カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

RAINBOW-二舎六房の七人10話脚本:想いと幸福

アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回のコンテは福田道生氏で、演出は細田雅弘・田中智也氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

瀕死の六郎太(少年院の二舎六房の古株でリーダー)を連れ少年院から脱走した、二舎六房の真理雄(熱血漢)と昇(小柄)。金を掴むため、米軍基地でのボクシング試合に挑むも敗北した真理雄は、六郎太の指導を受けて再びリングに上がる。だが、不吉な影がちらつく…

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開幕、米軍基地でのボクシング試合で敗北し隠れ家に帰宅した、真理雄(少年院の二舎六房の熱血漢)と昇(二舎六房の一人。小柄)の靴が映る。こういった「物」の「間」はよく出る。チエちゃん奮戦記・めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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昇は、六郎太(二舎六房の古株でリーダー)に黙って試合に出た真理雄を叱らないで欲しいと訴える。
六郎太は叱るどころか、やられっぱなしは悔しいだろうとして、明日から稽古をつけると真理雄に言う。
真理雄は感極まり、拳に涙を落とす。この表現はアニメオリジナル。手による感情表現は頻出。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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六郎太は真理雄に、右(故障している)をフェイントに使い、左を叩き込むことを徹底的に教える。トレーナーとボクサーの密接な関係は、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)でも丁寧に描かれている。

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そこへ昇(米軍から仕入れた煙草を闇で売り捌く仕事をしている)が来て、次の試合が1月28日に決まったことを知らせる。なんとなく、あしたのジョー2(脚本)にて、試合の日を知らせに来る段平と被る。

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ここは、時系列が原作から変えられており、うまくまとめられている。高屋敷氏は、時系列操作が巧み。

一方少年院では、悲願だった自衛隊への入隊が決まった忠義(二舎六房の一人。いかつい)が、奇しくも真理雄の試合日と同日に出所することに。このことがスムーズにわかるよう、昇が試合日を真理雄達に伝える場面を、この直前にアニメオリジナルで作っている(前述)。この構成も上手い。

少年院の作業場にて、丈(二舎六房の一人。美形)は忠義に、(逃走中の)六郎太達の居場所を教えると申し出るが、忠義は、自分が下手に動いて居場所がばれたらまずいとして、それを断る。回転ノコギリが映るが、意味深な「物」の描写は数多い。おにいさまへ…花田少年史(脚本)と比較。

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六郎太らの隠れ家では、節子(看護婦。六郎太達を助ける)の家族写真の話題で、昇が不機嫌になり外出する(原爆で家族を失っている)。事情を知った節子は、皆で写真を撮ることを思い付く。お茶が映るが、こういった、飲み物の表現もよくある。グラゼニ・F-エフ-・めぞん一刻(脚本)と比較。

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節子は、「これからは、皆でいい思い出をいっぱい作るのよ」と言う(アニメオリジナル)。はだしのゲン2(脚本)で、ゲンと仲間達が、原爆体験を乗り越えて楽しい思い出を積み重ねていく場面が思い出される。

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節子が同僚からカメラを借りるのを見た佐々木(六郎太をつけ狙う、少年院の嘱託医師)は、節子が六郎太達を匿っていると察する。

そんなことは露知らず、節子達は写真を撮る。生き物のような機械の表現は結構ある。F-エフ-・1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。

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真理雄と昇のドタバタもあり、六郎太達は楽しく写真を撮る。
はだしのゲン2(脚本)にて、原爆で苦労しながらも笑顔が絶えない、ゲンと仲間達(殆どが原爆孤児)が重なる。

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佐々木からの連絡で、六郎太達の隠れ家を突き止めた石原(少年院の凶悪な看守)は、佐々木と陰謀を巡らす。

同じ頃、真理雄と昇は、節子と六郎太を二人きりにする為外出。

月が映る。全てを見ているような月は頻出。あんみつ姫・F-エフ-・めぞん一刻・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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二人きりになった六郎太と節子は話し込む。節子は、幸せだと言って六郎太に寄り添う(原作では抱擁)。めぞん一刻(脚本)の一場面が思い出される。

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家の明かりが消える(アニメならではの表現)。こちらも、めぞん一刻と重なる。

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試合前日、六郎太は真理雄の胸に拳をつけて激励する(アニメオリジナル)。手によるコミュニケーションは、色々な作品に見られる。宝島(演出)、F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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そして試合当日、節子は六郎太に弁当を持たせる。弁当はアニメオリジナルで、めぞん一刻(脚本)を彷彿とさせる。
また、高屋敷氏は食べ物に非常にこだわる。

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勝った場合の祝勝会の足しにと、昇は煙草を売りに行くが、石原のタレコミにより警察に捕まってしまう。

一方、雨を見ながら、真理雄は六郎太に、節子をどう思うか問い、六郎太は、彼女を幸せにしてやりたいと答える(原作の、かなり後半の回想場面の会話内容をここに持ってきている)。めぞん一刻(脚本)で、結婚の決意を語る五代が重なる。

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昇が警察に確保された一方、忠義は仲間に祝福されながら出所。

茶店では、佐々木が石原に銃を渡す。

警察署での取り調べ中、昇は石原が動いていることを知り、電話を貸せと騒ぐ。

このあたりも、時系列がうまくアニメ向きに整理されており、脚本技術の高さが光る。

試合直前、リリィ(米軍将校の愛人)は、昇が捕まったこと、彼が電話してきていることを六郎太と真理雄に知らせる。
真理雄は、拳を六郎太の胸に当て(アニメオリジナル)、自分は大丈夫だから、電話に出て欲しいと言う。ここも、手による意思伝達。ルパン三世3期・DAYS(脚本)と比較。

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「勝つんだぞ」と言う六郎太と、「たりめーだ」と答える真理雄は、力強く手を合わせる。

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ここは(ほぼ)原作に忠実で、その前の、アニメオリジナル場面(真理雄が六郎太の胸に拳を当てる)が、これを盛り立てている。このような、原作とアニメオリジナルの組み合わせも上手い。

同じ雨の下、節子は写真館で、出来上がった皆の写真を得る。

佐々木は、巧みな嘘で警察を焚き付け、石原の事も売り、口元に笑みを浮かべる。カイジ2期(脚本)の、大槻班長の邪悪な笑みと被る。

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試合が始まったリングの上で真理雄は、「1ラウンド目は耐えろ」という六郎太の教えを守ってガードに徹する。試合の緊迫感は、あしたのジョー2(脚本)の経験が生きているのを感じる。

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  • まとめ

圧巻なのは、終盤の畳み掛けるような展開と、複雑な時系列操作。
あと、連載漫画ならではの、原作の時系列シャッフルを、アニメ向けの時系列に改変している。
このような技術は、じゃりン子チエおにいさまへ…グラゼニの脚本でも目立つ。

そして、22分前後内でテンポの良い組み立てをするために、原作のどこをまとめ、削り、どこにアニメオリジナルを追加するかが綿密に計算されている印象を受ける。
いつもながら思うことだが、高屋敷氏の計算力の高さが凄い。

また、試合前の真理雄と六郎太の会話が、節子についての話になっている(原作では、試合前の緊張や、仲間愛について話す)のは興味深い。
後々の展開を考慮したものと考えられる。ここも高屋敷氏の「シリーズ構成計算」の一環かもしれない。

今回、めぞん一刻とのシンクロも目立った。六郎太と節子の恋愛が軸の一つとなっているためだからと思うが、このような箇所を見つけるのも、高屋敷氏の担当作を追う楽しみの一つ。

節子の言う「幸せ」と、六郎太が真理雄に語る「(節子を)幸せにしてやりたい」も、うまく繋がっており、「幸せ」や「愛」について視聴者に考えさせようとする強い意志が出ている。

幸福や愛といえば、はだしのゲン2(脚本)との共通点が見えてくる。
はだしのゲン2では、原爆という大きな苦しみを経験したゲンが逞しく生き、仲間と共に楽しい思い出も作っていく。
今回は、原爆で家族を失った昇のため、いい思い出をいっぱい作ろうと節子が提案。この重なりは感慨深い。

高屋敷氏のテーマの一つに、「孤独というものの恐ろしさ」があるが、「幸せ=孤独ではないこと」という図式も大切にしているのではないだろうか。今回もまた、それぞれが、それぞれを想い、それが束の間の幸福につながっている。

仲間の大切さを、高屋敷氏は数々の作品を通し強く打ち出す。本作にもそれは出ていて、更に「幸せとは何か」とも絡めている。奇しくも同氏は、まんが世界昔ばなしで「幸福の王子」の演出/コンテをしている。同氏の「幸福論」について、今後も注目していきたい。

RAINBOW-二舎六房の七人7話脚本:決意の拳

アニメRAINBOW-二舎六房の七人-は、安部譲二氏原作・柿崎正澄氏作画の漫画のアニメ化作品で、戦後間もない少年院に入所した七人の少年達のドラマ。監督は神志那弘志氏で、高屋敷英夫氏はシリーズ構成・脚本を務める。
今回の演出/コンテは矢嶋哲生氏。そして脚本が高屋敷氏。

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当ブログの、RAINBOW-二舎六房の七人-に関する記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E4%BA%8C%E8%88%8E%E5%85%AD%E6%88%BF%E3%81%AE%E4%B8%83%E4%BA%BA

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  • 今回の話:

石原(凶悪な看守)と佐々木(少年院の医師)は、二人の悪事を知っている六郎太(少年院の二舎六房の古株でリーダー)を刑期満了前に抹殺しようと次々と手を打ち、遂には、六郎太達を助けてくれていた看守・熊谷を殺害。
二舎六房の熱血漢・真理雄は、皆で六郎太を院から逃がそうと提案する。

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石原(凶悪な看守)と佐々木(少年院の医師)は、二人の悪事を知る六郎太(少年院の二舎六房の古株でリーダー)を刑期満了前に抹殺すべく、独房で餓死させようとするが、六郎太は耐える。飢えによる苦しみは、あしたのジョー2(脚本)と重なる。

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石原の息のかかった入所者達に右拳を粉砕され入院中の真理雄(二舎六房の一人で、熱血漢)は、温厚な看守・熊谷から状況を聞き、憤る。
熊谷は「誰も死なせない」と誓う。カイジ2期・太陽の使者鉄人28号(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)など、若者に優しい大人は、色々な作品で印象深い。

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真理雄が入院中の病院には佐々木も務めており危険なので、熊谷は彼の早期退院を提案し、一旦、少年院へ戻る。

熊谷は密かに、六郎太の独房に食べ物を運ぶ。「生きるための食」は強く表現される。カイジ2期・蒼天航路陽だまりの樹(脚本)と比較。

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六郎太の反応が無いので独房を開けた熊谷は、体を拘束された状態でホースから水をかけられ続けている彼を見て愕然とする。佐々木の考えた仕掛けであった。助けようとする熊谷の背後には、いつの間にか石原が迫り…

夜、月が映る。全てを見ているような月は頻出。空手バカ一代(演出/コンテ)、はじめの一歩3期・F-エフ-(脚本)と比較。

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病院には、熊谷の代わりに石原が来て、熊谷が「事故死」したと真理雄と節子(看護婦)に告げる。彼が石原に殺されたことは明白であった。

節子は、真理雄の包帯を取り替えたいと機転をきかせ、彼と二人きりで話す時間を作る。

真理雄の包帯を替えながら、節子は涙を流す。手から手への意思伝達は多い。F-エフ-・ワンダービートSカイジ2期・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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真理雄は、節子が六郎太を想っていることを悟り、六郎太を死なせないから、刑期を終えた彼を出迎えて欲しいと彼女に頼む。

右拳のアップがあるが(アニメの追加)、これも「手」による意思表示。グラゼニ・F-エフ-・おにいさまへ…カイジ2期(脚本)と比較。

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少年院へと戻る車の中、必ず六郎太を助けると決意する真理雄は自分の手を見つめ、握る(アニメオリジナル)。これもまた、「手」が「語って」いる。
はじめの一歩3期・グラゼニカイジ(脚本)と比較。

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真理雄は二舎六房へと戻り、房の皆から歓迎される。
このあたりで、布団の「間」がある。こういった「物言わぬ物の間」は、数々の作品に見受けられる。DAYS・グラゼニ・F-エフ-・花田少年史(脚本)と比較。

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房の皆は、真理雄から事情を聞く(アニメでは、台詞が色々追加されている)。なんとなく、やりとりも絵面も、カイジ2期(脚本)の45組と重なってくる。あと、今回の演出/コンテの矢嶋哲生氏は、カイジ2期にも演出やコンテで参加している。

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真理雄は立ち上がって拳を握る(原作通りだが、構図は異なる)。このあたりも、「手」による感情表現。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、グラゼニ(脚本)と比較。

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彼は、六郎太をここから逃がそうと提案。皆は賛成し、龍次(眼鏡の頭脳派)は計画を立てる準備をする。

一方佐々木は、熊谷を殺したのは浅はかだったと石原を殴り飛ばし、自分の言う通りに動けと凄む。豹変ぶりが、やはりカイジ2期(脚本)の大槻班長と重なってくる。

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石原は錯乱し、六郎太は必ず出所前に死ぬという佐々木の言葉を反芻して鏡を見つめる。鏡を見るのはアニメオリジナル。
真実や状況を映す鏡は、高屋敷氏の担当作によく出てくる。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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二舎六房の皆は、龍次が隠し持っていた煙草を吸うことにする。
だが真理雄は煙草を見つめ、これは六郎太の分にすると言う。それを聞いた他の面々も、彼に倣う。
大切な物を持つ「手」のクローズアップも、数々の作品に見られる。カイジMASTERキートンあしたのジョー2・F-エフ-・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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結局、皆は1本の煙草を回し吸いすることに。ランプが映るが、状況や心情と連動するランプの表現は非常に多い。あんみつ姫おにいさまへ…RIDEBACK(脚本)と比較。

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六郎太と会えたことの尊さを噛みしめ、皆は一致団結する。
仲間愛は、他の高屋敷氏担当作でも前面に出される。カイジ2期・はだしのゲン2・DAYS(脚本)と比較。

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真理雄は、六郎太を逃がす計画を胸に、前へと足を踏み出すのだった。
「前へ進め」は高屋敷氏のテーマの一つで、踏み出す足の強調は、しばしば見られる。カイジ2期・グラゼニはだしのゲン2(脚本)と比較。

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  • まとめ

全編にわたって印象深いのは、「手」による感情表現。何度か書いているが、ワンダービートS20話(脚本)には「手は第二の脳と言われている」という台詞があり、いかに高屋敷氏が「手」を大事にしているかがわかる。

特に、節子の手の加減で、(六郎太を想う)節子の心情を真理雄が察する改変場面は、手と手のコミュニケーションを重視してきた高屋敷氏の姿勢が感じられる。
おにいさまへ…38話(脚本)では、愛する人=最期に手を握っていてくれる人という概念が出るほどに、「手」の役割は重い。

錯乱した石原が、鏡にその身を映すことで心を静めようとする場面も目を引く。前述の通り、鏡は多くの作品に出て来ており、今回も、わざわざ改変してまで鏡を出しており、興味深い。

手・物・鏡・ランプ・月などなど、高屋敷氏の担当作は「物言わぬもの」による表現が多いのだが、今回も目立つ。演出作だけでなく、(絵を管理できない)脚本作にも表れる特徴なのが不思議だが、台詞だけに頼らないという、強い姿勢が窺える。

あと、熊谷の優しさについてだが、アニメでは所々強調が見られる。
原作には、「(私は)熊谷のような看守には、ひとりも巡り会えなかったのだ」という安部氏の述懐が書かれているが、高屋敷氏も、優しい大人に対して、何か個人的な思い入れがあるから、数々の作品で強く表現しているのかもしれない。

仲間の絆も、多くの担当作品でテーマに深く絡んでいる。
「皆がいるから自分がいる、自分がいるから皆がいる」という思いは、(高校の野球部の監督をするほどに)高屋敷氏が愛する野球がルーツとも考えられる。

勿論、「皆がいるから自分がいる、自分がいるから皆がいる」という考えの根幹には、高屋敷氏のテーマの一つ「自分とは何か」も大きく関わってくる。他者から見た自分、自分から見た他者…というものもまた、多くの担当作品で同氏は描く。

六郎太がいなければ、ほかの6人は「人間としての自己」に気付けなかった…とも言える。
だからこそ、大きなリスクがあっても彼等は六郎太を助けようとするし、六郎太もまた、皆を想うことで生きる気力を絞り出す。この関係が「絆」なのだと感じられた回だった。