カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

空手バカ一代40話演出:雨が見守る死闘

アニメ・空手バカ一代は、同名漫画のアニメ化作品。空手家・飛鳥拳(実在の空手家・大山倍達がモデル)が、己の空手道を極めるために、国内外の強敵と対戦する姿を描く。
監督は岡部英二・出崎統氏。
今回は、脚本が吉原幸栄氏、コンテが出崎統氏・演出が高屋敷英夫氏。

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以前書いたが、本作は監督を「演出」、各話演出を「演出助手」とクレジットしているので、本作の演出助手=各話演出とする。実際の内容も、各話演出助手でかなり個性が違う。クラシック作品においての演出(現場監督のような立場)は、なぜか個性のばらつきが激しいのも興味深いところ。

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  • 今回の話:

格闘マニアの大富豪・ブラッド・ジョーに招かれ、飛鳥はフランスに赴く。
当地にて飛鳥は、フランスの伝統的格闘技・サファーデ(サバット)の達人・ボーモンと決闘することに。2時間を超える死闘の末、飛鳥はボーモンを空中3段蹴りで倒すのだった。

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冒頭にて、水溜まりに映るエッフェル塔と、葉の意味深な「間」がある。この「間」は高屋敷氏の特徴で、脚本作でも出る。出崎統氏の凝ったコンテと、高屋敷氏の、「物や自然が“語る”」演出が融合。画像は、高屋敷氏の「葉が語る」場面集。今回、MASTERキートンめぞん一刻脚本、エースをねらえ!演出。

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また、頻出の太陽のアップ・間が、今回も出る。当時の技術の限界で、太陽が異様に目立っている。そのおかげで、「太陽を出したい」という意志を明確に感じ取れる。らんま脚本、元祖天才バカボン演出、MASTERキートン脚本と比較。後年の脚本作になると、意味や迫力が増す。

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飛鳥がブラッド・ジョーと対面する場面では、両者が固い握手を交わす。握手などの、手を使ったコミュニケーションは、高屋敷氏の作品によく出る。今回の場合、ブラッド・ジョーの一方的な思いを描いている。
画像は握手集。今回、忍者戦士飛影あしたのジョー2・ルパン三世2nd脚本。

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ブラッド・ジョーと飛鳥が話す場面では、ブラッド・ジョーが葉巻をくゆらす。印象的な喫煙描写も、高屋敷氏の作品ではおなじみ。キリが無いので、カイジ2期脚本と比較。

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ブラッド・ジョーは飛鳥に、自分のスクラップ・ブックを見せるが、こういった新聞記事ネタや紙ネタも、高屋敷氏の特徴のひとつ。アカギ・チエちゃん奮戦記脚本、監督作忍者マン一平と比較。

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あと、はだしのゲン2脚本に、「元新聞記者」の老人が出てくるのが気になる。もしかしたら、高屋敷氏が好きな職業なのかもしれない?

飛鳥とブラッド・ジョーが、柔道の道場へ車で向かう場面では、出崎統氏コンテの定番の構図(橋+乗り物)が出る。影響下にある高屋敷氏も、これを使うが、やはり高屋敷氏の驚異的なところは、「脚本」からでも、似た絵面が出力されるところ。ベルサイユのばらコンテ、ルパン三世2nd演出、忍者戦士飛影脚本と比較。他も多数(脚本作含む)。

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ちょっとした小ネタだが、柔道の道場にて、コーチが笛を吹く場面が他作品とシンクロを起こしている。エースをねらえ!演出、カイジ2期脚本と比較。

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フランスでは、空手が殆ど知られていない事が判明し、飛鳥が落ち込む場面では、出崎統氏コンテでおなじみの、屋上演出が見られる。これも、高屋敷氏は「脚本」からでも出すことが何故かできる。チエちゃん奮戦記脚本、あしたのジョー2脚本と比較。あしたのジョー2は、出崎統氏のコンテだが。

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飛鳥が、サファーデの達人・ボーモンとの決闘に向かう場面では、高屋敷氏の大きな特徴である、ランプ演出が出てくる。めぞん一刻カイジ2期「脚本」と比較。

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同じく大きな特徴である、像の意味深な「間」が出る。ベルサイユのばらコンテ、ルパン三世2nd演出、じゃりン子チエカイジ脚本と比較。

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飛鳥とボーモンが対峙する場面では、やりすぎなくらい雨が自己主張。これも、「天」をキャラクターと捉えているらしき、高屋敷氏の意志が感じられる。
画像は、雨の中でのドラマ集。今回と、めぞん一刻あしたのジョー2・ワンナウツ脚本。

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死闘の末、飛鳥は決死の空中3段蹴りでボーモンを倒すが、ブラッド・ジョーが、空手のPRになると言って写真を取る。あまりよろしくない態度だが、笑顔が可愛い。
笑顔が可愛いのは、今回のような「演出」なら分かるのだが、「脚本」作でも可愛い笑顔は頻出。そういうキャラ作りをしているからだろうか?あしたのジョー2脚本、監督作忍者マン一平、DAYS脚本と比較。他も多数。

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飛鳥は、ブラッド・ジョーの非礼な態度を一喝し、倒れているボーモンに手を差し伸べる。ここも、高屋敷氏の大きな特徴である、手から手へ思いを伝える行為。
ワンナウツ忍者戦士飛影MASTERキートン脚本と比較。

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  • まとめ

気になるのは、ナレーションの多用。36話演出(出崎統氏コンテ)もそうだった。高屋敷氏の作品(特に脚本)では、ナレーションを重要キャラと捉えている節があり、ナレーションは多用される。本作において、出崎統氏コンテ+他の人の演出では、ここまでナレーションは多用されていない。
この時代の演出は、好みが全体に反映されやすい。それを思うと、高屋敷氏の意向なのかもしれず、もしそうなら、高屋敷氏の作風の一つ、ナレーション多用の初期型かもしれない。

そして今回も、太陽・ランプ・像・雨演出の初期型が見れたのが収穫だった。特に雨演出は、当時の技術の限界のおかげで、「雨を強調したい」という意図が丸見え。探究する側としてはありがたい。

今回の対戦相手であるボーモンは、誇り高い精神の持ち主で、飛鳥もそんな彼に好感を持つ。敵やライバルにもシンパシーを感じるようにさせるのは、高屋敷氏の得意分野であり、脚本作、特にシリーズ構成も務める作品では炸裂する。今回のも、それの初期型かもしれない。最初期はあしたのジョー1脚本(無記名)と思われる。

また、雨は、飛鳥がフランスに降り立った時と、決闘の間に降っており、決闘の後の雨上がりについては、「ブローニュの森は、雨上がりの優しさを取り戻していた」というナレーションが入る。こういった所も、「天」や「自然」を重要なキャラクターとする高屋敷氏の意向が窺える。

フランスが舞台なだけあり、後年の出崎統氏監督作品・家なき子に通じるものがある。家なき子も、シリーズの半分が、出崎統氏コンテ+高屋敷氏演出の組み合わせ(もう半分の演出は竹内啓雄氏)。つまり、今回の組み合わせと同じである。その意味では、家なき子のルーツ的な所がある。もともと私が高屋敷氏の歴史に興味を持ったのは、家なき子を見て、カイジ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)のルーツを感じたからなので、カイジのルーツのルーツを見た感じで、感慨深い回だった。