カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

忍者戦士飛影 8話脚本:もの言わぬ自律ロボも重要なキャラクター!名前も付ける

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくなりませんが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見れます。)

話は序盤~中盤まで、ハザード率いる火星政府軍と、グラサン率いるザブーム軍の連合軍から、ロミナやジョウ達エル・シャンク勢が逃げ、敵を迎撃するスタイル。意外にも高屋敷氏の脚本回は重要な伏線や設定が出ることが多い。なにしろ飛影を「飛影」と名付けた回 。

どうにも噴き出してしまう(ジョウ達地球人も失笑)、ロミナが探し求める「忍者」だが、敵のザブーム軍も忍者伝説を信じていることが語られる。どうやら巨神兵のような存在で、ザブームの初回ラドリオ星侵攻をたった3体で蹴散らしたらしい。

この、ザブーム軍側から見た忍者伝説をグラサン達が語るが手短名調子(特徴)。絵もイラスト数枚で終了。ロミナもグラサンも、ジョウ達が伝説の忍者ではないかと疑い、グラサンはハザードにジョウ達の身上書を送るよう依頼。その際ハザードが戦力補充を無心。

グラサンは了承するも、「性格が顔に出ておる」とハザードを酷評。これは、同氏脚本5話でマイクがハザードに対し「性格が顔に出てる」と酷評したことと連動している。同じライターだからこそ出来るネタ。

ところで、ジョウのライバルであるイルボラとその腹心ガメラン、カイジの一条と村上、今回の地球司令官と部下、ワンナウツのオーナーと部下が、なにか共通性があって笑った。性格的なものも似通う。 https://t.co/ADtg6kuvBx

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一方ロミナ姫も、ジョウ達が忍者ではないのか?とジョウ達に問う。ジョウ達は当然否定。逆にジョウは、ピンチになると登場するロボ「飛影」についてロミナに問う。これは「どこからともなく飛んで来て影のように去る」からと、ジョウが命名した。さらっとタイトル回収してて笑った。

色々話し合った結果、ジョウ達もロミナも、地球に行こうという結論になる。地球連邦士官に、ジョウの幼馴染みがいるのも頼みの綱。彼(ローニン)は後に活躍。

一方イルボラは飛影について映像検証。映像検証シリーズまた増えた。 https://t.co/MQkAiWANaV

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画像は、今回と、エースをねらえ演出、ワンナウツ脚本、ルパン三世2期演出、ジョー1デビュー脚本疑惑(無記名)、忍者マン一平監督。これだけ沢山あると、ジョー1デビュー脚本疑惑(初期脚本陣一斉降板後36話)がますます高まる。

ジョウ達は、今いる火星衛星フォボスから地球連邦軍へコンタクトを試みる。ジョウの幼馴染みローニンを呼ぶが、不運にもバカンス中だった。しかも宇宙人の存在を信じない地球司令官は、ジョウ達の話を冗談と思い、まともに取り合わない。今度のエイプリルフールに宇宙人のサインを頼むよ、とまで言う。

それを聞きジョウは「何がエイプリルフールだ」と怒る。この「何が××だ」という言い回しは同氏脚本によく出る。見た中ではジョー1脚本疑惑、まんが世界昔ばなし演出、新ど根性ガエル脚本、カイジ脚本など。あと地球司令官の、宇宙人を信じない態度が可愛い(特徴)。

ロミナに忍者ではないかと言われたジョウはそれなりに気になり、夜中にハンガーに行く。乗機である黒獅子のコクピットに座り飛影に語りかけるが、反応は無かった。だが物言わぬものが見ているという、同氏特徴の、無機物の発する殺気が出ている。映像演出もそうなっている。

夜中に起きたジョウに付き合うダミアンは、エル・シャンク内の謎の部屋に気付く。ダミアンのおかげで錠前破りに成功するも、第二トラップの電撃で二人は気絶。開かずの間に入ろうとしたことで、二人はイルボラとガメランに酷く怒られる。

このくだりでも、開かずの間がキャラクターとして殺気を放っている。

 

ダミアン初登場回(5話)の脚本を同氏が担当したこともあり、どうにも高屋敷氏はダミアンびいきな気がするし、今回もいい奴。二人のやりとりはどこかいたずらっ子のようでもあり、結構ベタベタしている(特徴) 。https://t.co/8JtKByz4HI

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ジョウやダミアンが開かずの間や忍者について話す間に、敵が襲撃してきて戦闘に。イルボラがジョウ達の出撃を阻止し、飛影任せにしようとするも、ダミアンやロミナの助太刀でジョウ達は出撃可能となる。それぞれ活躍するジョウ・マイク・レニーの3人だが、ピンチになると飛影が来てジョウ機(黒獅子)と合体してくれる。

飛影の無双(ノルマ)で敵は撤退。戦闘後、飛び去る飛影をジョウは「愛想の無い奴だぜ」と見送る。この台詞もだし、ジョウは飛影に呼び掛けようとしたり、飛影のことを「あいつ」と言ったり、すっかり人間のように扱っている(特徴:物や自然のキャラ化)。

戦闘後、ロミナはイルボラに、ジョウ達に謝るよう命ずるが、イルボラは謝らず部屋を出る。その際ジョウは、飛影は他のロボが限界まで闘わないと来ないと、イルボラに諭すが、イルボラは無視。ところで、謝れ…の下り、カイジに通じるものがあるw

一方ロミナはジョウ達の提案通り、地球に向かう決心をする所で次回へ。

次回予告は凄く高屋敷氏らしく、ジョウの父がジョウに語りかけるもの。己の信じる道を悔いのないように行けという内容で、同氏演出の家なき子や、ジョー2脚本、カイジ脚本・シリーズ構成に流れるテーマに通じる。

 

  • 画像

キャラの性格が幼く、可愛くなる件。毎度演出作・監督作ならともかく、脚本まで幼い顔つきになるのが怪。脚本から出ているキャラクター性が、幼く可愛いのだろうか?画像は今回とジョー2脚本、忍者マン一平監督。 https://t.co/aIT0HAdQBC

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高屋敷氏の演出や脚本は、「このキャラこんな可愛い顔するんだ」というのが多い。今回の可愛い集もだし、5話脚本と、カイジ2期1話脚本も可愛い顔が出る。脚本は絵をいじれないので毎回、怪としか。https://t.co/CXXdledqhp

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現状が見えている場合の鏡演出(最上段)。今回のグラサンは、自分の立場のピンチを、カイジは沼挑戦1回目のヤバさが「見えている」。あと錠前破り(ルパン3期脚本)のシンクロ(2段目)や、物言わぬ物達の殺気(3段目)。 https://t.co/M7JI4m5Snx

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ちょっと話を変えるが、高屋敷氏脚本のコボちゃん15話について。特徴のメシテロと、シンクロ怪現象。コボちゃんカイジ、怪物くん、ジョー2、チエ脚本、シリ構めぞん一刻OP。毎度、脚本から出力される映像が、他作品とシンクロしていくのが怪現象すぎる。脚本から想像する画が共通なのか? https://t.co/6zUur4lWDz

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高屋敷氏特徴の、可愛く幼くなる件、下記画像の上段右が、足を交互にバタバタさせる演出。ど根性ガエルは演出時代だし、元祖バカボン演出にもこの演出が頻出していたが、コボちゃん脚本にも同じような演出がある。あと18歳が幼児と同レベルで幼い (下段)。https://t.co/qfsoJC5lb1

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  • まとめ

今回は、「飛影」命名、エル・シャンクの開かずの間、地球軍士官のジョウの幼馴染み、あたりの伏線やキーポイントが出てきた。どうも、各ライター担当の伏線設置と回収があるようだ。後の高屋敷氏脚本回にも、今回設置された伏線の回収が見られる。

今回、圧倒的に高屋敷氏らしさが出ていたのは、父がジョウに語りかける次回予告。家なき子演出の「男はいつか一人で生きていくもの」やジョー2最終回脚本の、ジョーの悔いのない戦いなどが反映されている。家なき子のビタリスも、ジョウの父も人格者で共通。

高屋敷氏の演出・脚本は、幼く可愛い演出が上手い一方で、そこからかっこよく豹変するのも特徴。飛影のジョウもシリアス時には豹変するし、家なき子演出も、特に最終回で男の顔に豹変。ゲン2脚本やカイジ脚本・シリ構も同様。ギャップの見せ方が上手いのかも。

めぞん一刻56話脚本:最小限の情報で多くを語る紙

めぞん一刻は、アパート「一刻館」に住む青年・五代と、一刻館管理人で未亡人・響子との、山あり谷ありのラブコメ(原作・高橋留美子先生)。高屋敷氏は最終シリーズ構成と脚本を担当している。監督(最終シリーズ)は吉永尚之氏。

今回は、五代に惚れている女子高生・八神の恋心の行方と、三鷹(五代のライバル・イケメンで金持ち)の見合い話が、平行して描かれる。

前回55話で、八神は一刻館に強引に泊まりに来る。すったもんだの末、八神は響子の部屋に泊まることに。そこで八神は響子に、五代の事が好きなのでは、と問い詰めると、響子は戸惑いながら「別に…」と答えてしまう。
それなら、と八神は翌朝、五代にベタベタしながら登校(五代は八神の高校で教育実習をしている)。響子は密かに嫉妬するのだった。(55話についてのブログはこちら)

そして今回は、八神が五代にベタベタしながら登校する所から始まる。この日は五代の教育実習最終日。

五代と同じ屋根の下で夜を過ごした、と友達に宣言した八神は、同級生達に囃したてられる。響子の部屋に泊まった事実も言ったものの、五代の部屋に泊まったという噂が、クラス中に広まってしまう。

八神は、親しい友達には、響子の所に泊まった事の詳細を話す。その回想冒頭にて、高屋敷氏特徴の、ランプのアップ・間がある。演出時代からの特徴で、挙げればキリが無いのだが、今回はコボちゃん脚本と比較。

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五代の事が好きなのか、と響子に問い詰めたところ、「別に…」という答えを導き出すことができ、アドバンテージを取ることができた、と八神は満足する。だが八神の友達は、教育実習が終わったら、五代と中々会えなくなると指摘。八神はそれを聞き、色々と考えさせられる。

その頃三鷹は、見知らぬ相手との見合い話を叔父に勝手に進められ、困惑していた。こうして、五代と三鷹の話が同時進行する。こういった、複数平行するエピソードを上手くさばく手腕も、高屋敷氏の特徴。じゃりん子チエ脚本あたりから、その傾向が強い。

三鷹はテニスクラブのコーチをしており、響子や一ノ瀬(一刻館住人・主婦)は、そのテニスクラブに通っている。テニスクラブにて、五代と八神の騒動を一ノ瀬から聞いた三鷹は、ライバルの失速を内心喜ぶ。

ここのテニスシーンで、高屋敷氏演出回のエースをねらえ!で出た演出と同じ、ボールが太陽に重なる場面が出て来る。下段がエースをねらえ!の高屋敷氏演出回。

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脚本から絵の管理はできない筈だが、こういった、演出時代と同じ特徴が映像に出力されるのが毎度不思議でならない。ただ、今回のコンテは、あしたのジョー2演出陣の大賀俊二氏なので、ジョー2脚本陣だった高屋敷氏とは、意思疏通しやすいのかもしれない。そして二人とも出崎統氏と長年仕事し、出崎演出に強く影響を受けているのが共通(エースをねらえ!あしたのジョー2の監督は出崎統氏)。

話を戻すと、テニスクラブに三鷹の叔父がやって来て、見合い話が更に進められる。その話は、響子含めたテニスクラブの皆の耳に入る。三鷹は、会うだけ会ってみると宣言。響子の気を引くという魂胆もあった。

三鷹は響子に、五代と自分、どちらを選ぶか決断を迫るが、響子からはっきりとした回答を得られなかった。それでも響子の前ではクールに決めようとする三鷹だったが、響子が連れて来た惣一郎(犬)のおかげですっかり三枚目になってしまうのだった(犬が苦手)。

一方五代の教育実習先では、実習最後の日ということで、クラスの皆で感想文を書くことに。委員長である八神は、それを集めて五代に提出しに行く。その際八神は、自分はどうかしていた、と五代に別れを告げる。クラスの皆に囃したてられ、熱が覚めてしまったのだ。身構えていた五代は拍子抜けする。

いよいよ学校を去る時が来て、五代は、大変な目には遭ったが八神に会えて楽しかったと述懐する。去っていく五代を密かに見守っていた八神は、無意識に涙をこぼす。涙のアップ・間が、同氏特徴的。ここでは、涙を一キャラクターとして捉えている。涙ということで、カイジ脚本と比較。

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帰宅した五代は、八神にアッサリ別れを告げられたと響子に話す。

その頃八神は、川縁の土手に一人佇み、考え事をする。ここの夕日や、舟の横切りが、出崎演出的。また、夕日の意味深なアップ・間は高屋敷氏特徴的。これも上記に述べた、コンテの大賀氏との意思疏通で出たものかもしれない。

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五代の部屋にて、五代と響子は、クラスの皆からの感想文を開ける。紙を重要キャラクターと捉えるのが高屋敷氏特徴。下記画像は紙特集(挙げればキリがない)。今回と、じゃりん子チエ・カイジ脚本。

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感想文の殆んどは、八神と五代の仲をからかうものだった。わいて出た他の一刻館住人にもそれを見られ、五代は慌てる。

そんな中、八神の感想文を開くと、そこには「Long good-bye 永遠にさよなら」と書かれていた。五代は少ししんみりする。ここも、紙が意思を持つようなアップ・間がある。下記画像は、意思を持つ紙達。今回と、じゃりん子チエ1、2期脚本、カイジ脚本。どれも、伝える力が強い。

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想いを伝える紙ということで、カイジ脚本と比較。カイジの場合は、兵藤会長からカイジへのメッセージを、当たり籤が強く伝えている。

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どちらも、見た目の情報量は少ないのに、内包している想いは膨大。アップや間を取ることで、その想いの強さを表している。毎度のことだが、こういった個性が脚本から出力されているのが怪。だが、言葉より映像で伝える「脚本」が、毎度面白い。

八神のメッセージを読み取り、五代がしんみりしている所へ、突然八神がやって来る。バッグを五代の部屋に忘れたので、取りに来たのだった。そして八神は感想文に書き足しをし、「So long! Good-bye(またね!さようなら)」という文にして、「永遠にさよなら」を消す。

八神は、無意識に涙を流した事を受け止め、この恋を諦めないことにしたのだった(同氏特徴・不屈の精神)。こうして八神は、元気に去っていった。

そんな八神を見て一ノ瀬は、三鷹のお見合いといい、八神といい、響子は大変だと話す。

一ノ瀬の言葉で、三鷹の見合い話を知った五代は喜びを隠せない。同氏特徴で、喜び方が幼く可愛い。これも、演出だけでなく、絵を管理できない脚本からでも色々な作品で出る謎な特徴。あと、作画的にも話的にも、五代は原作より、幼く可愛く描かれている気がする。

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三鷹の見合い話を喜んでしまった五代だったが、三鷹の事を気にする響子を見て、まだ結婚するわけではない、と励ます。響子は気を良くして立ち去る。

響子が去ったあと、四谷が開けたビール缶の意味深なアップ・間がある。

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これも特徴で、状況などを表すキャラクターとして「物」が活躍する。 

四谷・一ノ瀬・朱美は、いつものごとく五代の部屋で飲むのだが、ここも特徴のビール・飯テロ。また、もう一つの特徴である疑似家族愛も表れている。

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一ノ瀬や朱美は、見合い話を機に、三鷹と響子の仲が却って深まるかもしれない、と五代を煽り、からかう。動揺する五代を肴に、一刻館住人達の酒盛りは夜更けまで続いたのだった。

場面は転じて、三鷹の見合いが始まる。ここでも、鹿威しの意味深なアップ・間がある(特徴)。

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そして、今後の波乱を予兆するように、ラストも鹿威しの音で〆ている。カイジ破戒録7話脚本のラストで、揺れるランプに鐘のSEが被さる演出に通じるものがある。

  • まとめ

とにかく、紙と、紙に書かれた文字の威力がクローズアップされた回だった。カイジ1期26話脚本にて、兵藤会長がカイジにプレゼントした当たり籤と比較すると面白い。どちらも見た目の情報量が極端に少ないのに、沢山の想いを伝えている。

また、八神が無意識に流した涙は名シーン。涙のアップ・間により、涙が八神に色々な事を伝えているような感じになっている。

紙・文字にしろ、涙にしろ、やはり「喋らないもの」を、意思を持つキャラクターとして高屋敷氏は活躍させている。

あと、平行進行する五代と三鷹のエピソードを上手くさばき、最後に合流させるという、脚本技術上の特徴も光っていた回だった。

そして今回も、何やら五代が原作より幼く可愛い。やはりこれは高屋敷氏のシリーズ構成方針かもしれない。ほぼ原作通りでありながら、無邪気な青年が恋を通し、男として成長する様子を描く意図があるように思える。

家なき子や宝島などの演出にて、少年が男へと成長するのを描くのが同氏は巧みだったが、それがシリーズ構成になっても生きているのを、今回も実感した。