カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

元祖天才バカボン8話A演出コンテ:自殺を的確に止めるキャラ達

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

脚本は山崎晴哉氏。家なき子などでよくある組合わせ。

開幕から特徴全開、太陽どアップ。今回は演出コンテだから解るが、らんま「脚本」でもこの特徴が出ているのが怪(画像)。また、パパ達が、お天道さまに感謝する直球描写(特徴:天道さま主義)。

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天気がよいのでホラをつきたくなる日だし、(釣りの)浮きが2つでウキウキするということで(特徴:物もキャラ)、パパとバカボンは釣りに行くことに。ここでバカボンが東京ブキウギの替え歌を歌うが、ゲン2「脚本」でも、東京ブキウギの替え歌が出てくる。 

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バカボンとパパは、まず医者にちょっかいを出して困惑させる。とにかく、演出でも脚本でも、医者がよく出てくる特徴がある。画像は一歩3期脚本と比較。

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パパ達はは釣りを開始。パパは、通りがかった男性二人に、川で鳥や猫が釣れるとふっかけ、本当に釣れたら金をもらうという賭けをふっかける。カイジとコンビニ店長の賭けに似てる。パパは事前に仕掛けを作っておいたので、賭けに勝つ(特徴:博打とイカサマ) 。

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パパは、男性二人は賭けに負けたが、スリルと興奮を味わったから、これでいいのだと言う。これもカイジっぽい。

更に猟師にも、川で鳥が釣れるとホラを吹く。猟師はそれを信じ川に入る。パパは、信じる人は神様が見捨てないから、これでいいのだと言う(特徴:純粋)。

賭けに負けた男性二人のやり取りにて、家なき子演出と同じような画が出てくる。これは、どちらも演出だから納得。

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男性二人は、仕返しに(特徴:不屈・復讐)鳥の格好をしてパパ達を驚かせようと川に入る。だが、水中で待ち伏せしていた猟師から発砲され退散。

パパ達は、今度は服と、自殺未遂をした半裸の男性を釣りあげる(脱衣演出)。大事な金をひったくられたとのこと。

パパは、死んでお詫び…を受け「死んでもアワビにならないのだ」と説教(特徴:上手い自殺防止)。だが励ましの勢いがあまって、再び男性を池に落とす。

池に再び落ちた男性は、水中にて、なくしたお金(鞄)を見つける。パパは、生きていたから見つけられたのだ、と言い、男性も、「諦めなくてよかった」と言う。諦めない精神も、同氏作品によく出る。カイジ脚本の、諦めてしまった石田さんと比較。 

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男性は、お礼をしたいと申し出るが、パパは、「礼はもうしてる」と金を受け取らない(特徴:お人好し、義理人情)。3人は笑い合う。
一方、賭けに負けた男性二人と猟師は和解し、おでん屋(特徴:飯テロ)で酒を飲み交わす。 

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お代を気にする3人に対し店主は、お代はパパから受け取ったと言う(賭けでせしめた金を返した)。これも特徴の義理人情。3人は笑い合う。
夜、パパは、今度はどんなホラを吹こうか、と浮きを握りながら(特徴:物のアップ)眠るのだった。カイジ脚本と比較。

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  • まとめ

山崎晴哉氏脚本との組合わせだと、ほっこりする話が多い。
そして、またしても、うまい自殺防止の話が出た。ど根性ガエル演出でも、自殺しようとするひろしを、美人の女性が止めてくれたり、仲間が止めようと走って来たりする。他も多数出てくる。

じゃりん子チエ1、2期脚本も、孤独は万病の源(死にたくなる)というポリシーが出てくるし、ゲン2脚本でも、死にたくても死ねない老人を、ゲン達が家族として迎える。カイジ脚本でも、自殺同然のおっちゃんを、カイジが止めに来てくれる。

この、精神疾患描写や自殺防止のうまさは、どうして多く描写されるのか謎である。
だが、カイジ2期13話の脚本における、駆けつけたカイジとおっちゃんのやり取りが強調されていることに感動したから、このように同氏の作品を好きな私がいる。

あと、同氏演出や脚本のキャラは、今回含め、やはり幼く可愛く描写されている。そして今回、特徴である連呼が頻出。これは脚本の方が顕著だが、演出では、時間の埋め合わせ調整ぽい。だがテンポは脚本と同じ。演出と脚本、やる事が同じなのが毎回不思議。

あと驚いたのは、今回・ゲン2脚本とも、同じ東京ブキウギの替え歌が出てきたこと。声優のアドリブだと今まで思っていたが、これを見るに何らかの指示がある?
あと、ギャグ作品なので、特徴である、物のアップが丸ワイプで強調されているのも直球。

監督作である忍者マン一平に、「気の病にかからぬこと」という教えが出る。
また、元祖天才バカボン中盤の脚本作にて、自殺をするフリをする詐欺師に対しパパが本気で怒る描写が出る。自殺とその防止について多くの作品で強いメッセージを発している。

この自殺防止ポリシーについて、原因は謎だが、同氏の描写は非常に時代先取りで的確。
また、そういった暗い兆候の人に対し、主人公達はギャグや義理人情や優しさで対応する。そういったヒーローであってほしい、という願いも見受けられる回だった。

チエちゃん奮戦記37・38話脚本:これがテツの生きる道(?)

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

冒頭、スリ注意を促す貼り紙が風ではためき、特徴である紙=キャラが出ている。伏線にもなっている。また、テツがカルメラ経営のラーメン屋でラーメンを食べており、特徴の飯テロ。

画像は今回と、カイジジョー2脚本。

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そこへ顔面蒼白のカルメラ兄が帰ってきて、店の資金50万をスられたと言う。
その頃、スリをしたヤクザは獲得した金額の高さに驚くも、これを資金に強いヤクザを雇って、テツを倒そうと目論む。だが、その様子は、たまたま通ったコケザルに目撃される。

カルメラの不運を可哀想に思うチエ達は、警官であるミツルを伴ってカルメラ宅に行く。ミツルとカルメラは、1期でテツを取り合って喧嘩した事があり、不仲。それもあり、引きこもってしまう。ここで特徴の紙ネタ。ど根性ガエル演出と比較。

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チエとヒラメは犯人を探すため、何やら情報を握っているコケザルを、ヒラメの怪力*1で吊し上げ、犯人の特徴を吐かせる。それを元に、ヒラメは犯人の似顔絵を作成。
ヒラメの怪力特訓に家具を使っており、同氏特徴が出ている(物=キャラ) 。

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その頃、カルメラは犯人を探しに駅周辺をうろついていた。そこへ犯人ヤクザ二人と、ヤクザが雇った刺客が登場する。刺客は頭突きの強化のため、額に鉄板を埋め込んでいる大男(鉄板男)。偶然にも彼等にぶつかったカルメラ弟は、鉄板男にボコボコにされてしまう。

カルメラ弟は、お好み焼き屋に収容される。チエ達も合流して、犯人の似顔絵を見せ、テツを狙っている事情も話す。そしてチエとおバァはんは、刺客を倒せ、と小遣いなどをダシにテツに依頼。テツは喜んでヤクザ達を待ちわびる。ここも特徴の紙ネタ。 

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だがしかし、ヤクザ達は中々来なかった。鉄板男が、てっちりやしゃぶしゃぶ等を報酬に求めたためである(特徴:食いしん坊)。そうこうしてるうちに、大晦日が来る。
ところで紙ネタその2。ルパン三世2nd脚本と比較。 

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テツは、いつでもヤクザ達を迎え討てるよう、決闘場所に毎日通っていた。
拳骨の提案で、ヤクザ達が来たら、狼煙がわりに花火を上げようということに。そしてとうとうヤクザ達が来て、花火があがる。ここで次回へ。
画像は花火シンクロ集。今回、ベルばらコンテ、ジョー2脚本。花火もキャラ。 

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とうとうヤクザ達とテツが決闘…という所で、自分達でケジメをつけたいカルメラから石をぶつけられ、テツは気絶。百合根も同様に処理される。カルメラはヤクザ達に特攻、鉄板男以外は倒すことができた。1期でカルメラが意外に強い話があり、それも高屋敷氏脚本。 

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鉄板男を何とかしようということで、小鉄達がランプ(特徴)でテツを照らし、鉄板男をおびき寄せる。画像はランプ(懐中電灯)集。 今回、らんま・カイジ2期脚本、忍者マン一平監督。 

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鉄板男の頭突きで目が覚めたテツは、鉄板での痛みに耐え、やられたらやり返す本能で、鉄板男を見事倒す。代償として、顔は鏡餅のように膨れ上がったが。おバァはんに言われ、ヨシエが、勝ったテツを迎えるための紙吹雪を作っているが、カイジ脚本とシンクロ(特徴の紙ネタ)。 

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かくして鉄板男を倒したテツは、皆に歓迎され、一件落着。大晦日に仲間が集まるのは、同氏担当話によくある。挙げればキリがないが、ど根性ガエル演出と比較。

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年明け、元旦をろくに過ごせなかったテツのため、皆は正月をやり直す。ここでも特徴の紙ネタ。 

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テツはチエと二人きりで初詣に行きたいと言い出す。だがそれはブラフで、鉄板男が入院している病院へ行くのが目的だった。 

テツは、屋上に逃げた鉄板男を探す。ここで出崎統的屋上・洗濯物演出が出てくる(特徴:出崎演出持ち込み)。そして、シーツもキャラとしての役割がある。
画像は今回とジョー2脚本。 

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結局鉄板男はテツに見つかり、土下座する。また、手術で頭の鉄板を取ってもらった事を話し、鉄板をチエ達に見せる。カイジ2期脚本と、奇跡的にシンクロ。また、鉄板もキャラとして扱われている(特徴)。 

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テツより先に帰宅したチエは、おバァはんとヨシエに鉄板を見せる。鉄板は、なんとテツの石頭のせいで、テツの額の形に湾曲していた。これにはおバァはん達も震撼する。
画像は、同氏特徴の、何かを語る物達。今回は強さ。ジョー2・一歩3脚本と比較。 

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その頃テツは、鉄板男にカブをやろうと持ちかけていた。なんとなくカイジ脚本と比較(カブとブラックジャックの遊び方が似てるため)。

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どのみちテツの頭突きを食らうことになる賭けなので、鉄板男は恐れて病室を飛び出すのだった。 

  • まとめ

シリーズ終盤に一大決戦を持ってくるのは、1期の踏襲。1期のバトルはヨシエが全部持っていったが、今回は高屋敷氏らしく、テツが見事な強さを発揮する。1期でも、同氏はテツが東洋チャンプと互角だったボクシング回を担当している。

色々見ていくと、同氏はテツを不憫に思っているのでは?と邪推してしまうのだが、今回はその鬱憤を晴らすように、テツの力が存分に発揮され、しかも皆に誉められる(大晦日限定)。
また、カルメラの為に皆が奔走した話であり、特徴の義理人情・仲間愛が出ている。

あと、何本もの平行エピをさばいて合流させる脚本術も存分に発揮されている。今回は相当エピ数が多く、それらを複雑に絡めている。全てを説明するにはとてもじゃないが字数が足りない。

今回の快勝は、同氏演出ルパン三世2ndの、数万個のダイヤをゲットするルパン快勝話を思わせる。ルパンは知恵を使うが、テツは本能w
また、バトル話なので、ジョー2脚本からの引き出しも多い。チエが「相手は足にきてる」等セコンドめいたことも言う。

また、今回は「男の世界」な話でもある(同氏特徴)。ケジメをつけようとするカルメラは、普段の姿から一変して強さを見せるし、テツも本来の強さを見せる。また、37話冒頭、小さくカタギにまとまろうとするカルメラを、テツがいさめる場面もある。

テツとカルメラの会話から、男の生きる道は生きがいがないといけない(特徴)というメッセージも感じられる。これは監督作の忍者マン一平でも、カイジ構成・脚本でも込められているテーマ。シリーズ終盤にして、テツとカルメラの魅力を見せた回だった。

チエちゃん奮戦記の高屋敷氏脚本回は、これで最後。シリーズを通して見ると、1期が全て頭に入っているとしか思えない話運び。同氏の脚本は、テツを何とかしてやりたいという思いが強い気がする。なので最後はテツの快勝で終わるのは痛快だった。

*1:どんくさいと言われると発動