『たいむとらぶるトンデケマン!』は、1989~1990年放送のオリジナルテレビアニメで、タイムマシン「トンデケマン」を使ったタイムトラベル話が展開される。監督は湯山邦彦氏で、シリーズ構成は武上純希氏。
今回のコンテ/演出は吉田浩氏で、脚本が高屋敷英夫氏。
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- 今回の話:
アブドーラ(9世紀中東の魔法使い)の、トンデケマン(自律型タイムマシン)を使った策略により、はやと(主人公)達は火山噴火直前のポンペイに来てしまう。はやとは何とか、市民を避難させるよう市長にかけあうが…。
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トンデケマン(自律型タイムマシン)に欠陥部品があるという情報をレオナルド博士(トンデケマン製作者)から得た中、はやと(主人公)に手紙が届く。手紙は重要アイテムとして扱われることが多い。宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。
手紙はアブドーラ(9世紀中東の魔法使い)からで、転職するから今までの非礼を詫びたいというものだった。
その一方、アブドーラは美味しい食べ物があるとシャララ姫(9世紀中東の王女)を騙し気絶させる。おにいさまへ…・ストロベリーパニック(脚本)ほか、食いしん坊キャラは多い。
アブドーラは、手紙でおびき寄せたはやと達を小細工で騙し、トンデケマンの時空の穴に飛びこませ、その隙にシャララ姫を主君のオラトル王に届けようとする。
細かくて凝った作戦は、忍者戦士飛影(脚本)やルパン三世2nd(演出/コンテ)など数多出てくる。
たまたま来たダンダーン王子(シャララ姫の婚約者)は事の次第を察するが、アブドーラは魔術を使って花を化け物に変え、ダンダーンを追い払う。落下するダンダーンのリアクションが、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と似通う。
目を覚ましたシャララ姫は、今の状況を鬼ごっこだと勘違いして逃げる。幼い行動・言動をするキャラは結構出る。ガンバの冒険(脚本)でも、しっぽ踏み鬼ごっこなるもので遊ぶガンバ達が幼い。
木の上で昼寝をしていたアラジン(9世紀中東の盗賊の少年)は、騒ぎに気がついて起きる。F-エフ-・カイジ2期・陽だまりの樹・めぞん一刻(脚本)などなど、眠りこける姿に愛嬌がある場面は、色々な作品にある。
シャララ姫は天然ボケで時空の穴に飛び込んでしまい、結局アブドーラとトンデケマンも、そしてアラジンも彼女を追う。
一足先に時空の穴を抜けた、はやと達は老人に日付を聞く。MASTERキートン(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)ほか、印象に残る老人は多い。
老人の話で、現時点が火山噴火直前のポンペイだとわかり、はやと達は慌てる。
一方アブドーラは、アラジンの相棒のドラムスコ(子ドラゴン)の火炎攻撃を受け井戸に飛び込み、洗濯中の女性達を怒らせる。ストロベリーパニック・カイジ2期・めぞん一刻(脚本)ほか、存在感のあるモブは多い。
はやと達はポンペイ市長に、火山が噴火すると訴えるが信じてもらえず。
その時地震が起こり、鶏の置物が倒れる。
鶏といえば、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)には(原作通りだが)金の卵を産む鶏、おにいさまへ…(脚本)では風見鶏が出ており、並べると面白い。
はやと達は怪しまれ、兵に追われる身に。
そのドタバタの際、はやと達は食事中の貴族達の側を通り抜ける。グラゼニ・F-エフ-(脚本)などなど、飯テロは高屋敷氏担当作の定番。
一方、パン屋を見たシャララ姫はお腹がすいたと言い、アラジンは呆れる。
ど根性ガエル(演出)、ガンバの冒険(脚本)などなど、食いしん坊描写は実に多い。
すったもんだの末、結局はやと、ゆみ(はやとのガールフレンド)、シャララ姫、アラジンは投獄されるが、アブドーラがランプの精を使い牢屋を破壊、シャララ姫を拐う。はやとは混乱に乗じて市長を人質にし、市民に避難命令を出すよう要請。人質を使う交渉術は、宝島(演出)でも印象深い。
市長は折れ、市民に避難命令を出す。混乱の中転んだ老人(はやと達に日付を教えた人)を、ゆみは助け起こす。
F-エフ-(脚本)、宝島(演出)ほか、老人と親しくする、または老人に優しくするキャラは色々な作品で目を引く。
そしてついにヴェスヴィオ山が噴火し、避難した市民は助かる(時空干渉だが)。
今回の噴火は史実通りだが、忍者戦士飛影・太陽の使者鉄人28号(脚本)では火山を絡めたエピソードがあり、なかなか縁を感じる。
アブドーラはシャララ姫を連れ9世紀中東に戻り、はやと達もそれを追って生還。遂に姫をオラトル王の下へ連れて行けるとして、アブドーラは今までの苦労を振り返る。蝶が飛ぶが、蝶はよく出る。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、あんみつ姫(脚本)と比較。
勝ち誇るアブドーラだったが、時空の穴から溢れてきた火山灰に埋もれ、トンデケマンやランプの精と共に退散する。空を飛んでアブドーラが退場していくのはいつものことだが、元祖天才バカボン(演出/コンテ)や怪物くん(脚本)と重なってくる。
トンデケマンは奪還できなかったが、ポンペイの人々を救えてよかったと、はやと達は笑い合い、その一方、アブドーラはランプの精に翻弄されるのだった。
皆に笑顔が広がるのは多数の作品で印象的。太陽の使者鉄人28号・ガンバの冒険・RAINBOW-二舎六房の七人-・ルパン三世2nd(脚本)と比較。
- まとめ
ここでは書ききれないほど色々なことが1話内に起こっており、非常に話の密度が濃い。高屋敷氏は、色々なキャラの動向を捌き、最後にうまく合流させるのが実に巧み。これは、じゃりン子チエ(脚本)あたりで凄まじくなった技術。
また、オチが多段オチになっていたり、敵側の作戦が綿密だったりと、とにかく技巧派と言えるくらい、端々に計算が見られる。それでいて、訴えかけるものが熱い(今回の場合は人命救助)のも高屋敷氏の特徴と言える。
いくら目的が尊くても、手段が伴われなければ駄目なので、具体的な手段や策が要るというのは、カイジ1・2期(シリーズ構成・脚本)でも強調されていた要素。今回の場合はシンプルながらも、人質を取った交渉で目的を果たしている。このあたりも面白い。
あと、老人に優しくせよといったメッセージも、毎度のことながら感じられる。王道なら女性や子供がやる役を、中高年キャラが務めているのは本当に興味深い(多分個人的なことが要因なのだとは思うが)。
時代の流れに干渉するという問題をすっ飛ばし、真っ先にポンペイの人々を避難させるのだという、はやとの気概は主人公らしく王道だが、そのために(咄嗟のことだが)人質を取るのが「真意は熱いが(良い意味で)計算高い」高屋敷氏らしい展開で良い。
これは推測だが、高屋敷氏は、はだしのゲン2の脚本を担当しており、「もし原爆投下前の広島にタイムスリップしたら市民を避難させたい」という思いを、今回の話に乗せているのかもしれない。本当に推測だが。
RAINBOW-二舎六房の七人-(シリーズ構成・脚本)でも、レギュラーの一人(昇)が原爆孤児であり、原爆の恐ろしさが描かれている。少なくともこちらは、はだしのゲン2の経験を大いに活かしている。
なんにせよ、救える命があるのなら、真っ先にそのために行動し、頭を働かせて具体的に行動しろというメッセージは熱いだけでなく冷静であり、高屋敷氏らしさも大いに入っていると感じられた回だった。
トンデケマンでの高屋敷氏脚本回は、これで最後となる。本作と同じく葦プロ作品で、芦田豊雄氏がキャラデで関与しているダンクーガにて、高屋敷氏は1回だけ脚本を書いており、葦プロと同氏の関係に少し興味を引かれる。