カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

トンデケマン15話脚本:「誇り」の強調

『たいむとらぶるトンデケマン!』は、1989~1990年放送のオリジナルテレビアニメで、タイムマシン「トンデケマン」を使ったタイムトラベル話が展開される。監督は湯山邦彦氏で、シリーズ構成は武上純希氏。
今回のコンテ/演出は吉田浩氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、トンデケマンに関する記事一覧(本記事含む):

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%B1%E3%83%9E%E3%83%B3

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  • 今回の話:

ある日、トンデケマン(自律型タイムマシン)が壊れてしまう。はやと(主人公)達は、現代に戻りレオナルド博士(トンデケマンを作った発明家)にトンデケマンを直してもらおうとするが、トンデケマンが力尽きたため1910年のNYへ着き、エジソンに出会う。

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開幕、太陽が映る。太陽で開幕する頻度はかなり高い。まんが世界昔ばなし・空手バカ一代(演出/コンテ)、らんま1/2(脚本)と比較。いずれも開幕場面。

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9世紀アラビアにて、現在アブドーラ(ホラーズン王国の魔法使い)が主人となっているトンデケマン(自律型タイムマシン)の調子が悪くなる。死にたくないと、トンデケマンは泣く。子供っぽく泣く描写は多い。ガンバの冒険あんみつ姫(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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更に、トンデケマンは寒気がすると訴える。トンデケマンが人間くさいのはいつもの事だが、高屋敷氏は1980年版鉄腕アトムで、身も心も人間と変わらないロボットの話(アニメオリジナル)の脚本を書いているので、得意分野かもしれない。

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普段、トンデケマンを巡り争っているはやと(主人公)達とアブドーラは休戦し、製作者のレオナルド博士にトンデケマンを直してもらうべく現代へ向かう。
一方、1910年のNYでは、一人の男(ハッタン)が退屈していた。ネズミが映るが、ネズミの話であるガンバの冒険(脚本)を思わせるものがある。

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はやと達は、ハッタンの目の前に現れる。そしてトンデケマンは完全に停止してしまう。1980年版鉄腕アトム(脚本)の、力尽きてしまうAIが重なってくる。

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ゆみ(はやとのガールフレンド)が窓の外を見ると、旧式の船が通る。
宝島(演出)、あんみつ姫おにいさまへ…(脚本)ほか、高屋敷氏の担当作は、船がよく出る(高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏も、船をよく出す)。

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ハッタンから、ここが1910年と聞いたはやと達は驚く。ハッタンは、兄のマンハと共に誘拐を行う犯罪者。彼の自己紹介の口上が寅さんぽい。どうも高屋敷氏は山田洋次監督が好きなようで、ガンバの冒険(脚本)にも寅さん的なキャラが出る。

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ハッタンは、はやと達を怪しんで、牢屋にぶちこむ。牢屋には先客がおり、それはハッタン達に誘拐されたエジソンだった。ルパン三世2nd(演出/コンテ)でも、ルパンが牢屋でゲストキャラと出会う。

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はやと達はエジソンに、トンデケマンの修理を頼んでみる。戸惑うエジソンだったが、アラジン(9世紀アラビアの、盗賊の少年)に煽られ、本気で修理にとりかかる。アラジンの煽りの上手さは、同じく煽りが上手いカイジ2期(脚本)のカイジを彷彿とさせる。

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ゆみとシャララ姫(9世紀バグダッドの王女)は、新しい人質としてハッタン達に連れ去られる。その後アラジンは、牢屋の鍵を解除、はやと達は脱出する。
ルパン三世3期(脚本)にも、ルパンが鍵を解除し脱獄する場面がある。

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ハッタン達を追いかけるため、はやと達はアブドーラが出した魔法の絨毯に乗るが、アブドーラは勢いあまったはやと達に押し出され置いてきぼりを食らう。おじさんの愛嬌は、元祖天才バカボン(演出/コンテ)やワンナウツ(脚本)などなど目立つ。

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アブドーラは仕方なくランプの精を出して、はやと達を追うが、途中でランプの精は自由の女神像に一目惚れしてしまう。高屋敷氏担当作では結構、像の強調が見られる。ルパン三世2nd(演出/コンテ)、空手バカ一代(演出)と比較。

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ハッタン達を追いかけるはやと達だったが、ハッタンの銃撃で魔法の絨毯が損傷し、ダンダーン王子(シャララ姫の婚約者)が海に落下。
はやとはダンダーン王子を救助する。海で溺れる人を救助するのは、宝島(演出)にもある。

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アラジンは、魔法の絨毯の損傷箇所を縫い合わせて直す。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ストロベリーパニックはだしのゲン2(脚本)ほか、高屋敷氏担当作に裁縫場面は結構ある(大体は母性の象徴として出る)。

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一方エジソンはアブドーラに、トンデケマンの修理が終わり、あとはエネルギーを充填するだけだと告げる。アブドーラは、「(トンデケマンは)腹がへっているのか」と言うが、飯テロ場面を頻繁に出す高屋敷氏らしさが出ている。

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アブドーラはエジソンの指示で、ランプの精を使いトンデケマンを雷雲の中に放り込む。雷でエネルギーを得たトンデケマンは息を吹き返す。まんが世界昔ばなし・アカギ(脚本)ほか、雷を効果的に使う表現は、しばしば見られる。

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一方、ハッタンは野球スタジアムでマンハと合流し、気球で高飛びする準備をする。球場というのが、野球経験があり、野球好きな高屋敷氏らしい。ルパン三世2nd(演出/コンテ)、ワンナウツグラゼニ(シリーズ構成・脚本)など、野球回や野球アニメは多い。

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アブドーラとエジソンはランプの精を使って街中へ移動する。
街中に可愛い自由の女神像があると聞いていたランプの精は、土産物の女神像が本物と違うので泣く。ここも泣き方が幼い。
ど根性ガエル(演出)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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はやと達との空中戦でハッタン達の気球は墜落し、はやと達は、ゆみとシャララ姫を救出する。それにより、エジソン誘拐でハッタン達が得た身代金は宙に舞ってしまう。儲けが無くなる展開は、ルパン三世2nd・カイジ2期(脚本)でも印象的。

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ゆみはお返しとばかりに、マシンガンを撃つふりをしてハッタン達を気絶させる。
ルパン三世2nd(演出/コンテ)では、やたらマシンガンを撃つゲスト女性キャラが出てくる。

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ダンダーン王子は、夕陽をバックにシャララ姫を口説くが、アブドーラに雰囲気を台無しにされる。
おにいさまへ…じゃりン子チエ・F-エフ-(脚本)などなど、夕陽は頻出。

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アブドーラの出し抜きにより、結局トンデケマンの主人はアブドーラになり、はやと達も9世紀アラビアに戻ることに。エジソンは、人真似でタイムマシンは作らない…と、トンデケマンの図面を破る。キャラの誇り高さは、ルパン三世2nd・カイジ2期(脚本)などでも描かれている。

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9世紀アラビアに戻ると、アブドーラはトンデケマンを連れて撤退するが、ランプの精を1910年に置いてきた事に気付く。その頃ランプの精は、自由の女神に求婚していた。状況と連動する、ランプや照明の点灯・消灯描写は多い。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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  • まとめ

高屋敷氏は、物に意思があるかのような表現を結構使うが、自律するメカもその延長線上で扱っている気がする。
また、それを上手く使って、ロボットアニメに幾つか参加している。

あと、あらゆる所に自身の経験が活かされており、この頃(1989~1990年)になると引き出しの多さが目立ってきている。
特にルパン三世2nd(脚本や演出、コンテで参加)およびルパン三世3期(脚本)のエッセンスが多く見られる。

トンデケマンの故障はイレギュラーであり、こういったシリーズ中の特殊回を高屋敷氏が担当することは割とある。
忍者戦士飛影ダンクーガでは、シリーズ構成ではないのに、レギュラーキャラの初登場回の脚本を担当しているほどである。

また、殆どが1話完結の本作では、話を詰め込む必要があるが、もともと密度の濃い脚本を書く傾向がある高屋敷氏には合っている。また、短い登場時間の中で、エジソンの誇り高さを描いたのも、相変わらずのキャラの掘り下げの上手さを感じる。

あと、ランプの精が自由の女神像に恋する展開は興味深い。像を印象的に描写するのは、高屋敷氏のキャリア初期である空手バカ一代(演出/コンテ参加)の頃からある。

まんが世界昔ばなしでも、像に意思がある『幸福の王子』の回を担当している(演出/コンテ)。カイジ1期・2期(シリーズ構成・脚本)でも女神像の意味深な描写があり、相当なこだわりがあると見られる。

こういった、像への執着の原因は不明だが、万物には魂があると訴える、高屋敷氏の大きな特徴の一環なのかもしれない。
これがロボットアニメにも活かされているのは、なかなかユニークなものがある。

今回の終盤で見せる、エジソンの誇りについてだが、アカギ・カイジ1、2期・ワンナウツ・RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(いずれも高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、主人公の誇り高さが前面に出ている。

特にグラゼニ(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)については、一見卑屈に見える主人公(夏之介)が、実は誇り高いことを、アニメオリジナルを交えてでも強調していて、そのための構成も秀逸だった。

今回のような1話完結ものだと、割とスタッフの個性が1話内にギュッと詰まっていて、その点でも面白い。高屋敷氏の色々なこだわりを、今回も確認できて収穫だった。