カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

空手バカ一代42話演出・コンテ:時を越える個性

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在の空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を極めるために、国内外の強敵と対戦する姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が小森静男氏、演出・コンテが高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

舞台はフランス。格闘をショー扱いする、ブラッド・ジョー(格闘マニアの大富豪)やカイザー(プロレス興行師)に飛鳥は怒り、彼等と袂を分かつ。が、彼等は飛鳥に、命がけの「地下プロレス」の存在を明かす。
地下プロレスの帝王・ロゴスキーの強さを目の当たりにした飛鳥は、彼との対戦を決意。かくして死闘は始まった…。

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ブラッド・ジョーとカイザーが飛鳥を地下プロレスに案内する場面にて、警備員が懐中電灯を照らすが、懐中電灯ネタは高屋敷氏の作品によく出てくる。らんま・チエちゃん奮戦記・カイジ2期脚本と比較。

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地下プロレスは、逃げようとした者は殺されてしまう掟がある。その掟に則って、レスラーが殺されてしまうのを、飛鳥は目撃。なんとなく、カイジ(シリーズ構成・脚本)の、エスポワールにおける犠牲者と被る。

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レスラーが殺されてしまう場面では、高屋敷氏の特徴であるランプのアップ・間がある。
画像は不吉なランプや灯。今回、ベルサイユのばらコンテ、アカギ脚本、RIDEBACK脚本。

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命を賭けた地下プロレスは、暇をもて余した金持ち達に大人気。これもカイジ(シリーズ構成・脚本)の、人間の生死を楽しむ金持ち達と重なっていく。

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地下プロレスの帝王・ロゴスキーのイメージ映像で、鳥が出てくる。長年一緒に仕事した出崎兄弟ゆずりの鳥演出。家なき子演出、めぞん一刻・太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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ロゴスキーの試合場面では、高屋敷氏の特徴であるランプ演出が入りまくり、かつまた、同氏の他の担当作と、どんどん絵面が似てくる。絵を管理できない「脚本」でもそうなるのが、毎回不思議。
らんま・じゃりン子チエあしたのジョー2「脚本」と比較。

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さらに、同氏の他作品とのシンクロは続く。じゃりン子チエ脚本、元祖天才バカボン演出と比較。高屋敷氏と縁の深い出崎哲氏は、よく回転作画を使うが、高屋敷氏も、よく使う。何故か脚本でも、回転場面は多い。

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飛鳥がロゴスキーとの対戦を決意する場面でも、高屋敷氏のランプ演出が炸裂。当時の技術の限界で、ランプの自己主張が激しい。
あしたのジョー2・らんま・はじめの一歩3期脚本と比較。

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地下プロレスには、饒舌なリングアナがいるが、高屋敷氏の作品には、早口で饒舌な実況者やアナウンサーはつきもの。らんま・カイジ・1980年版鉄腕アトム脚本と比較。

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飛鳥とロゴスキーが対峙する場面が、カイジ2期「脚本」とシンクロを起こしている。こういった奇跡的偶然が起こり続けるのも怪。

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月または太陽が「見守る」演出が、今回も出てくる。ワンナウツ脚本と比較。どちらも、懸命にトレーニングする姿を、月や太陽が「見ている」。

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ロゴスキーに殺されかける悪夢にうなされ、飛鳥がシャワーを浴びる場面があるのだが、あしたのジョー1の、高屋敷氏脚本疑惑回(無記名)にて、丈を恐れるウルフ金串がシャワーを浴びる、似たような場面がある。そのため、疑惑が強まる。確定はできないものの、高屋敷氏の記憶に深く残る回であったのは確か。

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いよいよ飛鳥とロゴスキーが対戦する場面が、らんま脚本やカイジ2期脚本とシンクロを起こしている。これも奇跡的。

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  • まとめ

リング上での戦いということで、あしたのジョー2・らんま・はじめの一歩3期「脚本」とのシンクロが多い。とにかく不思議なのは、この「脚本」から出力された画が、似てくるということ。

何回か書いているが、奇跡とか怪現象で片付けずに、原因を考えてみると、画を想像しやすい脚本のため、コンテ師が出力する画が似てくるのではないか…と考えている。それでも不思議な現象で、面白いところ。

あと、他の高屋敷氏担当回と同じく、今回もナレーションが多用される。ナレーション多用は、ワンナウツやアカギ、カイジのシリーズ構成・脚本が代表格。ナレーターを重要キャラと捉える高屋敷氏の姿勢が、この時代から強く出ている。

そして、36話演出に続き明らかになった、ランプ演出の強調。

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当時の技術の限界のおかげで、ランプを強調したいという高屋敷氏の意志が明確になり、考察する上では大収穫である。

また、話全体から醸し出される個性のせいか、今回、「カイジみたい」というネットの意見が見られた。これも運命的。

家なき子(高屋敷氏演出参加)の炭鉱編も、「カイジ地下編みたい」というネットの意見が非常に多かった。
シチュエーション、強調したい箇所、テーマ、好みなどが総合されて画面に出力されると、それが、高屋敷氏の過去・未来作と重なっていき、特に意識しなくても、「(高屋敷氏の他の担当作と)似ている」と感じるように出来ているのだろう。

高屋敷氏は、主張したいところは絶対に譲らない、固い意志があるのではないか?と感じることがある。統一性を犠牲にしてでも、個性が突出していることが多々あり、今回も、ランプの激しい自己主張に、それが出ている。

私が興味を持ったのも、高屋敷氏の持つ強烈な「個性」。今回のランプの自己主張は、それを思い出させてくれた。

また、激しい競争を生き抜くには、それくらいの「個性」がなければならないのかもしれない。

空手バカ一代40話演出:雨が見守る死闘

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在の空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を極めるために、国内外の強敵と対戦する姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が吉原幸栄氏、コンテが出崎統氏・演出が高屋敷英夫氏。

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以前書いたが、本作は監督を「演出」、各話演出を「演出助手」とクレジットしているので、本作の演出助手=各話演出とする。実際の内容も、各話演出助手でかなり個性が違う。クラシック作品においての演出(現場監督のような立場)は、なぜか個性のばらつきが激しいのも興味深いところ。

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  • 今回の話:

格闘マニアの大富豪・ブラッド・ジョーに招かれ、飛鳥はフランスに赴く。
当地にて飛鳥は、フランスの伝統的格闘技・サファーデ(サバット)の達人・ボーモンと決闘することに。2時間を超える死闘の末、飛鳥はボーモンを空中3段蹴りで倒すのだった。

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冒頭にて、水溜まりに映るエッフェル塔と、葉の意味深な「間」がある。この「間」は高屋敷氏の特徴で、脚本作でも出る。出崎統氏の凝ったコンテと、高屋敷氏の、「物や自然が“語る”」演出が融合。画像は、高屋敷氏の「葉が語る」場面集。今回、MASTERキートンめぞん一刻脚本、エースをねらえ!演出。

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また、頻出の太陽のアップ・間が、今回も出る。当時の技術の限界で、太陽が異様に目立っている。そのおかげで、「太陽を出したい」という意志を明確に感じ取れる。らんま脚本、元祖天才バカボン演出、MASTERキートン脚本と比較。後年の脚本作になると、意味や迫力が増す。

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飛鳥がブラッド・ジョーと対面する場面では、両者が固い握手を交わす。握手などの、手を使ったコミュニケーションは、高屋敷氏の作品によく出る。今回の場合、ブラッド・ジョーの一方的な思いを描いている。
画像は握手集。今回、忍者戦士飛影あしたのジョー2・ルパン三世2nd脚本。

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ブラッド・ジョーと飛鳥が話す場面では、ブラッド・ジョーが葉巻をくゆらす。印象的な喫煙描写も、高屋敷氏の作品ではおなじみ。キリが無いので、カイジ2期脚本と比較。

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ブラッド・ジョーは飛鳥に、自分のスクラップ・ブックを見せるが、こういった新聞記事ネタや紙ネタも、高屋敷氏の特徴のひとつ。アカギ・チエちゃん奮戦記脚本、監督作忍者マン一平と比較。

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あと、はだしのゲン2脚本に、「元新聞記者」の老人が出てくるのが気になる。もしかしたら、高屋敷氏が好きな職業なのかもしれない?

飛鳥とブラッド・ジョーが、柔道の道場へ車で向かう場面では、出崎統氏コンテの定番の構図(橋+乗り物)が出る。影響下にある高屋敷氏も、これを使うが、やはり高屋敷氏の驚異的なところは、「脚本」からでも、似た絵面が出力されるところ。ベルサイユのばらコンテ、ルパン三世2nd演出、忍者戦士飛影脚本と比較。他も多数(脚本作含む)。

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ちょっとした小ネタだが、柔道の道場にて、コーチが笛を吹く場面が他作品とシンクロを起こしている。エースをねらえ!演出、カイジ2期脚本と比較。

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フランスでは、空手が殆ど知られていない事が判明し、飛鳥が落ち込む場面では、出崎統氏コンテでおなじみの、屋上演出が見られる。これも、高屋敷氏は「脚本」からでも出すことが何故かできる。チエちゃん奮戦記脚本、あしたのジョー2脚本と比較。あしたのジョー2は、出崎統氏のコンテだが。

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飛鳥が、サファーデの達人・ボーモンとの決闘に向かう場面では、高屋敷氏の大きな特徴である、ランプ演出が出てくる。めぞん一刻カイジ2期「脚本」と比較。

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同じく大きな特徴である、像の意味深な「間」が出る。ベルサイユのばらコンテ、ルパン三世2nd演出、じゃりン子チエカイジ脚本と比較。

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飛鳥とボーモンが対峙する場面では、やりすぎなくらい雨が自己主張。これも、「天」をキャラクターと捉えているらしき、高屋敷氏の意志が感じられる。
画像は、雨の中でのドラマ集。今回と、めぞん一刻あしたのジョー2・ワンナウツ脚本。

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死闘の末、飛鳥は決死の空中3段蹴りでボーモンを倒すが、ブラッド・ジョーが、空手のPRになると言って写真を取る。あまりよろしくない態度だが、笑顔が可愛い。
笑顔が可愛いのは、今回のような「演出」なら分かるのだが、「脚本」作でも可愛い笑顔は頻出。そういうキャラ作りをしているからだろうか?あしたのジョー2脚本、監督作忍者マン一平、DAYS脚本と比較。他も多数。

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飛鳥は、ブラッド・ジョーの非礼な態度を一喝し、倒れているボーモンに手を差し伸べる。ここも、高屋敷氏の大きな特徴である、手から手へ思いを伝える行為。
ワンナウツ忍者戦士飛影MASTERキートン脚本と比較。

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  • まとめ

気になるのは、ナレーションの多用。36話演出(出崎統氏コンテ)もそうだった。高屋敷氏の作品(特に脚本)では、ナレーションを重要キャラと捉えている節があり、ナレーションは多用される。本作において、出崎統氏コンテ+他の人の演出では、ここまでナレーションは多用されていない。
この時代の演出は、好みが全体に反映されやすい。それを思うと、高屋敷氏の意向なのかもしれず、もしそうなら、高屋敷氏の作風の一つ、ナレーション多用の初期型かもしれない。

そして今回も、太陽・ランプ・像・雨演出の初期型が見れたのが収穫だった。特に雨演出は、当時の技術の限界のおかげで、「雨を強調したい」という意図が丸見え。探究する側としてはありがたい。

今回の対戦相手であるボーモンは、誇り高い精神の持ち主で、飛鳥もそんな彼に好感を持つ。敵やライバルにもシンパシーを感じるようにさせるのは、高屋敷氏の得意分野であり、脚本作、特にシリーズ構成も務める作品では炸裂する。今回のも、それの初期型かもしれない。最初期はあしたのジョー1脚本(無記名)と思われる。

また、雨は、飛鳥がフランスに降り立った時と、決闘の間に降っており、決闘の後の雨上がりについては、「ブローニュの森は、雨上がりの優しさを取り戻していた」というナレーションが入る。こういった所も、「天」や「自然」を重要なキャラクターとする高屋敷氏の意向が窺える。

フランスが舞台なだけあり、後年の出崎統氏監督作品・家なき子に通じるものがある。家なき子も、シリーズの半分が、出崎統氏コンテ+高屋敷氏演出の組み合わせ(もう半分の演出は竹内啓雄氏)。つまり、今回の組み合わせと同じである。その意味では、家なき子のルーツ的な所がある。もともと私が高屋敷氏の歴史に興味を持ったのは、家なき子を見て、カイジ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)のルーツを感じたからなので、カイジのルーツのルーツを見た感じで、感慨深い回だった。

空手バカ一代38話演出コンテ:全てを包み込む太陽

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在の空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を極めるため、国内外の強敵と戦っていく姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が吉田喜昭氏、コンテ・演出が高屋敷英夫氏。

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ブラジルで大農場を経営する富豪・半田から、従業員に空手の心・技・体を教えて欲しいと頼まれた飛鳥は、ブラジルへと飛ぶ。

ブラジルの地に降り立った飛鳥を、半田と、その秘書・フレセドが出迎える。高屋敷氏の演出・脚本とも、味のある中高年男性はよく出る。画像は、味のあるおじさん集。
今回、ルパン三世2nd演出、太陽の使者鉄人28号脚本、元祖天才バカボン演出。

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半田の財力は想像以上であったが、飛鳥は、半田の拝金主義に疑問を持つ。
そんな折、並外れた力と身体能力を持つ、農場の現場監督・オハラに、飛鳥は興味を持つ。

その後半田は、豪華な道場を見せびらかし、飛鳥は益々、半田に呆れる。

飛鳥が滞在することになる部屋も豪華で、フレセドはサイフォンで、半田農場で取れた最高のコーヒーを入れてくれる。

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ここで気になるのが、あしたのジョー2の高屋敷氏脚本回で出てきた、西(丈のジムトレーナーで友人)のコーヒーサイフォンである(上記画像右)。西は、「本物のコーヒーが飲めんねん」と言うが、ここは、西の優しさや友情が「本物」であることを、暗に示している。
今回出てきたのは、「最高」のコーヒー。ここでは、半田の拝金主義を示すものだが、時を経て、あしたのジョー2脚本では、西の真心を示すものに変化している。
このように、「物」が重要な役割を担っているのは、高屋敷氏の大きな特徴。

そして飛鳥の部屋に、オハラが乱入してくる。オハラは、足技を駆使する格闘技・カポエラの使い手で、飛鳥に挨拶がてら、軽く攻撃を仕掛ける。半田は激怒し、オハラを殴って追い返す。半田はカポエラを嫌悪しており、カポエラの使用を禁じていた。

オハラと半田が退室した後、飛鳥はフレセドに、カポエラについて聞く。フレセドは、オハラがカポエラの達人であること、カポエラが、奴隷の間で発祥した格闘技と言われているため、虐げられた者達の怨念がこもっていると言われていること等を飛鳥に話す。
フレセドは夕陽を見ながら話しており、夕陽が意味深にズームアップされる。高屋敷氏特徴の、意思を持つような太陽。めぞん一刻脚本、元祖天才バカボン演出、蒼天航路脚本と比較。

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夜、飛鳥の歓迎パーティーが催される。ここも、高屋敷氏特徴の飯テロ。コボちゃんカイジ2期脚本と比較。

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パーティーの席上にて、半田の娘・マヤが、空手が最強の格闘技なのかどうか、飛鳥に聞いてくる。
それを受け、半田は飛鳥に、空手のデモンストレーションを頼む。飛鳥は、空手は余興ではないとしながらも、渋々、技を見せる。
そこへ、またしてもオハラが現れ、カポエラで飛鳥に戦いを挑んでくる。火をバックにして、後が無い様が、カイジ2期脚本のイメージと重なってくる。火の演出も、高屋敷氏の作品ではよく出る。

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戦いは拮抗するかに見えたが、マヤが銃を持ち出し威嚇射撃をしたため、中止となる。

マヤの意外な勇ましさは、あしたのジョー2脚本の葉子(丈のプロモーター的存在)と重なってくる。

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パーティーを滅茶苦茶にしたオハラに対し、半田はクビを言い渡す。
オハラはそれに従うことにするが、ここの場面で、画面が回転・セリフにエコーがかかる。似たような演出技法が、ベルサイユのばらコンテに出てくる。

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ちなみにエースをねらえ!演出でも似た感じの演出が出る。出崎統氏から伝授された感じがあり、好んで使っているものなのかもしれない。

また、もう一つ、出崎兄弟ゆずりの鳥演出が出てくる。前にも書いたが、高屋敷氏の鳥演出は脚本からでも出るのが驚異。ベルサイユのばらコンテ、家なき子演出、カイジ脚本と比較。

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その後オハラは、半田に退職金を要求。半田はそれに怒り、酒の入ったグラスをオハラに投げつける。キャッツアイ脚本、カイジ2期脚本と重なる。

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銃を持ち出した半田に対し、オハラはマヤを人質に取って、退職金相当の身代金を要求、離れの小屋に立て籠る。

半田は飛鳥に泣きつくが、飛鳥は、そのままオハラに金を渡せばよいと突き放し、半田の拝金主義の愚かさを一喝する。
それに反発しながらも、半田は身代金を用意、オハラとの交渉の準備をする。

その頃、小屋にてオハラはマヤに非礼を詫びていた。ここも、出崎兄弟ゆずりの立体構図が出てくる。ルパン三世2nd演出、ベルサイユのばらコンテと比較。天井の梁を利用した立体構図が、コンテのクセの一つのようだ。

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マヤはオハラを許し、なんとなく和らかな雰囲気になる。ここで、高屋敷氏の大きな特徴の一つ、ランプ演出が出現。脚本作でも、いや後年の脚本作の方が「活躍」している。あしたのジョー2・アカギ・ワンナウツカイジ脚本と比較。

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ランプは、高屋敷氏作品における太陽や月と同じで、全てを「見ている」ことが多い。
今回も、オハラとマヤの関係を「見て」おり、かつまた、二人の関係を表している。

一方半田は、もしもの時に備え、人や銃をかき集めていた。そんな中、飛鳥はフレセドに、何故半田がカポエラを憎んでいるのか尋ねる。
実は半田は、過去にカポエラ使いの山賊に、妻を殺された事情があった。こういった、色々な人の複雑な背景を描いて行くのも、高屋敷氏の特徴の一つ。

過去回想にて、半田の妻が最期までマヤを庇う描写があるが、母性の強調も、よく出る。ど根性ガエル演出と比較。

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フレセドは、半田にもオハラにもシンパシーを感じており、人柄の良さが窺える。一見地味な人が見せる優しさをクローズアップするのも、よくある。めぞん一刻脚本の、明日菜(三鷹の婚約者)の運転手が思い出される。

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そんなフレセドを見て、飛鳥は何とかしなければ…と思い、行動を起こすことにする。

交渉場所にて、半田はオハラに身代金を渡すも、従業員と共に銃を構え、彼を殺そうとする。
オハラはそれに抵抗、逆に半田を殺そうとする。
そんな二人に、飛鳥が割って入る。オハラは、飛鳥が邪魔だとして、カポエラで飛鳥を襲う。やむを得ない形で、飛鳥はオハラと対戦。上から攻撃を加える戦法で、見事オハラを倒す。

それに便乗する形で、半田はオハラに対し発砲。だが、マヤがオハラを庇い、軽傷を負う。マヤは、オハラを愛していたのだった。半田は、マヤの真摯な思いに胸を打たれ、矛を収める。

和解する彼等を、朝日が照らす。朝日を見ながら飛鳥は、もう一度ブラジルに来たい、その際は思う存分カポエラに挑んでみたいと思うのだった。ここも、願いを聞き届けるように、太陽が「活躍」。画像は、願いを聞く太陽や月。今回、エースをねらえ!演出、あしたのジョー2脚本、元祖天才バカボン演出。

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  • まとめ

コンテと演出の両方を務めたこともあり、高屋敷氏の好みが存分に出ている。

複雑な背景が絡み、どれが善で、どれが悪か、はっきり区別ができなくなる様は、他の演出・脚本作にも脈々と受け継がれている。

また、義理人情についても、カイジの脚本・シリーズ構成含めて描かれることが多く、その温かさも、高屋敷氏の魅力の一つ。

そして、ルパンからカイジまで、同氏の理想の主人公像の一つとして、「中高年の人に優しい人間」というものがある。今回も、飛鳥が行動を起こしたのは、心優しき中高年男性・フレセドのためだった。

また、今回のフレセドのように、意外なキャラに視聴者が心を動かされるのも、高屋敷氏の作品にはよくある。他作品でも、「高屋敷氏が好きなキャラ」が、自然に視聴者の心に入り込む現象が発生し、それは原作と異なることが多い。原作に寄り添いながらも、そうなる所が、いつも驚かされる。

あと、またしてもランプ演出が飛び出しており、その歴史(40年以上)の長さにも驚かされる。この頃から、全てを「見ている」迫力があり、かつまた、出す目的が明確。

それは、太陽や月にも言えることで、今回も夕陽や朝陽が、全てを見守っていたり、人の願いを聞いたりする。こちらも歴史が長い。

今回の脚本の吉田喜昭氏は、元祖天才バカボンや、忍者マン一平(高屋敷氏監督作)などで、高屋敷氏との組み合わせが度々あり、温かい話や、可愛い話が多い。吉田氏は早くから活躍しており、数々の名作に関わっている。高屋敷氏との相性も良い感じを受ける。鬼籍なのが悔やまれる。

高屋敷氏が、コンテや演出にまわった場合、どの程度脚本を上書きしたり省略したりするのかはわからないが、「きっと、きっと」「そんな、そんな」など、単語を繰り返す所は、おそらく高屋敷氏の上書きなのでは、と思う。脚本の時に、そういった言い回しが目立つため。この「単語の繰り返し」は、後に、あしたのジョー2最終回脚本にて「葉子、葉子はいるか」や「こいつ、こいつをよ、もらってくれ…」など名アレンジを生み出すことになる。カイジ脚本も然りで、「18だ…次の張りは…18ミリで勝負だ。倒す…お前だけはな…!」など、良アレンジにより、迫力が増している。

今回は飛鳥が、他人の背中をちょっとだけ押してあげる回。吉田喜昭氏の温かい脚本とも相まって、複雑ながらも濃い義理人情が展開された回だった。

空手バカ一代36話演出:孤独と向き合う強者たち

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在した空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を行くために、国内外の強敵と闘っていく姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が小森静男氏、コンテが出崎統氏、演出が高屋敷英夫氏。

まず少し解説しておくと、東京ムービーのクラシック作品では、監督を「演出」、各回の演出を「演出助手」と表記している場合が多い。本作もその形式を取っているので、演出助手=各回の演出とカウントする。

クラシック作品では、この演出部分の好みやクセが、非常に出やすい。今でも演出といえば、制作における現場監督のような役まわりであるが、昔の作品は、演出によって絵柄や雰囲気、アフレコの具合まで極端に変わってしまう場合が多い。この差異の推測としては、班が分かれていること(これは今もだが)、競争が激しく、個性を出して頭角を現そうとしていた感じがあること、監督が、割と各演出に自由にさせていたこと、作品によっては監督不在であったこと、などが挙げられる。

いずれにせよ、エースをねらえ!家なき子などの、出崎統監督作品における竹内啓雄氏・高屋敷英夫氏の演出は極端に異なり、いち視聴者の私でも明確にわかるほど。

今回もそれが表れており、久々に本作でコンテを切った出崎統氏の効果も相まって、今までの回とガラリと雰囲気が変わっている。

話は、バリ島にて、カマキリ拳と言われる古武術の覇者・セオロと、飛鳥の決闘が描かれる。

冒頭に地図が出てくるが、高屋敷氏はよほどの地図好きと見え、演出・脚本ともに地図が頻出。挙げればキリがなくなってきたが、ルパン三世2nd脚本と比較。

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飛鳥が、現地の日本人ホテルオーナー・斉藤と一緒に夕日を眺めるシーンで、高屋敷氏の大きな特徴である、意味深な太陽のアップ・間がある。この独特の、何か意思を持っているような「間」は、今回の場合は演出なので、比較的自由に調整できたと思うが、絵に関与できない脚本作でも同じような「間」が発生しているのが謎な所であり、かつまた高屋敷氏の魅力である。画像は今回、エースをねらえ!演出、ベルサイユのばらコンテ、蒼天航路脚本。

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高屋敷氏の特徴の一つ、炎の意味深アップもある。こちらも今回は演出なので、独特の「間」を、自身で調整できている感じがある。脚本の場合は、ストーリーとの関連付けが濃くなっており、時を経れば経るほど、「間」の凄みが増す。蒼天航路ジョー2・太陽の使者脚本と比較。

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あと、出崎(兄弟とも)演出の代名詞とも言える、船横切りもある。今回は監督の一人が出崎統氏であり、コンテも出崎統氏であるので当然ではあるが、高屋敷氏単体でも出てくる(演出・脚本とも)。画像は今回と、ルパン三世2nd演出。

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斉藤が、ライバル会社が差し向けた刺客と戦う場面で、剣か宙に舞うシーンがあるが、ベルサイユのばらの、高屋敷氏コンテ回にも似たような場面がある。しかも、演出は出崎哲(出崎統氏の兄)氏。高屋敷氏と、出崎兄弟の繋がりは、いつも面白い。

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飛鳥が斉藤に、カマキリ拳法について尋ねる場面では、ランプの意味深なアップ・間がある。これも、高屋敷氏の特徴の中ではおなじみ。もともと私がこれに気付いたのは、家なき子の高屋敷氏演出回。そのくらい、家なき子の演出ではランプが活躍する。
画像はワンナウツ脚本との比較。虫と絡めた演出すら似てくる。かたや演出、かたや脚本…。とにかく不思議。

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バリ島のイメージとして、色々な像が出てくるが、像も、高屋敷氏の演出や脚本では、よく出る。じゃりん子チエ脚本と比較。

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色々な予兆や状況を示す、月の意味深なアップ・間も出る。高屋敷氏は、太陽や月を「全ての事象を見ることができるキャラクター」と捉えているようで、こういった月の描写も顕著。元祖天才バカボン演出、じゃりん子チエ・蒼天航路脚本と比較。

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カマキリ拳法の道場にて、飛鳥が試合を申し込むも断られる場面では、かつてカマキリ拳法と戦って命を落としたボクサーのグローブが映る。ここも独特の間が発生する。また、「魂があるかのようなグローブ」といえば、高屋敷氏が脚本を書いた、あしたのジョー2最終回にも出る。

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これも、「万物に魂がある」と捉えている感がある、高屋敷のポリシーが関わっていると思われる。

カマキリ拳法の使い手だがゴロツキの男・バスクと、飛鳥が対峙するシーンでも、意思があるかのような像が「見ている」。あしたのジョー2脚本と比較。

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今回、出崎統氏のコンテというのもあり、あしたのジョー2(監督は出崎統氏)とのシンクロが色々ある。あしたのジョー2高屋敷氏脚本回(監督・コンテは出崎統氏)と比較。今回のバリ島も、あしたのジョー2のハワイも、エキゾチックな文化が描かれている。

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斉藤が、かつてのカマキリ拳法の覇者で、他流試合でボクサーを殺してしまった男・セオロについて語るシーンでも、高屋敷氏特徴のランプ演出が出てくる。当時の制作技術の未発達さのおかげで、ランプ演出をしたいという念の強さを、逆に感じることができる。ワンナウツカイジ2期・蒼天航路「脚本」と比較。

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山籠りをしているセオロを飛鳥が訪ねるシーンでは、セオロが太陽を背に現れる。
太陽や月が、人と人を引き合わせるような、高屋敷氏の雰囲気作りが感じられる。蒼天航路脚本でも、月が人と人を引き合わせる。

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セオロは、試合でボクサーを殺めてしまったことを気にかけ、ボクサーの供養をしながら山にこもっていた。「孤独」「孤独からの救済」も、演出・脚本ともに高屋敷氏の作品にはよく出る。
あしたのジョー2高屋敷氏脚本回では、今回と同じように、対戦相手を殺してしまったホセの孤独が描かれている。ホセには丈が、今回のセオロには飛鳥が来て、幾分かの救済が成されている。

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飛鳥に負けたことを逆恨みしたバスクに銃で撃たれ、飛鳥は頬にかすり傷を負ってしまうが、セオロは、血を拭けとばかりに、手拭いを投げてくれる。相手が必要としているものを渡す「贈り物演出」も、高屋敷氏の作品によく出る。
画像は今回と、蒼天航路・太陽の使者鉄人28号コボちゃんミラクル☆ガールズ脚本。どれも心がこもっている。

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錯乱して手がつけられない状態のバスクを、元・師匠として責任を取ると言って、セオロが討つ。かつての弟子を手にかけたセオロは、涙を流す。ここも、あしたのジョー2脚本の、戦えば戦うほどライバルを壊してしまい、孤独になってしまうホセと被ってくる。

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そしていよいよ、セオロと飛鳥の対決となる。飛鳥はセオロの剣により腕を負傷するも、一瞬の隙を捉えて勝利する。
飛鳥は、セオロの事を忘れない、たとえ自分が忘れても、自分の腕と血が、この事を覚えているだろう、と言う。

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ここも興味深く、あらゆる演出や脚本で、手や足など、体のパーツにも魂があると捉えているらしき高屋敷氏のポリシーが感じられる。実際、監督作の忍者マン一平では、(原作通りだが)主人公・一平の目玉が意思を持ち、喋る。

セオロとの勝負を終え、バリ島を後にする飛鳥は、夕陽を見つめる。太陽と乗り物の組み合わせも、演出・脚本ともに、よく出る。ベルサイユのばらコンテ、太陽の使者鉄人28号脚本、ルパン三世2nd演出と比較。

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画像(上段右)の、ベルサイユのばらの演出は出崎哲氏。哲氏は太陽や月を横切るタイプ。今回含め、統氏は太陽や月に向かっていくタイプ。兄弟で出る差異が面白い。そして、高屋敷氏は二人のハイブリッド的な所がある。

  • まとめ

今回の目玉は、高屋敷氏の太陽・月・ランプ演出の初期タイプが見られたことと、孤独・孤独救済描写。

ランプ演出については、当時の技術が足りなかったおかげで、演出の意図がより明確になっているのが大収穫だった。
単なる時間稼ぎや時間経過表現ではなく、高屋敷氏が非常に意識しているものだということが、これではっきりした。

今回が、今までと違う点の一つに、ナレーションの多用がある。ナレーションは、カイジ脚本・シリーズ構成はじめ、他の高屋敷氏の作品でも多用され、じゃりん子チエで初めてナレーションが使われた回の脚本が高屋敷氏である。なかなか興味深い。

これは、万物に魂があるという高屋敷氏のポリシーから考えるに、同氏が、ナレーターも重要キャラクターと捉えているからではないだろうか。現に、監督作忍者マン一平では、ナレーター役の、学校仮面というキャラがおり、活躍している。

そして、孤独描写。飛鳥のモノローグでも、セオロが自分と同じ孤独を抱えていることが語られる。その共感が、幾分かの、互いの孤独の救済になっている。

こういった、男と男による心の交流は、あしたのジョー2やワンナウツ脚本でも描かれている。

あしたのジョー2では、ホセ・丈ともに対戦相手を壊してしまう孤独を抱えており、二人は何かしらの共感を覚える。
ワンナウツでは、互いに足りないものを見つけたような、児島と渡久地(後に児島と同じプロ野球チームに入る)の、心の交流が描かれている。

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そういった心の、いや魂の交流は、高屋敷氏の様々な作品に出ている。アカギやカイジの脚本・シリーズ構成でも、それは出ていて、アカギと鷲巣、カイジと兵藤会長といった、主人公とラスボスの、心と心の対話が描かれている。
そして、それを見守るのが太陽や月、物、自然などであることが、比較的初期の作品である今回で剥き出しになっており、貴重な回だった。

ベルサイユのばら6話コンテ:作品・時代を越えた「縁」

アニメ・ベルサイユのばらは、池田理代子氏の原作漫画をアニメ化した作品。フランス革命前後の時代が、男装の麗人・オスカルを中心に描かれる。
監督は、前半が長浜忠夫氏、後半が出崎統氏。高屋敷氏は、前半の長浜監督下で数本、コンテを担当した。今回6話は、演出が出崎哲氏(出崎統氏の兄)、脚本が杉江慧子氏。

━━━

今回は、

  • マリーが初めてパリに行く
  • 貧民街でのジャンヌ・ロザリー姉妹(後の重要人物)の暮らし
  • マリーを狙う貴族の暗躍
  • オスカルによるマリーの警護
  • 貴族の婦人に取り入るジャンヌ
  • フェルゼン(後のマリーの不倫相手)登場

が描かれる。

冒頭、高屋敷氏のコンテでよく出る、像ごし構図が出る。不思議なことだが、絵に関与できない脚本作でも、像はよく出る。ルパン三世2nd演出、カイジ・じゃりん子チエ脚本と比較。

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今回、演出が出崎哲氏であることや、高屋敷氏が、出崎統氏と長年仕事していたことも手伝ってか、出崎統氏の演出として有名な入射光演出がよく出る。エースをねらえ!(監督は出崎統氏)の、高屋敷氏演出回と比較。

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出崎兄弟演出といえば、鳥演出。高屋敷氏も出す。今回はコンテだが、高屋敷氏の鳥演出は、脚本からでも飛び出すのが驚異的。らんま「脚本」と比較。 

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そして、高屋敷氏特徴の鏡演出。

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この場合は、パリに行けるとはしゃぐマリーが鏡の前で目を閉じており、後ろの、心配するオスカルが見えていない。ルパン演出でも、不二子の背後にルパンが映っているのが意味深。
カイジ脚本では、カイジが、鏡に映る、心配顔の古畑・安藤に気付く。
カイジ2期脚本では、状況が見えているカイジだけが鏡に映っており、状況が見えていないおっちゃんが、鏡に映らない位置にいる。

出崎哲氏が演出なのもあり、出崎兄弟の有名な演出である、止め絵演出も出てくる。

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この場面は、マリーが幼い。幼く無邪気なキャラづけは、演出・脚本とも高屋敷氏の得意分野。そして、「私のパリ!」と何回もマリーが言うのだが、高屋敷氏の脚本上の特徴の一つとして、連呼があることを考えると、この連呼部分は、高屋敷氏の、コンテからの上書きかもしれない。

高屋敷氏の大きな特徴である、ランプ(この場合はシャンデリア)のアップ・間も出る。ルパン三世2nd演出、忍者戦士飛影カイジ2期脚本と比較。

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オスカルがマリーを評価する場面では、光が射し込む。はじめの一歩3期脚本にも、似た場面がある。ともに、大切な人を思う。

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ここの直後にも、像の意味深アップ・間がある。カイジ脚本と比較。脚本の方が、意味深度合いが増すのも不思議な所。

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マリーやルイ16世が気に入らないオルレアン公達が、良からぬことを企む場面で、オルレアン公がナイフをお手玉しているが、片手お手玉は、出崎兄弟がよくやるし、高屋敷氏もよくやる。高屋敷氏の、ど根性ガエル演出と比較。

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オルレアン公がナイフを投げるが、「物」が語る演出は、高屋敷氏の演出・脚本とも頻出。

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次に、貧民街の様子が描かれる。貧民がパン屋を覗いている場面は、極限状態での飯テロ。高屋敷氏は、飯テロ描写が演出・脚本とも上手い。あしたのジョー2脚本にて、減量に耐えかね、うどんを食べる西と比較。

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そして、貧民描写が蒼天航路脚本と被っていく。どちらも王朝末期。

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貧民達はパン屋を襲撃、そのどさくさに紛れて、貧民の少女、ジャンヌがパンを盗む。
その直後に、太陽のアップ・間がでる。ジャンヌの悪事を、太陽が「見ている」。高屋敷氏の出す太陽には意思があるのが特徴。あしたのジョー2・太陽の使者鉄人28号蒼天航路脚本と比較。

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帰宅したジャンヌは、鏡を見ながら身を整える。鏡を見ながら女性らしい動作をするのは、演出・脚本ともに、高屋敷氏の作品には多い。ルパン三世2nd演出と比較。

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かつて母親が貴族に見初められた事から、自分が貴族の末裔だと信じるジャンヌは、今の暮らしに不平不満を言う。
そんなジャンヌを、母がビンタする。ビンタも、高屋敷氏の作品では強調される。ど根性ガエル演出・カイジ2期脚本と比較。

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しかも今回は出崎哲氏が演出なので、哲氏の高速描写と、統氏のスロー描写が合体。また、高屋敷氏も、自身単独の作品で、出崎兄弟合体演出をよくやる(脚本含む)。

天井にカメラがあるような構図も、高屋敷氏の作品にはよくある。ルパン三世2nd演出と比較。

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脚本にも、不思議と似た絵面があり、その場合はストーリー性が増している。

ジャンヌは家を飛び出し、残された母は、ロザリー(ジャンヌの妹)を抱きしめる。手を握ったり、ハグしたりして親愛の情を示すのも、よく出る。監督作の忍者マン一平と比較。

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場面は転じ、オスカル達は、ド・ゲメネと、シャルル(実はテロリスト)の密会を目撃(後の伏線)。
一方で、ジャンヌはド・ゲメネに物乞いをし、ド・ゲメネに突き飛ばされる。
ジャンヌはド・ゲメネに悪態をつくが、ここの動作が、ど根性ガエルの演出ぽい。

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マリーとルイ16世がパリでパレードをする日、アンドレ(オスカルの幼馴染)は、シャルルとド・ゲメネがテロを企んでいるのを知り、それをオスカルに報告。オスカルはシャルルを追跡、剣を交える。殺陣や、止めを刺さない描写が、忍者戦士飛影蒼天航路の脚本と重なってくる。

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追い詰められたシャルルは、毒を飲んで自決してしまう。

そんな事があったとも知らず、マリーは無邪気に花火を眺める。あしたのジョー2脚本にて、花火を眺める丈と重なる。ともに、過酷な未来が待ち受けている。

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時を同じくして、川辺に佇むジャンヌは、マリーに悪態をつきながら川面に石を投げ入れる。

水面に石を投げ入れる描写は、演出・脚本ともによく出る。チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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懲りもせず、ジャンヌは貴族に目を付け、ブーゲンビリエ侯爵夫人に、自分は貴族の末裔だと言い、まんまと夫人を騙す。
詐欺描写も、高屋敷氏の作品では強調される。画像は、騙される側と、騙す側。今回、チエちゃん奮戦記・カイジ脚本。

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後日、フェルゼンがパリに到着する。後のマリー・フェルゼン・オスカルの波乱万丈な運命を示唆する一枚絵が出るが、虹はよく出る。エースをねらえ!演出と比較。

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  • まとめ

ど根性ガエルでは、高屋敷氏が演出、出崎哲氏がコンテだったが、今回はその逆。

また、1980年版鉄腕アトムでは、高屋敷氏脚本・出崎哲氏演出コンテの回がある。
どの組み合わせにしろ、高屋敷氏と出崎哲氏のコンビネーションは抜群。高屋敷氏といえば出崎統氏のチーム要員の印象が強いが、出崎哲氏との絆の強さも窺える。

今回はコンテなので、話にはあまり関われなかったと思うが(コンテから話を上書きしまくる出崎統氏や富野由悠季氏は特例)、ベルサイユのばらでの経験は、その後の高屋敷氏の作品にに大きな影響を与えたと思う。

カイジ(脚本・シリーズ構成)でも、富める者と貧しき者が描かれ、Eカードでは、社会の縮図として、皇帝・市民・奴隷がカードに表される。今回は、リアルEカードの様相を呈している。

アニメのベルサイユのばらで、貧民描写が出たのは今回が初めてであり、高屋敷氏にこの回が回って来たのも運命的。後のカイジ蒼天航路の脚本に重なるものがある。

ジャンヌは、「貴族だろうが金持ちだろうが同じ人間じゃないか。生まれた時の運が悪かっただけで、割り食ってたまるか!」と言う。奇跡的にも、高屋敷氏は後に、カイジ2期にて「宿運の差」というサブタイトルの脚本を書いている。その回では、カイジも、そのライバルである一条も、生まれながらの「運」に翻弄される。勝負での宿運は一条が少し上回るも、過去の不幸な出来事で人を憎むようになった一条と、色々あったが人を愛し、愛されるカイジの「宿運の差」も、同時に描かれている。

ジャンヌは今後、どんどん悪女になってしまうのだが、一方で、妹のロザリーは、色々不幸な目には逢うものの、愛されるキャラになっていく。これも運命の「差」かもしれない。

とはいえ、今回のジャンヌは、不良ではあるものの、どこか無邪気なところがあり、憎めないキャラになっている。善悪の区別が複雑なのも、高屋敷氏の特徴。

また、前述の通り、無邪気なキャラ作りは高屋敷氏の十八番。今回はコンテからの演技づけで、それが表れているが、これが脚本でも表現されるのが不思議。下記画像は、忍者戦士飛影脚本との比較。

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カイジ1期脚本のEカード編では、全身全霊をもって、カイジが「奴隷」カードで「皇帝」である利根川を倒すが、ベルサイユのばらでは、史実の通り、貧しき人々が革命を起こす。この重なりも、奇跡的な縁。
そして、作品や年代を越えた「縁」が確実に、後の作品に生かされている事を確認できる回だった。

ルパン三世2nd147話演出・絵コンテ:一人しかいない「自分」

ルパン三世2ndは、アニメ・ルパン三世の第2シリーズ。ルパンのジャケットが赤いのが目印。今回の脚本はいとうまさお氏。
高屋敷氏は演出・絵コンテを担当。
サブタイトルは「白夜に消えた人魚」(アニメオリジナル)。

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舞台はノルウェー。鳥が飛ぶ演出は、高屋敷氏の演出・脚本ともに、よくある。カイジ脚本と比較。

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両方とも、アニメオリジナル場面。長年一緒に仕事した、出崎兄弟の鳥演出に、ストーリー性を加味している。

次に、不二子が車を走らせている場面になるが、ベルサイユのばらコンテと重なる。坂道遠近の使い方も、出崎兄弟ゆずり。

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不二子の目的地は、彫刻家・ビンゲルの家。ルパンも密かに不二子の後をつける。

高屋敷氏の演出・脚本とも、「像」がよく出てくる。しかも、脚本作でまで、似た構図になるのが、いつもながら不思議。カイジ・じゃりん子チエ脚本と比較。

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不二子は、キャリアの集大成として、唯一無二の傑作を作りたいというビンゲルの熱意に協力し、水晶でできた人魚像のモデルをしていた。

その様子を密かに覗いていたルパンは、不二子が服を脱ぎ始めたので、たまらず部屋に乱入する。不二子は、そんなルパンに花瓶を投げつける。この直後にサブタイトルコールになるのだが、ワンナウツ脚本と結構シンクロしていて笑った。

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少なくとも、ワンナウツの文字演出は、ルパン三世2ndのサブタイトルコールを意識しているのは明らか。

その後ルパンは、次元と五右衛門に、事の顛末を話し、愚痴をこぼす。港町にあるアジトという所に、出崎兄弟の波止場好きの影響が出ている。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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ルパンの話を聞き、呆れる次元と五右衛門の背後をヨットが横切っていくが、この、船横切り演出も、出崎兄弟がよくやる。高屋敷氏の不思議な所は、「脚本」からでも、この演出が飛び出す点。アカギ・MASTERキートンめぞん一刻脚本と比較。

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そこへ不二子がやってきて、自分をモデルにした人魚像を、ビンゲルがベルゲン市長に売ってしまったと話す。市長は人魚像を、ベルゲン市の観光の目玉にするのが目的だった。
莫大な買い取り金の分け前を不二子は手にしたものの、自分を模した人魚像が見知らぬ多くの人々に見られたり、触られたりするのが嫌だと言い、ルパンに人魚像を盗むよう依頼。
いつものごとく不二子のお色気にほだされたルパンは、この依頼を受けることにする。

人魚像は、オスロからベルゲンに、列車で運ばれる手筈になっており、銭形が警備を担当していた。そしてそれに協力する、ニガールという地元の刑事がいるのだが、太陽の使者鉄人28号における高屋敷氏脚本回に、同じくニガールという警察部長が出る(性格や外見は大きく異なる)。しかも舞台がノルウェーという所も同じ。年代も近い(1980~81)。

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人魚像の入った車両は、特殊な連結を施されており、車両を切り離す事が難しくなっている。高屋敷氏の、ルパン三世における演出・脚本作では、銭形はそんなに間抜けには描かれていない。同氏の好みだろうか。

列車は走り出し、橋を渡る。こういった橋の演出も、出崎兄弟ゆずり。やはり高屋敷氏版で恐ろしいのは、脚本からでも、それが出力されるところ。エースをねらえ!演出、めぞん一刻・新ど根性ガエル脚本と比較。

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そして、ベルゲン市長と銭形は、ノルウェー料理に舌鼓を打つ、高屋敷氏特徴の飯テロ。MASTERキートンカイジ2期脚本と比較。

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銭形達をよそに、列車に飛び乗ったルパンと不二子は、容易に人魚像の入った車両の錠前を破る。だがルパン達は、車両が特殊な連結になっている事に気付く。そこへ銭形が現れ、ルパンを捕まえようとするが、ヘリで駆けつけた次元と五右衛門がルパンと不二子を回収したため、取り逃がしてしまう。

ルパン達は作戦を練り直し、オスロとベルゲンの中間地点にて列車のルートを変えさせる仕掛けを作る。
更にルパンと不二子は列車に再度侵入し、列車にも仕掛けを施した上で、先頭車両を占拠。

ルパンは、変更したルートに列車を乗せ、ジャンプさせる。列車をジャンプさせるのは、1980年版鉄腕アトム脚本にも出る。

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また、太陽と絡めた絵面も、高屋敷氏の作品では頻出。元祖天才バカボン演出、蒼天航路・太陽の使者脚本と比較。

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列車と、あらかじめ用意していたラッセル車を使った仕掛けを使い、五右衛門と次元は、人魚像の入った車両だけを切り離すことに成功。残った車両と先頭車両は、ルパンの仕掛けた大型バネにより、再連結。

こういった、ピタゴラスイッチ的な凝った仕掛けも、高屋敷氏の作品にはよく出る。監督作忍者マン一平(コンテ疑惑もある回)、カイジ2期脚本と比較。

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ルパンは、宙に舞う列車を、本来のレールに着地させる。
この時、ルパンが十字を切るのだが、元祖天才バカボン演出、1980年版鉄腕アトム脚本と重なる。

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そして、ルパンと不二子はまんまと列車から脱出。運転手を失った列車は、ベルゲン駅には着くものの、崩壊。銭形達はボロボロになる。怒った市長は、ニガールにクビを宣告する。それを受けたニガールは泣き出してしまう。おじさんがよく泣くのも、高屋敷氏の特徴。カイジ2期・太陽の使者鉄人28号脚本、監督作忍者マン一平と比較。

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市長の怒りは収まらず、銃を発砲しながら銭形を追いかけまわす。これは、高屋敷氏が演出や脚本をした、元祖天才バカボンにおける本官さん(トリガーハッピーな警察官)のパロディ。

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ルパン達は、車両を開けて人魚像と対面するが、車両に加えられた数々の衝撃がたたり、人魚像は砕け散ってしまう。
それでもルパンは、水晶も不二子も、自然のままがキレイだと言う。
そのまま不二子を口説こうとするルパンであったが、不二子に突き飛ばされてしまうのだった。

  • まとめ

高屋敷氏が担当したルパン三世の演出・脚本の中では、一番作戦が大がかり。そして、トラップを作って何かをジャンプさせる、ピタゴラスイッチ的なネタは、他の作品でもよく出てくる。
同氏が、凝ったギミックを使った作戦が好きな事が窺える。これは、カイジ脚本・シリーズ構成にも言えること。

あと、気になるのは、あらゆる作品に出てくる「像」である。
高屋敷氏は、「もの言わぬもの」に魂があると捉えている節がある。その中でも、人や生物を模した「像」は、魂が宿りやすいのではないだろうか。
当ブログや私のtogetterにて、何回か書いているが、高屋敷氏は、まんが世界昔ばなしの「幸福の王子」の演出・コンテを担当している。この話は、有名な原作通り、王子像が意思を持っており、町の人々を「見ている」。
他の作品でも、「像が見ている」という演出が多々見られる。

不二子は今回、自分を模した人魚像を、自分の分身のように思うわけだが、最後には、人魚像が壊れてしまう。「自分」は一人しかいないのだから、「分身」はいらない、ということかもしれない。
「自分を強く保て」「己は唯一無二」は、高屋敷氏がよく発するメッセージの一つ。
今回は、エンターテインメント中心の話ではあるが、高屋敷氏の提示するテーマ「自分とは何か」は、確かに出ている。

そして、他の担当作とのシンクロ現象も多発している。特に、絵を管理できないはずの「脚本」とのシンクロは驚異的。
数々の演出経験が、画を想像しやすい「脚本」に、確かにつながっていると感じられる回だった。

 

ルパン三世2nd141話演出コンテ:鳥が導くストーリー

ルパン三世2ndは、アニメ・ルパン三世の第2シリーズ。ルパンのジャケットが赤いのが目印。今回の脚本は高階航氏。
高屋敷氏は演出・絵コンテを担当。
サブタイトルは「1980 モスクワ黙示録」。

━━━

ある日、ルパンは不二子に呼び出される。
不二子は自分のアジトにて裸で泳いでおり(特徴:アイデンティティの如何を問う脱衣演出)、ルパンを悩殺する。プール演出が、あしたのジョー2脚本と重なる。

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もともと、高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏がこういったプール演出が得意で、高屋敷氏はそれに影響を受けたと考えられる。

そして、出崎統監督の、あしたのジョー2で高屋敷氏が脚本を書いた際に、同氏は出崎統監督がプール演出が得意なことを想定していたのだと思う。だから最終映像が似てくるのだろう。

話を戻すと、今回のターゲットはソ連(現ロシア)のクレムリンにある、ダイヤでできたシャンデリア。プロジェクターを使って説明が行われるが、プロジェクター演出は脚本・演出ともに多い。脚本デビュー作と思われる、あしたのジョー1にも出ていた。挙げればキリが無いので、太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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また、盗む対象がシャンデリアという所に、高屋敷氏の特徴が出ている。意味深な照明のアップ・間は、高屋敷氏の演出・脚本ともに多く出てくる。今回、ベルサイユのばらコンテ、カイジ2期脚本と比較。

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プールから上がってシャワーを済ませた不二子は、鏡を見ながら髪を整え、口紅を塗る。女性が鏡を見ながら身だしなみを整える演出は、演出・脚本ともによく出てきて、意味深に描写される。下記はベルサイユのばらコンテとの比較。

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また、口紅を塗る場面も、脚本・演出ともに多い。しかも描写がリアル。蒼天航路めぞん一刻脚本と比較。

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今回の口紅演出の意図は、裸→タオル→化粧、と不二子が纏うものが多くなるにつけ、何かを段々と隠しているのを、視聴者にわかるようにしているのではないだろうか。

ちなみに、不二子が纏うバスタオルには地図がプリントされている。高屋敷氏の脚本・演出ともに、地図は頻出。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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盗聴機とカメラで、念のため不二子を監視していた次元と五右衛門は、ルパンがまたまた不二子に乗せられている事に呆れる。
目的地がクレムリンという事で、次元は、モスクワオリンピックの話題を出し、煙草の煙で五輪マークを作って見せる。

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ど根性ガエルコンテ疑惑回(無記名)でも、煙草の煙で五輪マークを作るシーンがある。また、このコンテ疑惑回には「子供のうちから煙草を吸うと背が伸びない」という旨の台詞があり、高屋敷氏脚本の、はだしのゲン2でも同様の台詞がある。そのため、疑惑が益々強まる。

一方銭形もモスクワに来ており、モスクワ警察を訪ねる。モスクワ警察署長は、くまの五輪マスコットを抱いており、これの意味深アップ・間がある。ここも、高屋敷氏の大きな特徴。蒼天航路脚本と比較。ちなみに、可愛いおじさんも、同氏作品にはよく出る。

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警察署長は銭形の為にコンパニオンを用意しており、銭形は彼女からキスの雨を食らい困惑。ところで不美人から好かれるネタは、監督作の忍者マン一平にも出ており、かつまた、カイジ(脚本・シリーズ構成)でも出る。カイジの美心は、EDのみの出演だが。

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偶然にしても、似たようなシチュエーションが重なってくるのは面白い。

ルパンは銭形に変装し、ターゲットのシャンデリアを下見する。この時も、シャンデリアの意味深アップがあり、しかもカイジ2期脚本と結構シンクロ率が高い。

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カイジ2期の方のコンテは川尻善昭氏であり、川尻氏も高屋敷氏と長年仕事をしているため、このような奇跡的シンクロが起こるのではないだろうか。また、シャンデリアごしの構図は、両氏馴染みの出崎統氏が得意としている。

銭形に変装していたルパンだったが、国家特務機関SKB(スーケーベー)の士官・ナターシャに変装を見抜かれ、牢に入れられてしまう。また、次元と五右衛門も、SKBの監視下に置かれる。

ルパンは独房にて、隣につながる隠し扉を偶然発見、隣の房にいるダンチョネという老人と出会う。

その頃不二子は、クレムリンの官僚に取り入っていた。官僚は野球を愛しており、ピッチングマシン相手にバッティング練習をするのが日課ど根性ガエル演出といい、ワンナウツシリーズ構成・脚本といい、どうも高屋敷氏は野球が好きなのではないか?と感じる。

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一方ルパンはダンチョネから、シャンデリアについての説明を受ける。ここの構図が、ベルサイユのばらコンテと重なる。

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アーチ型のオブジェクトが手前に来る構図が、高屋敷氏のコンテのクセのようだ。

ダンチョネは、かつてシャンデリアの宝石を盗もうとして逮捕されたが、技師としての腕を買われ、服役しながらシャンデリアのメンテナンスをしているという。

また、ダンチョネは鳩を手懐けており、ルパンも鳩に餌をあげる(後の伏線)。

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鳩といえば、出崎統氏の鳥演出は有名。高屋敷氏はそれに影響を受けた上で、鳥1羽1羽にストーリー性を持たせるという独自演出をしている。画像は、今回、家なき子演出、コボちゃん脚本との比較。

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ダンチョネは、一緒にシャンデリアを盗んで脱獄しようとルパンに頼み込み、ルパンもそれを承諾。中高年の人に優しい・甘い主人公は、高屋敷氏の作品に多い。監督作忍者マン一平カイジ2期脚本と比較。

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ルパンはダンチョネに、ダンチョネはルパンに変装。作戦を開始する。

ルパン(外見はダンチョネ)はシャンデリアのメンテナンスをするふりをして、盗みやすくするための細工をし、牢に戻る。

ここの構図も、高屋敷氏の作品にはよく出る。ベルサイユのばらコンテ、カイジ2期脚本と比較。

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コンテはわかるのだが、脚本までシンクロするのは怪。しかも、カイジの方は、ストーリー性が加味されている。ただ、カイジ2期の、この回(16話)のコンテは川尻善昭氏。前述のように、両氏のルーツが出崎統氏であること、両氏が馴染みであることが関係しているのかもしれない。

次にルパンは、鳩の足にメモをくくりつけ、次元のもとへ飛ばす。メモを受け取った次元は、五右衛門と共に、SKBの監視をくぐりぬけ脱出。

次元は不二子に配置につくよう連絡した後、シャンデリアのある建物の現場主任のふりをして、建物に透明の雨どいを取り付ける。
そして、オリンピック開会式の祝砲を合図に、ルパン達のいる牢を爆破。

ルパンは、シャンデリアにつなげた釣糸を引っ張って仕掛けを発動。だが、ダンチョネはこの土壇場になって裏切り、何処かへ去る。

それをよそに、釣糸・雨どい・ピッチングマシンを使ってダイヤモンドを次々と運ぶ仕掛けはうまく行く。ピタゴラスイッチ的作戦は、高屋敷氏の作品によく出る。監督作(脚本・コンテも)の忍者マン一平と比較。

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あとはダンチョネの行方だが、ルパンはダンチョネに見捨てられた鳩を優しく抱き上げ、空へ飛ばす。

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鳥が生きており、ルパンが鳥に優しいのは、高屋敷氏が演出・コンテをした、まんが世界昔ばなし「幸福の王子」で死んだ、ツバメに対する救済に見えるのが興味深い。

ルパンにより放たれた鳩は、ダンチョネのもとへとルパン達を導く。

ここの上空からの構図も、ベルサイユのばらコンテと重なるものがある。

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鳩が導いた先には、ダンチョネ、不二子、ナターシャがいた。実はダンチョネとナターシャは親子で、不二子の手引きで亡命を図っていたのだった。

そんなダンチョネ親子に、分け前としてルパンはダイヤ数個をあげる。これも、中高年の人に甘い・優しいという、高屋敷氏のポリシーが出ている。

残りのダイヤは、不二子のもとに届かないようにルートをせき止め、その終着地点にて次元が回収。ダイヤは数十万個もあるので、次元は疲弊するのだった。かくしてルパン達(不二子除く)は見事、大量のお宝をゲット。これは、高屋敷氏が手がけたルパンの演出・脚本の中では最高額のお宝となる。

  • まとめ

割と高屋敷氏の特徴盛り沢山な回で、過去作・未来作との、絵面のシンクロが凄まじい。特に脚本作とのシンクロは驚異的。何故なのかは不明なので、奇跡とか怪現象とかで片付けたくもなるが、似たようなシチュエーションにて、脚本から想像される画が共通しているのかもしれない。

あと、鳥に関して。出崎哲・統兄弟と長く仕事し、共に沢山の出崎鳥演出をしてきた高屋敷氏は、その中で、鳥にストーリー性を持たせる独自性を見出したと言える。高屋敷氏と鳥に関しては、こちらの過去記事を参照。

出崎兄弟の好む巨大夕陽演出にも、高屋敷氏はキャラづけやストーリーを付加している(太陽=全てを見ている重要キャラ)。

この、「ストーリーを付加」する能力が、後に役職を脚本に絞っていくことに繋がるのではないだろうか。しかもその「脚本」は、演出経験に裏打ちされた、アニメにしやすいものだからこそ、最終映像が「脚本」なのに似てくるのかもしれない。それにしても不思議な現象なので、興味は尽きない。

そして、中高年の人に優しくせよというポリシー。監督作忍者マン一平の一平にしろ、カイジにしろ、ルパンにしろ、皆、中高年の人に優しい。そういう主人公であってほしいと、思いを託しているように感じる。

原作つきであろうとも、こういった、自身が理想とする主人公像を作り上げることが可能だということにも気付かされた回だった。