カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

飛べ!イサミ9話脚本:法則ふたたび

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

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本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

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  • 今回の話:

サブタイトル:「しのびよる影」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ:小林治氏(亜細亜堂の方)、演出:池端隆史氏。

トシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)の父・泰之が、取り違えで、悪の組織・黒天狗党の重要書類を手にしてしまい、騒動が起こる。

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悪の組織・黒天狗党は、外国へ兵器を売る件について会議を行う。
瞳に何かが映る描写は、蒼天航路・F-エフ-(脚本)など、時折ある。

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土曜日、トシ・ソウシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)・イサミは、イサミ宅の秘密地下室に集まり宿題をする。
勉強会のシチュエーションは、オヨネコぶ〜にゃん・めぞん一刻(脚本)にもある。

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トシは宿題より、スーパーの割引広告に夢中。日曜に両親が出かけるため、一日主夫を買って出たためだ。
マイメロディ赤ずきん(脚本)も、おつかい場面(買い物ではないが)が話のツカミになっている。

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夕方、イサミはトシのはりきりようを、祖父の観柳斉に話す。
長年高屋敷氏が一緒に仕事した、出崎統氏ゆずりの夕陽描写は、数々の作品に見られる。家なき子(演出)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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一方、黒天狗党員は、兵器売却の重要書類を、カラス天狗(黒天狗党の下部組織)の烏丸ヒロ子に渡すが、書類がうなぎの買付報告書だったので怒られる。
紙でのギャグは、ど根性ガエル(演出)やコボちゃん(脚本)ほか、しばしばある。

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天狗党員は、表向きは芹沢グループの部長で、同グループの課長でトシの父・泰之の書類と自分の書類を取り違えた事に気付く。
ブラック組織の苦労人描写は、カイジ2期・忍者戦士飛影(脚本)も印象的。

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日曜、トシは、母の園絵から留守番をしっかりするよう念を押される。泰之・園絵が出かけると、トシは、寝てしまえば何も起きないとして寝ようとする。
呑気に寝るのは、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)や、マイメロディ赤ずきん(脚本)などにもある。

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だが、ケイ(トシの弟)がおねしょをしてしまい、トシはその後処理に追われる。
おねしょネタは、オヨネコぶ~にゃん(脚本)などにあるほか、忍者マン一平(監督)にも、「おねしょ菌」なるものがバラまかれる話がある。

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気を取り直して朝食を作ろうとするトシだが、目玉焼きに落ちた卵の殻を取ろうとして火傷。
高屋敷氏は飯テロも多いが、食べ物が台無しになる描写もある。おにいさまへ…(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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そこへ、トシがうまくやってるか心配になったイサミとソウシ、とゲンベェ(イサミの飼い犬)が訪ねてくる。
心配してくれたり励ましてくれる友達の描写は、グラゼニ(脚本)でも色濃い。

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イサミ、ソウシ、ゲンベェが来たことを知ったケイは、おねしょをした布団を隠そうと慌てる。
コボちゃん(脚本)にも、おねしょ隠蔽作戦の話がある。

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結局目玉焼きを焦がしたトシは、ツナトーストを作ろうと、ツナ缶を取り出す。
ここも、食べ物台無し描写。
あしたのジョー2(脚本)では断腸の思いでサンドイッチを捨てる場面がある一方、ルパン三世3期(脚本)では、すんでの所で食事を死守する場面がある。 

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トシが缶切りを探していると、家の中に乱入したゲンベェが、散らかしながらも缶切りを見つける。
犬の活躍(?)は、めぞん一刻(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)など色々な作品に見られる。

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ソウシは、一時停止になっていた洗濯機を、よかれと思って再開させるが、洗濯機にはケイが突っ込んだ布団が入っており、そのせいで床が水浸しになる。
荒ぶる洗濯機描写は、あしたのジョー2(脚本)や忍者マン一平(監督)にもある。

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家が荒れ放題になってしまったトシは、イサミ・ソウシ・ゲンベェを追い出す。
よかれと思ってやった事で迷惑をかける展開は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や、オヨネコぶ~にゃん(脚本)などにもある。

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イサミ・ソウシ・ゲンベェを見かけた数馬(イサミの叔父で刑事)は、落書き魔を探しているので、不審者を見つけたら通報するよう頼む。
割と苦労人の警察官は、じゃりン子チエ(脚本)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)などにもいる。

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掃除に追われる最中、トシは泰之から、書類を忘れたから会社に届けて欲しいと電話で頼まれ、渋々了解する。
父親の書類を会社に届ける話は、コボちゃん(脚本)にもある。

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トシに置いて行かれ、むくれたケイはゲームする。
その最中、書類を探しに上がり込んだ、黒天狗党系列の芹沢グループ社員は、家の汚さに呆れる。
人間くさい犯罪者や反社は、MASTERキートン・チエちゃん奮戦記(脚本)なども印象深い。

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ようやく芹沢グループ社員に気付いたケイは、書類を探して家を荒らす二人を制止しようとするが、うるさいと言われる。
ここも反社や敵役の愛嬌。じゃりン子チエアンパンマン(脚本)などにも見られる。

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ケイは、事の次第をイサミに話して泣きつき、イサミ・ソウシ・ゲンベェはトシ宅に再び行くことにする。
子供に優しい描写は、めぞん一刻MASTERキートン(脚本)などでも目を引く。

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トシの家に駆けつけたイサミ・ソウシ・ゲンベェは、芹沢グループ社員に抗議するが、彼らは書類を探しに来た事情を話す。するとケイから、トシが書類を持っていったという情報を得る。
ここも人間臭い敵役描写。宝島(演出)、新ど根性ガエル(脚本)と比較。

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社員達から連絡を受け、状況を把握した(黒天狗党員の)部長は、盗聴器をつけて泰之に話しかけ、ヒロ子もそれを聞く。
さりげない盗聴描写は、ルパン三世2nd(脚本)などにもある。

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部長は泰之に、書類の中身を見ていないか念押しし(兵器売却書類がバレたら、泰之は始末される)、泰之は見ていないと答える。
ここも敵役の愛嬌。アンパンマンマイメロディ赤ずきん(脚本)と比較。

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部長は、会社に到着したトシと、書類を巡って押し問答するが、トシの「あ、社長!」に騙され書類を得られず。
反射的な知恵は、新ど根性ガエルアンパンマン(脚本)ほか多い。

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なんとか泰之が書類をトシの前で開けてしまう寸前に間に合った部長は、トシに、書類を見ていないか確認。トシは見ていないと答える。
ここも敵役の憎めなさ。怪物王女ワンダービートS(脚本)もインパクトがある。

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部長は泰之に、コーヒーを淹れてほしいと頼み、その隙に書類のすり替えに成功する。
すり替えトリックは、家なき子(演出)にも出てくる。

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帰宅したトシは、家の中の惨状に驚く。イサミ・ソウシ・ケイは、そんな中呑気にラーメンを食べていた。
飯テロは実に多い。じゃりン子チエ・F-エフ-(脚本)と比較。

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トシは、家を片付けるのを手伝ってほしいと、イサミとソウシに頼み込み、二人はラーメンをゆっくり平らげてから、それを承諾する。
ガンバの冒険(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか、食いしん坊描写は多い。

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そんな中、ゲンベェは昼寝する。
犬による「間」は、コボちゃん花田少年史RIDEBACK(脚本)などにも見られる。

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一方、数馬は昼食にラーメンを食べる。ここも飯テロ。コボちゃんグラゼニ(脚本)と比較。

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すると数馬は、パトカーに落書きする落書き魔を目にする。彼はゆっくりラーメンを平らげてから、落書き魔に声をかける。
ここも食いしん坊描写。F-エフ-・あんみつ姫(脚本)と比較。

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落書き魔を追いかける数馬と、トシに頼まれた買い物を済ませたイサミ・ゲンベェは衝突し、落書き魔はトシ宅に逃げ込む。
複数キャラの動向を最後に合流させる技術は、じゃりン子チエ(脚本)でも見事。

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片付けを終えた直後、逃げ込んで来た落書き魔と、それを追う数馬の乱闘で、トシの家は再び散らかり、彼らが去った後、トシは途方に暮れる。
家が滅茶苦茶になる展開は、コボちゃん(脚本)にもある。

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トシは、新撰組が遺した光る剣をイサミから借り、願えば剣が片付けてくれるかもと言う。イサミとソウシは、呆れながらも一緒に剣を握る。
なんだかんだ付き合いがいい仲間は、ルパン三世2nd(脚本)などでも描写される。

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すると剣が光り、物が浮かぶが、余計に家が散らかる結果になる。だが、そのおかげで新撰組が遺したと見られる、龍の紋章のパネルが見つかる。
色々な物で話が繋がっていく展開は、怪物王女(脚本)のアニメオリジナル回も上手い。

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帰宅した園絵は、散らかり放題の家を見てトシ達を叱り、罰としてスキヤキの肉抜きを宣言する。
星を映すのは、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や、1980年版鉄腕アトム(脚本)などにも見られる。

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その後、黒天狗党は書類が戻ったことを確認。一方イサミ達は秘密地下室で、龍のパネルは何の用途のものなのか考える。
レリーフやイメージなどに意味深さを入れ込む描写は、蒼天航路・アカギ(脚本)などにも見られる。

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するとトシが、龍のパネルがはまりそうな穴を発見し、さっそくパネルをはめ込む。
様々なギミックのワクワク感は、宝島(演出)でも上手く描写されている。

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パネルをはめると箱が落ちてきて、そこから出てきたカラクリ人形が合言葉を言えと促す。
開けゴマから始まり、皆は食べ物ばかり挙げる。
ここも食いしん坊描写。あしたのジョー2(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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ラクリ人形は呆れながらも、本を差し出し(達筆過ぎて読めない)、敵を知れ、敵の名は黒天狗と告げるのだった。
9話にシリーズの転機や重要回を持ってくる構成は、ワンナウツカイジ(シリーズ構成・脚本)などでも強烈。

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  • まとめ

 じゃりン子チエ(高屋敷氏脚本陣)で鍛えた、複数プロットを最後に合流させる技術が今回も発揮されている。
しかも今回、光る剣によるアクションが無いのに、最後まで密度が濃いので驚かされる。

 高屋敷氏は、MASTERキートン8話の、殆ど誘拐犯と電話交渉するだけの回や、グラゼニ17話の、ラジオ番組で喋るだけの回の脚本を担当し、グイグイ面白く見せる技術を遺憾なく発揮しており、定番の見せ場が無い時こそ輝く傾向がある。

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 レースアニメのF-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)でも高屋敷氏は、レースをしていない回、しかもまるまるアニメオリジナルエピソード回を悉く秀逸なものにしており、最後に、ほぼ原作通りの展開に繋げる手腕も凄かった。

 思えば、グラゼニ(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)のシリーズ全体のクライマックスは、主人公・夏之介の契約更改であり、美形でもない男達がスーツ姿で金の話をしているだけなのである。なのに面白い。これも凄いことだ。

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 カイジ1期・2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、基本座っているだけで心理戦が展開される1期のEカードや、準備やギミックは裏で展開されてもカイジがパチンコ台から動けない2期の沼編など、緊迫感が半端ない。

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 アニメといえば動くのが華だが、動かない展開でも魅せるのが上手いというのは、脚本の技量も相当に必要になってくる。高屋敷氏は、演出やコンテを多く経験しながら、膨大な量の脚本を書き、映像と話の両方にアプローチできる作家だ。

 それもあってか高屋敷氏は、作画演出の限界、脚本(文芸)の限界が叩き込まれた、ハイブリッドな仕上がりの作品が多い。その根底にあるのは、「面白い話を見せたい」という熱意ではないだろうか。

 また、高屋敷氏のシリーズ構成には、9話に何らかの転機や重要情報、伏線が出る傾向があるのだが、まさか本作(本作シリーズ構成は同氏と金春氏の共同)でも発動しているとは思わなかった。今回は一見ギャグ回だが、黒天狗党をイサミ達が知る展開が光る。

 本作は、各話のエピソードをこなしながら、シリーズ全体の大筋も動いていく仕組み。それなのに、どちらも決して雑にならず、各話エピソードも目一杯プロットが詰まっている。この構成も流石だ。

 昔のアニメには、シリーズ構成が不在で、人気が続く限りダラダラ続けて間延びしてしまう作品も多々あるのだが、80年代中〜後期あたりから、シリーズ構成の存在感が光るようになった。高屋敷氏は、その走りでもある。

 高屋敷氏は、シリーズ構成作品を持つようになるまで、とにかく担当脚本数が多い作家であり、シリーズ構成不在(文芸がそれを担当?)でも、あしたのジョー2や、じゃりン子チエなど、シリーズの芯もしっかりした作品に脚本で携わって来たのが大きいと思う。

 シリーズ全体を俯瞰で見て計算していくのは、本当に大変ではあるが、非常に作品の出来を左右する重要な立場だ。
「9話の法則」や緻密な展開計算をはじめ、非常にシステマチックな高屋敷氏の構成力は、やはりいい意味で恐ろしい。

飛べ!イサミ7話脚本:織り込まれた感情

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

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本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

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  • 今回の話:

サブタイトル:「ねらわれたピアニスト」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ:千明孝一氏、演出:根岸宏樹氏。

イサミの父母の友人で世界的ピアニストの、十島みどりが、何者かから脅迫を受ける。イサミ達は、みどりを守るため奔走する。

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闇仕事を引き受ける「仕事師」は、ある女から、帰国した世界的ピアニスト・十島みどりのリサイタルを妨害するよう依頼される。
冒頭で怪しい会話を見せておく手法は、ルパン三世2nd(脚本)でも使われている。

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みどりはイサミの父母の友人。イサミは玲子(イサミの母)と一緒に、みどりに会いに行くことに。
トシ、ソウシ(ともにイサミの同級生で新撰組の子孫)は様々な反応を見せる。
キャラの個性づけは、ガンバの冒険(脚本)でも光る。

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みどりはリサイタルに向け、自宅でピアノの練習をする。
光溢れる窓辺でピアノを弾く場面は、おにいさまへ…(脚本)にもあり、比較すると面白い。

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そこに、玲子とイサミが訪ねてくる。みどりは、イサミの成長を喜ぶ。
「(みどりから見て)友人の子供」という関係性は、じゃりン子チエ(脚本)の、ミツル(チエの父・テツの親友)とチエのそれに重なる。どちらも描写が丁寧。

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みどりは、自分のリサイタルのチケットを複数枚、イサミにあげる。
色々と伏線や導線を設置し話をサクサク進めるのは、グラゼニ(脚本)でも巧みで、アニメオリジナル部分も秀逸。

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すると、みどり宅のステンドグラスが割られ、実行した仕事師はバイクで逃走する。
ステンドグラスが割れるのは、おにいさまへ…(脚本)にもあり、セルフオマージュっぽい。

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みどりは、最近脅迫や嫌がらせを受けていると、イサミと玲子に話す。
イサミは、(送りつけられた)藁人形はよく見ると可愛いと評す。
場を和ませる子供の無邪気さ・明るさは、ガイキング(演出)でも強調されている。

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みどりは昔、魁(イサミの父。失踪中)から「自分を信じて、諦めるな」と助言を貰ったと回想する。
夕暮れの中での心の交流は、結構見られる。おにいさまへ…(脚本)と比較。

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玲子もみどりに、応援するから諦めないでとエールを送り、みどりは、その言葉が魁にそっくりだと笑う。
複雑な女性の心の機微は、ストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)でも鋭く描写されている。

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玲子は、数馬(イサミの叔父で刑事)に相談すると、みどりに約束し、イサミもまた、みどりを励ます。
元祖天才バカボン(演出/コンテ)やF-エフ-(脚本)ほか、仲間愛は強く描かれる。

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その後、トシとソウシは、イサミから、みどりのリサイタルの特等席チケットを貰い喜ぶ。イサミ達は、みどりを守ろうと行動を開始する。
チームの団結力は、ルパン三世2nd・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)ほか、前面に出される。

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夜、イサミ達は、みどり宅付近を見張る。
荷物を確認したところ、ケイ(トシの弟)が紛れており、皆は驚く。
はだしのゲン2(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏は小さな子供の出番を作るのが上手い。

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すると仕事師が、みどりの自宅に忍び込みに来る。
寝惚けておしっこに行こうとするケイを、イサミ達は慌てて止める。
子供のおしっこ関連では、コボちゃん(脚本)に、おねしょをごまかす話がある。

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仕事師を追い、イサミ達も、みどり宅に塀から入るが、トシが、ケイやイサミの下敷きになる。
ルパン三世2nd(演出/コンテ)や宝島(演出)など、コミカルなアクションは割と挟まれる。

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ケイは、だるまさんが転んだの要領で仕事師に近付き、彼の顔写真を撮ることに成功する。
あしたのジョー2(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、小さな子供の活躍はクローズアップされる。

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仕事師は、ゴミ箱に火をつけたつもりが、自分の服にも火がつき、慌てて逃げ出す。イサミ達は、まずは火を消すことにする。
火事の描写は、F-エフ-(脚本)や、(夢オチだが)ど根性ガエル(演出)など結構ある。

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みどり宅の様子を見に行けと、玲子や上司の命を受けた数馬は、火がついたままバイクで逃げる仕事師とすれ違い驚く。
すれ違いネタは、ルパン三世2nd(脚本)にも見られる。

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みどり宅に着いた数馬は、火を見て慌てる。イサミは、なんでもっと早く来れなかったのかと数馬に抗議する。
子供にタジタジの大人の図式は、新ど根性ガエル(脚本)などでも色濃い。

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イサミらの消火活動で火は消え、イサミらは翌日、みどりにケーキをご馳走になる。また、ケイもリサイタルに招待されることに。
飯テロは実に多い。アンパンマンRIDEBACK(脚本)と比較。

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そこに、さやか(みどりのライバル)がやってきて、警備中の警官に、自分は有名なピアニストだと誇る。
自信満々なライバルキャラの描写は、F-エフ-・カイジ2期(脚本)など豊か。

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さやかは心配を装って、みどりの手を取り、その手が震えているのを確認すると一瞬ニヤリとする。
手による感情表現は頻出。RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-(脚本)と比較。

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夜、さやかは仕事師に電話し、更にみどりを追い詰めてリサイタルを中止にさせろと命じ、ほくそ笑む。
鏡描写は、色々な作品に見られる。ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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後日、さやかにギャラ追加を提示され張り切る仕事師は、みどりからのピザの差し入れだと、みどりのスタッフを騙し、ピアノの下に爆弾を取り付ける。
アンパンマンストロベリーパニック(脚本)ほか、食べることが大好きなキャラは多い。

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一方、新撰組の宿敵である黒天狗党の下部組織・カラス天狗の平助と重助は、リサイタル会場前に魁が来ていないかどうか見張るが、顔を隠した魁に気付けない。
少しバカな二人組描写は、おにいさまへ…ワンナウツ(脚本)でも目立つ。

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数馬は、警備も万全だし、ケイが撮った写真のおかげで仕事師の捜索も楽だろうと踏む。
油断して痛い目を見る描写は、ルパン三世2nd(脚本)にもある。

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すると、リサイタル会場の垂れ幕が破壊され、それを見たみどりは動揺する。
F-エフ-・ストロベリーパニック(脚本)ほか、台詞に頼らず表情で多くを語る描写は多々ある。

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仕事師は、(リサイタル会場とは別の場所に)爆弾があると虚偽の通報をし、警察を煙に巻くが、乗っ取った元々のピザ配達員に見つかり、イサミ達にも気付かれる。
太陽の使者鉄人28号(脚本)、家なき子(演出)ほか、お手柄モブは多い。

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さやかは楽屋を訪ね、みどりに花束を渡そうとするが、代わりに数馬が受け取り、数馬はバラの棘で指を怪我するが平静を装う。
バラの棘で傷がつく描写は、おにいさまへ…(脚本)もインパクトがある。

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さやかは客席で、みどりのリサイタルが滅茶苦茶になると確信。一方仕事師は、イサミ達に追われてリサイタル会場内に逃げ込む。
切り替わりのテンポの良さは、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)などでも見事。

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イサミ達に見つかり、追い詰められた仕事師は、会場に向かって「爆弾がある」と叫び、客席はパニックに。
土壇場で知恵を発揮する敵役や憎まれキャラの描写は、忍者戦士飛影・まんが世界昔ばなし(脚本)ほか、数々ある。

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リサイタルを台無しにされ怒りに燃えるイサミは、新撰組が遺した光る剣で、仕事師を痺れさせ倒すも、爆弾は止められず、警察に後を任せる。
爆弾騒ぎは、ルパン三世2nd(脚本)も印象的。

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爆弾処理班は、仕事師の虚偽通報のせいで間に合わず、数馬は全員を退避させるが、密かに会場に入った魁は、爆弾を解体する。
視聴者がわかりきっている真実を丁寧に見せていく手法は、あしたのジョー2・F-エフ-(脚本)でも上手い。

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後日、あらためて開催されたリサイタルで、みどりは見事な演奏を披露する。
ピアノの譜面台には、みどりを励ます魁の書き置きがあった。
手紙は、重要アイテムとして扱われる。ストロベリーパニック(脚本)、宝島(演出)と比較。

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さやかは、プライドだけの自分のピアノでは、みどりにかなわないとわかっていた、と寂しげな表情で、みどりの姿を見届ける。
過ちを悔いるキャラの侘び寂びは、ワンナウツルパン三世3期(脚本)などでも見られる。

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会場を出たさやかは、数馬に両手を差し出す。数馬は、さやかの手を取って、償いはしなければならないが、さやかならピアノでやり直せると言う。
ここも、手による感情表現。MASTERキートンワンナウツ(脚本)と比較。

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演奏後、イサミ達から花束を受け取ったみどりは、実は魁が好きだったと話す。
単純明快な反応をしたトシはイサミにどつかれ、ソウシはみどりを口説く。
密かに失恋するキャラの描写は、ストロベリーパニック(脚本)でも見事。

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みどりは、魁と玲子の二人が大好きだと語り、イサミと微笑み合うのだった。
DAYS・グラゼニ(脚本)ほか、高屋敷氏は「笑顔」を重視する。原作つき作品でも、アニメオリジナルで笑顔を追加することが多く、興味深い。

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  • まとめ

 今回も、色々な要素が捌かれ、見事な手腕が発揮されている。
一見、勧善懲悪の痛快活劇だが、敵は毎度、人間臭さ全開で、今回はそれに加えて恋愛ドラマが織り成され、本作は多面的だ。

 本作は、新撰組と黒天狗党の因縁や、魁の動向、イサミ達の活躍などを軸としながら、毎回の騒動をバリエーション豊かに設定し、展開も割と複雑で二転三転する。相当な構成・脚本の技術が必要だと思う。

 高屋敷氏は本作の頃(90年代半ば)には膨大な経験を積んでいるので、色々な手腕が求められても対応できるのではないだろうか。もともと複雑で凝った脚本を練る傾向のある同氏だが、本作でも本領が発揮されている。

 アニメオリジナル作品は、アニメにしやすい話運びをするものだと思っていたが、本作は、まるで漫画原作つきアニメのような詰め込み具合だ。これはコンテや演出、作画も大変になる。

 高屋敷氏は、漫画原作アニメの経験も豊富なため、漫画のストーリーテリングのノウハウ、およびそれをどうアニメに落とし込むかが頭に叩き込まれていると推察できる。そう思うと、アニメの限界も伸び代も計算しているかもしれない。

 できないことを考慮して、引き算ばかりしていても、内容の薄い作品になってしまう。そこは、中身の濃い作品を作り上げようという、本作スタッフの気概が感じられる。

 今回驚いたのは、活劇のストーリーラインに切ない恋愛ドラマ要素を入れ込んだ点だ。しかも、子供の視聴者にもわかりやすく描かれている。
また、この恋愛要素により、ラストに余韻が残る。

 また、敵側(さやか)にもドラマがあるわけだが、くどくはなく、ちょっとした場面場面、独白や台詞ですんなり視聴者の頭の中に入ってくる。このあたりも流石だ。

 さやかの、みどりに対する「女の情念」は、女のドロドロの愛憎だらけの、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)で培われたものが大きい。一見子供対象の本作に、このエッセンスを入れるのも大胆だ。

 みどりの、魁に対する密かな想いは、ストロベリーパニック(高屋敷氏脚本陣)で、「カップル成立の裏で密やかに失恋するキャラ」が細やかに描写されていることにも繋がっている。それもまた面白い。

 高屋敷氏は恋愛アニメも多く取り扱っており、めぞん一刻(最終シリーズ構成・脚本)が、その代表例だ。アニメのキャラに「感情」を入れ込む技術や構成もまた、大変な腕が必要となるわけだが、同氏はそこも抜かりがない。

 あと、「包帯男=魁」については、見せ方や構成が上手いので、視聴者は容易にその真実を受け容れることができる。
そのあたりは、結末を知る人が多い、あしたのジョー2(高屋敷氏脚本陣)でも使われている技術だ。

 本作は、大筋の話・各回の話・細かいキャラの感情や行動などが、きちんと交通整理されており、やはりその技術と手腕は驚異的だ。
オリジナル作品であっても、複雑なプロットから逃げない姿勢にも唸らされた。