カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

家なき子49話演出:若さがぶつかる作品作り

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

───

本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

───

  • 今回の話:

サブタイトル:「二人の母」

脚本:杉江慧子氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

フランスにいるミリガン夫人(以前レミと交流した富豪で、レミの実母)に会うため、イギリスからフランスへ戻ったレミ達は、汽車賃を稼ぐためリンゴ園で働くことに。

───

フランスにいるミリガン夫人(以前レミと交流した富豪で、レミの実母)に会うため、レミ達はイギリスからフランスへ戻る。
アーチ状の物ごしの似た構図が、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、ベルサイユのばら(コンテ)にあり、興味深い。

f:id:makimogpfb:20221016221700j:image

パン屋で、レミはパンを買う。飯テロは実に多い。ストロベリーパニック(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016221718j:image

現状、イギリスの通貨しか持ち合わせがないレミ達だったが、マチヤ(レミの親友。風来坊)はパン屋を美人だとおだて、機嫌をよくしたパン屋はパンをくれる。味のあるモブは、おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)ほか、よく出る。アニメオリジナルキャラも多い。

f:id:makimogpfb:20221016221751j:image

野原でパンを食べながら、レミとマチヤは、フランスからスイスに向かっているミリガン夫人に会うには、リヨンに行く必要があると話し合う。
ここも飯テロ。コボちゃん(脚本)、ガイキング(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016221815j:image

素寒貧のレミ達は、リヨンに行く汽車賃を稼ごうと、大道芸を行うが、通行人のクシャミのはずみで道具が壊れ、レミが転倒する。
宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか、コミカルなアクションはよく見られる。

f:id:makimogpfb:20221016221843j:image

人々は秋の収穫で忙しく、レミ達の芸を見る客は少ない。売り上げが殆ど無かったレミ達は、ヤケクソ気味に歌いながら歩く。
歌を歌う場面は、はだしのゲン2(脚本)や元祖天才バカボン(演出)など、しばしば見られる。

f:id:makimogpfb:20221016221905j:image

宿賃もなく、レミ達は風車小屋で寝ることに。レミは、マチヤに藁を投げて笑う。
無邪気に笑う描写は、色々な作品で目立つ。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ガンバの冒険(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016221932j:image

翌朝、レミ達は芸を行うも、見ているのは、リンゴを食べまくっている小さな女の子一人。
食いしん坊描写は多い。ガンバの冒険RIDEBACK(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016221952j:image

そんな中、ジョリクール(芸をする猿。二代目)は、女の子のリンゴを奪い、女の子からリンゴを投げられる。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、オヨネコぶーにゃん(脚本)ほか、イタズラ好きな動物は結構出る。

f:id:makimogpfb:20221016222016j:image

売り上げ皆無のレミ達は、またもヤケクソになって、歌いながら歩く。
子供の子供らしい所作を描写するのが、高屋敷氏は上手い。宝島・ガイキング(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222039j:image

すると偶然、レミはバンジャマン(レミが世話になったアキャン家の次男)と再会する。再会を喜ぶ二人は、銃撃戦ごっこをする。
ここも高屋敷氏得意の、子供らしい所作。あんみつ姫(脚本)、宝島(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222135j:image

バンジャマンはレミに、ミリガン夫人に会ったことを話し、マチヤは驚いて、持っていたレミの帽子を落とす。
驚いて物を落とす表現は、ベルサイユのばら(コンテ)などにもある。

f:id:makimogpfb:20221016222158j:image

バンジャマンは、サンカンタンでリンゴ園を営む叔父さんの元におり、丁度リンゴの競りに向かう所だった。
競りでの、手のサインが描写されるが、手の表現は頻出。宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222228j:image

仕事を探しているというレミの話を聞いた、バンジャマンの叔父さんは、自分のリンゴ園で働かないかと言ってくれる。レミは、賃金交渉をしようとするマチヤを制し、話に乗る。
宝島(演出)、あんみつ姫(脚本)ほか、高屋敷氏はお調子者の描写に長ける。

f:id:makimogpfb:20221016222257j:image

一方ミリガン夫人達は、レミが実子であるか確認するべく、バルブラン(レミの養母)の家を訪ねる。
水面に木葉が浮かぶ表現は、MASTERキートン(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)などにも見られる。

f:id:makimogpfb:20221016222320j:image

バルブランは、搾りたての牛乳で作ったホットミルクで、ミリガン夫人達をもてなす。
飯テロも多いが、美味しそうな飲み物の描写も多い。ハローキティのおやゆびひめ(脚本)、宝島(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222345j:image

複雑だが覚悟を決めた心境で、バルブランは、レミが捨てられていた時の産着をミリガン夫人に見せる。
産着を手にしたミリガン夫人は、それを抱きしめる。
ここも頻出の、手での感情表現。RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222410j:image

産着により、レミが実の子だと確認でき、ミリガン夫人は泣き崩れる。
一旦ルーセット(レミがバルブランに贈った新しい牝牛)が映るが、動物による「間」は多い。花田少年史めぞん一刻コボちゃん(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222433j:image

ミリガン夫人の使用人である、ビビアンとアランは、今までの苦労が報われた、とミリガン夫人を祝福する。
おにいさまへ…めぞん一刻(脚本)など、忠実な使用人は、印象的なキャラが多い。

f:id:makimogpfb:20221016222457j:image

その頃、レミ達はリンゴ園で働いていた。転んだマチヤを見て、皆は笑う。
朗らかな笑顔が広がる描写は、はだしのゲン2(脚本)、宝島(演出)ほか、数々の作品で強いインパクトがある。高屋敷氏は「笑顔」を重視する。

f:id:makimogpfb:20221016222520j:image

ジョリクールと協力してリンゴを収穫するマチヤは、木から落ちたジョリクールを見て笑い、ジョリクールからリンゴを口に突っ込まれる。
ここも幼く無邪気な表現。宝島(演出)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222544j:image

レミはレミで、リンゴを収穫中に梯子から落ち、バンジャマンの叔父さんがリンゴの籠をキャッチする。
やはりここも、コミカルなアクション。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ガイキング(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222626j:image

バンジャマンの叔父さんは、レミやマチヤの働きぶりを褒め、レミは照れる。ここも「笑顔」に拘りが見られる。
宝島・ガイキング(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222649j:image

一方、ミリガン夫人とバルブランは、それぞれのレミへの愛情を話す。
夕暮れの中語らう場面は、様々な作品にある。陽だまりの樹RIDEBACK(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222709j:image

そして、ルーセットがもうすぐ子牛を産むのを、皆は楽しみにする。リーズ(レミが世話になったアキャン家の末娘。現在、ミリガン夫人に同行)はルーセットを撫でる。
撫でる所作は多い。マッドハウス版XMEN・じゃりン子チエ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222734j:image

一方レミ達は、リンゴ収穫後の宴で芸を披露することになり、皆は盛り上がる。
ワンナウツ(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、朗らかで温厚なモブは、あらゆる高屋敷氏担当作で目立つ。

f:id:makimogpfb:20221016222758j:image

まず、レミがハープを弾きながら歌い、皆は喝采する。
ランプが目立つ描写は数々ある。宝島(演出)、ワンナウツ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222817j:image

次に、マチヤがバイオリンを弾き、レミがタンバリンを叩く。
ここも、皆に笑顔が広がる温かい表現。ガンバの冒険あんみつ姫(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222838j:image

マチヤとレミの軽快な演奏に合わせ、皆は楽しく踊る。
楽しそうな動作づけもまた、高屋敷氏は得意。宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222904j:image

夜、疲れたとベッドに転がり込むマチヤに、レミが大げさだとつっこむ。
ここも子供らしい所作。宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016222934j:image

そこにバンジャマンの叔父さんが来て、十二分すぎるほどの日当をマチヤとレミにくれる。
仕事前に提示した指1本のサインは、両手の指+片足の指ぶんの意味だと叔父さんは明かす。
優しいおじさん/おじいさんは、カイジ2期・はだしのゲン2(脚本)なども印象深い。

f:id:makimogpfb:20221016223000j:image

マチヤは感極まり、バンジャマンの叔父さんに抱きつく。
ハグする場面は数多い。ど根性ガエル(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016223017j:image

バンジャマンは、叔父さんの粋な計らいを称える。
ここも無邪気で可愛い動作づけ。宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016223035j:image

翌朝レミ達は、汽車でリヨンに向かう。
太陽の描写は、とにかく要所要所で目立つ。RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016223053j:image

一方リーズは、アーサー(ミリガン夫人の息子。足が不自由)が熱を出して苦しんでいるのに気付き、急いでミリガン夫人にジェスチャーで知らせる(リーズは病気で口がきけない)。
花瓶が割れる描写があるが、似た表現が、おにいさまへ…蒼天航路(脚本)などにもある。

f:id:makimogpfb:20221016223115j:image

ミリガン夫人達は、急いで(アーサーが手術する予定の)スイスに向かうことにし、レミが来たら連絡するようバルブランに頼む。
バルブランとミリガン夫人は、手を握り別れる。
手と手の感情表現は頻出。おにいさまへ…陽だまりの樹(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221016223135j:image

リヨン駅にて、ミリガン夫人達とレミ達は、すれ違うも互いに気付けなかったのだった。
ここもモブ描写に力が入っている。あんみつ姫(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏のモブへの愛情は深い。

f:id:makimogpfb:20221016223150j:image

  • まとめ

 とにかく温かで、無邪気で、笑顔が広がる、高屋敷氏の得意な空間が目一杯詰まっている回。最終回間近なので、割と同氏がやりたいことの集大成の感がある。

 特にリンゴ園での場面は、モブやゲストキャラ、メインキャラ全て生き生きと描写されていて、非常に朗らかで明るい。
高屋敷氏は、義理人情を全面に出す傾向があるが、それが十分出ている。

 山田洋次監督作品が好きと推察される高屋敷氏は、『男はつらいよ』(山田洋次監督)シリーズよろしく、旅先で会う人情溢れる人々を描きたい思いが強いのではないだろうか。実際それは、モブやゲストキャラの温かさに見事に反映されている。

 過酷な運命や出来事も多い本作だが、レミ達は子供らしさや笑顔を失わず、コミカルな場面も多く見られ、見ていて楽しい場面も沢山ある。そこには、そういった要素が得意な、高屋敷氏の貢献が大きいと思う。

 本作は、当時の子供たちに、4クールの長丁場を見てもらうための工夫が満載されている。シリアスのあとにコメディ、手に汗握るアクションのあとに情緒溢れる場面など、とにかくバランス調整が上手い。

 そのため、高屋敷氏と、もう一人の演出ローテである竹内啓雄氏の両極端な個性が、本作では功を奏している。似た布陣の出崎統監督作品、エースをねらえ!(高屋敷氏演出)では、竹内・高屋敷両氏の強烈な個性がいびつに出ていたが、本作はそれよりはおとなしい。

 それでも、竹内・高屋敷両氏の個性の違いは本作でも強烈で、シリアス・かっこよさ担当の竹内氏と、コミカル・子供っぽさ担当の高屋敷氏とでバッサリ分かれていて、場合によっては開始1秒でどちらの演出回かわかるほどである。

 出崎統監督はというと、竹内・高屋敷両氏の演出個性を尊重し、潰していない。
その根底には、いいものを作るには、色々な個性を取り入れたい思いがあり、長い付き合いで、一緒に作っている「同志」感があったのではないだろうか。

 実際、そんな出崎統氏のもとには多くの才能が集ったが、出崎統氏・竹内氏・高屋敷氏で演出を切り盛りしていた時代は特に、師匠や弟子というより、同志といった感じだったような雰囲気が、作品を通し伝わってくる。

 本作含め、そんな「若さ」溢れる作品は、今も色褪せていない。
高屋敷氏は、年を経るごとに技が研ぎ澄まされる仕事ぶりだが、それができるのは、本作のような「若さ」が成した仕事の感覚を、いつまでも忘れないからかもしれない。

家なき子47話演出:粋な暴走

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

───

本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

───

  • 今回の話:

サブタイトル:「決死のダイビング」

脚本:杉江慧子氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

ドリスコル(レミを狙う泥棒)の仲間と誤解され、逮捕されたレミは、列車で少年刑務所に護送される。
マチヤ(レミの親友。風来坊)らは、レミ救出に動く。

───

ドリスコル(レミを狙う泥棒)の仲間と誤解され逮捕されたレミに、マチヤ(レミの親友。風来坊)は、ジョリクール(芸をする猿。二代目)を使って手紙を届ける。
ギミックを使う凝った作戦は、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、忍者マン一平(監督/コンテ/脚本)ほか数多い。

f:id:makimogpfb:20221009203932j:image

手紙を受け取るため、立て掛けたベッドを踏み台に使ったレミは、バランスを崩す。
コミカルなアクションは、宝島(演出)でも目立つ。

f:id:makimogpfb:20221009203955j:image

手紙は、列車で少年刑務所にレミが護送される間に、必ずレミを助けると書かれていた。
手紙を渡せたマチヤは、仲間達と手を叩いて喜ぶ。手での感情伝達は頻出。グラゼニストロベリーパニック(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009204017j:image

作戦決行日。列車には確かに、狸寝入りするマチヤとボブ(マチヤの友人で、大道芸人)がいた。
寝る姿に愛嬌がある描写は、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)ほか多い。

f:id:makimogpfb:20221009204038j:image

一方、ボブの友人であるマックスとピーター、そしてジョリクールとカピ(芸をする犬。賢い)は、崖の上から、列車が減速するカーブ地点を見下ろす。
(西部劇を思わせる)似たような構図が、空手バカ一代・宝島(演出)にある。どれもコンテは出崎統監督。

f:id:makimogpfb:20221009204058j:image

マチヤとボブは、レミとエイムズ警部(ドリスコルを追っていた警部)と、その部下が入っている客室をノックし、ニヤリと笑い合う。
おにいさまへ…アンパンマン(脚本)ほか、笑い合う場面が微笑ましい描写は多々ある。

f:id:makimogpfb:20221009205537j:image

マチヤは、自由席が満員だから座らせてほしいと、エイムズにかけあう。
ど根性ガエル(脚本)、宝島(演出)ほか、お調子者、もしくは、お調子者の演技を表現するのが、高屋敷氏は上手い。

f:id:makimogpfb:20221009205607j:image

結果的にエイムズは、マチヤ達の荷物は客室に置いてもいいと折れる。
客室を出たマチヤとボブは笑い合う。
ここも笑い合う姿が微笑ましい。ガンバの冒険じゃりン子チエ(脚本)など、高屋敷氏は「笑顔」を重視する。

f:id:makimogpfb:20221009205628j:image

その後、荷物から物を取り出したいと言って再び客室に入ってきたマチヤは、レミの罪状を根掘り葉掘り聞く。
ここも、お調子者的な軽妙な演技づけが上手い。宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009205654j:image

マチヤは、新鮮な空気を入れようと提案し、客室の窓を開ける。これも作戦のうち。
作戦のための、キャラの用意周到ぶりは、ルパン三世2nd(演出/コンテ)やカイジ2期(脚本)にも見られる。

f:id:makimogpfb:20221009205718j:image

マチヤとボブは、作戦成功を祈り、握手する。そしてボブは、列車の上に登る。
ここも、手と手の感情伝達。ルパン三世2nd・MASTERキートン(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009205746j:image

そして客室に入ったマチヤは、トランクに入れていたネズミを解き放ち、エイムズを動転させる。
割と散々な目に遭う警察官といえば、やはりルパン三世2nd(演出/コンテ)の銭形と重なってくる。

f:id:makimogpfb:20221009205813j:image

エイムズがネズミに狼狽している隙に、レミはマチヤの指示に従って窓から脱出し、列車の上に登っていたボブに引っ張り上げられる。
手と手を使った命がけの場面は、あんみつ姫忍者戦士飛影(脚本)ほか、色々な作品に見られる。

f:id:makimogpfb:20221009205836j:image

ボブはナイフでレミの拘束を解いて、これからが大事だと、レミの手を取る。
ここも、手から手への感情伝達。F-エフ-(脚本)、ど根性ガエル(演出)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009205858j:image

エイムズは、列車の上までレミ達を追ってくる。
列車でのアクションは、ルパン三世2nd(演出/コンテ)でも炸裂している。

f:id:makimogpfb:20221009205919j:image

列車がカーブにさしかかって減速するタイミングで、レミ達は列車から飛び降り、エイムズは悔しがる。
ここも雰囲気がルパン三世2nd(脚本)の、ルパンと銭形の追いかけっこを彷彿とさせる。

f:id:makimogpfb:20221009205940j:image

マチヤとボブは、藁の山に突っ込んだレミを見て笑い出す。
ここも笑顔がはじける。まんが世界昔ばなし・元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210001j:image

レミは、馬車で迎えに来たマックス、ピーター、カピ、ジョリクールを見て喜ぶ。
仲間愛は、ど根性ガエル(演出)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)など、様々な作品で前面に出される。

f:id:makimogpfb:20221009210023j:image

馬車で、ミリガン夫人(レミと以前交流した富豪で、レミの実母)がフランスにいる事を話したレミは、港町のリトルハンプトンに向かうことに。
マチヤは、手製のサンドイッチをレミに差し出す。飯テロは実に多い。宝島(演出)、MASTERキートン(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210048j:image

レミは、ありがたくサンドイッチを食べる。
感情を込めて食べる場面もまた、数多い。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210107j:image

マチヤ達は、陽気に歌を歌う。
歌を歌う場面は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や、はだしのゲン2(脚本)ほか、しばしば見られる。

f:id:makimogpfb:20221009210128j:image

馬車は、軽快に進む。似たような絵面が、ベルサイユのばら(コンテ)、まんが世界昔ばなし・ルパン三世2nd(演出/コンテ)などに見られ、興味深い。

f:id:makimogpfb:20221009210146j:image

レミは、仲間に感謝しつつ、サンドイッチを味わう。
心のこもった食べ物を食べる場面も多い。MASTERキートン(脚本)、柔道讃歌(コンテ)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210207j:image

一方、フランスにいるミリガン夫人らは、レミが育ったシャバノン村へ向かう。
高低差を使った、似た構図がベルサイユのばら(コンテ)などにも見られる。

f:id:makimogpfb:20221009210227j:image

アーサー(ミリガン夫人の息子。足が不自由)は、レミが実の兄である可能性があるとして、陽気に歌って喜ぶ。
ここも、楽しく歌う場面。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210248j:image

列車を降りたエイムズは、レミ達を検問の網にかけるべく動く。
ここもやはり、ルパン三世2nd(脚本)と雰囲気が重なってくる。

f:id:makimogpfb:20221009210308j:image

検問すべく、レミ達の馬車に乗り込んだ警官は、女装したマチヤを見て引く。
味のあるモブは、太陽の使者鉄人28号コボちゃん(脚本)ほか、数々の作品で目立つ。

f:id:makimogpfb:20221009210328j:image

次に警官は、女装したレミを見て、(マチヤに比べて)美人だと感心し、マチヤは密かに舌を出す。
変装する展開は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)やルパン三世2nd(脚本)ほか結構ある。

f:id:makimogpfb:20221009210349j:image

検問をクリアしたレミ達だったが、ジョリクールが動いたためにマチヤのカツラが外れ、正体がばれる。
ここも雰囲気が、ルパン三世2nd(脚本)の、ルパンと警官隊のアクションに似ている。

f:id:makimogpfb:20221009210412j:image

レミ達は、馬車から荷物を投げ、警官隊の動きを翻弄する。
追われる際に頭を使うのは、ルパン三世3期(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、インパクトのあるものが多い。

f:id:makimogpfb:20221009210431j:image

ボブはマックスと、レミはピーターと握手して別れ、馬車を降りて山に入る。
ここも頻出の、手と手での感情表現。忍者戦士飛影・F-エフ-(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210457j:image

山に入ったレミ、マチヤ、ボブ、カピ、ジョリクールは必死に逃げる。
途中、滝の描写があるが、出崎統監督も、高屋敷氏も滝を好む。宝島(演出)、アンパンマン(脚本)と比較。

f:id:makimogpfb:20221009210518j:image

崖に追い詰められたレミ達は、下の川に飛び込むことを決意する。
崖の似たような絵面が、宝島(演出)や柔道讃歌(コンテ)にも見られる。

f:id:makimogpfb:20221009210537j:image

レミは、自分の手と、泳げないマチヤの手をロープで繋ぎ、ボブ、カピ、ジョリクールと共に、川へ飛び込むのだった。
手と手で強い繋がりを表す描写は、ワンナウツルパン三世3期(脚本)なども印象的。

f:id:makimogpfb:20221009210600j:image

  • まとめ

 割と、出崎統監督や高屋敷氏はじめ、スタッフが暴走気味に、それぞれの好みを爆発させている回。
西部劇の列車強盗ものを彷彿とさせており、西部劇好きの出崎統監督の趣味が窺える。

 カーブでの減速時に飛び降りるネタは、忍者戦士飛影の高屋敷氏脚本回に出るほか、列車を使ったアクションは、ルパン三世2nd147話(高屋敷氏演出/コンテ)や、1980年版鉄腕アトム31話(同氏脚本)にも適用されており、比較すると面白い。

 ルパン三世2nd147話(高屋敷氏演出/コンテ)について、以前書いたブログ記事:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2018/03/11/140355

 1980年版鉄腕アトム31話(高屋敷氏脚本)について、以前書いたブログ記事:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2017/11/20/131616

 このことから鑑みるに、高屋敷氏は結構、列車アクションが好きなのではないだろうか。とにかく今回は、スタッフの好みを見ていくと興味深い。

 それにしても今回は、雰囲気がルパン三世と大いに重なる。ルパン三世2ndは1977〜1980年放映で、本作家なき子は1977〜1978年であるため、年代も近い。

 ルパン三世シリーズでは、出崎統監督が1stシリーズとテレビスペシャルに、高屋敷氏と竹内啓雄氏(もう一人の家なき子演出ローテ)が2ndに、高屋敷氏が3期に参加しているため、スタッフの繋がりも濃い。

 それもあり、今回の一場面を切り取って、ルパン三世の一場面と言い張っても騙せるのではないかと思えるくらい、今回はルパン三世テイストが強い。

 また、「かわいそうな子供の話」という、家なき子の一般的イメージを粉砕するに余りあるパワーが今回にはあり、娯楽活劇に徹している。

 これもまた、「アニメにする」ということの醍醐味。出崎統監督も、高屋敷氏も、「アニメにする意義」を常に意識している節があり、その思いがフィルムに反映される傾向がある。

 あと、活劇に徹してはいるものの、手から手へ感情を伝えるという、高屋敷氏が色々な作品で見せる描写を、クライマックスで非常に印象深く見せている。これもまた、「思い」の強さだと思う。

 今回と、次の48話(竹内啓雄氏演出)は、実に「スタッフの暴走」が見られる回。
しかしながら、単なる「好き勝手」ではなく、受け手が「アニメ」というものを楽しく見られるように、工夫が満載された作りであることに、感慨を受けるのである。