カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

チエちゃん奮戦記37・38話脚本:これがテツの生きる道(?)

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

冒頭、スリ注意を促す貼り紙が風ではためき、特徴である紙=キャラが出ている。伏線にもなっている。また、テツがカルメラ経営のラーメン屋でラーメンを食べており、特徴の飯テロ。

画像は今回と、カイジジョー2脚本。

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そこへ顔面蒼白のカルメラ兄が帰ってきて、店の資金50万をスられたと言う。
その頃、スリをしたヤクザは獲得した金額の高さに驚くも、これを資金に強いヤクザを雇って、テツを倒そうと目論む。だが、その様子は、たまたま通ったコケザルに目撃される。

カルメラの不運を可哀想に思うチエ達は、警官であるミツルを伴ってカルメラ宅に行く。ミツルとカルメラは、1期でテツを取り合って喧嘩した事があり、不仲。それもあり、引きこもってしまう。ここで特徴の紙ネタ。ど根性ガエル演出と比較。

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チエとヒラメは犯人を探すため、何やら情報を握っているコケザルを、ヒラメの怪力*1で吊し上げ、犯人の特徴を吐かせる。それを元に、ヒラメは犯人の似顔絵を作成。
ヒラメの怪力特訓に家具を使っており、同氏特徴が出ている(物=キャラ) 。

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その頃、カルメラは犯人を探しに駅周辺をうろついていた。そこへ犯人ヤクザ二人と、ヤクザが雇った刺客が登場する。刺客は頭突きの強化のため、額に鉄板を埋め込んでいる大男(鉄板男)。偶然にも彼等にぶつかったカルメラ弟は、鉄板男にボコボコにされてしまう。

カルメラ弟は、お好み焼き屋に収容される。チエ達も合流して、犯人の似顔絵を見せ、テツを狙っている事情も話す。そしてチエとおバァはんは、刺客を倒せ、と小遣いなどをダシにテツに依頼。テツは喜んでヤクザ達を待ちわびる。ここも特徴の紙ネタ。 

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だがしかし、ヤクザ達は中々来なかった。鉄板男が、てっちりやしゃぶしゃぶ等を報酬に求めたためである(特徴:食いしん坊)。そうこうしてるうちに、大晦日が来る。
ところで紙ネタその2。ルパン三世2nd脚本と比較。 

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テツは、いつでもヤクザ達を迎え討てるよう、決闘場所に毎日通っていた。
拳骨の提案で、ヤクザ達が来たら、狼煙がわりに花火を上げようということに。そしてとうとうヤクザ達が来て、花火があがる。ここで次回へ。
画像は花火シンクロ集。今回、ベルばらコンテ、ジョー2脚本。花火もキャラ。 

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とうとうヤクザ達とテツが決闘…という所で、自分達でケジメをつけたいカルメラから石をぶつけられ、テツは気絶。百合根も同様に処理される。カルメラはヤクザ達に特攻、鉄板男以外は倒すことができた。1期でカルメラが意外に強い話があり、それも高屋敷氏脚本。 

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鉄板男を何とかしようということで、小鉄達がランプ(特徴)でテツを照らし、鉄板男をおびき寄せる。画像はランプ(懐中電灯)集。 今回、らんま・カイジ2期脚本、忍者マン一平監督。 

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鉄板男の頭突きで目が覚めたテツは、鉄板での痛みに耐え、やられたらやり返す本能で、鉄板男を見事倒す。代償として、顔は鏡餅のように膨れ上がったが。おバァはんに言われ、ヨシエが、勝ったテツを迎えるための紙吹雪を作っているが、カイジ脚本とシンクロ(特徴の紙ネタ)。 

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かくして鉄板男を倒したテツは、皆に歓迎され、一件落着。大晦日に仲間が集まるのは、同氏担当話によくある。挙げればキリがないが、ど根性ガエル演出と比較。

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年明け、元旦をろくに過ごせなかったテツのため、皆は正月をやり直す。ここでも特徴の紙ネタ。 

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テツはチエと二人きりで初詣に行きたいと言い出す。だがそれはブラフで、鉄板男が入院している病院へ行くのが目的だった。 

テツは、屋上に逃げた鉄板男を探す。ここで出崎統的屋上・洗濯物演出が出てくる(特徴:出崎演出持ち込み)。そして、シーツもキャラとしての役割がある。
画像は今回とジョー2脚本。 

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結局鉄板男はテツに見つかり、土下座する。また、手術で頭の鉄板を取ってもらった事を話し、鉄板をチエ達に見せる。カイジ2期脚本と、奇跡的にシンクロ。また、鉄板もキャラとして扱われている(特徴)。 

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テツより先に帰宅したチエは、おバァはんとヨシエに鉄板を見せる。鉄板は、なんとテツの石頭のせいで、テツの額の形に湾曲していた。これにはおバァはん達も震撼する。
画像は、同氏特徴の、何かを語る物達。今回は強さ。ジョー2・一歩3脚本と比較。 

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その頃テツは、鉄板男にカブをやろうと持ちかけていた。なんとなくカイジ脚本と比較(カブとブラックジャックの遊び方が似てるため)。

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どのみちテツの頭突きを食らうことになる賭けなので、鉄板男は恐れて病室を飛び出すのだった。 

  • まとめ

シリーズ終盤に一大決戦を持ってくるのは、1期の踏襲。1期のバトルはヨシエが全部持っていったが、今回は高屋敷氏らしく、テツが見事な強さを発揮する。1期でも、同氏はテツが東洋チャンプと互角だったボクシング回を担当している。

色々見ていくと、同氏はテツを不憫に思っているのでは?と邪推してしまうのだが、今回はその鬱憤を晴らすように、テツの力が存分に発揮され、しかも皆に誉められる(大晦日限定)。
また、カルメラの為に皆が奔走した話であり、特徴の義理人情・仲間愛が出ている。

あと、何本もの平行エピをさばいて合流させる脚本術も存分に発揮されている。今回は相当エピ数が多く、それらを複雑に絡めている。全てを説明するにはとてもじゃないが字数が足りない。

今回の快勝は、同氏演出ルパン三世2ndの、数万個のダイヤをゲットするルパン快勝話を思わせる。ルパンは知恵を使うが、テツは本能w
また、バトル話なので、ジョー2脚本からの引き出しも多い。チエが「相手は足にきてる」等セコンドめいたことも言う。

また、今回は「男の世界」な話でもある(同氏特徴)。ケジメをつけようとするカルメラは、普段の姿から一変して強さを見せるし、テツも本来の強さを見せる。また、37話冒頭、小さくカタギにまとまろうとするカルメラを、テツがいさめる場面もある。

テツとカルメラの会話から、男の生きる道は生きがいがないといけない(特徴)というメッセージも感じられる。これは監督作の忍者マン一平でも、カイジ構成・脚本でも込められているテーマ。シリーズ終盤にして、テツとカルメラの魅力を見せた回だった。

チエちゃん奮戦記の高屋敷氏脚本回は、これで最後。シリーズを通して見ると、1期が全て頭に入っているとしか思えない話運び。同氏の脚本は、テツを何とかしてやりたいという思いが強い気がする。なので最後はテツの快勝で終わるのは痛快だった。

*1:どんくさいと言われると発動

チエちゃん奮戦記36話脚本:頻出する「像」演出の解答

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

冒頭、何故かチエとテツのコテコテ漫才がある。何故か棒読みで、わざとつまらないノリになっている。謎演出。食い倒れ人形にまつわる話だからかも?脚本というより、テツ役の西川のりお氏などによるアドリブかもしれない。

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本編開幕で、早くも同氏特徴が出ている。太陽のアップの間。らんま脚本と比較。どちらも太陽がキャラとして機能し、無言なのに何か言っているような不気味な間がある。 

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残暑厳しい中、謎のおっさんが勝手にチエ宅に上がり込む。テツを除くチエ一家は、おっさんの顔に記憶があるのに、思い出せなくて悩む。おっさんは厚かましくもビールを飲みくつろぐ。同氏特徴のビールテロ。挙げればキリがないがカイジ脚本と比較。

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帰宅したテツは、おっさんの顔が食い倒れ人形に似ているだけだと気がつき、気がつかなかったチエ達を散々バカにする。

それはそれとして、テツは食い倒れ人形そっくりなおっさんが来てると町内に言いふらし、見せ物にしようとする。像が出てくるのは同氏特徴。

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高屋敷氏の作品には、像が出てくることが多い。これも、もの言わぬものでも、キャラとしてカウントする特徴。今回の食い倒れ人形にそっくりなおっさんは、食い倒れ人形がまんまキャラとして出たようなもので、同氏演出の解答的なものがある。

下記が、同氏作品に出る像の数々。これも挙げればキリがない。

今回、ルパン三世2期演出、ジョー2・ルパン三世2期・じゃりん子チエ1期脚本。カイジでも、帝愛の女神像が意味深に描写される。

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食い倒れ人形のおっさんを見に来た百合根とカルメラ兄弟が可愛い(特徴)。今回は相当不気味な話なのでオアシス。

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一方チエは、なぜテツ以外の家族が、おっさんが食い倒れ人形に似ているだけだと気がつかなかったのか悩む。
(おっさん自体は、ミツルに連行された。)

かき氷を食べながら、チエは拳骨に愚痴をこぼす。特徴の飯テロ。カイジ脚本と比較。

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ミラクル☆ガールズ脚本でもチエ1、2期脚本でも、愚痴をこぼす時に食べ物をよく食べている。

拳骨は、チエ一家は、常にテツが何処かで誰かに迷惑をかけているのではないかと思っているから、おっさんが食い倒れ人形に似てるだけという事に気がつかなかったのだと解説。言うなればテツのせいだと気が付いたチエとおバァはんは、段々テツにムカついて来る。

その頃テツは、カルメラと百合根に、おっさんを見る見物料をせびる。稼いだ見物料で、おっさんに食い倒れ人形の衣装を着せ、更に見せ物にしようという魂胆。半ば強引に金を巻き上げたテツだが、帰宅すると、チエが食い倒れ人形の衣装を既に作っていた。

チエとおバァはんは、テツにムカついていたので、テツに食い倒れ人形の格好をさせる。

そこへミツルが、おっさんが逃げたと知らせに来る。おっさんの妻も同行。妻によると、おっさんは家で気に食わない事があると、他人の家に上がり込む癖があるのだという。

そこにヒラメが来て、おっさんがヒラメ宅にいると報告。今度こそ確保されるだろうという事で、拳骨は一見落着と宣言。一方で、テツは食い倒れ人形の格好で店の呼びこみをさせられるのだった。食い倒れ人形の衣装を着る・着ないは、同氏特徴の脱衣演出かも。

  • まとめ

とにかく、おっさんが不気味すぎてホラー。食い倒れ人形に似ているためか、おっさんはほとんど喋らない。だが高屋敷氏作品で出てくる多くの像の「不気味な間」は、像を生きているキャラクターと捉えているからだ、という解答が得られた感じ。
また、食い倒れ人形の服を着せる・着せないは、同氏特徴の「アイデンティティの着脱」の意味での「脱衣演出」とも見て取れる。
ところで、不気味な人物を泊める話は、同氏担当回ではないが、ど根性ガエルによくある。

おっさんが、知り合いのフリをしては他人の家に上がり込むのは、今の視点で見ると不気味すぎるが、西萩の面々は義理人情に厚いということかもしれない。また、家で面白くない事があると他人の家を渡り歩くというのは、それだけおっさんが孤独だということか。

おっさんが家に居場所がなくて孤独なのかもしれない(同氏特徴:ぼっち、ぼっち救済)、というのは、テツが、おっさんの妻に「お前がちゃんと世話してなかったからやないか」と抗議する所からも見て取れる。ぼっち→救済失敗のケースかも。

同氏演出コンテ脚本すべて、何かしら像が出てくるのは、状況を「見て」「何らかの意思を持っている」からなのだと考えられるが、そのルーツは、まんが世界昔ばなしの「幸福の王子」演出コンテからだと思われる。あれこそ意思を持つ像である。

幸福の王子」演出では、原作通りツバメと王子が絶命するが、王子にはツバメという親友がいたため、ぼっちが救済されてはいる。一方で今回のおっさんは、孤独なままであるので悲劇でもある。同氏の作品での悲劇話は、ぼっち救済が失敗するケースが多い。

カイジ脚本・シリーズ構成では、女神像が意味深に映るが、「偽の神」になろうとする帝愛の、禍々しい理念を象徴するキャラとして女神像が「出演」している。また、兵藤会長は、人から裏切られた経験も多く、ある意味孤独。だから他人の命を欲する側面がある?

そう考えると、カイジにおける、高屋敷氏の帝愛の解釈が見えてくる。「偽の神になろうとする孤独な老人と、その部下達」という所か。これは、ここまで同氏のことを調べなくても、アニメカイジを見ていて気付いたことでもある。見れば解るよう設定されている。

話単体は不気味だが、今回、いわば「像」が動いて喋る、ということから、カイジについてもう一度考察できる機会が得られた。
あと、テツの無責任で純粋な感性が、おっさん=食い倒れ人形に似ているだけ、を見抜いたわけで、テツの重要性が見れる回だった。