると吐露する。
五代の不安な心を、窓が映す。特徴の、真実や状況を映す鏡演出。ジョー2脚本と比較。ジョー2では、金竜飛の不安な心を、鏡が映し出している。五代も金竜飛も、映し出された真実に目線が行っていない。 

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響子も響子で、「どうしていいかわからない」と不安を吐露する。五代は響子を優しく抱擁し、響子も、応えるようにその手に触れる。二人は自然にキスし、部屋の灯りはいつしか消える。
ベルばらコンテと比較。どちらも天(雪や風)がキャラクターとして二人をアシスト。 

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窓の灯りでの情感の表現を、家なき子演出(下記画像中段)と比較。家なき子では、家の中の温かさを表現。
今回(下記画像上段)は、家の中での二人の恋愛を表現。
原作では事後シーンがあるがカットされている。
ベルばらコンテ(下記画像最下段)では、恋愛描写をイメージとして処理している。

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翌朝、上機嫌な響子を見て、朱美は五代と響子の仲の進展を察する。原作では、より直接的な台詞があるがカット。

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一方五代は、以前バイトしていた保育園の園長が、ぎっくり腰で入院したと聞き、お見舞いに行く。園長は、保育園の男手が不足しているため、五代を本採用したいと告げる。 

ここでも、花のアップ・間があり、同氏特徴が出ている(物もキャラとして扱う)。ルパン三世2nd演出と比較。

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五代の就職が決まったことを電話で聞いた響子や一刻館の皆は喜ぶ。五代はそのままプロポーズしようとするが、公衆電話の硬貨が切れてしまうのだった。

  • まとめ

今回印象深いのは、ゲストキャラであるシングルファーザー、中本の存在。声も大塚芳忠氏で、個性的。モブや地味キャラに個性を持たせる所に、高屋敷氏の個性が出ている。
また、天候や電話など「人ではないもの」が重要な役割を担っている所にも特徴が出ている。

特に天候の移り変わりは重要で、冬晴れの早朝、曇天、雨、雪、冬の快晴、と心情や状況と連動する作りになっている。

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天候を味方につけるといえば、蒼天航路1話脚本や、ワンナウツ脚本が思い出される。
台詞よりも視覚情報優先なのも、同氏特徴。

脚本なのに演出時代とやっていることが一緒・または過去・未来作と映像が似てくる怪現象についてだが、脚本段階で、映像であるところの「アニメ」をよく意識した脚本だからかもしれない…と推測している。
それくらい、同氏作品は視覚情報に訴えることが多い。

これは、同氏の師匠かつ長年一緒に仕事した出崎統氏による所が大きいかもしれない。出崎統氏は、コンテ段階で脚本を大幅に変えたり削除したりする事で有名だが、それは、「映像でわかること」に余計な情報を付加しない、というこだわりの表れでもある。

そんな出崎統氏と長年一緒に仕事した高屋敷氏なので、演出でも脚本でも、視覚情報に大きく比重を置いているのかもしれない。
今回「雪」は五代と響子が結ばれる場を盛り上げる大きな役割を担っている。
ただ、視覚的情緒に拘ったため、響子の告白はカットされた。

カットされたのは、

「ずっと前から五代さんの事好きだったの」

「ずっと前っていつから?」

「忘れちゃった!」

という、響子と五代のやりとり。事後という事情もあるだろうが、じゃあどこに入れるか?というと難しい。それくらい、「雪の情緒」を優先している。

朱美の「下半身に張りがある」もカットされたが、朱美の表情一つで、五代と響子に何があったかわかる作りになっている。これもアニメならではの表現。

脚本といえば、台詞や構成に目が行きがちだが、高屋敷氏の脚本は、映像に個性が出る。これが毎回面白い。

あと、同氏の最終シリーズ構成としての方針も最終段階に入っている。いつもは幼く無邪気な五代だが、「違う幸せをあげたい」と響子に語る場面では、大人の顔になっている(特徴:豹変)。青年の成長を、人・天・物が見守っているという、同氏の方針を感じさせる回だった。

めぞん一刻92話脚本:素直な心でぶつかれ

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

 めぞん一刻は、アパート一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。

前回まで:
五代がこずえ(五代の女友達)にプロポーズしたと誤解した響子は実家にこもるが、後に誤解は解ける。響子は一刻館に戻ることにするが、そんな折、こずえと偶然会い…

こずえから、五代と朱美(一刻館住人)がホテルから出て来た所を見たと聞いた響子はショックを受ける(実際は、朱美とその彼氏とのホテル代を立て替えてくれと呼び出されただけ)。

真偽を確かめるため、響子は朱美の勤務先のスナックを訪ねる。

朱美は、五代とホテルから出てきたのは本当だ、と紛らわしい答え方をする。それを聞いた響子は固まってしまう。
朱美と響子の会話の間、高屋敷氏特徴である、無機物のアップ・間が続く(物や自然をキャラとして捉える)。画像は今回と、ジョー2・カイジ2期脚本。

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そこへ、朱美から電話で呼び出された五代と一ノ瀬(一刻館住人)がやって来る。朱美から事態を聞いた五代は、朱美とは何も無かったと必死に弁明する。だが響子は五代を激しく罵倒。五代は堪らず手を上げそうになるが、ポンと頬に手を置く程度に留める。

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五代はいつになく真剣な表情で(特徴:豹変)、「話くらい聞いてください」と言う。

響子は涙を流しながら「嫌いよ」と言い、出ていこうとする。
状況は全然違うが、頬をさするなど一連の場面がカイジ2期脚本とオーバーラップ。

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出て行こうとする響子を、朱美が制止する。朱美曰く「ろくに手も握らせない男のことで、泣くわ喚くわどうなってんの」「あんたみたいな面倒くさい女から男取るほど、あたし物好きじゃないわよ。バカ」。

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ここは原作もアニメも名場面・名台詞。

それでも響子は出ていく。

朱美は五代に、(響子が忘れていった)コートを届けてやれ、と言って背中を押す。一連の煽りも、朱美なりの世話の焼き方だった(特徴:義理人情)。
そして、やけくそで走る響子を制止するように風が吹く(特徴:自然もキャラクター)。画像は今回と、ベルばらコンテ。 

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五代は響子に追い付き、コートをかけてやる(特徴:優しい手つき)。ゲン2脚本と比較。

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五代は、二人で話をしようと、響子を公園に連れ出す。ここも、特徴であるランプのアップ・間が発生。ワンナウツ脚本と比較。

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五代は響子に、好きだと真摯に言う。そして「僕の目の中にはあなたしかいないんです」と訴えかける。“「目」の中に”を強調し、目を別個の生命体と捉える所に高屋敷氏らしさが出ている。実際、監督作の忍者マン一平は、目玉が別個の生命体。

五代の真摯な告白を受けた後、響子は一人、一刻館の自室(管理人室)に帰る。響子は、「もっと素直になりたいのに」と呟き、暗い部屋に佇む。鏡が響子を映す(特徴)。画像は、真実や状況を映す鏡演出集。今回、ジョー2脚本、元祖天才バカボン演出、じゃりん子チエ脚本。 

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一方こずえは、偶然会った四谷(一刻館住人)から、ホテルの件は完全な誤解だと知らされる。

こずえは五代のバイト先を訪ね、誤解が解けた事を告げる。だが五代は、好きな人(響子)がいるから、あらためて、こずえとの曖昧な関係を絶とうと決心する。

話をしに外に出た五代とこずえは、月がきれいだという話をする。月や太陽=重要キャラであり、全事象を見ているという、高屋敷氏の特徴が出ている。ジョー2脚本と比較。ジョー2の場合は強烈で、自分はパンチドランカーではないと嘘をつく丈を、太陽がじっと見ている。 

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五代は意を決して、好きな人がいるから、これ以上付き合えないことを告げる。一方こずえは、それを聞いて「ホッとしちゃった」と意外な返答をする。こずえはこずえで、別の男性と結婚することを、五代に告げに来たのだった。こずえと五代は「おあいこ」だと言い別れる。

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こずえは、「好きな人ってどんな人?」と五代に尋ねるが、「やっぱり、いい」と笑顔で去る。

帰りの電車の中で五代は、「俺の好きな人は、ヤキモチ焼きで、早とちりで、泣いたり怒ったりだけど…その人が笑うと、俺、最高に幸せなんだ」と響子の事を想うのだった。

本当に響子が好きだと言う五代の想いを、電車の窓が映す。ここも、特徴の「真実や状況を映す鏡演出」。
画像は今回、カイジ1・2期シリ構・脚本、ど根性ガエル演出。どれも「己や現実と向き合う」場面。

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  • まとめ

原作では五代と響子のベッドシーン(そして失敗)があった回。アニメではベッドシーンが無くなり、五代の真っ直ぐな告白を受けた響子が、自分も素直にならなければ、と一人呟く場面が強調された。これは賛否あれど非常に高屋敷氏らしい展開と感じた。男の純粋さ(特徴)を描いている。

響子が呟く「もっと素直になりたいのに。もっと素直に…」は、以前、ゆかり婆ちゃん(五代の祖母)が五代に助言した「人間、素直が一番」を受けたものと思われる。この言葉が出た回も、高屋敷氏脚本回。婆ちゃんの出番が原作より多いのも、高屋敷氏的(特徴:お年寄りに優しい)。

また、原作の「あなたしか抱きたくないんです」がカットされ、「僕の目の中にはあなたしかいないんです」が強調された。
放映時間を考慮したのだろうが、前述の通り、「目」を別の生命体と捉えている、非常に高屋敷氏らしいものになっている。

このように、最終シリーズ構成として、高屋敷氏が「男の純粋さや成長」を描くことにこだわっている姿勢が見えてくる。
前にも書いたが、深夜帯だったとしても、ベッドシーンがあったかどうか怪しい(特徴:男の純潔を守る)。それくらいのこだわりが感じられる。

特徴である「真実や状況を映す鏡演出」も活躍している。演出を多数担当したエースをねらえ!でも、ひろみが鏡に映った自分によく語りかけていた。そこらへんや、デビューまわりのジョー1脚本がルーツと思われる。
ベッドシーンの替わりに鏡が活躍したのも面白い。

一方で朱美の格好よさや、四谷の心遣いが染みる話にもなっていて、同氏が押し出したい義理人情や疑似家族愛なども見える。
そして、「人を信じられるかどうか」という問題にも切り込んでいる。その回答が、「純粋で、素直でいるべき」なのかもしれない。

思えば、カイジ1期で「俺はお前らを信じる。お前らも俺を信じろ」とカイジが言う回も高屋敷氏直接脚本であり、その直前の場面も鏡が活躍している。
その後カイジは、どんなに裏切られても信じることは止めない傾向にあり、それを有効利用して利根川を討っている。

そう思うと、恋愛でも、その他でも、真っ直ぐ素直な気持ちで当たれ、というメッセージが感じられる。鏡は、それを手助けするキャラクターとも取れる。
今回は原作と大きく異なる要素があり、最終シリーズ構成としての、同氏のテーマが一層濃くなった回だった。

めぞん一刻91話脚本:物語を盛り立てる「キャラクター」としての煙草や木の葉

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、アパート一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。

前回まで:

五代がこずえ(五代のガールフレンド)にプロポーズしたと勘違いした響子は、管理人業務を放棄し実家にこもってしまう。五代は何度も説得に行くが響子は戻らず…

響子の父のお節介もあり、一刻館オーナー(響子の亡き夫の父)は管理人代行を五代に依頼。代行者が五代であることを知らない響子は、代行者が決まったことに狼狽する。このあたりで、高屋敷氏特徴である無機物のアップが続き、物がキャラとして活躍している。

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心配になった響子は一刻館を覗きに行く。だが入りづらく、まずスナック茶々丸(一刻館住人のたまり場で、住人・朱美の勤務先)に立ち寄る。だがそこには、五代を除く一刻館住人が先客として来ていた。四谷(一刻館住人)がその場をとりなし、響子を着席させる。

茶々丸のマスターは、絶妙なタイミングで響子にコーヒーを出してくれる。ここもコーヒーのアップが入り、特徴的。また、同氏ポリシー「相手の事を考えた贈り物」が見える。ジョー2脚本にて、サチ子が葉子にカイロをくれる場面と比較。

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朱美は響子に、逃げ続けていると五代とこずえが接近するかも、とか、(朱美自身が)五代を誘惑するかも、と響子を煽る。五代とやっちゃうよ、とも言う。ここの朱美の、煙草演出が渋い。煙草をキャラとして扱う、同氏特徴が出ている。カイジ・DAYS脚本と比較。

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響子は意地をはり、「そうなったらそれまで」だと言い、茶々丸を出ていく。
響子が出て行ったあと朱美は、「あれくらい言わなきゃ戻ってこない」「厄介な女」と言う。「厄介な女」と言う所で煙草の吸い殻のアップになる所に、同氏特徴が出ている。 

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響子は朱美の言葉を気にしつつも、一刻館に向かう。響子がこっそり一刻館を覗くと、五代が管理人代行を四苦八苦しながらやっていた。
五代のレアな管理人姿と、チエちゃん奮戦記脚本の、労働するテツのレアなエプロン姿が被る(奮戦記は、めぞん一刻の後年)。

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管理人代行が五代だとわかった響子は安堵し、立ち去る。

その夜、バイト中の五代に朱美から電話がかかってくる。朱美から指定された場所に行くと、そこはラブホテルだった。酔って寝ているうちに男が帰ってしまったので、ホテル代を立て替えて欲しい、という用件だった。

用件を済ませてラブホテルから出てきた五代と朱美は、こずえと、その友達にバッタリ会う。こずえはショックを受けるも、他人のフリをしてその場を去る。
翌日、五代はそれを気に病みながら一刻館の掃除をする。葉っぱの意味深アップが同氏特徴的。 

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こずえと決着がついたのだから感謝しろ、と朱美から言われるも、五代は別れ方がマズイと思い、こずえに電話をかける。しかし、電話を切られる。

朱美と一之瀬(一刻館住人)は、こずえの胸の中で自分がキレイなままでいたいと思うのは虫がよすぎる、と五代を非難する。

一之瀬は響子の実家を訪ね、こずえと五代は完全に別れたと報告。また、五代がこずえにプロポーズしたというのも響子の完全なる誤解だと説明する。ここも、一之瀬の喫煙仕草が渋く、特徴が出ている。

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一之瀬の説得を受け、響子は一刻館に戻ることにする。

一之瀬は、一刻館の皆に響子が戻ってくると報告し、五代達は喜ぶ。五代は皆にいいようにからかわれるが、宴は盛り上がる。皆の様子が和やかで疑似家族的(特徴)。翌朝、賢太郎(一之瀬の息子)と五代は響子が戻ってくる事を楽しみにする。五代の喜び方が幼い(特徴)。

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一刻館に向かう響子は、偶然こずえと会う。踏切の雑踏の中邂逅する二人が、横断歩道で邂逅するカイジと遠藤さんに被る(カイジ2期1話脚本)。しかもカイジ2期はアニオリ。同氏の好きなシチュエーションかも。ちなみに踏切演出は、同氏師匠の出崎統氏がよく使う。 

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こずえと響子は、喫茶店に入る。こずえは、五代に好きな人がいた、と響子に話す。響子は、五代が自分の事をこずえに話したのだと思い込み、そのまま会話が進む。だがこずえの言う「五代が好きな人」とは、朱美の事だった。ソーダや手のアップが、同氏特徴的。 

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更にこずえは、朱美と五代がホテルから出てくる所を見たと言ってしまう。
その頃、一刻館の皆は響子を待ちわびていた。風で舞う木の葉が、今後の波乱を告げる(特徴)。画像は、今回、ベルばらコンテ、監督作忍者マン一平、らんま脚本。葉や風をキャラとして扱っている。

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  • まとめ

今回は朱美がかっこいい役回り(次回は更にかっこいい)。アニメでそれを際立たせているのは、高屋敷氏特徴でもある煙草演出。勿論、作画や演出も半端ない。めぞん一刻の他の同氏脚本回でも、煙草演出が原作より色濃く、煙草がキャラとして様々な活躍をしている。

また、木の葉も今回活躍している。
こずえに誤解された翌朝、五代が一刻館玄関にて木の葉を掃除しているが、木の葉の意味深なアップが、「関係の清算」を示唆しているし、ラストも、舞い上がる木の葉が波乱を予告する。五代も、それに気付くような表情をする。

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この段階になると、ライバルの三鷹は見合い相手の明日菜とくっついて退場しており、残るは、こずえとの決着を残すのみとなる。そして朱美が色々、手荒いが五代や響子に恋のアシストをしてくれる。朱美や一之瀬、四谷の仲間愛が染みる感じに、同氏特徴が出ている。

驚いたのは、この段階になっても五代に幼さが残っていること。特に、「ブーン」と飛行機の真似をする五代が幼すぎる。同氏が演出や脚本を手がけた、元祖天才バカボンぽくもある。最終シリーズ構成として、男の成長を描きつつ、幼さも残したい同氏の意向が見える。

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序盤や中盤に、男の幼さ・可愛さ(容姿年齢問わず)を描き、クライマックスでガラッと成長する姿を見せ、それでもなお、ラストで幼さを残すという扱い方が、同氏の演出・脚本・構成には多い。カイジ2期でも、あれだけ覚醒したカイジが、ラストシーンでは幼い。

同氏家なき子最終回演出も、「男はいつか一人で生きていくもの」と、男の顔に豹変したレミが、ラストではマチヤと無邪気にジャンケンしている。
思うに、成長してほしい所とは別に、「変わらないでいてほしいもの」としての幼さは残しているのではないだろうか。

めぞん一刻のアニメ化で難航したのは、20歳前後の五代の恋にまつわる、性的描写。時間帯的にも、五代が性風俗店に行ってしまう描写はアニメではカットされたが、高屋敷氏が代わりに描写したのは、酔った五代と坂本(五代の親友)の、無邪気で仲睦まじい姿。

また、カイジ2期1話脚本においても、カイジの「売春」発言をカットした。賛否分かれるとは思うが、同氏は男の純潔を守る傾向がある。アニメ版めぞん一刻の議論の一つである、ベッドシーンのカットも、放送コードとは別に、高屋敷氏らしさが出ている。

深夜帯のカイジでも男の純潔を守ったということは、もし、めぞん一刻が深夜アニメだったとしても、ベッドシーンがあったかどうか怪しい。今回ラブホテル描写があったが、五代には弟的可愛さがあった。この終盤に来て、同氏の描く「男の幼さ」が興味深い回だった。

めぞん一刻86話脚本:人生の岐路に立つ「男」の物語

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、アパート一刻館管理人で未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。

前回:
保父を目指す五代は卒業試験を控えていたが、ライバル・三鷹と対峙。だが成り行きで、二人で酒を飲みまくる結果に。駅で待ち構えていた響子は、そんな五代を殴る。

五代をビンタした響子は、雨の中、自分の感情をぶつける。何がどうあれ、自分で決めたことを一生懸命やることが(五代にとって)一番いいことだと思っていた、真面目に自分の将来を考えろ、と言って走り去る。

自分の決めた道に生きよ…は高屋敷氏の取り扱うテーマの一つ。

雨の中の響子の感情的な台詞は、相当なクライマックス。
雨の中の熱いドラマも、高屋敷氏の作品に多く、雨自体をキャラクターとして扱っている(特徴)。
画像は、今回、ジョー2脚本、ワンナウツ脚本。ジョー2の「See you again」は有名な場面。

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響子が走り去ったあとに残された傘の意味深アップも、同氏の大きな特徴。こちらも、物をキャラクターと捉えている。
挙げればキリがないが、ワンナウツ脚本と比較。

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一方三鷹は、五代と酒を飲んだせいで泥酔し、自宅前で潰れていた。そこには、結納について確認するため、三鷹宅に来た明日菜もいた。

明日菜は、三鷹響子への想いを知り、結納をやめようと提案。涙ながらに走り去るも、愛犬のサラダを置いてきた事に気付き戻る。

明日菜が三鷹の所に戻ると、三鷹が玄関で寝入ってしまっていた。介抱しようとした明日菜は転び、はずみで三鷹とキスしてしまう。一方、サラダと、三鷹の愛犬・マッケンローにもフラグが発生。この犬達の描写が、家なき子演出における犬達を彷彿とさせる。 

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翌朝、明日菜は密かに三鷹宅を出る。
目覚めた三鷹は、朝食が用意されていることに気付く(特徴・飯テロ)。また、その事を知らせるかのように、炊飯器が鳴る。ここも、炊飯器をキャラとして扱っている。ジョー2脚本の、感情に連動する錘と比較。

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その頃五代は、一刻館住人に送り出され、卒業試験に挑む。一刻館の皆は、響子が五代を思いきりビンタした事を響子から聞き、五代の卒業試験は失敗するかもしれない、と諦めの境地に。響子と一刻館の皆のやりとりが疑似家族的で、アットホーム(特徴)。

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試験後、五代は一刻館には帰らず、子守り係のバイトをしているキャバレーに行く。子供達と戯れる五代が幼く可愛い(特徴)。また、感情を隠すお面のアップが意味深なのも特徴。響子の言葉を胸に刻み、五代は、卒業して保父になる事をあらためて決意する。 

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翌日、一刻館に帰った五代だが、試験中はキャバレーに泊まると宣言。上京中の五代の祖母・ゆかりは、そんな五代に「人間、素直が一番」「無理はするな」とアドバイスを贈る(特徴:優しいお年寄り)。DAYS脚本でも、水樹の祖父が人生について助言する場面がある。

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一方三鷹は、明日菜宅を訪ねるが、明日菜は伊豆の別荘にこもっていると知らされる。置き手紙には、結納を延期したいとの旨が書かれていた。カイジ脚本の置き手紙と比較。

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三鷹は、明日菜の運転手から、明日菜は優しい人だと諭される(特徴:優しいおじさん)。

五代の方は、キャバレーにてバイト先の先輩・飯岡と話し込む。五代は、誰かのために将来を決めるのではなく、自分自身のために将来を決める決意を語る。「一人でやることができなければ、他人を支えられそうにもない」との弁。ここも高屋敷氏の扱うテーマが感じられる。

そんな五代に飯岡は、「男と女は、追いかけた方が負け」「追いかけて来なかったら、全速力で駆け戻って土下座」とアドバイス(特徴:年上男性の助言)。

その頃三鷹はまさに、明日菜を追いかけて伊豆に来ていた。ぼっちの所に誰かが来る、ぼっち救済の特徴も出ている。

明日菜は三鷹に、あの夜あったことは、女として忘れることはできないが、それで結婚を迫ったりしないし、ここまで来てくれた事で充分だと言う。
カイジ脚本でも、理由は大分違うが、カイジがおっちゃんを北海道まで追いかけて来てくれる。 

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そして五代は、バイト仲間に見守られるなか、勉強疲れで眠りこけていた。寝顔が幼く可愛い(特徴)。カイジ脚本と比較。ちなみに五代の声=カイジのおっちゃん(坂崎)なので笑う。

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五代は決意こそ立派なものの、寝言で「響子さん」と呟くのだった。

  • まとめ

今回は、人生に対する数々の言葉が出る。響子の叱咤(自身の問題を真面目に考えろ)、ゆかり婆ちゃんの助言(素直が一番、無理はいけない)、五代の決意(一人でできなければ誰かを支えることができない)等。どれも高屋敷氏の出したいテーマが感じられる。

特に、一人でできなければ誰かを支えることができない、という五代の言葉は、同氏演出の家なき子最終回を思い出す。レミも、「男はいつか一人で生きていくもの。誰にも頼らず自分の力で精一杯生きていく」という、ビタリスの教えを噛みしめ、大人になっていく。

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レミも五代も、人生の岐路にあり、自分の道を自分で決めようという境地に到る。カイジ脚本でも、人生の岐路に立ったとき、進む道を自分で決めなかった事をカイジが激しく悔やみ泣く場面がある。そんなカイジもまた、物語の中で成長し、自分自身で決断し歩むようになる。

忍者戦士飛影脚本においても、自分で決めたなら自分自身の道を歩め、というメッセージをロミナやジョウの父の台詞に込めている。特にジョウの父の台詞(次回予告台詞)は、非常にメッセージ性が高い。
めぞん一刻でも、このテーマが出てきた事に驚いた。

見ているうちに予想した通り、最終シリーズ構成方針としての、「男の生きざま」「青年から(誰かを支えることのできる)男への成長」が顔を出している。これは原作と大分異なる男臭さで、ジョー2脚本や家なき子演出に見られるような世界が展開されている。

カイジやアカギ(脚本・シリ構)でも、人生に関する箴言が数々出てくるわけだが、今回のめぞん一刻箴言ラッシュ。こんな所に共通点があるとは思わなかった。あと、明日菜の運転手役として、立木文彦氏(カイジのナレ)が名演技を見せているのも、縁を感じる。

今回は、めぞん一刻における高屋敷氏の最終シリーズ構成方針が、一気に噴出した感じだ(予兆は色濃かった)。
原作に忠実でありながら、女性である高橋留美子先生の原作に、こうまで男の世界や高屋敷氏のポリシーを上乗せしてきたことに驚かされた回だった。