カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ルパン三世2nd147話演出・絵コンテ:一人しかいない「自分」

ルパン三世2ndは、アニメ・ルパン三世の第2シリーズ。ルパンのジャケットが赤いのが目印。今回の脚本はいとうまさお氏。
高屋敷氏は演出・絵コンテを担当。
サブタイトルは「白夜に消えた人魚」(アニメオリジナル)。

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舞台はノルウェー。鳥が飛ぶ演出は、高屋敷氏の演出・脚本ともに、よくある。カイジ脚本と比較。

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両方とも、アニメオリジナル場面。長年一緒に仕事した、出崎兄弟の鳥演出に、ストーリー性を加味している。

次に、不二子が車を走らせている場面になるが、ベルサイユのばらコンテと重なる。坂道遠近の使い方も、出崎兄弟ゆずり。

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不二子の目的地は、彫刻家・ビンゲルの家。ルパンも密かに不二子の後をつける。

高屋敷氏の演出・脚本とも、「像」がよく出てくる。しかも、脚本作でまで、似た構図になるのが、いつもながら不思議。カイジ・じゃりん子チエ脚本と比較。

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不二子は、キャリアの集大成として、唯一無二の傑作を作りたいというビンゲルの熱意に協力し、水晶でできた人魚像のモデルをしていた。

その様子を密かに覗いていたルパンは、不二子が服を脱ぎ始めたので、たまらず部屋に乱入する。不二子は、そんなルパンに花瓶を投げつける。この直後にサブタイトルコールになるのだが、ワンナウツ脚本と結構シンクロしていて笑った。

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少なくとも、ワンナウツの文字演出は、ルパン三世2ndのサブタイトルコールを意識しているのは明らか。

その後ルパンは、次元と五右衛門に、事の顛末を話し、愚痴をこぼす。港町にあるアジトという所に、出崎兄弟の波止場好きの影響が出ている。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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ルパンの話を聞き、呆れる次元と五右衛門の背後をヨットが横切っていくが、この、船横切り演出も、出崎兄弟がよくやる。高屋敷氏の不思議な所は、「脚本」からでも、この演出が飛び出す点。アカギ・MASTERキートンめぞん一刻脚本と比較。

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そこへ不二子がやってきて、自分をモデルにした人魚像を、ビンゲルがベルゲン市長に売ってしまったと話す。市長は人魚像を、ベルゲン市の観光の目玉にするのが目的だった。
莫大な買い取り金の分け前を不二子は手にしたものの、自分を模した人魚像が見知らぬ多くの人々に見られたり、触られたりするのが嫌だと言い、ルパンに人魚像を盗むよう依頼。
いつものごとく不二子のお色気にほだされたルパンは、この依頼を受けることにする。

人魚像は、オスロからベルゲンに、列車で運ばれる手筈になっており、銭形が警備を担当していた。そしてそれに協力する、ニガールという地元の刑事がいるのだが、太陽の使者鉄人28号における高屋敷氏脚本回に、同じくニガールという警察部長が出る(性格や外見は大きく異なる)。しかも舞台がノルウェーという所も同じ。年代も近い(1980~81)。

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人魚像の入った車両は、特殊な連結を施されており、車両を切り離す事が難しくなっている。高屋敷氏の、ルパン三世における演出・脚本作では、銭形はそんなに間抜けには描かれていない。同氏の好みだろうか。

列車は走り出し、橋を渡る。こういった橋の演出も、出崎兄弟ゆずり。やはり高屋敷氏版で恐ろしいのは、脚本からでも、それが出力されるところ。エースをねらえ!演出、めぞん一刻・新ど根性ガエル脚本と比較。

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そして、ベルゲン市長と銭形は、ノルウェー料理に舌鼓を打つ、高屋敷氏特徴の飯テロ。MASTERキートンカイジ2期脚本と比較。

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銭形達をよそに、列車に飛び乗ったルパンと不二子は、容易に人魚像の入った車両の錠前を破る。だがルパン達は、車両が特殊な連結になっている事に気付く。そこへ銭形が現れ、ルパンを捕まえようとするが、ヘリで駆けつけた次元と五右衛門がルパンと不二子を回収したため、取り逃がしてしまう。

ルパン達は作戦を練り直し、オスロとベルゲンの中間地点にて列車のルートを変えさせる仕掛けを作る。
更にルパンと不二子は列車に再度侵入し、列車にも仕掛けを施した上で、先頭車両を占拠。

ルパンは、変更したルートに列車を乗せ、ジャンプさせる。列車をジャンプさせるのは、1980年版鉄腕アトム脚本にも出る。

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また、太陽と絡めた絵面も、高屋敷氏の作品では頻出。元祖天才バカボン演出、蒼天航路・太陽の使者脚本と比較。

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列車と、あらかじめ用意していたラッセル車を使った仕掛けを使い、五右衛門と次元は、人魚像の入った車両だけを切り離すことに成功。残った車両と先頭車両は、ルパンの仕掛けた大型バネにより、再連結。

こういった、ピタゴラスイッチ的な凝った仕掛けも、高屋敷氏の作品にはよく出る。監督作忍者マン一平カイジ2期脚本と比較。

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ルパンは、宙に舞う列車を、本来のレールに着地させる。
この時、ルパンが十字を切るのだが、元祖天才バカボン演出、1980年版鉄腕アトム脚本と重なる。

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そして、ルパンと不二子はまんまと列車から脱出。運転手を失った列車は、ベルゲン駅には着くものの、崩壊。銭形達はボロボロになる。怒った市長は、ニガールにクビを宣告する。それを受けたニガールは泣き出してしまう。おじさんがよく泣くのも、高屋敷氏の特徴。カイジ2期・太陽の使者鉄人28号脚本、監督作忍者マン一平と比較。

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市長の怒りは収まらず、銃を発砲しながら銭形を追いかけまわす。これは、高屋敷氏が演出や脚本をした、元祖天才バカボンにおける本官さん(トリガーハッピーな警察官)のパロディ。

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ルパン達は、車両を開けて人魚像と対面するが、車両に加えられた数々の衝撃がたたり、人魚像は砕け散ってしまう。
それでもルパンは、水晶も不二子も、自然のままがキレイだと言う。
そのまま不二子を口説こうとするルパンであったが、不二子に突き飛ばされてしまうのだった。

  • まとめ

高屋敷氏が担当したルパン三世の演出・脚本の中では、一番作戦が大がかり。そして、トラップを作って何かをジャンプさせる、ピタゴラスイッチ的なネタは、他の作品でもよく出てくる。
同氏が、凝ったギミックを使った作戦が好きな事が窺える。これは、カイジ脚本・シリーズ構成にも言えること。

あと、気になるのは、あらゆる作品に出てくる「像」である。
高屋敷氏は、「もの言わぬもの」に魂があると捉えている節がある。その中でも、人や生物を模した「像」は、魂が宿りやすいのではないだろうか。
当ブログや私のtogetterにて、何回か書いているが、高屋敷氏は、まんが世界昔ばなしの「幸福の王子」の演出・コンテを担当している。この話は、有名な原作通り、王子像が意思を持っており、町の人々を「見ている」。
他の作品でも、「像が見ている」という演出が多々見られる。

不二子は今回、自分を模した人魚像を、自分の分身のように思うわけだが、最後には、人魚像が壊れてしまう。「自分」は一人しかいないのだから、「分身」はいらない、ということかもしれない。
「自分を強く保て」「己は唯一無二」は、高屋敷氏がよく発するメッセージの一つ。
今回は、エンターテインメント中心の話ではあるが、高屋敷氏の提示するテーマ「自分とは何か」は、確かに出ている。

そして、他の担当作とのシンクロ現象も多発している。特に、絵を管理できないはずの「脚本」とのシンクロは驚異的。
数々の演出経験が、画を想像しやすい「脚本」に、確かにつながっていると感じられる回だった。