カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

元祖天才バカボン13話B演出コンテ:皆で食べるご飯の温かさ

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

大晦日の話。同氏は演出・脚本とも、多くの大晦日話を担当している。その中でも今回は、ど根性ガエル演出回のセルフオマージュが多い。
開幕の口アップも、ど根性ガエル演出と被る。

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バカボン一家は大掃除をするが、パパは結果的に邪魔ばかりするので、外に出て年越し蕎麦を買ってくるよう、ママから命令される。
画像は、元祖天才バカボン同氏演出のクセ。他の話(右)にも出る、湾曲した地面とスピード線。

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蕎麦屋を探すパパは、バカ田大学時代の後輩・細井と再会。丁度、細井は蕎麦屋を経営していた。再会シーンで、腕を絡ます所をアップにする所や可愛く踊る所が同氏特徴。画像は手と手のスキンシップ集。今回、エースをねらえ演出、ジョー2脚本。

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細井の蕎麦屋は、お客が一人も来ない程、閑古鳥が鳴いていた。ど根性ガエル演出での大晦日話も、梅さんの寿司屋が、蕎麦屋に負けて客が来ない状態だった。コンセプトが被る。画像は今回と、ど根性ガエル演出。 

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パパは細井の蕎麦屋に客を集めようと、バカボンと行動を開始する。その間、他の蕎麦屋やモブを著しく混乱させる。大量モブは、演出でも脚本でも、よく登場する。画像は、今回とエースをねらえ演出。 

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パパは、細井の店で紅白歌合戦が見れるとホラを吹き、大量の客を呼ぶことに成功。しかし実際は紅白ブタ合戦というダジャレだったので、怒った客と大乱闘に。手前に八の字の物体を置く構図は、同氏コンテのクセ。ベルばらコンテと比較。

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大乱闘から逃げたバカボンとパパは、土管の中で孤立。そこへ、ママや仲間、細井がやってくる。ぼっちの所に家族や仲間が来てくれる展開は、同氏特徴(ぼっち救済ポリシー)。ど根性ガエル演出と比較。

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土管の中にいるパパを細井が呼ぶシーンの構図(円の中に顔)も、出崎兄弟に影響を受けて、よく出てくる。演出なら解るが、脚本でも、よく出るのは怪。画像は今回、忍者マン一平監督、カイジ2期脚本。 

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細井は、蕎麦が大量に売れたと報告。大乱闘後、モブが空腹になったためである。
朗らかなモブも、同氏特徴。ど根性ガエル演出と比較。他も多数、脚本作でも出る。 

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蕎麦屋の繁盛を喜び、パパは家族や仲間と、年越し蕎麦を食べる。同氏演出のど根性ガエルでも、大晦日に皆で寿司を食べる。チエ2期脚本では、カルメラのラーメン屋に皆で来る。カイジ2期脚本も、皆で焼き肉パーティー。

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皆で食べるご飯は美味しい…も同氏ポリシー。

かくして、雪の中、パパは皆で年越し蕎麦を食べるのだった。
画像は、仲間と共に味わうご飯集(特徴)。今回、ど根性ガエル演出、カイジ2期脚本。他も多数。

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  • まとめ

脚本は、今回も山崎晴哉氏。この話は、高屋敷氏演出の、ど根性ガエル大晦日回と色々コンセプトが被っていて驚いた。高屋敷氏のポリシー、義理人情と、ぼっち救済がタップリ詰まっている。皆で食べるご飯は美味しい、も余程強調したいポリシーなのだと思う。

同氏は、じゃりん子チエの名場面、寒い部屋に、ひもじい思いで一人でいると死にたくなるから、ご飯はしっかり食べよう、とおバァはんが語る回の脚本も担当している。また、めぞん一刻脚本でも、皆で食べるご飯は美味しい、的な直球台詞がある。

このように今回も、ぼっち・ひもじさは、精神疾患の元になる、という時代先取りの精神疾患予防が前面に出ている。これは本当に何なのだろう、でもカイジにもそれが出ているから感動したのは確か。

同氏の演出・脚本とも飯テロが多いが、これも精神の安定に欠かせない要素。本能的にわかっているのか、経験則なのかは不明だが、確固たるポリシーとして、作品の前面に出ている。

高屋敷氏の扱う精神疾患について、以前まとめた記事がこちら:
http://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2016/09/22/141354
思い起こせば、カイジ2期脚本でも、班長が、カイジは精神失調だと言い、食事させようとする(悪意あるが)所を強調している。

精神疾患の描写や予防策が、ギャグでもシリアスでもよく出るのが同氏の特徴であるが、それを無意識に視聴者に感じさせる手腕が毎回凄い。また、説教臭さはなく、結末は、ほっこりするものが多い。今回も、そういった温かさを感じさせる回だった。

元祖天才バカボン10話B演出コンテ:人情を照らすランプ

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

脚本は山崎晴哉氏。冒頭から飯テロのケーキ(特徴)。
友達から、ケーキのおこぼれを貰う遊びをするバカボン
画像はケーキ集。今回、怪物くん脚本、家なき子演出、めぞん一刻脚本。ケーキだけに景気がいい、というダジャレはめぞん一刻にも出てきた。 

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あまりにバカボンが貧乏くさい役割の遊びなので、パパが紙飛行機を飛ばしてツッコミ。
紙飛行機も、同氏作品によく出てくる。画像は今回、エースをねらえ!演出、ジョー2脚本。 

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バカボンの友達は、父親のボーナスでケーキを買ってもらったという。
会社員ではないパパはボーナスとは何かわからず行動し、町の人達を混乱させる。その間、色々ダジャレが出てくる(特徴:ダジャレ好き)。ママの説明で、パパはボーナスの意味を漸く理解。

その後パパは、刈田という男から、ボーナスを預かってくれと頼まれる。ツケの支払いを迫る人達から逃げるためである。刈田とパパは逃げる事に成功。刈田はお礼に、パパに豪華な食事(特徴・飯テロ)を奢る。画像は今回とカイジコボちゃん・チエ2期脚本。 

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だが刈田がボーナスで支払いをしようとすると、パパは、ボーナスを守れと言われたから渡さない(特徴:頓知)と言いトンズラする。刈田はお代の代わりに身ぐるみはがされる(特徴:脱衣演出)。

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散々な目にあった刈田は、パパを見つけて追いかけまわす。

その頃本官は、山口百恵等身大パネル相手に結婚ごっこをしていた(特徴:物言わぬ像もキャラ)。そして、刈田とパパの追いかけっこを見た本官は、刈田をボーナス泥棒と勘違いし確保する。
画像は物言わぬ像達。今回、カイジ脚本、ルパン三世2演出。

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刈田に対する取り調べ中にも、山口百恵パネルの意味深なアップがあり、特徴が出ている。これは未来作の「脚本」でも出てくる特徴なのが毎回不思議。

さらに本官が「百恵ちゃんも微笑みかけてくれている」と言い、同氏の特徴を後押し。

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刈田は頭にきて百恵パネルに八つ当たりし、更に本官を怒らせてしまう。
そこへパパとバカボンが来て、ボーナスなら刈田の家に届けたと言う(特徴:義理人情)。かくして刈田は無罪放免となる。刈田の家族は、初めてボーナス全額を得て感謝する。

そこへ、ツケの支払いを求める人達が刈田宅にやってくる。パパは、刈田は死んだとホラを吹き、香典代をせしめる。パパは香典代を刈田に渡そうとするが、刈田は無欲(特徴)で金をパパに譲る。それを、温かなランプ(特徴)が見守る。

状況や感情に連動し、事象を「見ている」ランプは同氏演出・コンテ・脚本・監督すべてで頻出する特徴。挙げればキリがない。画像は今回、ど根性ガエル演出、ジョー2脚本。もちろん、アカギ・カイジ脚本にも出てくる。

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パパはせしめた香典で、家族に沢山のおでんをふるまう。香典→おでんのダジャレで〆。
皆で食事をすることは良いこと、というのも同氏特徴。画像は今回、新ど根性ガエルめぞん一刻脚本。めぞん一刻では、皆で食事をするのは楽しい、という直球台詞あり。 

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  • まとめ

まず冒頭の紙飛行機。エースをねらえ!演出の紙飛行機は、想いを伝えるキャラとして活躍しており、名シーンとなっている。ジョー2脚本の紙飛行機も、「沈黙を破るもの」という役割が与えられている。今回も、悪趣味な遊びを止める役割がある。

そしてランプ。人の温かさを表現することが多く、演出時代は、画像のように光の円が描かれることが多い。

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また、不吉な場合は光が灯っていなかったりする。緊迫した状況だと、アップになり、数秒の間がある。間に関しては、脚本の方が殺気がある。

同氏演出・脚本に頻出する像(今回はパネルだが)についても、この話では、物言わぬとはいえ、全てを見ていて、感情もあるキャラであると、直球で描かれている。
これがシリアスものだと、非常に殺気のある間を形成する。カイジ脚本然り。

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元祖天才バカボン家なき子は、山崎晴哉氏脚本・高屋敷氏演出の回が多く、相性はバッチリだと思う。双方とも人情話を得意としている?
山崎氏が鬼籍なのが悔やまれる。
高屋敷氏が脚本にまわる時、山崎氏の影響を受けることがあったかもしれない。

このように、今回の収穫は、紙飛行機・ものいわぬ像の役割・人情を照らすランプ、の特徴や意図が直球で出てきたこと。元祖天才バカボンはつくづく、同氏の作家性を深く探求できる貴重な作品であると思う。