カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

蒼天航路12話脚本:天を見上げる者達

アニメ・蒼天航路は、同名漫画のアニメ化作品。高屋敷氏はシリーズ構成も務める。
監督は学級王ヤマザキや頭文字D4期などを監督した冨永恒雄氏。総監督は、バイファムやワタルなどのキャラクターデザインで有名な芦田豊雄氏。

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後漢を支配する暴君・董卓は、汜水関の戦いにて反乱軍を蹂躙。都・洛陽を燃やした後、長安に都を移した。

その後、焦土と化した洛陽に孫堅の軍が入城。夏候惇(曹操軍の重鎮)の助言もあり、孫堅は洛陽の復興を目指すことに。

調査中、孫堅達は五色の龍の気を放つ箇所を発見。そこを掘り起こしてみると、王朝に代々伝わる玉璽(ぎょくじ=皇帝が使う印章)が出土した。高屋敷氏特徴の「生きているような“物”」。意味深なアップ・間が、龍が出てくる原作通りの演出に拍車をかけている。つまり、「物が生きている」ことがわかりやすくなっている。1980年版鉄腕アトム脚本でも、「魂」を持つAIが重要な役割を演じており、それがアップ・間により表現されている。

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孫堅は、玉璽がある限り、洛陽の意味は失われていないとして、復興に励む。その噂を聞き、多くの豪族達が洛陽に集まる。

董卓長安遷都や、孫堅による洛陽復興の情報は、はるか西方にまで及び、曹操の命で西方に旅に出ていた曹操の軍師・荀彧(じゅんいく)の耳にも届く。ここも、高屋敷氏特徴の「全てを見ているキャラクター」である太陽の意味深アップ・間がある。ベルサイユのばらコンテと比較。

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一方、反董卓軍を統括していた袁紹(えんしょう)も、董卓への対抗策を、太陽を見ながら練っていた。あらゆる者が同じ太陽を見ている…という演出(月にも適用)は、高屋敷氏の演出や脚本に多く出てくる。

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曹操は故郷に身を寄せ、父と囲碁に興ずる。ここも、碁石の意味深アップがある。アカギやカイジ(脚本・シリーズ構成)にも、ゲームに使われる物の意味深アップが沢山出てくる。

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曹操は父に、今の自分には金と策が必要と言う。そこへ、曹操の言う「策」、つまり軍師の荀彧が旅を終えて曹操のもとにやって来る。曹操碁石を打った直後に荀彧がやって来たり、曹操が荀彧を「策」と例えるあたりに、「人ではないもの」を活躍させる高屋敷氏の特徴が出ている。

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その2年後。董卓の支配する都・長安は、恐怖政治ではあるものの栄えていた。

文人・蔡ヨウがその様子を書き記していると、董卓とその部下がやって来る。
この時、香炉のアップになり、董卓達が来ると煙がなびく。ここも、高屋敷氏の特徴である「意思を持つもの」の描写。めぞん一刻脚本と比較。こちらも、意思を持つように煙が動く。

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董卓の部下は、蔡ヨウが董卓を誹謗するような事も記述しているとして、蔡ヨウを批判する。
だが董卓は、蔡ヨウとの問答の末、自分の有り様を書き記すことを許す。ここの問答で、蔡ヨウの瞳に董卓が映る。高屋敷氏特徴の、「真実を映す鏡」演出。あしたのジョー2脚本と比較。

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ここでは、粗暴であるが王者の器がある董卓の、真の姿を映している。瞳には真の姿が映っているのだが、蔡ヨウは董卓の真の姿を、まだ探っている最中という演出にもなっている。

董卓は蔡ヨウの文才を認め、その才を見抜けなかったとして、蔡ヨウの事を告げ口してきた部下の目を刺すのだった。

そんな董卓に反発する者は多く、国の政務を執る司徒(役職名)・王允(おういん)もその一人だった。

どうすれば董卓を打倒できるか王允が考えあぐねていると、彼の養女・貂蝉(ちょうせん)が、自分が董卓の懐に潜り込み、策を練る手伝いをすると進言。
王允は反対するが、貂蝉の決意は固い。美しくなって董卓に取り入るべく、彼女は瞼を自分で切り、整形する。
ここで、灯の意味深アップ・間がある。これも高屋敷氏の特徴で、あらゆる作品に出てくる。挙げればキリがないが、あしたのジョー2・めぞん一刻カイジ脚本と比較。

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貂蝉は整形時に出た血を唇に塗り、狂気を見せる。意味深に口紅を塗る場面は、度々高屋敷氏の作品に出る。ルパン三世2nd演出・めぞん一刻脚本と比較。

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洛陽では、袁紹が勢力を拡大しつつある旨を袁術(孫堅と同盟中)から聞いた孫堅が、袁紹と戦うべく、荊州に赴くことを決意する。

出立の日、曹操から孫堅のもとに派遣されている夏候惇は、次に会うときは董卓を討つ時だと、孫堅と約束を交わす。中年男性同士の渋いやりとりは、高屋敷氏作品でよく強調される。太陽の使者鉄人28号・アカギ脚本と比較。

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一方曹操はエン州にて、農民の反乱を鎮圧する戦に参加する。
天下を「治める」ことを目指す曹操は、農民の扱いには慎重になるべきと説く。

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荀彧もそれに賛同し、曹操が農民を取り込むよう進言。そのために、農民のリーダーとなっている巨漢・虎痴(こち)の存在を曹操に伝える。

その虎痴とは、曹操の青年期において、共に戦った許チョ(1話登場)であった。曹操は、より多くの民を救いたいのなら、生涯ずっと自分に仕えよ、と許チョを説得。男の熱い友情描写も、高屋敷氏の特徴(少し無自覚天然BLなところあり)。忍者戦士飛影脚本と比較。

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その頃孫堅は、多くの民の指示を得ながら進軍していた。孫堅の家臣や家族達は、荊州を制することができれば天下が見えて来る、と沸き立つ。

孫堅は、ひとり月を眺める。ここも特徴である、「重要キャラクターとしての月」。雲に隠れたり、雲から顔を出すことで、未来を予兆し、現状を照らす。火の鳥鳳凰編脚本(金春氏との共著)と比較。

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孫堅が今後の未来について、月を見ながら考えていたところ、突如として、敵である劉表軍の兵に射られてしまう。

射られてもなお孫堅は倒れず、射手達は恐れをなして逃げ出す。

孫堅は天命が尽きるのを感じ、悔いはないとして、龍となって昇天する。

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虫の知らせか、器が割れ、孫堅の長子・孫策は不吉を感じる。ここも、特徴として「物」が活躍している。めぞん一刻脚本と比較。

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孫堅の魂が龍となり天に昇るさまを、曹操も目撃。巨星が堕ちた事を察するのだった。

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そして長安では、貂蝉董卓に取り入るべく、準備をしていた。雷が波乱の幕開けを知らせる(特徴:天=重要キャラ)。花田少年史・アカギ脚本と比較。

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  • まとめ

今回も、太陽や月といった「天」が活躍している。忍者マン一平(監督)や元祖天才バカボン(演出や脚本)では、太陽や月に顔がついていたり、声を出したりするのでわかりやすいが、本作含めシリアス作品での効果は更に大きく、凄みを感じるほど。

また、今回の主軸となっている孫堅の死であるが、まんが世界昔ばなしの「幸福の王子」演出にて、王子像とツバメの魂が太陽に回収される場面が思い出される。つまり、高屋敷氏が描く死=太陽や月、すなわち天に昇ることであると見て取れる。サブタイトルも、「孫堅昇天」。

だからこそ月は、間もなく天命が尽きる孫堅を「見ている」。そして孫堅も月を見上げる。孫堅は明るい未来を夢見て月を見ていたのだが、無情にも孫堅は死んでしまう。
だが孫堅は、悔いることなく昇天。「悔いがない」ことが強調されるあたり、あしたのジョー2最終回脚本の、「真っ白な灰になるまでやったから悔いがない」丈の、ラストの微笑が思い出される。

そして、蔡ヨウと董卓の問答のシーンにて、高屋敷氏の特徴の一つ、「善悪の区別は単純ではない」が描かれている。本作では、このテーマに割と重きを置いているような感じがする。戦乱の世に、善も悪も無い…からであろうか。

アニメ蒼天航路の特色として、董卓をはじめとした、悪役(?)キャラのかっこよさが目立つことが挙げられる。本作における、高屋敷氏のシリーズ構成方針の軸かもしれない。

一方、貂蝉の男気(女性だが)も描かれる。性差なく高屋敷氏は男気を描くが、貂蝉もまた、固い決意を押し通す強い人間だということを前面に出している。

今回、色々な武将が出て、それぞれの戦場を駆けているが、皆、同じ太陽や月を見ている。彼らは「天」を目指しており、そんな彼らを「天」が見ている。
そういった関係性を感じる回だった。

蒼天航路11話脚本:善悪なき戦場

アニメ・蒼天航路は、同名漫画のアニメ化作品。高屋敷氏はシリーズ構成も務める。
監督は学級王ヤマザキや頭文字D4期などを監督した冨永恒雄氏。総監督は、バイファムやワタルなどのキャラクターデザインで有名な芦田豊雄氏。

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後漢支配下に置いた北方の暴君・董卓(とうたく)に対し、袁紹(えんしょう)を中心にした反董卓連合軍が結成された。その中には、曹操のほか、後の英傑となる劉備張飛関羽孫堅らもいた。

董卓連合軍は、都へ進むための関門である砦・汜水関を落とすべく進軍、戦闘に入る。

曹操は、曹軍の旗をあらゆる隊に持たせる作戦に出る。なぜなら、董卓軍の将・華雄曹操の重鎮・夏侯惇が討ち取った情報が広まっており、曹軍が多いと思わせれば董卓軍が怯むと踏んだためである。

様々な旗の意味深なアップが続くところに、高屋敷氏の特徴が出ている(意思を持つ物)。DAYS脚本でも、意思を持つかのような背番号の意味深アップ・間がある。

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また、曹操は戦況を把握するため駒を使うが、この、駒のアップ・間も特徴的。ここも、駒に意思があるかのように描かれる。カイジ脚本でも、物が意思を持っているような描写が沢山出てくる。

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一方劉備は、自分達(劉)の旗が必要だと言い出す(特徴:アイデンティティを示す物)。
そして、自分達も曹軍のように、戦場に轟くような武勲を上げ、評される事が必要なことに気付く。

都の洛陽では、曹操の思惑通り、曹軍の実際の数がわからず董卓軍は困惑していた。

そんな部下達を、董卓は一喝。その最中、化け物じみた強さの戦士・呂布が名乗りを上げる。
呂布は勝手に董卓の愛馬・赤兎馬を駆り出陣。偶然にも、RIDEBACK(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)では、赤くて馬のような主役ロボットが出て来る。

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RIDEBACK1話(高屋敷氏脚本)のサブタイトルは「深紅の鉄馬」。少し赤兎馬を意識したサブタイトルかもしれない。

一方劉備は宣言通り、ボロ旗ながらも旗を掲げる。そして、両軍が激しく交差する戦場にて、何かとんでもないものが迫ってくるのを感じる。彼の予感は当たり、呂布がやって来る。呂布は敵も味方も関係なく殺し、暴れ回る。

そんな呂布張飛は武者震いし、一騎討ちを挑もうとするが、劉備呂布の人間離れした強さを感じ、関羽張飛を止めるよう頼む。「義弟(おとうと)が死ぬ」と言う劉備の姿に、高屋敷氏の特徴である、疑似家族間の愛情が見て取れる。

劉備の内にある徳の高さを感じ取った関羽は、その気持ちに武をもって応えるべく、自分が呂布と戦うと決意。
ここも、特徴である旗のアップ・間があり、関羽の決意に呼応している。

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また、今回の劉備関羽のように、目と目、手と手で通じ合う描写は、たびたび高屋敷氏の作品に出てくる。ルパン三世3期脚本と比較。

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こうして、関羽呂布の死闘が開始される。劉備関羽の強さに感動し、あらためて天下を取ろうと決意する。

関羽呂布の決闘により、両軍は膠着状態に入る。

それを見守る袁紹は、自軍をこの機に乗じて動かすべきか迷う。
曹操はそんな袁紹を焚き付け、それを受けた袁紹は自軍を動かす。カイジ2期脚本にて、遠藤さんをうまく煽り味方につけるカイジと重なる。

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そんな中、猛牛の大群で反董卓連合軍を蹴散らしながら、董卓が戦場に到着する。
董卓は残虐に兵を殺しまくり、死体の山を築く。
戦場には幼い皇帝も来ており、劉備は、どさくさに紛れて皇帝に接近。劉備の挙動の可笑しさ・無邪気さに、皇帝は笑顔を見せる。高屋敷氏特徴の、年齢性別問わない無邪気さ・幼さが出ている。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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劉備は皇帝に、皇帝の血を引く(真偽不明)自分が天下を取ると宣言して去る。張飛にお姫様抱っこされる劉備が、これまた幼い。

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一方、董卓の残虐さに、反董卓連合は萎縮。やむを得ず、袁紹は兵を撤退させる。

曹操は、敵ながらも董卓の強さと、一見粗暴に見えても、緻密に練られた行動に感心する(特徴:善悪の区別は単純ではない)。

その後、董卓は都・洛陽を燃やす。ここも、「キャラクター」として炎や都市が描かれており、めぞん一刻脚本の、まるで生きているような一刻館などが思い出される。

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また、立ち昇る炎が龍となる。ここも、炎が「生きている」描写となっている。

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洛陽を燃やした後、董卓は都を長安に移し、自らを「太師」と名乗るのだった。

  • まとめ

まず目を引くのは、劉備の幼さ・無邪気さ。その幼さは、純粋さでもあり、戦況を鋭く見ることができる。また、ちゃっかり皇帝に会いに行き、皇帝の笑顔を引き出している所も強調されている。
劉備の無邪気さは、幼い皇帝の孤独を癒す面もある(特徴:ぼっち救済)。

また、「人ではないもの」がキーキャラクターとなっているのも高屋敷氏の特徴。今回は「旗」。旗はアイデンティティを表すものの一つであり、曹操はそれを作戦に、劉備は自分達の存在を知らしめるために使う。アイデンティティの如何も、高屋敷氏の作品によく出てくる。

そして、たびたび出てくる特徴、「善悪の区別は単純ではない」件について。残虐の限りを尽くす暴君・董卓でさえ、少しキレイめにして、かっこよささえ感じられる将として描いている。高屋敷氏は、この「敵ながらかっこいい」さまを描写するため、本作含め原作に大ナタを振るうことがあり、こだわりが感じられる。

終盤では、燃やされる「洛陽」という都市に「生死」があることが描かれている。

燃え盛る炎の中から龍が出現するシーンの強調も、炎が「生きている」ことを表しており、高屋敷氏らしさが出ている。

あと、人ではあるのだが、呂布は今回、雄叫び以外は一切喋らない。演出や脚本で「喋らない“もの”の無言の主張」を描いてきた高屋敷氏にとって、呂布は得意な事を生かせるキャラクターなのかもしれない。

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さらに、劉備の無邪気さに対して曹操の冷静さが描かれる。曹操は大局的に戦場を見ており、関羽呂布といった派手な豪傑を評しながらも、戦場全体を注視している。今回、曹操の役割は一見地味だが、「善や悪を決めつけない」目で戦場を見ている。

カイジ1期最終回(高屋敷氏脚本)にてカイジは、兵藤会長は悪人なのだから敗れるべき、と、戦略なき運に頼り、会長に負けてしまう(一方会長は戦略があった)。また、火の鳥鳳凰編(脚本・金春氏と共著)では、茜丸が、自分より彫刻の才がある我王に嫉妬し、元は犯罪者である彼の彫刻が認められるべきではないと主張。その愚かさを見ていた火の鳥により、茜丸は炎に焼かれ死ぬ。

このように、高屋敷氏の作品は、「悪人だから」「残虐だから」敗れるべき、という屁理屈によって、真の「理」を忘れてしまうことに警鐘を鳴らす。

悪人などという言葉に収まらないほどの暴君である董卓だが、曹操は、その中にある「理」を見つめている。その様は、高屋敷氏の理想とも取れる。派手な役回りの劉備達に負けず劣らず、董卓曹操の魅力が描かれていた回だった。

蒼天航路2話脚本:愛に生きるという「選択」

アニメ・蒼天航路は、曹操の生涯を描いた同名漫画のアニメ化作品。高屋敷氏はシリーズ構成も務める。
監督は学級王ヤマザキや頭文字D4期などを監督した冨永恒雄氏。総監督は、バイファムやワタルなどのキャラクターデザインで有名な芦田豊雄氏。

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ゴロツキ集団・爆裂団の首領に勝ち、生き残った爆裂団を配下に加えた曹操は、洛陽に戻った。

友人・袁紹は、出世コースから外れてしまうと曹操に忠告するが、曹操は気にしない。

そんな折、曹操は街の茶屋で奴隷同然に働かされている胡人(はるか西方の民族)の娘・水晶に目を止める。
曹操は水晶に近付き、水晶を見つめる。
水晶は驚き、茶作りの道具を取り落とす。
ここで道具のアップ・間・動きが入るところに、高屋敷氏の特徴が出ている(物をキャラクターと捉え、演技させる)。あしたのジョー2・めぞん一刻脚本と比較。

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曹操は水晶を馬に乗せて湖へ連れて行き、ともに湖に飛び込む。

顔を隠し、一見汚い身なりだった水晶は、湖の水に洗われ、その美しい姿を晒す。曹操は、水晶が美しいことが最初からわかっていたのだ。
水面には、その「真実」が映る。ここは原作通りではあるが、高屋敷氏の作品では「真実を映す鏡」が多く出てくる。これもまた、鏡をキャラクターと捉えているためと考えられる。
元祖天才バカボン演出、じゃりん子チエ・あしたのジョー2脚本と比較。

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二人は、たちまち恋に落ちる。
水晶は、様々な外国の話や、獅子のこと、色々な天下人のことを曹操に伝える。
そんな水晶の頭に曹操は優しく触れ、
「この小さな頭には面白い話が一杯に詰め込まれている」と誉める。
水晶はその愛情に涙を流す。
高屋敷氏特徴の、優しい手つき。はじめの一歩3期脚本と比較。

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その後も二人は逢瀬を重ねる。ここで夕陽が映る。太陽を高屋敷氏は重要なキャラクターと捉えているようで、よく出る。ベルサイユのばらコンテ、家なき子演出、あしたのジョー2脚本と比較。

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ここでも、夕陽が二人を「見ている」ような存在感を発揮している。

また、二人は馬に乗って夕陽に向かい進んで行くのだが、家なき子演出と似てくる。

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毎度ながら、「脚本」なのに画が共通していくのが不思議。

水晶は、自分の故郷の言葉「アモーレ」を、自分が一番大切にしているものとして伝える。「アモーレ」とは、愛を語る時に使う言葉であった。二人は、ともに「アモーレ」と何回も叫ぶのだった。

ここでも、沈み行く夕陽が二人の運命を示唆するように映る。

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幸せも束の間、水晶は、絶対的な権力を持つ宦官・張譲にもらわれることが決まってしまう。雇い主である茶屋夫婦に逆らえるはずもなく、水晶はひとり泣く。

水晶と結婚するべく曹操が茶屋を訪れるも、時すでに遅く、水晶は張譲のもとへ行ってしまっていた。

曹操は激怒し、その勢いで壷が割れる(特徴:物=キャラクター)。めぞん一刻脚本と比較。

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その夜、不吉を示すような月が出る。月も高屋敷氏の作品では重要キャラクター。チエちゃん奮戦記脚本・元祖天才バカボン演出・エースをねらえ!演出と比較。

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怒りに燃える曹操は、張譲の屋敷を訪ねる。張譲に対面した曹操は、水晶を返せと迫るが、張譲は取り合わない。

このままでは曹操が危険だと察した水晶は、わざと曹操にそっけない態度を取る。
そんな水晶に、曹操はあの言葉、「アモーレ」を使う。

その気持ちを受け取った水晶は、曹操との恋は自分に生きる力を与えてくれたと、曹操に感謝する。
そして、全てを覚悟の上で、水晶は張譲に斬りかかる。だが、水晶の刀は張譲の頬に傷を負わせるのみとなる。

水晶は直ちに張譲の衛兵に刺される。
瀕死の水晶は、曹操に「生きて」と言い、こと切れる。

悲しみと怒りをもって、曹操は襲いかかる衛兵達を斬り殺し、屋敷を出る。

曹操は水晶の遺言の通り、生き抜くことを決める。

そのために、曹操は爆裂団に身を潜めるよう言い渡すが、張譲曹操の家の庭に水晶の死体を吊るすという、残忍な嫌がらせをする。

怒り心頭の曹操だったが、両親に、水晶を曹家の墓に丁重に葬るよう頼み、自身は部尉(警備隊長)の命に従い、牢に入る。

だが、その目は生きることを諦めてはいなかった。高屋敷氏特徴の、不屈の精神。カイジ脚本と比較。

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  • まとめ

まず、サブタイトルの「アモーレ」。高屋敷氏の作品では、「人ではないもの」がテーマになっていたり、重要な役を担っていたりする。

今回の「アモーレ」は、水晶が「一番大切にしているもの」。だからサブタイトルに使われ、話の主軸となっている。

また、太陽や月が全てを見ている。全てを「見ている」は、「未来」も含まれる。だから不吉を示すこともできる。

高屋敷氏が監督を務めた忍者マン一平には、月や太陽に表情がついているため、わかりやすくなっている。

まとめれば、「天」が重要なキャラクターなのだ。後年になればなるほど、その「役割」は重くなり、迫力が増す。「脚本」でも、いや「脚本」の方がその迫力が画面に表れるのが毎度不思議なところである。

そして、水晶の生きざまが描かれる。彼女の哀しい運命は原作通りだが、原作より男気(女性だが)を感じる。高屋敷氏は、様々な作品にて、性別を問わない男気を描いている。

また、「自分の人生は自分で決めろ」というメッセージは高屋敷氏の作品にて数多く発せられているのだが、今回の水晶然り。

太陽の使者鉄人28号41話脚本では、「フローレ博士」と「女王エスコ」という2つの顔を持つ女性が出てくるが、彼女は、死ぬ運命とわかっていても「女王エスコという自分」を自らの意志で選択する。

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今回の水晶も、死ぬとわかっていても「曹操を愛している自分」を選択した。

これは、カイジにも表れていて、カイジに全てを託すことを確固たる意志で決定し死んだ石田さんや、指を切られることがわかっていても、自らの意志で負けを受け入れたカイジに生かされている。

こういった、「己を強く持ち、自分の意志で人生を決めろ」というメッセージは様々な作品にて見受けられるわけだが、そのルーツはデビュー作の「あしたのジョー1」脚本(無記名)にあり、それが脈々と受け継がれているのではないだろうか。

そして、家なき子演出では「前に進め」というテーマが出てくる。

また、あしたのジョー2脚本(特に最終3本)でも、燃え尽きるのがわかっていても、「真っ白」になるまでボクシングをやりたいという、丈の強い意志が描かれている。

こう見ていくと、「自分の意志で人生を決める」ことがいかに大切かがわかってくる。

今回の水晶は、自らの意志で曹操の恋人として生き、散る。
その強さが印象に残る回だった。

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ちなみに少しネタバレすると、曹操はその後、公正な裁判官との問答の末、釈放されている。

蒼天航路1話脚本:「天」を読む者、「天」を掴む

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

アニメ・蒼天航路は、曹操の生涯を描いた同名漫画のアニメ化作品。高屋敷氏はシリーズ構成も務める。
監督は学級王ヤマザキや頭文字D4期などを監督した冨永恒雄氏。総監督は、バイファムやワタルなどのキャラクターデザインで有名な芦田豊雄氏。

冒頭、中国の空想上の怪物・トン(犭貪)の話が語られる。トンは世界の全てと自身を喰らい、世界を無にするという。
映像が、高屋敷氏が演出や脚本をした、まんが世界昔ばなしの雰囲気に似る。
また、太陽のアップ(特徴)も入る。太陽の使者鉄人28号脚本・家なき子演出と比較。

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物語(蒼天航路)についてのナレーション中、太陽に照らされた玉座が映る。

ここも、物(玉座)をキャラと捉えていて(特徴)、存在感がある。家なき子演出と重なる。

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そして太陽が映り、主人公の曹操が映る。特徴の、太陽=重要キャラ。太陽の使者鉄人28号あしたのジョー2脚本と比較。

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後漢の宦官・曹騰(そうとう)の養子・曹嵩(そうすう)の子として生まれた曹操は、快活な少年。曹操と曹騰は、血のつながりがなくとも仲がよい(特徴:疑似家族)。
曹騰もまた、高屋敷氏の作品に多く登場する、やさしいお爺さん。はだしのゲン2・めぞん一刻花田少年史脚本と比較。

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曹操は曹騰から、書物を曹嵩に届けてほしいと頼まれる。曹操は、義理の従兄弟で幼馴染みの曹仁と共に、書物を持って外へ出る。
都は治安が悪く、民衆は貧困にあえいでいた。
偶然にも、高屋敷氏はベルサイユのばらコンテにて、フランス革命直前時代の貧民の様子を描いている。

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曹操曹仁は、貧民が屯する通りにて、賊に襲われる。刃物を向けられても毅然とする曹操の鋭い眼光に、賊はひるみ、眼が気にくわないとして曹操に酷い暴行を加える。
カイジ2期脚本では、全てを賭ける覚悟を決めたカイジの鋭い眼差しを、遠藤さんが直視できない描写がある。

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曹操は結局、書物を賊に奪われる。が、傷つきながらも曹操は賊に追い付き、剣で賊を斬る。
曹仁は、なにも殺さなくても…と言うが、曹操は、人を脅し殺める者を「天も我も許さじ」と言う。高屋敷氏は「天」を重要キャラと捉えているので、ここを相当に強調している。

その後曹操は、文武両道に秀でる若者に育つ。

ある日、曹操が盗賊狩りをしていたところ、仲間が盗賊に殺されてしまう。そこへ、許チョという巨漢の若者が加勢に入る。許チョの大声で盗賊達が怯むが、じゃりん子チエ脚本にて、ヒラメの音痴さに皆が倒れる回が思い出される。

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許チョ曹操は意気投合。曹操は、仲間に会いに行くために許チョと川を下る。
許チョは月を読むことができ、明日は嵐になると予測。高屋敷氏特徴の、月=重要キャラ。火の鳥鳳凰編脚本・元祖天才バカボン演出・一歩3期脚本と比較。
また、天の流れを読めるキャラも強調される。 

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許チョは「お月様は15個ある」と主張し、それを聞き曹操は笑う。高屋敷氏特徴の、無邪気で幼い描写。絵に関与できない「脚本」でも、画が似通うのが毎度不思議。忍者戦士飛影・DAYS脚本と比較。

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曹操許チョは、明日再会することを約束し別れる。そして曹操は、後の曹操軍四天王となる仲間、夏侯惇、夏候淵、曹仁曹洪と会う。
ここも、月が印象的に描かれ、月が一同を引き合わせる役割をしている。はじめの一歩3期脚本でも、沢村とライバル達を、月が引き合わせる。

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曹操夏侯惇らは、爆裂団というゴロツキ集団と対立しており、彼らを倒すための会議をする。ここで、高屋敷氏特徴の火のアップ・間が出てくる(火=重要キャラ)。太陽の使者鉄人28号・チエちゃん奮戦記・花田少年史脚本と比較。

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爆裂団のリーダー・李烈は、自らを始皇帝に続く者と名乗り、仲間を増やしていた。
曹操は、李烈の「舌」、つまり李烈の論を覆すことが勝ちへの道だと説き、作戦を任せて欲しいと言う。
舌を出す描写は、高屋敷氏の作品によく出てくる。多数あるのだが、カイジ2期脚本と並べてみた。

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翌日、李烈と対峙した曹操は、問答の末、李烈を論破。論を交わす姿が、カイジ2期脚本のカイジと一条を思わせる。

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また、許チョの予測通り、天候は嵐となり、それを利用して、曹操は爆裂団を破る。アカギ・ルパン三世3期脚本も、自然が大きな役割を担う。

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許チョの活躍もあり李烈は戦死。爆裂団の生き残りは曹操達の配下となる。
許チョ曹操から報酬を得る。そして、曹操の頭巾を友情の証として貰う(特徴:物=キャラ)。ルパン三世3期と比較。

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ここも太陽がキャラとして印象的に描かれている。はだしのゲン2脚本と比較。

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  • まとめ

冒頭の、トンについての伝説パートが、まんが世界昔ばなしっぽい件は、高屋敷氏も、今回コンテの芦田総監督も、まんが世界昔ばなしに参加していたためかもしれない(芦田氏は主にキャラクターデザイン)。
まんが世界ばなしは様々なクリエーターの素の部分が出ており、非常に貴重な作品。

今回の目玉は、曹操許チョが月や天候など、「天」を読み、かつ味方につける事ができるキャラだということを強調している点。
今回の曹操のように、ワンナウツ(脚本・シリ構)でも、渡久地が雨を味方につけている。また、太陽の使者鉄人28号脚本でも、火山を利用する。

そして今回も、太陽や月が、キャラクターとして大きな役割を担っている。演出時代から目立つ高屋敷氏の特徴だが、年を経るにつれ、そのストーリー性や重要性が増している。
「なぜ月や太陽を映すのか」の意図が明確になっており、意思を持つかのような殺気がある。

脚本面の技術としては、わずか22分前後の尺に、色々と話を詰め込み、曹操の少年期~青少年期を1話内でやりきっている驚異の圧縮術が光る。
これは、1980年版鉄腕アトム脚本にて磨かれたと思われる。1980年版鉄腕アトムは、脚本の密度の濃さが目を引く作品。

また、1話のクライマックスとして、李烈と曹操の問答~戦闘を持ってきたのも、非常に高屋敷氏らしい構成。
論をもって戦を有利に導くのは、あらゆる作品で言葉の駆け引きを描写してきたことが生きている(カイジの脚本・シリーズ構成含む)。

序盤の、少年期の曹操が賊を斬るエピソードでは、高屋敷氏が得意とする「少年から男への豹変」が描かれている。
家なき子最終回演出はじめ、めぞん一刻(脚本・最終シリーズ構成)の五代、カイジ(脚本・シリーズ構成)のカイジなども、無邪気な青年が「男」に豹変する様が描かれている。

曹操は、一人の「男」であるが、後に魏を起こす「覇者」でもある。
その「覇者」たる者は「天」や「自然」を読み、味方につける力を存分に持っているということが、今回強調されている。

本作では、「男への成長」と共に、「覇者への成長」も描く必要がある。
そのため、前述の「天や自然を読む力」を持っている曹操の姿を描くことに重点を置いていると思う。言うなれば、「天」を掴むには、「天」を知らなければならない。

カイジの脚本・シリーズ構成においても、「天」は何度も強調される。ある意味天下を知る兵藤会長を倒すには、カイジは「天」を読まなければならない。カイジの場合、あくまで「地」または「地獄」から、「本物の天」を読み、「偽の天」を討つべしという構成になっている。

カイジ2期脚本では、「天は人の上に人を造らず」という諭吉の格言を、カイジが「チャンスを掴めばバカでもクズでも勝者」と解釈する様を相当に強調している。ここでも「天」。カイジは覚醒すると、「天」がもたらすチャンスを読もうと努力し、具体的な知略を巡らす。

曹操カイジ、まったく違うように見えても、「天」を読める点では同じ。他の作品でも、そういうキャラは多い(特に主人公)。
主人公は、ものいわぬ「天・自然・物」の声を聞き、流れをを読める人間であってほしいという、高屋敷氏のポリシーを再確認できる回だった。

太陽の使者鉄人28号47話脚本:「己」を失う恐ろしさ

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。) 

「太陽の使者鉄人28号」は、鉄人28号のアニメ第2作。
少年・金田正太郎は、父が遺した鉄人28号と共に、インターポールの一員として悪と戦う。
監督はゴッドマーズ監督の今沢哲男氏。

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フランスのベルサイユ宮殿に展示されていた王冠・「マリーの瞳」が、謎の巨大ロボットにより盗まれるという事件が発生。
高屋敷氏はコンテ、本作監督の今沢哲男氏は演出として「ベルサイユのばら」に参加しており、そこからのネタと思われる。

また、美術品を盗むというのが、ルパン三世(高屋敷氏脚本or演出)やキャッツアイ(同氏脚本)を彷彿とさせる。今回のは、ダイナミックすぎるが。

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犯人は自称ドロンボ党総裁・ドロンボ。
高屋敷氏のルパン三世脚本回に、「トロンボ」という警察官が出てくるので、名前の使いまわしが見られる。元ネタ自体は「泥棒」や「刑事コロンボ」のもじりだが。高屋敷氏の名前付けは、言葉遊びや楽屋ネタが多い。 

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ドロンボは、ドイツの研究所から盗んだロボット・イカロスを駆り、美術品を盗んでは闇ルートに流すという犯行を繰り返していた。
そして今度は鉄人を盗むことにする。
ドロンボの秘書はビジネスライクで個性的な美女。ルパン三世における高屋敷氏の脚本や演出の不二子もビジネスライク。

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ドロンボは、鉄人を盗む事は自分にうってつけの仕事だと、自信満々でグラスを見つめる。
高屋敷氏特徴の「真実を映す鏡」演出。
キャッツアイ・忍者戦士飛影脚本、ベルサイユのばらコンテと比較。

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イカロスはいつもカナダ上空でレーダーから消えるので、ICPOはドロンボのアジトがカナダにあると推測。
正太郎・大塚警部・鉄人は早速カナダへ飛び、地元警察のギャバン警部に会う。ギャバン警部の喫煙仕草が渋い(特徴)。アカギ・カイジ脚本と比較。

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正太郎達は、イカロスが消える地点の周囲を調べる。
それを知ったドロンボは、盗む対象が自らやって来たとして、イカロスで鉄人を迎撃する。
だが、イカロスは鉄人に苦戦。そこでドロンボは正太郎を狙う。悪役としてはマナー違反だが、敵も頭を使うのが高屋敷氏の特徴。

イカロスに追い詰められた正太郎は、崖から川に転落してしまう。
大塚警部達が必死に捜索するも、正太郎は行方不明に。
ここで、特徴である夕陽のアップ・間が入る。ベルサイユのばらコンテ、コボちゃんめぞん一刻脚本と比較。

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正太郎が見つからず、大塚警部は泣く。高屋敷氏の作品では、おじさんが泣く場面もよくある。ルーツは、脚本デビューの「あしたのジョー1」にて段平がよく泣くところからではないかと思われる。
カイジ2期脚本と比較。

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一方正太郎は、ドロンボに助けられるも、捕らわれの身になっていた。ドロンボの目的は、鉄人の操縦法をコンピューターにインプットすること。
それを強く拒む正太郎だが、特殊な機械により催眠をかけられてしまう。

その頃、敷島博士(正太郎の父の友人)とブラックオックス(鉄人のライバルだった自律ロボ)は、大塚警部達の応援に駆けつけていた。
ドロンボは、格好のデモンストレーションになるとして、催眠にかかった正太郎が操る鉄人と、ブラックオックスを戦わせる。催眠にかかって己を失った正太郎と、ギャンブルに脳をやられ己を失ったカイジ(脚本)を比較。

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鉄人とブラックオックスは互角の戦いをする。
その最中、正太郎が催眠にかかっているのに気付いた敷島博士は、ブラックオックスで正太郎を捕らえる。
一回気絶し、目覚めたことで催眠が解けた正太郎は、鉄人を正しく操り反撃。ブラックオックスと共にイカロスを倒す。

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ドロンボはイカロスから脱出するも、捕らえられる。
ジタバタするドロンボには愛嬌があり、中高年のコミカルな描写が上手い高屋敷氏の特徴が出ている。ルパン三世2nd演出と比較。

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また、喜ぶ大塚警部達が可愛い(特徴)。監督作忍者マン一平と比較。

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その後、ドロンボのアジトも発見され、闇ルートも明らかに。
レストランにて、正太郎達は乾杯するのだった。
満月に向かい乾杯しているような画に、月を重要キャラと捉える高屋敷氏の特徴が出ている感じがする。
監督作忍者マン一平蒼天航路脚本と比較。 

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  • まとめ

今回の脚本は、ファンに人気のあるブラックオックスと、鉄人を戦わせる状況を作る目的があるような気がする。確かにこの2機が戦う姿はかっこいいので、ブラックオックスが味方側についてもなお、鉄人と戦う姿が見たいというファンが多かったのでは。

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そして、高屋敷氏が打ち出すテーマの一つ、「己を強く保て」もよく出ている。
己を失った正太郎が操る鉄人は、恐ろしい兵器となってしまう。
また、鉄人は正太郎のアイデンティティの一つなので、高屋敷氏作品によくある、アイデンティティ喪失の危機でもある。

思えば、本作の高屋敷氏脚本担当作にて、正太郎はコントローラーをなくしたり、コントローラーを操る要である手を怪我したり、敵に催眠をかけられたりしている。
つまり、人間側に試練を与える展開が多い。それを克服してこそ一人前ということかもしれない。

「一人前」という概念は、高屋敷氏が多く演出を担当(最終回含む)した家なき子に、よく出てくる。家なき子では、「男は、いつか一人で生きていくもの。誰にも頼らず自分の力で生きてこそ一人前」というビタリスの教えが軸になっている。

そして、この「太陽の使者鉄人28号」では、人間側の正太郎に試練を課すことで正太郎が「一人前」になることを望んでいるような感じを受ける。ただ、あくまで「自発的」にそれができるよう促しており、今川版ジャイアントロボのような、父との関係についての苦悩はない。

今回、己を失った状態がどれほど恐ろしいかを描いているが、カイジ2期脚本でも、一見コミカルな、地下でカイジが久々にビールを飲むシーンにて、それが表れている。禁欲から解き放たれた時こそ、人間は己を失って欲に溺れるという真理を描いており、それを知る班長の恐ろしさも描かれている。

正太郎もカイジも、まさに死と隣り合わせの試練を与えられている。
それは、家なき子で提示された「一人前」となるための布石とも取れる。
そう考えると、高屋敷氏は、家なき子に相当な思い入れがあるのではないだろうか。
太陽の使者鉄人28号とは、年代も近い。

あと、再度「己を強く保て」について述べると、カイジの構成・脚本にて「オレがやると決めてやる。ただそれだけだ」や、やさしいおじさんの「帝愛じゃねえ、俺だ。俺がやるって言ってんだ」など、原作通りだが「己を強く持つ」台詞が相当に強調されている。

特に「帝愛の黒服」の一人にすぎなかった「やさしいおじさん」が自我を取り戻し、カイジを助けるのは重要な事として強調されている。
カイジもまた、2期1話の、ギャンブルに脳を焼かれ己を失っていた状態から、試練を通して自我を取り戻し、人間愛を発揮する。

今回、催眠にかかった正太郎は、鉄人の恐ろしさを示すが、正気に戻ると、鉄人を正しく使い悪を倒す。
一方、カイジにおいては「金」という力をどう使うかを問われ、最終的に、カイジは自分の意志で、人を救う事に使う。
そんな、力の使い方の共通性も感じた回だった。

太陽の使者鉄人28号41話脚本:自分とは何か

「太陽の使者鉄人28号」は、鉄人28号のアニメ第2作。 少年・金田正太郎は、父が遺した鉄人28号と共に、インターポールの一員として悪と戦う。 監督はゴッドマーズ監督の今沢哲男氏。

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インカ帝国ゆかりの都市・ペルーのクスコが、ロボット蜂の大群と、それを率いる謎の円盤に襲われる事件が発生。

首謀者・エスコは、自らを甦ったインカ帝国の女王と名乗り、クスコをインカ帝国再建のため明け渡せと迫る。

この事件を受け、正太郎・大塚警部・敷島博士(正太郎の父の友人)・鉄人はペルーへ飛ぶ。ここで、地図が表示される。高屋敷氏の作品で地図は頻出。挙げればキリがないが、ルパン三世2nd脚本・演出、マッドハウス版XMENと比較。

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ペルーに到着した正太郎達は、現地警察のベラ警部に歓迎される。彼もまた、高屋敷氏の特徴である、味のあるおじさんキャラの一人。ルパン三世2nd脚本と比較。

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ベラ警部によると、エスコはインカ帝国時代の女王像に瓜二つで、その女王像は何者かによって盗まれてしまったという。

この説明場面でプロジェクターが使われるが、プロジェクターを使う場面はよく出てくる。ルパン三世2nd演出と比較。

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プロジェクターを使う場面は、あしたのジョー1脚本疑惑回(無記名)にも出ており、益々疑惑が強まる。

ベラ警部は、エスコが操るロボット蜂のうち、墜落した1機の修理を敷島博士に依頼する。直れば、エスコのもとへ戻る筈だから、彼女の居場所が掴めると踏んだためである。敷島博士は快諾。

ここで、時間経過を表す夕陽が映るが、夕陽も高屋敷氏の作品には付き物。太陽を重要なキャラクターと捉えているためと思われ、スタッフや年代が違っても映像が似てくる。 コボちゃん花田少年史蒼天航路脚本と比較。

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ロボット蜂は直るが、直った途端にビルを突き破って飛び立ってしまう。正太郎達は、急いでヘリで追いかける。

ヘリや発信器描写も、高屋敷氏の作品によく出てくる。1980年版鉄腕アトム脚本・ルパン三世2nd演出と比較。

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エスコの居場所がマチュピチュの神殿と判明するも、エスコも鉄人が向かって来るのを察知、ロボット蜂の大群を差し向ける。

鉄人はロボット蜂の群れに対し善戦するも、数匹のロボット蜂がブースターに入ったトラブルで墜落。

正太郎達は何とかロボット蜂の群れから逃走。ロボット蜂達はエスコのもとへ帰る。

鉄人の故障は軽微のため、敷島博士がすぐに直してくれることに。

そこへエスコが現れ、近くの街・サンピエに対し、女王の力を見せると言い放つ。

正太郎達がサンピエに赴くと、サンピエが忽然と消えてしまう。

クスコに戻った正太郎達は、サンピエが消えたことに戸惑う。
一方、敷島博士は鉄人の修理を完了。また、敷島博士は、エスコがフローレという博士にそっくりな事を指摘。

フローレ博士はタイムマシンの開発を進めていたが、行方不明になっているという。

敷島博士は、フローレ博士が過去に行き、サンピエを破壊したため、サンピエが消えてしまったのでは、と仮説を立てる。

その時、エスコが現れ、クスコを明け渡せと迫る。正太郎は鉄人を操り、エスコの円盤と戦闘。

エスコの円盤は回転ノコギリのような攻撃をしてくるが、回転ノコギリはしばしば高屋敷氏の作品に出てくる。元祖天才バカボン演出と比較。

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戦闘の最中、エスコの円盤はタイムマシン機能を発動。タイムマシン機能は周囲を巻き込む仕様で、鉄人と正太郎も、インカ帝国時代にタイムスリップしてしまう。

タイムスリップした鉄人が、太陽を背に降りてくるシーンが、高屋敷氏の色々な作品と似てくる。挙げればキリがないのだが、忍者戦士飛影脚本と比較。

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これもまた、同氏が太陽を重要キャラと捉えているためと思われる。エスコの部下が「太陽の中から現れた」とも言うので、脚本段階から意図されている画と言える。

正太郎と鉄人が降り立ったのは、インカ帝国時代のサンピエだった。町は破壊されており、長老によれば、エスコがいきなり襲って来たらしい。

それを聞いた正太郎は、現代のサンピエが消えた理由を理解。そこで、鉄人を使い町の復興を手助けする。

「まんが世界昔ばなし」における高屋敷氏脚本の「ガリバー旅行記」でも、ガリバーが原作通り小人の国のために色々貢献するのだが、それが思い出される。

鉄人によるサンピエの復興を知ったエスコは、再度サンピエを襲いに来る。

そうはさせじと、正太郎は鉄人で迎え撃ち、エスコの円盤を半壊させる。

だが、墜落した円盤に近付いた正太郎は、エスコの部下に捕らえられてしまう。

エスコに対面した正太郎は、彼女の正体がフローレ博士なのではないかと問い詰める。

エスコはそれを認め、過去に盗んだ女王像を見せる。像がよく出るのも、高屋敷氏の特徴。ルパン三世2nd演出と比較。偶然にも、ルパン三世2nd演出回でも、盗む対象が像である。

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 エスコ(フローレ博士)は、ペルーに旅行中、自分にそっくりな女王像を見て、自分がタイムマシンを完成させてインカ帝国時代に行き、女王になったのだと悟る。

タイムマシンを完成させてインカ帝国時代に降り立ったフローレ博士は、自分のテクノロジーを見せ、一気に女王となったのだった。

だが、インカ帝国の史料を調べるうち、自分が鉄人に殺される未来を知る。

ここで、不吉を知らせる鷲が映るが、こういった鳥演出も、高屋敷氏の特徴。長年一緒に仕事した出崎統氏の影響と思われる。高屋敷氏の鳥演出は、物語性があるのが特色。ルパン三世2nd演出と比較。

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エスコは、自分の運命を変えるには鉄人を倒すしかないと言い、鉄人と戦うために正太郎を解放する。なかなか男気のある行為で、性別問わず男気を描写する高屋敷氏らしい。

これを受け、鉄人とエスコは戦う。死闘の末、鉄人はエスコの円盤に勝つ。正太郎は、一緒に現代に帰ろうとエスコに呼び掛けるが、彼女は女王としてのプライドを見せ、最後の力でタイムマシン機能を発動。正太郎と鉄人を現代に帰す(特徴:単純ではない善悪)。

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エスコの円盤は爆発四散し、正太郎と鉄人が現代に帰ると同時に、円盤の破片が降ってくる現象が起きる。不思議な光景に、大塚警部達は驚き、また、正太郎と鉄人の帰還を喜ぶ。

正太郎達が現代に帰って来た時も、太陽が重要キャラとしてクローズアップされている。これも例が数多くあるのだが、あしたのジョー2脚本と比較。

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帰って来た正太郎に、大塚警部は、消えたはずのサンピエが元通りになったことを告げる。

そのサンピエの一角には、インカ帝国時代に描かれた鉄人の姿があったのだった(特徴:物言わぬものが“語る”)。ルパン三世2nd脚本と比較。

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  • まとめ

今回の目玉は、エスコの性別を超えた「男気」。運命に抗うため、鉄人との決闘を選び、最後まで女王のプライドを捨てなかった彼女には、男っぽいかっこよさがある。

これは、出崎統監督の特徴で、男気のある女子高生ばかりだったエースをねらえ!演出時代に培われたものと思われ、多くの高屋敷氏の作品で発揮されている。

こういった「男の魅力」はカイジのシリーズ構成・脚本でも如何なく発揮されており、覚醒したカイジのかっこよさに多いに貢献している。

あと、今回のテーマの一つとして「アイデンティティの如何」がある。これも、よく出てくるテーマで、今回は、エスコ・フローレと、二つの自分に揺れるエスコの姿が描かれている。最後には、彼女は「エスコとしての自分」を選び、女王として散る。

対して、正太郎は「フローレ博士」として彼女を扱い、一緒に帰ろうと呼び掛けるわけだが、それは正太郎の優しさでもある。これはこれで、正太郎の「男気」が描かれている。

このように、今回は「男気」「アイデンティティ」「プライド」が柱となっていると考えられる。

この3つはカイジのシリーズ構成・脚本でも大きい位置を占めており、カイジはじめ「男気」がある魅力的なキャラが出て、石田さんの最期はじめ「矜持」が描かれ、人間競馬や鉄骨渡りを通し、カイジは自分のアイデンティティの如何を問われる。
極限状態のなか、カイジは自分のアイデンティティとも言える「人間らしい優しさ」を捨てない選択をしていく。

そう見ていくと、今回のエスコ(フローレ博士)も、自分とは何かを考え、彼女なりの選択をしたと言える。それが悲しいものであろうとも。

今回は、「己を強く保て」というメッセージが強く、それは高屋敷氏の様々な作品で打ち出されている。テーマ的には、カイジのシリーズ構成・脚本のルーツを色濃く感じる回だった。

 

太陽の使者鉄人28号32話脚本:「主人公と中高年の交流」を強調するための布石

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

「太陽の使者鉄人28号」は、鉄人28号のアニメ第2作。 少年・金田正太郎は、父が遺した鉄人28号と共に、インターポールの一員として悪と戦う。 監督はゴッドマーズ監督の今沢哲男氏。

━━━

まず、サブタイトルの「死闘!白夜の対決」。
高屋敷氏のルパン三世2nd演出コンテ作に「白夜に消えた人魚」というサブタイトルの回があり、それと重なる。どちらともノルウェーが舞台なのも共通する。

北海にて、雷神トールと名乗る巨大ロボットとバイキング達により、輸送船が次々と襲われる事件が発生。

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雷神トールは雷を操るが、雷が1キャラクターとして波乱を告げる場面は多々ある。
1980年版鉄腕アトム花田少年史・アカギ脚本と比較。

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北海での輸送船襲撃事件が続発する最中、ノルウェーからNYまで美術品を船で運ばなければならないノルウェーは、正太郎と大塚警部、鉄人に美術品の警備を依頼する。

大塚警部が地図で説明する場面、舞台が同じノルウェーなだけあり、ルパン三世2nd演出と重なる。 

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その頃ノルウェーでは、地元警察のオーギャン警部とニガール部長が波止場に佇んでいた。

特徴の出崎演出持ち込みの波止場描写。エースをねらえ!演出、ルパン三世2nd演出、アカギ脚本と比較。不思議なのは、「脚本」でも波止場描写が似てくること。

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オーギャン警部は定年間近の渋い刑事で、ニガール部長は、そのよき理解者。
とにかく高屋敷氏の作品では、味のある中高年が沢山出てくる。
渋いカテゴリということで、アカギ脚本と比較。

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ところで、同じくノルウェーを舞台にしたルパン三世2nd演出回でも、「ニガール」という名前のキャラが出てくる。どちらも警官だが、性格と外見は大きく異なる。

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オーギャン警部は、正太郎達と共に美術品の警備をすることになっているのだが、今まで自分流の仕事をしてきた彼にとって、それはあまり面白くない事だった。
高屋敷氏特徴で、煙草演出が渋い。1980年版鉄腕アトムカイジ2期脚本と比較。 

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オーギャン警部と正太郎達は、なんとなく気まずい雰囲気になりながらも、美術品を積んだ船に乗り込む。
出港時に太陽が映る(特徴:太陽は重要キャラ)が、同じノルウェーが舞台のルパン三世2nd演出でも太陽が強調されている。

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船が沖に進むと、雷が発生して雷神トールとバイキングが出現。鉄人は雷神トールに、オーギャン警部達はバイキングに苦戦。
混戦の中、正太郎、大塚警部、オーギャン警部は海に投げ出されてしまう。
一度敗北を味わう展開は、高屋敷氏の作品によくある。

正太郎達は巡視船に救出されたものの、輸送船は奪われてしまう。更に、大塚警部は負傷。
そんな中、責任を感じたオーギャン警部は辞表を出し、単身ベルゲンに向かう(特徴:体を張る中高年)。

オーギャン警部を放っておけない正太郎は、鉄人に乗ってオーギャンを追う。自暴自棄のおっちゃんの元にカイジが来てくれる場面が思い出される。カイジ脚本と比較。主人公が中高年に優しいのも、高屋敷氏の特徴。

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素直ではないものの、オーギャン警部は正太郎の同行を認める。
オーギャン警部がベルゲンに向かうのは、長年の刑事の勘からだった。また、ベルゲンは(北欧神話の)トールやバイキングゆかりの地でもある。

オーギャン警部の勘は当たり、フィヨルドの一角にて、盗まれた輸送船を発見。だが、美術品や乗組員は見つからなかった。
鉄人が来ているのを知った敵の首領・ノースゲルは雷神トールに乗り出撃。鉄人と死闘を繰り広げる。

一方でオーギャン警部は対人戦にて雑魚を次々と倒す。
鉄人は雷神トールの雷攻撃に苦戦するも、諦めずに立ち上がる(特徴:不屈の精神)。カイジ脚本にて、カイジの諦めない姿勢が強調されていたのが思い出される。

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また、何度も立ち上がる展開は、あしたのジョー脚本にも通じるものがある。
鉄人は持ち前の頑丈さで雷神トールに反撃し、とどめのフライング・キックで雷神トールを粉砕する。

事件解決後、レストランの松明の炎のアップが映る。特徴の、「自然や物がキャラクターとして語る・見ている」描写。特に火は頻出。
ベルサイユのばらコンテ、あしたのジョー2脚本と比較。 

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ニガール部長は、正太郎達に感謝する。またも不思議な特徴で、「脚本」からでも喜ぶリアクションが可愛い。1980年版鉄腕アトム脚本と比較。

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そしてオーギャン警部に対し、ニガール部長は辞表を返す。思いを伝える「紙」も頻出。エースをねらえ!演出と比較。

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それを受け、オーギャン警部は辞表を松明に投げ入れて燃やす。ここも、火が「役割」を持っている。MASTERキートン脚本と比較。

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オーギャン警部は、定年までの残り少ない時間を警官として生きることに決め、次の任務に向かうのだった。
「プロの背中」ということで、MASTERキートン脚本と比較。

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  • まとめ

香港が舞台ということで、同作脚本28話と、ルパン三世2nd43話脚本の共通点が多かったのに続き、今度はノルウェーが舞台ということで、ルパン三世2nd演出コンテの147話とリンクしている。名前まで被る(ニガール)のは驚き。

また、登場する地名も、ルパン三世2nd演出と被る(ベルゲン)。推測だが、ノルウェーに関してルパン三世2nd演出に入れられなかった要素を、今回に回しているのではないだろうか。

やはり不思議なのは、「演出」でも「脚本」でも、出る個性が共通している点。演出では話に、脚本では画に、殆ど関与できないと思われるのだが、映像が似てくる。
ただ今回を見るに、脚本にて自分の好きな状況を作れる事が、何となく窺える。

例えば、出崎兄弟演出的な波止場を登場させるには、船で美術品を輸送するという状況を設定すればよい事などが挙げられる。
また、同氏特徴の太陽に関しても、白夜という設定にすることで、太陽を多く登場させる事ができる。ベルサイユのばらコンテと比較。

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また、同氏が好きなシチュエーションと思われる、中高年と年下の主人公との交流も、強調するための装置が脚本にあるような気がする。
カイジ脚本でも、石田さん・おっちゃんとカイジとの交流が強調されるように設計されている。

今回、オーギャン警部と正太郎の交流を強調するために、後半は大塚警部が怪我でリタイアする。まさに「脚本の都合」。
また、高屋敷氏のロボットアニメに対するポリシーとして、生身の人間の戦いも描かれる。

こうして見てみると、演出でも脚本でも、高屋敷氏は「自分の好きなもの」を出すための「装置」を作るのが上手いのではないだろうか。
年を経ると、脚本にて、その能力が多いに発揮されることになる。

1980~82年は、高屋敷氏が演出と脚本、両方の仕事を掛け持ちしていた過渡期かつ重要な年でもある(特にジョー2脚本)。
また、今回の「脚本」のネタ元に、ルパン三世2ndの「演出」が使われているのは面白い。

これを見るに、高屋敷氏にとって「脚本」と「演出」の距離は近いのかもしれない。
演出には脚本の経験を、脚本には演出の経験を使えている。
脚本と演出の相関関係について、考えさせられた回だった。