カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

チエちゃん奮戦記13話脚本:人の人生観が変わる瞬間を「見ている」入道雲

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくならないですが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見えます)

のっけから特徴の自然=キャラが出てくる。夏の入道雲が町を「見ている」。

また、舞うパラソルやアイスクリーム屋の、情緒ある「間」も特徴。画像は今回、家なき子演出、忍者マン一平監督(コンテも)。 https://t.co/nSqthq4eSp

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冒頭、マサルは夏休みに避暑旅行に行く事を、チエに自慢しに来るが、不幸にもテツが応対、しかも暑いからパンイチ(特徴:脱衣演出)。後から来たマサル母は驚いて退散。そしてテツは、事情をチエ・ヒラメにチクる。テツはマサル母子がマサル父を置き去りにしたと邪推。

アイスを食べるテツ達3人が可愛い&飯テロ(特徴)。Days脚本でもアイステロ。マサル母子がマサル父を置き去りにしたというテツの邪推は、高屋敷氏特徴の、ぼっち=万病の素というポリシーからかも。 https://t.co/oxObpG6JRZ

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テツは、本当にマサル父が置き去りにされたかどうか、ヒラメの描いたマサル父の似顔絵を元にマサル家を除きに行く。だがそこには怪しい人物がいて、テツが捕まえるが、その人物はマサルの母方の叔父だった。誤解のお詫びに、テツはマサル叔父と遊び(?)に行くことに。はっきり言ってデートにしか見えない。

テツとマサル叔父の町散歩は、子供の散歩かデート(特徴:幼い・天然BL)のような様相。マサル叔父は内気なコミュ障で、テツのような豪放な人間に惚れやすいタイプ。1期の渉(拳骨息子) に似ている。かき氷食べるの可愛い。画像は今回と1期。 

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マサル叔父の趣味は読書で、特に拳骨(作家・研究者でもある)のファンだという。それを聞いたテツは、本物のトンデモ人間の拳骨を見せたる、とマサル叔父を拳骨のもとに連れていく。カイジ脚本と同じく入道雲が印象的で、年の離れた男達の人生を雲が見ている。https://t.co/9pbneDfMnK

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数日後マサルが、マサル叔父からテツへの贈り物(テツの好物・かりんとう)を届けにくる。また、マサルもチエのために、解答済みの宿題のプリントを貸す(特徴:相手の事を考えた贈り物)。マサルがそっぽを向きながら渡すのは、1期(下段)からの継承。

https://t.co/QmPavZBqBF

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テツへの贈り物であるかりんとうには手紙が添えられており、テツとの会話や拳骨との面会でマサル叔父の人生観が変わったことが書いてあった。彼は仕事が合わなかったり、生き方に悩んでいたが、テツの一言でスッキリしたとの事。結果マサル叔父は辞職したらしい。

それを聞いたテツの言葉は中々深い。
「仕事が馴染めんのやない。仕事が嫌いな奴やねん。アイツわかりきったことばかりグチャグチャ言うてたんや。おもろないから仕事や言うねん。おもろなりたかったら仕事やめんかい!」

画像は心のこもった贈り物集。今回とコボちゃん脚本。

https://t.co/mHUbGA7Uwm

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そして下記画像は手紙集。どれも心からの手紙。他にも多数。ルーツは脚本または脚本手伝い疑惑のジョー1だと思われる。今回、カイジ脚本、家なき子演出、ジョー1脚本または手伝い疑惑。

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マサルは一流企業に就職した叔父を尊敬していたので、叔父の辞職を知り泣きながらチエ家を責めるが、すぐに舞い戻って来て前言撤回する。なんとマサル叔父は花井拳骨論で新人文学賞を受賞したのだった。画像は特徴の紙ネタ。ど根性ガエル演出と今回。 

https://t.co/vGet4CtZKC

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それを聞いたテツは「続・花井拳骨論」を執筆し始める。だがチエによれば拳骨との過去を書けば書くほどテツの恥エピソードが晒されていく内容で面白いとの事。一方マサルは、いい事ばかり続きすぎて母がおかしくなっている事に頭を悩ませていた(特徴:精神疾患)。

マサル母は一種の躁状態。そして、もうすぐマサルの誕生日。さらに母の気がおかしくなると、マサルは憂鬱に。マサルの雰囲気がおかしいので、奇襲でも喰らうのかと考えたチエは小鉄を用心棒にする。小鉄は疑問を抱き、マサルの様子を見に行く。

そして小鉄が目撃したのは、完全に躁状態のマサル母だった。1期からの継承で、小鉄はジュニアの季節性鬱に毎回付き合っているため、この手の病には詳しい。だがチエには通じず。しかしマサル母がチエ宅に来訪、ヨシエとハイテンションな会話をして去っていく。

https://t.co/KDiASVhSTJ

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マサル母は、チエとヒラメをマサルの誕生会に招待する。彼等は全員、顔面蒼白に。一方マサルは誕生会までに肺炎にかかろうと、タカシを伴い毎日半裸でランニングするが、却って体力がついただけだった。ランニングがDays脚本とシンクロ。 

https://t.co/wwCIk74ATx

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その頃テツは続・花井拳骨論の執筆に忙しく、今の気持ち悪いマサルをどうにかしてくれという、チエのお願いを聞いてくれない。おねだりチエが可愛い。足をジタバタさせるのは高屋敷氏の演出時代によくあった特徴で、脚本なのにまたしても何故か出る怪。 

https://t.co/scCUqtmkxw

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結局マサルの誕生会の日がやって来る。切羽詰まったマサルは家出を決行。だが、続・花井拳骨論を書き上げ、マサル叔父の住所を聞きに来たテツに見つかり、追いかけられる。だが日々のランニングで鍛えられたマサルは、中々つかまらず。だが結局つかまる。

テツはマサルの、家出という気概には感心し、頭をはたく。するとマサルの髪が抜けていく。なんとマサルはストレスで脱毛症(特徴:精神疾患)まで発病していた。テツはドン引きして逃走。その頃、憂鬱な顔のチエとヒラメがすぐ近くまで来ていた。

毛が抜ける話は、高屋敷氏監督作の忍者マン一平にもある。忍法髪の毛ミサイルのリスクであり、皆を助ける為に使ったので、本物のサンタから帽子をもらう。一方マサルのは深刻なストレス・精神疾患で悲惨。画像は今回と忍者マン一平監督。

https://t.co/NrRyvU2YNd

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ラスト、誕生会がどうなったかは具体的には語られないが、ケーキが「語る」(同氏特徴)。一本しかないロウソクが倒れ、火が消える。サブタイは「地獄のバースデイ」。まさにその通り。

https://t.co/scjqmSRAjZ

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  • まとめ

またしても精神疾患話である。原作のはるき先生も中々詳しいのだろうが、高屋敷氏の作品に、多数存在するのは本当に興味深い。また、前半は、ほっといたら過労死か自殺しそうな青年に、テツが人生を変える助言を与え救済する話なのに、後半のマサルは悲惨。

しかしながら、子供の精神疾患は、逃げ場がなく、親が原因であることが生々しく描かれている。結局マサルは家出しか打開策を見出だせなかった。これもリアル。ギャグだから1話で済むが…。

テツがマサル叔父を開眼させ人生観を変えさせた一方で、カイジ脚本では、若いカイジが、おっちゃんに名言を吐き開眼させる。この逆の関係が面白い。テツは豪放で割と面倒見がよく、カイジは諦めない力があり、優しい。両者とも子供みたいに幼いのも同じ。

ところで高屋敷氏の作品で舞台が夏だと、美しい入道雲がキャラとして「見ている」のも特徴。 画像は今回、チエ1期、カイジ脚本。特にカイジは感動的だし、今回もテツとマサル叔父のシーンは美しい。 https://t.co/3VZfnNGcIR

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そして脚本で絵に手が出せなくなっても演出時代と同じような画面が出る怪。よく、出崎哲氏が使う遠景左向き走り・歩き。はだしのゲン2(脚本)にもよく出ていた。画像は今回と家なき子演出。

https://t.co/JibS0tPLTJ

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今回驚いたのは、鬱(躁鬱かも)・躁・脱毛症と、深刻かつリアルな精神疾患がラッシュで出て来たこと。そして、ほっといたら自殺しそうな青年(マサル叔父)の命をテツが自覚無しに救っているのを見るにつけ、テツの存在の重さを感じた回だった。

めぞん一刻70話脚本:ラブコメにも適用される「不屈の精神」

めぞん一刻は、アパート「一刻館」に住む青年・五代と、一刻館管理人で未亡人・響子との、山あり谷ありのラブコメ(原作・高橋留美子先生)。高屋敷氏は最終シリーズ構成と脚本を担当している。監督(最終シリーズ)は吉永尚之氏。

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五代の就活の様子を見に上京した、五代の祖母・ゆかり婆ちゃんが田舎に帰る日がやって来た。

別れを惜しむ響子に、ゆかり婆ちゃんは、もうすぐ亡き夫のお盆だから、と理由を告げる。「(亡き)爺ちゃんが寂しがる」というフレーズに、高屋敷氏の、ぼっち救済ポリシーが出ている。また、この話全体で、ゆかり婆ちゃんが響子にとっては「未亡人の先輩」であること、「未亡人でも女を捨てない」ことが強調されている。冒頭でも、ゆかり婆ちゃんが着物を直す仕草が丁寧に描写されている。

響子は、ゆかり婆ちゃんへのプレゼント(特徴:贈り物)を買うため、五代を買い物に誘う。五代も、今日の就活の会社回りは1社しかないので快諾。

五代が出かけた後、ゆかり婆ちゃんは昼寝をする。その間、木々などの自然を描写する間が長く発生する(特徴)。こういった、物いわぬもの達の意味深な間は、同氏の演出・脚本で、視覚的に目立つ個性。しかも脚本での方が意図が緻密で迫力がある。これも不思議な特徴の一つ。下記は今回とカイジ脚本。

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カイジの方も、カイジが目覚めるまでの、意味深な間が発生している。今回も、自然や虫の描写をじっくりした後、ゆかり婆ちゃんが昼寝から目覚める。

この、自然や無機物などをキャラクターと捉えて、まるで何かを言っているような間は、どんなに尺が短くても入ることがある。下記は今回と、新ど根性ガエル脚本(コンテ演出疑惑もあり)。新ど根性ガエルは30分2話構成なのに、じっくり入れているのが凄い。

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ゆかり婆ちゃんが昼寝から目覚めた頃、五代と響子は約束通り、ゆかり婆ちゃんへのプレゼントや、五代の実家への土産を買いにデパートでショッピング。響子がプレゼントを選んでいる間、五代は指輪売場に目が行く。ここも、指輪が五代を誘うような間やアップがある(特徴)。

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また、案内する売り子が存在感がある(特徴:優秀モブ)。勿論、今は買えない値段なので、逃げるように五代は立ち去る。

喫茶店にて、五代は響子の手を見ながら、売り子の言葉を思い出す。ここも手のアップ・高速回想の特徴が出ている。

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手のアップについては、元祖天才バカボン演出の、手が喋る回などで演出意図の解答が見れる。高屋敷氏は、手や足なども別個のキャラとして見ている。これは近年のDAYS脚本でも健在で、「足を別個の生命体と見ろ」という直球台詞がある。

婚約指輪も買えない自分に溜め息が出る五代は、なんとしても就職してみせますから、と響子に宣言する。響子は戸惑いながらも、笑顔を見せる。

昼下がり、ゆかり婆ちゃんは外で自家製梅酒を楽しむ。ここでも特徴の、西日や風の間がじっくり描写される。また、一人ぽつんとしている、ゆかり婆ちゃんの相手をするように惣一郎(犬)が絡んできて(特徴:ぼっち救済)、ゆかり婆ちゃんと惣一郎(犬)は一緒に梅酒を飲む。

帰路につく五代と響子は、二人きりで買い物できた事を互いに喜び、いい雰囲気に。しかし、雨が降りそうな雲行きになって来たため、一刻館へと急ぐ。

二人が一刻館に着くと、ゆかり婆ちゃんと一刻館住人が玄関で梅酒を飲んで盛り上がっていた。ここも特徴の疑似家族愛が出ていて微笑ましい。しかも、最初は一人で飲んでいたゆかり婆ちゃんを救うように、ほぼ全員で飲んでおり、特徴である、ぼっち救済が出ている。

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惣一郎(犬)は、すっかり酔っており、響子に執拗に絡む。五代は惣一郎(犬)を止めようとした際、響子の服の裾を破ってしまう。そこへ雷と雨が来て、その後の惨劇?を演出する。ここも、雷と雨がキャラとして活躍する。また、向日葵のアップ・間が発生する。下記は今回と家なき子演出。

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事故とはいえ響子の服の裾を破ってしまった五代は、響子から咄嗟のビンタをくらってふてくされるが、ほどなくして両者は仲直り。その後、ゆかり婆ちゃんの送別会が催される。

ゆかり婆ちゃんへ贈る言葉を言う際、響子は祖父母を幼い頃亡くした事を語り、「お婆ちゃんて、こういうものだったんだなあって…」と大真面目に言う。ここも、血のつながらない疑似家族愛の特徴が出ている。ゆかり婆ちゃんは、後に響子にとって重要な人物になるので、伏線にもなっている。

ここで響子は、ゆかり婆ちゃんへプレゼントを渡す(中身はバッグ)。これも高屋敷氏特徴の、心がこもった贈り物。下記は今回とコボちゃん脚本。

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ゆかり婆ちゃんは喜び、「管理人さんは、ええ人ら」とお礼を言う。

宴もたけなわとなった頃、雷のせいで停電となる。ここも、雷が宴を盛り上げるキャラとして「出演」している。下記は今回と、怪物くん脚本。

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暗闇で、響子が抱きついたと勘違いした五代は喜ぶが、明かりがつくと、抱きついていたのは惣一郎(犬)と判明。雨のせいか、屋内に入りこんでいたのだ。惣一郎(犬)と五代はドタバタするが、ゆかり婆ちゃんの梅酒で惣一郎(犬)は大人しくなる。その際、ゆかり婆ちゃんは「犬だって一人は寂しいもんな」と言う。ここも、高屋敷氏のポリシーが直球で出ている。あと、優しくナデナデしたり、手つきが優しいのも、色々な作品でよく出てくる特徴。

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すっかり酔った惣一郎(犬)は響子に甘えまくり、五代はそれが気に食わなくて飲みまくる。一刻館住人が、惣一郎(犬)と響子が、まるで夫婦だと囃し立てるため、酔った五代は惣一郎(犬)から惣一郎(響子の亡き夫)を連想・妄想し、惣一郎(犬)と同レベルでいがみ合うのだった(特徴:幼い)。

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翌日、ゆかり婆ちゃんは旅支度をするのだが、鏡(特徴)を見て口紅を塗る仕草が丁寧に描写されており、同氏ルパン三世2期演出を連想させる。こちらも口紅描写が丁寧。

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また、演出・脚本問わず頻出する鏡描写。挙げればキリがないが、じゃりん子チエ脚本と比較。
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チエの場合、テツとチエが似ている箇所があると鏡が告げる。ゆかり婆ちゃんの場合、まだまだ女を捨てていない姿を鏡が映し出している。どちらも、キャラとして鏡が活躍。

こういった鏡描写、初期では、ど根性ガエル演出で出ている。

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こちらも、鏡を見たマリヤ(ひろしの飼い猫)が、食べ過ぎて太ってしまったことにショックを受ける。これをはじめ、鏡が現状を映し出すキャラとなっているケースが多数存在する。

話を戻すと、ゆかり婆ちゃんは二日酔いの五代を叩き起こし、荷物持ちをさせる。一刻館の皆も、見送りに行くことに。ここも、特徴の疑似家族愛が出ている。

新幹線のホームで別れる際、ゆかり婆ちゃんは五代の手を握る。これも頻出する特徴。ど根性ガエル演出と比較。

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見送りは、そのまま進行するはずだったが新幹線が遅延し、復旧するまで時間がかかることに。時間をつぶすため、またも一刻館住人とゆかり婆ちゃんは酒盛りを始める。

酒の匂いのせいで、五代の二日酔いがひどくなり、響子はそれを心配する。五代はいつもああやって甘える手口を使う、と四谷は、ゆかり婆ちゃんに耳打ちする。それを受け、ゆかり婆ちゃんは持っていた巾着袋を五代の頭にクリーンヒットさせる。ここも、何故か脚本なのに、出崎哲氏ゆずりの回転演出が出てくる。出崎哲氏コンテ・高屋敷氏演出のど根性ガエルと比較。

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また、出崎兄弟ゆずりの指パッチンも出てくる。

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その後も酒盛りは続き、その間に新幹線のダイヤは復旧。新幹線は出発してしまう。結局、次の新幹線が来るまで酒盛りは続いたのだった。

色々あったが、無事に実家に着いたゆかり婆ちゃんは、電話にて、響子は五代にはもったいないが、絶対に諦めるな、と五代に発破をかける(特徴:不屈の精神)。カイジ脚本でも、「絶対に諦めねえ…!最後まで…!」という台詞があり、話全体で「諦めない」事が大事であると、かなり強調されている。

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諦めない精神は、同氏の作品によく出てくるポリシー。出崎兄弟直系の「男の世界」が、ラブコメである本作でも顔を出している。 

ちなみに、奇跡的にカイジ脚本と似た構図が出る怪現象発生。茫然としている状況が似ているせいだろうか。

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ゆかり婆ちゃんは、五代の事をよろしく頼む、と一刻館の皆に酒代を渡していた。それを聞いた五代が急いで部屋に戻ると、すでに一刻館の皆は酒盛りを始めていた。またも二日酔いが悪化した五代は、(介抱しようとした)響子の部屋に行けるチャンスを得るも、それどころではなくトイレに駆け込むのだった。

  • まとめ

今回も出て来た、自然や無機物の間。特に、ゆかり婆ちゃんが昼寝をしている際の自然や虫の作り出す「間」は長く、それを見ていると、何故か「お年寄りに優しくしなきゃなあ」という気分になる。脚本なのに、こういった沈黙の間が「語る」のが毎回凄いと思う。それでいて話の密度は濃く、かなり圧縮されている。

そして、毎回出てくる特徴である、キャラ(特に五代)の幼さ。ついに犬と同レベルに。原作より強調される五代の幼さ・可愛さは、響子の母性本能を刺激するよう設定されているのではないか、と前に書いたが、今回も、甘えるのが五代のいつもの手口…と四谷が言うので、さらに裏付けが取れた。

その一方で、やはり出てきたのが「男なら諦めるな」的な「男の世界・美学」。以前も書いたが、高橋留美子原作作品にこういった男の世界を組み込むのは興味深い。

また、ゆかり婆ちゃんは夫に先立たれ、老いてもなお女であることを忘れていないことが、着物を直したり、口紅を丁寧に塗ったりする描写にて強調されている。いわば、未亡人である響子に、女を諦めないよう、先輩として手本を示している。こちらも、「諦めるな」が強調されている。

こういった不屈の精神を強調するポリシーのルーツは、やはりデビューまわりの「あしたのジョー1」の脚本経験(無記名)から来ていると思われる。丈も、何回打たれても諦めず立ち向かうファイトスタイル。その姿勢が、ラブコメにも適用されているのが面白い回だった。