カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

飛べ!イサミ2話脚本:唸る豪腕

オリジナルテレビアニメ『飛べ!イサミ』は、新撰組の子孫であるイサミが、先祖が遺した、光る剣で悪と戦う活劇。総監督は杉井ギサブロー氏、監督は佐藤竜雄氏、シリーズ構成は高屋敷英夫・金春智子氏。

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本記事を含めた、当ブログの飛べ!イサミに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E9%A3%9B%E3%81%B9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%9F

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  • 今回の話:

サブタイトル:「しんせん組と正義の剣」

脚本:高屋敷英夫氏、コンテ:佐藤竜雄監督、演出:大町繁氏。

先祖の新撰組から、悪の組織・黒天狗党討伐を託されたイサミと、同じく新撰組の子孫であるトシ、ソウシはしんせん組を結成。人質事件の現場へと赴く。

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学校から帰宅したイサミは、ご馳走を見て驚く。玲子(イサミの母)と観柳斉(イサミの祖父)は、友人を呼んでパーティーをするという。
飯テロは実に多い。F-エフ-・グラゼニワンダービートS・新ど根性ガエル(脚本)と比較。

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玲子の友人は、トシ・ソウシ(イサミの同級生で新撰組の子孫)の親。その機会に、イサミ・トシ・ソウシは、イサミ宅の秘密地下室に集い、ソウシはパチンコで遊ぶ。高屋敷氏はパチンコに縁がある。あしたのジョー2・ワンナウツカイジ2期・はだしのゲン2(脚本)と比較。

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先祖から託されたこともあり、イサミ達は、しんせん組を結成。決め台詞やポーズの参考に、トシは人気特撮『ガンバマンX』の真似を披露。
ところでこの“ガンバマン”は、高屋敷氏が脚本参加したガンバの冒険から来ていたりするのだろうか?

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トシは、敵に舐められないためにも決め台詞・ポーズは重要だと力説する。
3人の軽妙なかけあいは、じゃりン子チエ(脚本)の、複数キャラによる絶妙な会話劇を彷彿とさせる。

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食事の準備ができたので、ひとまずイサミ達は地下室を出て、パーティーに参加する。
ここも飯テロ。グラゼニコボちゃん(脚本)と比較。

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イサミ達の監視にあたる、カラス天狗(悪の組織・黒天狗党の下部組織)の平助と重助は、イサミ達のご馳走を羨ましがる。
とにかく、おいしそうな描写は多い。RIDEBACKグラゼニ(脚本)と比較。

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パーティーに参加している面子の情報を確認しながら、重助と平助は、トシの家族の仲の良さに、理想的だと涙ぐむ。
悪役の愛嬌は、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、アンパンマン(脚本)などでもクローズアップされている。

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トシとソウシは、さりげなくビールを飲もうとして、栄助(ソウシの父)に叱られる。
飯テロ同様、ビールテロも頻出。グラゼニカイジ2期(脚本)と比較。

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泰之(トシの父)は、少年時代の栄助が、お屠蘇で酔って木に登ったことを懐かしむ。
酔っ払い描写は、色々な作品にある。ガンバの冒険(脚本)、宝島(演出)と比較。

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玲子は、魁(イサミの父。失踪中)はよく木の上で本を読み、皆を見守るのが好きだったと語る。
RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)では、重要な役割の木が強調され、じゃりン子チエ(脚本)では、意味深な木の描写がある。

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そこへ、人質事件が発生したと連絡があり、ニュースキャスターである玲子は現場に行く。また、刑事である数馬(玲子の弟)は、同じく現場に来たイサミ達に茶々を入れられ翻弄される。数馬のノリは、どことなくルパン三世2nd(演出/コンテ)の銭形に近い。

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数馬に調子を合わせつつも、イサミ達は、しんせん組として、この事件を解決しようと意気込む。
いたずらっぽく顔を見合わせるのは、家なき子(演出)や新ど根性ガエル(脚本)などにも見られる。高屋敷氏は、キャラの子供っぽさを引き出すのが得意。

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幼稚園児を人質にして、ビルの社長室に立て籠った強盗団は、テレビで玲子を見て、美人だと賞賛。ここで強盗団のリーダーは夜型なことが判明(朝ニュースを見てない)。敵役の細かなキャラ付けは、あんみつ姫(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか目立つ。

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人質である子供達の泣き声を、電話ごしに聞かされ慌てる数馬に、強盗団は、人質を玲子と交換したいと言い出す。
コボちゃん(脚本)、家なき子(演出)ほか、子供の子供らしいギャン泣きは、よく見られる。

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玲子は、人質交換にあっさり応じ、数馬は涙ながらに玲子の優しさを語る。数馬の好物がトンカツの脂身という部分に、食にこだわる高屋敷氏の要素を感じる(アドリブかもしれないが)。
大人の男のガン泣きも多い。あしたのジョー2・カイジ2期(脚本)と比較。

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玲子が人質になるという情報はイサミ達にも伝わり、ソウシはイサミを気遣うが、イサミは冷静。
友達の心の機敏に敏感な場面は、グラゼニあしたのジョー2(脚本)なども印象に残る。

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小柄なケイ(トシの弟)を活用し、強盗団の立て籠るビルのトイレに侵入したイサミ達は、決めポーズして笑うが、ソウシは、女子が大口開けて笑う場所じゃないとツッコむ。
無邪気に笑い合うのは、家なき子(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)など様々な作品にある。

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一方、強盗団は人質を玲子にするついでに、食事も要求。
ここも飯テロ。じゃりン子チエコボちゃん(脚本)と比較。

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丼物のほか、強盗団リーダーは特上寿司3人前も持って来させる。
寿司といえば、ど根性ガエル(演出)や新ど根性ガエル(脚本)の、梅さん(寿司職人)の寿司もやたら美味しそうである。

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強盗団リーダーが数馬と電話している間、強盗団の下っ端二人は、玲子にサインを書いてもらい喜ぶ。
サインを書く場面は、グラゼニ(脚本)も印象的。

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イサミ達は、手持ちの武器(不思議な光る剣、先祖の新撰組が開発したクラッカー煙幕)の確認をし、誰がどの武器を持つかをジャンケンで決める。
ジャンケンは、家なき子(演出)や、めぞん一刻番外編(脚本)のアニメオリジナル場面など、よく出てくる。

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強盗団リーダーは、せっかくなら写真もと、インスタントカメラで玲子を撮り、写真を色紙に貼る。
強盗団リーダーは元新聞部。
あしたのジョー2・RIDEBACK(脚本)では、ジャーナリストのアニメオリジナルキャラが出ている。高屋敷氏は記者が好きなのかもしれない。

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イサミ達は、作戦行動開始にと、ガンバマンの決めポーズをするが、どこか照れる。
あんみつ姫(脚本)では、水戸黄門がなかなか決め台詞をキメられないギャグがあったりする。

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トシは、自分のポーズ担当が女性隊員になった場合を想像し、やはりガンバマンの真似は止めようと話し合う。
ちなみにスタイリッシュな女性キャラは、キャッツアイ・忍者戦士飛影(脚本)ほか、結構高屋敷氏担当作に出てくる。

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イサミ達は、強盗団の下っ端二人を暗い部屋に誘い込み、お化けの真似をして怖がらせる。
コボちゃん(脚本)の、肝試し回と比較すると面白い。

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白い布を被ったトシとイサミは、強盗団の下っ端二人に突進し、至近距離でクラッカー煙幕を炸裂させる。
知恵やカラクリを使った作戦は、忍者マン一平(監督/脚本/コンテ)やアンパンマン(脚本)ほか、色々な作品に見られる。

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煙幕で混乱し、強盗団下っ端二人は互いを殴りダウンする。
少し、あしたのジョー2(脚本)のクロスカウンターっぽい。画像下段は、トリプルクロスカウンター。

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強盗団リーダーは、部下が戻って来ないので、自身も様子を見に行く。彼は自首を勧める玲子の優しさを称え、もう少し前に会いたかったと話す。
敵側にも様々な感情があることは、陽だまりの樹(脚本)などでも強調されている。

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部屋に入ってきた強盗団リーダーに対し、イサミ達はかっこよく名乗りを上げる。ソウシが小道具に薔薇を使っているが、薔薇をくわえるキャラは、ダンクーガおにいさまへ…(脚本)にも登場している。

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光る剣が発動しないので、イサミ達は身をひっこめて、名乗りがかっこよくないからかもと話し合いを始める。それを見て強盗団リーダーは苛立つ。
ここもイサミ達の掛け合いが、じゃりン子チエ(脚本)の、複数キャラの会話のテンポに似ている。

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イサミ達はピンチになるものの、冷凍庫に隠れていたケイが、冷えた体で強盗団リーダーの背中に取り付いたため、隙が生まれる。
敵であるが同情してしまう作りは、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)や、はじめの一歩3期(脚本)ほか、数々の作品に仕込まれている。

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すると、イサミの光る剣が発動。正々堂々、銃を持っているのにチャンバラで応じる強盗団リーダーだったが、剣の力で体が痺れ敗北する。
ちなみに忍者戦士飛影で高屋敷氏は、光るナイフで飛影(主役ロボ)を呼べるようになる回の脚本を担当している。

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強盗団を拘束した後、トシは紙にメッセージを書き残す。
漢字が間違っているギャグがあるのだが、紙を使ったギャグは、ど根性ガエル(演出)や、チエちゃん奮戦記(脚本)などもインパクトがある。

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トシが書いた「新せん組 三上」は、テレビで「三上(みかみ)」と読まれてしまい、帰宅したイサミ達は脱力。トシは素で「参上」を「三上」と書くと思い込んでいた。
おバカネタは、ストロベリーパニック(脚本)や、ど根性ガエル(演出)など多数ある。

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一方、黒天狗党の党首や幹部達も、「三上(みかみ)」とは誰なのか困惑する。
ラスボスでも少し愛嬌が感じられるコンセプトは、忍者戦士飛影カイジ(脚本)などにも見られる。

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その後帰宅した玲子は、パーティーの続きをしようと、皆に歓迎される。
皆が集まり、盛り上がる温かい様子は、家なき子(演出)や、ど根性ガエル(演出)など、強く描写される。

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イサミは玲子に抱きつき、大変な一日を過ごしたことを労う。
母子のハグは、ど根性ガエル(演出)や、ベルサイユのばら(コンテ)など、要所要所で印象深い。

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楽しく盛り上がるイサミ達だったが、それを木の上から見る謎の人物が登場するのだった。
月や太陽をバックにする表現は、F-エフ-(脚本)や宝島(演出)などでも効果的に使われている。

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  • まとめ

 ついに今年(2022)、本作を簡単に視聴できる環境になり、ありがたい(アマゾンプライム有料チャンネル)。オリジナル作品だけあり、いきなり、高屋敷氏が好む飯テロ全開なのが面白い。

 まず本作で目を引くのは、イサミ、トシ、ソウシの軽妙でリズミカルな掛け合いだ。
じゃりン子チエ(高屋敷氏脚本陣)は、複数キャラが延々喋るだけでもう面白い作りになっているが、高屋敷氏は、その経験を存分に活かしていると思う。

 じゃりン子チエの脚本で高屋敷氏が培ったものは、それだけではなく、絡み合った複数のプロットを器用に操作することも挙げられる。
本作も、一話の密度や濃く、情報量が多い。

 今回でいえば、前半のパーティーでイサミ達の親世代のキャラ付けや情報をあっという間に出し、更に平助や重助の愛嬌も出している。
後半は、数馬や強盗団のキャラ付けが完了している。高屋敷氏はキャラの掘り下げが上手いが、本作でもそれが発揮されている。

 特に数馬についてのキャラ付けの完了具合は異常で、今回初登場なのに、「少し抜けていて姉思いな刑事」として、まだ2話にして、前からずっといたかのような馴染み具合である。

 また、強盗団はゲストキャラなのに、無駄に彼らの情報量は多い(リーダーは朝が苦手で、元新聞部であることなど)。
高屋敷氏はモブに名前をつけることもあるほど、モブへの愛が深いわけだが、彼らにもそれが注がれている。

 あと、高屋敷氏は、知らず知らずのうちに、視聴者が敵にも同情してしまう「仕掛け」を仕込むのが上手い。今回も、一見無駄な強盗団に関するキャラ付け・情報を入れ込むことにより、それを実現している。

 更に、メインキャラの掘り下げも徐々に、丁寧に成されている。
「木の上にいるのが好きだった」魁の話を出し、ラストの「木の上にいる謎の人物」の正体のヒントを出していたりするのも細かい。

 また、トシがバカだが熱血直情、ソウシがキザで冷静だが気遣いができる、イサミが母親思いであることなど、レギュラー陣の性格をグッと深め、2話目にして定着させる手腕も見事。

 本作が放映された90年代ともなれば、それまでの膨大な経験の蓄積もあり、高屋敷氏の豪腕はかなりのもの。
また、本作のような全編オリジナルアニメは同氏の仕事の中でも珍しいが、同氏持ち前の才能と経験と技術が遺憾なく発揮されている。今後も視聴が楽しみだ。

家なき子51話(最終回)演出:輝く道

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

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  • 今回の話:

サブタイトル:「新たな旅立ち」

脚本:山崎晴哉氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

スイスで、ついにレミはミリガン夫人(以前レミと交流した富豪で、レミの実の母)と再会。満ち足りた時を過ごすが、マチヤ(レミの親友。風来坊)は意外な事を言う。

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スイスで、ついにレミはミリガン夫人(以前レミと交流した富豪で、レミの実の母)と再会。
夕陽が映るが、全てを見守るような太陽の描写は頻出。あしたのジョー2(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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風で、レミの帽子が飛ぶ。
帽子が飛ぶ表現は、おにいさまへ…グラゼニ(脚本)ほか、しばしば見られる。

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ミリガン夫人は、レミの髪が伸びたと言い、優しく抱きしめる。
頭をなでる親愛表現は、チエちゃん奮戦記・F-エフ-(脚本)ほか、要所要所で見られる。

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レミはミリガン夫人と共に、アーサー(ミリガン夫人の息子。足が不自由)の寝室に入る。アーサーはレミに気づかず、レミと会った夢の話をし、皆がそれを見守る。
仲間愛は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、めぞん一刻(脚本)ほか、強調される。

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横を向いたアーサーは、レミに気付き、手を握り合って喜ぶ。
鳥が映るが、状況と連動する鳥の表現は頻出。ベルサイユのばら(コンテ)、宝島(演出)と比較。そもそも出崎統監督が鳥演出を好み、高屋敷氏も(単独でも)出す(脚本作含む)。

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そしてレミは誕生日を迎え、皆に祝福される。
飯テロは実に多い。ど根性ガエル(演出)、RIDEBACK(脚本)と比較。
数多い飯テロの中で、ど根性ガエルのクリスマスケーキは、高屋敷氏がクレジットされた作品中、今のところ最古。

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ヨットが映るが、出崎統監督は船の横切りを好み、高屋敷氏もその流れを汲む。
ルパン三世2nd(演出/コンテ)、あしたのジョー2(脚本)、空手バカ一代(演出)と比較。

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宴で、ミリガン夫人は、亡きビタリス(レミの芸の師匠。元オペラ歌手)の席を用意する。
空席描写は、グラゼニMASTERキートン(脚本)などでも印象深く描写されている。

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さらにミリガン夫人は、いずれイギリスにバルブラン(レミの養母)を呼んで一緒に暮らそうと話し、レミは感激する。
手による感情伝達は頻出。めぞん一刻(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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そしてミリガン夫人は、マチヤ(レミの親友。風来坊)に新しい服を贈る。
優しく身だしなみを整えてあげたり、コーディネートしてあげる仕草は、ストロベリーパニックじゃりン子チエ(脚本)ほか、色々な作品に見られる。

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よければミリガン家に迎えたいというミリガン夫人に感涙し、マチヤはそれを受ける。レミは大喜びする。
微笑ましいハグは多い。グラゼニ・DAYS(脚本)と比較。

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皆は、マチヤとレミを祝福し胴上げする。胴上げは、ど根性ガエル(演出)、グラゼニ(脚本)などにも見られる。
ちなみに高屋敷氏は元球児で、高校野球部の監督を務めた野球好き。野球アニメや、アニメの野球回にも多く携わっている。

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ミリガン夫人はレミに、本名のリチャードではなく、これからもレミと呼ぶことにすると言ってくれる。
ベランダや窓辺の表現は、おにいさまへ…(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、ハローキティのおやゆびひめ(脚本)ほか、結構ある。

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その後アーサーは、手術後の歩行訓練に入る。途中転んだ彼はレミに抱きつき弱音を吐くが、マチヤが発破をかける。
ここもハグ。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。

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レミはアーサーをおぶって励まし、再挑戦を促す。
おんぶは、はだしのゲン2(脚本)で重要な要素として描かれ、RIDEBACK1話(脚本)でも、人をおんぶするように走るロボットにより、活力を取り戻した主人公の姿に重点を置いている。

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ミリガン夫人は、執事のアランに、春になったらレミとマチヤを学校に行かせようと話す。
飲み物による「間」はよくある。おにいさまへ…忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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アーサーの歩行訓練は続き、彼は転んでもへこたれなくなる。
子供らしくコミカルな所作は、宝島(演出)、じゃりン子チエ(脚本)ほか、高屋敷氏の得意分野。

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アーサーの歩行訓練が一通り済むと、レミ達は冬の遊びを満喫する。
ここも子供らしい無邪気さに溢れている。
あんみつ姫(脚本)でも、内気だった雪女の娘が皆で雪合戦を楽しむ回が印象的。

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レミ達がソリ遊びをする場面では、コースの途切れを利用する大ジャンブの表現があるが、エースをねらえ!(演出)やルパン三世2nd(演出/コンテ)などで似た感じのものがあり、比較すると面白い。

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吹雪の夜。レミは、旅での苦労を思い出し、終わったのだと言う。
ここも窓辺を使った表現。ストロベリーパニック(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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マチヤは愛用の知恵の輪をいじりながら、終わっていない、悪いけど楽しくないと意味深発言する。
手による感情表現は頻出。ワンナウツおにいさまへ…(脚本)と比較。

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その後もレミ達は、アーサーの歩行訓練に付き合い、一緒に転んで大笑いする。
皆に笑顔が広がる表現は、トンデケマン(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、あらゆる作品で目立つ。

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楽しい時は続き、片足スキーに挑戦したレミとマチヤは転ぶ。
ここも子供らしくコミカルなアクション。ど根性ガエル・宝島(演出)と比較。

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夕暮れ、本当に楽しくないのかとレミはマチヤに問う。
マチヤは、勿論楽しいが、何かが楽しくないと複雑な表情を浮かべる。
友達同士の、複雑な心と心の機敏は、グラゼニ(脚本)などでも巧みに描かれる。

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夕食時、歩けるようになれば、春にレミ達と共に学校に行けると知ったアーサーは張り切り、マチヤに影響された所作をする。
ここも子供らしい無邪気さが上手い。あんみつ姫・新ど根性ガエル(脚本)と比較。

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寝室にてマチヤは、学校に行けば仲間が沢山できて楽しいだろう、とレミと話し、知恵の輪を解く。
ここも意味深な、手による感情表現。RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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どうも自分は、幸せすぎるという状況に慣れない性分かもしれないと、マチヤは言う。
暖炉が映るが、状況と連動する火の表現は多い。ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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そしてスイスは春を迎える。
花の表現は、様々な作品に見られる。あしたのジョー2(脚本)、エースをねらえ!(演出)、ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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リーズ(レミが世話になったアキャン家の末娘。口がきけない病気だったが、ミリガン夫人の厚意により治癒した)は、アーサーが歩いた、とミリガン夫人に知らせる。
似た階段の構図が、ベルサイユのばら(コンテ)、忍者マン一平(監督/コンテ/脚本)にあり面白い。

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ミリガン夫人が駆けつけると、確かにアーサーは歩けるようになっていた。
感極まり、ミリガン夫人はアーサーを抱きしめる。
ここも、親愛のこもったハグ。ストロベリーパニック(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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その後リーズは、再会したら歌を披露するとレミに約束し、フランスへ帰る。
野外で微笑ましく愛を育む表現は、ストロベリーパニック(脚本)、宝島(演出)ほか、多々ある。

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マチヤは、二人きりで話したいと、レミを雪山登山に誘う。
人生の厳しさや試練を表す雪山は、カイジ2期(シリーズ構成)のイメージ場面や、MASTERキートン(脚本)、忍者マン一平(監督)などで強く描写される。

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本当に幸せかとマチヤに問われ、レミは幸せだ、だが幸せになりたいと思っていた頃の方が幸せだったかもしれないと答え、マチヤは同意する。
背中で語る表現はよく出る。RAINBOW-二舎六房の七人-・MASTERキートン(脚本)と比較。

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マチヤは、親のおかげで幸せなうちは半人前で、自分達は半人前を脱しようとする時期なんだとレミに説く。
一方、チエちゃん奮戦記(脚本)では、独立心を養おうと山登りするも挫折ばかりのマサル(チエの同級生)の話があり、対比が面白い。

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レミは、「男はいつか一人で生きていくもの」というビタリスの教えを呟く。
「男の子」から「男」への変貌は、様々な作品で前面に出される。
宝島(演出)、F-エフ-・DAYS・めぞん一刻(脚本)ほか、これは高屋敷氏のライフワークの一つとも言える要素。

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自分の力で精一杯生きることが大切なんだとレミは悟り、雪山にビタリスの姿を重ねる。
ここも、意味深な雪山の表現(大分わかりやすいが)。MASTERキートン・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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そしてレミとマチヤ、カピ(芸をする犬。賢い)、ジョリクール(芸をする猿。二代目)は再び旅に出る。
ここも、意味のある花の表現。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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レミは、ミリガン夫人・バルブラン・リーズに手紙を書き、幸せとは何なのか、旅をして考えたいと伝える。
手紙は重要アイテムとして扱われる。宝島(演出)、カイジ2期・ワンダービートS陽だまりの樹(脚本)と比較。

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歩きながら、マチヤとジョリクールは、ジャンケンして負けた方がどつかれるという遊びをする。
コボちゃんめぞん一刻番外編(脚本)のほか、ジャンケン要素はちょくちょく出てくる。

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続いてレミがジョリクールに挑戦するも負ける。
幼くじゃれる描写は、ガンバの冒険(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか、とにかく数多の作品で目立つ。

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今度は、レミとマチヤでジャンケン勝負をする。ここも幼い。
年齢問わず幼い描写は多い。めぞん一刻番外編(脚本)のジャンケン勝負場面(アニメオリジナル)との対比が面白い。

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レミもマチヤも、(自分が勝ったら)相手をどつく。
どつく描写が、元祖天才バカボン(演出/コンテ)やルパン三世2nd(脚本)と重なる。

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レミ達は夕陽に向かって走る。
はだしのゲン2(脚本)ラストは、ゲンが母の死を乗り越え、仲間達と走り出す。
F-エフ-最終回(脚本)ラストは、亡きライバルの思いを胸に、軍馬(主人公)が友と共に未来へ、世界へと歩みだす(アニメオリジナル)。

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歌いながら、レミ達は並木道を行く。
人生の暗喩たる並木道は、様々な作品に出ており、興味深い。
蒼天航路めぞん一刻グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。ちなみにF-エフ-のは、名画『第三の男』の明らかなパロディ。

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後にマチヤは名バイオリニストになり、レミは弁護士となってリーズと結婚する。
主人公が成長または未来へ向かう姿は、最終回で劇的に描かれる。
宝島(演出)、おにいさまへ…めぞん一刻・RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-・カイジ2期(脚本)の最終回と比較。

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レミ達が新しい旅で何を得たのかはわからない、というナレーションと共に、レミの旅道具が映る。魂がこもった物は、効果的に表現される。
蒼天航路グラゼニあしたのジョー2・F-エフ-(脚本)、宝島(演出)と比較。

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ナレーションは語る。あなたが旅に出た時、運が良ければビタリスの「前へ進め」という言葉が聞けると。
ここも、全てを見守る太陽で締め括られる。おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-・あしたのジョー2(脚本)と比較。いずれも最終回。

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  • まとめ

 高屋敷氏は、演出においても脚本においても、最終回を任される事が多く、そしてその手腕は実に見事。まさに「最終回請負人」的な所がある。

 比較的キャリア初期の、エースをねらえ!(本作家なき子と同じく、監督は出崎統氏)の最終回も、高屋敷氏は演出を任されており、打ち切りとは思えないほど爽やかで希望溢れる出来になっている。

 本作家なき子の後に、ほぼ同じ布陣で制作された宝島も、最終回の演出は高屋敷氏。こちらもアニメ史に残る名最終回である。

 出崎統・高屋敷両氏ともにマッドハウスを退社しても信頼関係は続いたのか、あしたのジョー2・おにいさまへ…(出崎統監督作品)の最終回の脚本を、高屋敷氏が担当している。こちらも見事で、特に、あしたのジョー2のラストシーンは有名すぎる。

 また、不遇の打ち切りとなったワンダービートSでも、高屋敷氏は(シリーズ構成でないのに)最終3本の脚本を担当し、作品を乗っ取る勢いで自身の書きたいことを炸裂させながらも、綺麗にまとめている。

 演出の仕事を止め、脚本に絞った後も、高屋敷氏はシリーズ構成作にて、カイジ含めて見事な最終回を連発している。特にワンナウツやRAINBOW-二舎六房の七人-は、原作の途中なのに珠玉のラストで、唸らされる。

 特殊なのはアカギ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)で、原作で10年以上続いた鷲巣(アカギのライバル)との対決を、アニメでは途中で切り上げたが、最終回ラストに、東京タワーをバックに50代のアカギの姿を見せ、1話の未完成の東京タワーと対比させる独自構成が光る。

 あと、F-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)では、先述の通り、最終回ラストシーンがアニメ独自のものになっている(友と共に未来へ踏み出す→後にF1ドライバーになったことが記される)。シリーズ短縮もあるが、神がかった構成。

 これらどれもに共通しているのは、「生きる」「希望」「未来」だ。本作OP歌詞に「生きることは戦いさ」とあるが、まさにそうで、もがきながらも戦い、苦境を乗り越え、生きていく先に希望と未来があることを、強く訴えている。

 カイジ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)に「死んだ皆のためにも前だ、もっと前に行くんだ」というカイジの独白、F-エフ-(同氏シリーズ構成・全話脚本)に「前に行くんだ」という軍馬の台詞がある。どちらもアニメオリジナルで、高屋敷氏の思いが込められている。

 人生は旅であり、旅は前に進まなければ終わらない。本作で高屋敷氏が得たもの、表現したものは後に多くの同氏担当作で活かされている。同氏の力強い「希望」に満ちた「生きる」ことへの讃歌は、いつまでも輝きを失わないのだ。