カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ガイキング18話演出:「食」と交流

大空魔竜ガイキング』は1976年放送のロボットアニメ。母星が危機のため地球征服を目論むゼーラ星人達と、それに対抗する地球人達との戦いを描く。シリーズ構成は丸山正雄氏で、監督は不在(各話演出に依る)。
今回の脚本は上原正三氏で、演出が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、当ブログのガイキングに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0

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  • 今回の話:

母星の危機が刻一刻と迫るゼーラ星は、一部市民を移民宇宙船に乗せて地球へ送る。
その移民の中の、サン博士一家と偶然会ったサンシロー(主人公。主役メカ・ガイキングパイロット)達は仲良くなるが…

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ブラックホールに飲み込まれる運命のゼーラ星についての説明場面で、ペンタプリズム描写がある。こういった光表現は、高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏が多用しており、高屋敷氏も使う。家なき子・宝島(演出)と比較(比較2作品の監督は出崎統氏)。

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ダリウス大帝(ゼーラ星の支配者)は、地球侵略を担う“暗黒ホラー軍団”の四天王に、母星の危機が目前に迫っているとして地球侵略を急がせる。中間管理職的なキャラの苦労は、カイジ忍者戦士飛影(脚本)ほか、クローズアップされることが多い。

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ゼーラ星は、“ノアの方舟計画”を開始し、移民宇宙船に一部の民間人を乗せて地球へ向かわせる。ゼーラ星の一般市民に、これだけ目が向けられる回は珍しい。ベルサイユのばら(コンテ)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、カイジ2期(脚本)など、高屋敷氏はモブ描写が上手く、その手腕が発揮されている。

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ノアの方舟伝説の説明場面で、雲の間から光が射し込む画が出るが、演出作のみならず、不思議なことに脚本作でも似たような画が他作品で出る。家なき子(演出)、F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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そして、地球に着いたゼーラ星の移民宇宙船が、太陽に照らされる場面がある。何かが太陽を横切ったり、バックにしたりする絵面はよく出る。こちらも、不思議なことに脚本作でも出力される。蒼天航路・F-エフ-・忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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移民宇宙船に乗るサン博士(ゼーラ星の医者)の娘・カレンは、地球に着くのを楽しみにする。所作が無邪気で子供らしい。宝島(演出)、ガンバの冒険(脚本)ほか、キャラの幼い描写は、高屋敷氏の得意とするところ。

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一方ゼーラ星軍は、移民宇宙船が着陸する地の地元住人を捕らえて投獄する。やっぱりモブ描写が上手い。ベルサイユのばら(コンテ)、ストロベリーパニック陽だまりの樹(脚本)と比較。

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対ゼーラ星部隊である大空魔竜戦隊は、消息を絶った旅客機(ゼーラ星軍が撃墜した)の謎を追い、(移民宇宙船が着陸した)山岳地帯を訪れる。画がルパン三世2nd(演出/コンテ)とほぼ一致するのが面白い。

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サンシロー(主人公。主役メカ・ガイキングパイロット)は、たまたま見かけたサン博士と話す。すると蝶を追ってカレンとハチロー(大空魔竜戦隊にくっついている少年)が遊び始める。蝶はよく出る。あしたのジョー2(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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蝶を追ううち、ハチローは転ぶ。このあたりの所作も無邪気で幼い。宝島(演出)のジムの所作によく似ている。どちらも作監杉野昭夫氏。

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サンシロー、ハチロー、ミドリ(大空魔竜戦隊の紅一点)はサン博士にもてなされ、ヘレン(サン博士の妻)は手作りクッキーを出してくれる。飯テロは頻出。マイメロディ赤ずきんコボちゃんストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)でもクッキーが出てくる。

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さらに飯テロは続き、ハチローはクッキーを美味しそうに食べる。宝島(演出)、マイメロディ赤ずきんストロベリーパニック怪物王女(脚本)と比較。

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サンシローは、ヘレンのクッキーは「宇宙一」だと称える。ワンダービートS(脚本)では「世界一」、F-エフ-(脚本)では「天下一品」と、料理を作った人を褒めており、共通性がある。今回の場合、もしかしたら演出段階で高屋敷氏が追加した台詞かもしれない。

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楽しい時も束の間、ゼーレ星軍が突入してきて(監視されていた)、サンシロー、ハチロー、ミドリはショック銃で気絶させられ、基地に連行された挙げ句、兵器工場で一生働けと言われる。なんとなく、カイジ2期(脚本・シリーズ構成)の地下労働施設を彷彿とさせる。

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一方、偵察していたヤマガタケ(大空魔竜戦隊の一員。巨漢)とファン・リー(大空魔竜戦隊の一員。拳法の達人)は、敵メカである暗黒怪獣・マンモスノアの襲撃を受け後退。構図や演出などが元祖天才バカボン(演出/コンテ)と重なる。

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サン博士はサンシロー達を助けようと、ベム(ゼーラ星移民宇宙船の船長)にかけあうが、怒ったベムに撃たれ負傷。それでも彼は、投獄されていたサンシロー達や地元住民を逃がす。
忍者戦士飛影(脚本)で、(一時の)対立関係より人間性を重視して主人公を逃がした、ダミアン(後に仲間になる)を思わせる。

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重傷のサン博士は、外に車があるから、それを使って逃げるようサンシローに伝える。主人公を命がけで庇ったり助けたりするキャラは、ルパン三世3期・忍者戦士飛影(脚本)などでも目立つ。

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サンシローはガイキングで出撃してマンモスノアと戦うべく、大空魔竜(母艦)へと急ぐ。状況が似通うからか、不思議なことに脚本作である忍者戦士飛影ルパン三世3期と重なるものがある。高屋敷氏は、カーアクションが好きなのかもしれない。

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そしてガイキングとマンモスノアは戦闘となるが、移住計画が発覚したため、移民(サン博士の妻子含む)を回収して逃げようと飛び立った移民宇宙船が、戦闘に巻き込まれ爆発してしまう。いたいけなキャラが惨たらしく死ぬのは、ベルサイユのばら(コンテ)、カイジ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも印象深い。

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ガイキングによってマンモスノアは倒されるが、戦闘で発生した熱により、山の雪が溶けて洪水となる。
大空魔竜は、サン博士と地元住民を回収する。
トンデケマン(脚本)では、主人公達が奔走してポンペイ市民を火山噴火前に避難させる話があり、重なってくる。

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洪水の場面は、ルパン三世3期(脚本)の火山湖決壊場面を思わせる。こちらも状況が似るからだが、かたや演出、かたや脚本なのに画が似てくるのが面白い。

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避難民を乗せた大空魔竜は飛び立つ。雲海に関しては、家なき子(演出)やベルサイユのばら(コンテ)でも似た演出が見られる。

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サン博士は、サンシローに会えてよかったと言い、ゼーラ星の仲間のことを託して逝く。手から手へ思いを伝えるのは頻出。F-エフ-・ワンダービートS(脚本)、宝島(演出)、ワンナウツ(脚本)と比較。

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ラスト、大空魔竜が夕陽を横切っていく。夕陽も頻出。
ベルサイユのばら(コンテ)、おにいさまへ…忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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  • まとめ

今回の場合、無記名だがコンテも高屋敷氏の可能性が高い。根拠は、色々挙げてきた通り、同氏の他のコンテ作と似通う場面が多いため。

今回は何とも悲しい話だが、幼く無邪気な所作を描写するのを得意とする高屋敷氏の演出が、悲しさに拍車をかけている。あんなに可愛い子供達が一瞬で爆死したと思うと、ショックは大きい。

結末は悲しいわけだが、サンシロー達とサン博士一家の交流の象徴としてクッキーが出るのは、なんとも飯テロが好きな高屋敷氏らしさが出ている。今回の場合は演出だが、脚本作でも定番であり、本当に食べ物が好きなのだと感じる。

食べ物が好きというだけでなく、今回のように交流の証だったり、精神を癒したり、愛情の印だったりと、食べ物の持つ重要性についても、あらゆる作品で描かれている。“食”の持つ力を表現することは、高屋敷氏のライフワークの一つなのかもしれない。

話全体は、敵側の事情が色濃く描かれるわけだが、善悪のラインを明確にせず、キャラ達の色々な側面を描くのを好む高屋敷氏の意向も(今回は演出なので雰囲気的なものだが)出ていると感じる。

子供達が蝶を追いかける場面も目を引いた。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)でも、蝶を追いかける場面があり、それとシンクロ度が高い。本作と、まんが世界昔ばなしは放送年が重なっているのも興味深い。

結末は悲惨だが、サン博士一家とサンシローの交流は、(和平派がいるということで)一抹の希望を見せたとも取れる。
高屋敷氏は割と、コメディや希望のある展開を描くことが多いが、(話が脚本主導の中でも)その片鱗が少しあるのかもしれない。

手から手へ思いを伝えるのは、本当に高屋敷氏担当作では定番で、今回も確認できたのは収穫だった。
また、中高年男性が主人公に思いを託して死ぬのは、カイジ(シリーズ構成・脚本)でも強調されているため、そのルーツ的なものも感じられる。

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モブ、つまり作品世界を影で支える存在にスポットを当てている点にも注目したい。サン博士一家もまた、そういったモブの中からピックアップされたとも言える。モブや脇役の描写が、高屋敷氏はつくづく上手いと、今回も感じさせられた。

本作における高屋敷氏の参加は、今回で最後となる。本作は監督不在な分、演出や脚本の意向や好みが色濃く出ており、高屋敷氏の個性を見ていく上でも非常に収穫が多かった。見ることができて本当によかった。