カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ルパン三世2nd141話演出コンテ:鳥が導くストーリー

ルパン三世2ndは、アニメ・ルパン三世の第2シリーズ。ルパンのジャケットが赤いのが目印。今回の脚本は高階航氏。
高屋敷氏は演出・絵コンテを担当。
サブタイトルは「1980 モスクワ黙示録」。

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ある日、ルパンは不二子に呼び出される。
不二子は自分のアジトにて裸で泳いでおり(特徴:アイデンティティの如何を問う脱衣演出)、ルパンを悩殺する。プール演出が、あしたのジョー2脚本と重なる。

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もともと、高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏がこういったプール演出が得意で、高屋敷氏はそれに影響を受けたと考えられる。

そして、出崎統監督の、あしたのジョー2で高屋敷氏が脚本を書いた際に、同氏は出崎統監督がプール演出が得意なことを想定していたのだと思う。だから最終映像が似てくるのだろう。

話を戻すと、今回のターゲットはソ連(現ロシア)のクレムリンにある、ダイヤでできたシャンデリア。プロジェクターを使って説明が行われるが、プロジェクター演出は脚本・演出ともに多い。脚本デビュー作と思われる、あしたのジョー1にも出ていた。挙げればキリが無いので、太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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また、盗む対象がシャンデリアという所に、高屋敷氏の特徴が出ている。意味深な照明のアップ・間は、高屋敷氏の演出・脚本ともに多く出てくる。今回、ベルサイユのばらコンテ、カイジ2期脚本と比較。

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プールから上がってシャワーを済ませた不二子は、鏡を見ながら髪を整え、口紅を塗る。女性が鏡を見ながら身だしなみを整える演出は、演出・脚本ともによく出てきて、意味深に描写される。下記はベルサイユのばらコンテとの比較。

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また、口紅を塗る場面も、脚本・演出ともに多い。しかも描写がリアル。蒼天航路めぞん一刻脚本と比較。

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今回の口紅演出の意図は、裸→タオル→化粧、と不二子が纏うものが多くなるにつけ、何かを段々と隠しているのを、視聴者にわかるようにしているのではないだろうか。

ちなみに、不二子が纏うバスタオルには地図がプリントされている。高屋敷氏の脚本・演出ともに、地図は頻出。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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盗聴機とカメラで、念のため不二子を監視していた次元と五右衛門は、ルパンがまたまた不二子に乗せられている事に呆れる。
目的地がクレムリンという事で、次元は、モスクワオリンピックの話題を出し、煙草の煙で五輪マークを作って見せる。

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ど根性ガエルコンテ疑惑回(無記名)でも、煙草の煙で五輪マークを作るシーンがある。また、このコンテ疑惑回には「子供のうちから煙草を吸うと背が伸びない」という旨の台詞があり、高屋敷氏脚本の、はだしのゲン2でも同様の台詞がある。そのため、疑惑が益々強まる。

一方銭形もモスクワに来ており、モスクワ警察を訪ねる。モスクワ警察署長は、くまの五輪マスコットを抱いており、これの意味深アップ・間がある。ここも、高屋敷氏の大きな特徴。蒼天航路脚本と比較。ちなみに、可愛いおじさんも、同氏作品にはよく出る。

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警察署長は銭形の為にコンパニオンを用意しており、銭形は彼女からキスの雨を食らい困惑。ところで不美人から好かれるネタは、監督作の忍者マン一平にも出ており、かつまた、カイジ(脚本・シリーズ構成)でも出る。カイジの美心は、EDのみの出演だが。

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偶然にしても、似たようなシチュエーションが重なってくるのは面白い。

ルパンは銭形に変装し、ターゲットのシャンデリアを下見する。この時も、シャンデリアの意味深アップがあり、しかもカイジ2期脚本と結構シンクロ率が高い。

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カイジ2期の方のコンテは川尻善昭氏であり、川尻氏も高屋敷氏と長年仕事をしているため、このような奇跡的シンクロが起こるのではないだろうか。また、シャンデリアごしの構図は、両氏馴染みの出崎統氏が得意としている。

銭形に変装していたルパンだったが、国家特務機関SKB(スーケーベー)の士官・ナターシャに変装を見抜かれ、牢に入れられてしまう。また、次元と五右衛門も、SKBの監視下に置かれる。

ルパンは独房にて、隣につながる隠し扉を偶然発見、隣の房にいるダンチョネという老人と出会う。

その頃不二子は、クレムリンの官僚に取り入っていた。官僚は野球を愛しており、ピッチングマシン相手にバッティング練習をするのが日課ど根性ガエル演出といい、ワンナウツシリーズ構成・脚本といい、どうも高屋敷氏は野球が好きなのではないか?と感じる。

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一方ルパンはダンチョネから、シャンデリアについての説明を受ける。ここの構図が、ベルサイユのばらコンテと重なる。

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アーチ型のオブジェクトが手前に来る構図が、高屋敷氏のコンテのクセのようだ。

ダンチョネは、かつてシャンデリアの宝石を盗もうとして逮捕されたが、技師としての腕を買われ、服役しながらシャンデリアのメンテナンスをしているという。

また、ダンチョネは鳩を手懐けており、ルパンも鳩に餌をあげる(後の伏線)。

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鳩といえば、出崎統氏の鳥演出は有名。高屋敷氏はそれに影響を受けた上で、鳥1羽1羽にストーリー性を持たせるという独自演出をしている。画像は、今回、家なき子演出、コボちゃん脚本との比較。

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ダンチョネは、一緒にシャンデリアを盗んで脱獄しようとルパンに頼み込み、ルパンもそれを承諾。中高年の人に優しい・甘い主人公は、高屋敷氏の作品に多い。監督作忍者マン一平カイジ2期脚本と比較。

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ルパンはダンチョネに、ダンチョネはルパンに変装。作戦を開始する。

ルパン(外見はダンチョネ)はシャンデリアのメンテナンスをするふりをして、盗みやすくするための細工をし、牢に戻る。

ここの構図も、高屋敷氏の作品にはよく出る。ベルサイユのばらコンテ、カイジ2期脚本と比較。

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コンテはわかるのだが、脚本までシンクロするのは怪。しかも、カイジの方は、ストーリー性が加味されている。ただ、カイジ2期の、この回(16話)のコンテは川尻善昭氏。前述のように、両氏のルーツが出崎統氏であること、両氏が馴染みであることが関係しているのかもしれない。

次にルパンは、鳩の足にメモをくくりつけ、次元のもとへ飛ばす。メモを受け取った次元は、五右衛門と共に、SKBの監視をくぐりぬけ脱出。

次元は不二子に配置につくよう連絡した後、シャンデリアのある建物の現場主任のふりをして、建物に透明の雨どいを取り付ける。
そして、オリンピック開会式の祝砲を合図に、ルパン達のいる牢を爆破。

ルパンは、シャンデリアにつなげた釣糸を引っ張って仕掛けを発動。だが、ダンチョネはこの土壇場になって裏切り、何処かへ去る。

それをよそに、釣糸・雨どい・ピッチングマシンを使ってダイヤモンドを次々と運ぶ仕掛けはうまく行く。ピタゴラスイッチ的作戦は、高屋敷氏の作品によく出る。監督作(脚本・コンテも)の忍者マン一平と比較。

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あとはダンチョネの行方だが、ルパンはダンチョネに見捨てられた鳩を優しく抱き上げ、空へ飛ばす。

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鳥が生きており、ルパンが鳥に優しいのは、高屋敷氏が演出・コンテをした、まんが世界昔ばなし「幸福の王子」で死んだ、ツバメに対する救済に見えるのが興味深い。

ルパンにより放たれた鳩は、ダンチョネのもとへとルパン達を導く。

ここの上空からの構図も、ベルサイユのばらコンテと重なるものがある。

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鳩が導いた先には、ダンチョネ、不二子、ナターシャがいた。実はダンチョネとナターシャは親子で、不二子の手引きで亡命を図っていたのだった。

そんなダンチョネ親子に、分け前としてルパンはダイヤ数個をあげる。これも、中高年の人に甘い・優しいという、高屋敷氏のポリシーが出ている。

残りのダイヤは、不二子のもとに届かないようにルートをせき止め、その終着地点にて次元が回収。ダイヤは数十万個もあるので、次元は疲弊するのだった。かくしてルパン達(不二子除く)は見事、大量のお宝をゲット。これは、高屋敷氏が手がけたルパンの演出・脚本の中では最高額のお宝となる。

  • まとめ

割と高屋敷氏の特徴盛り沢山な回で、過去作・未来作との、絵面のシンクロが凄まじい。特に脚本作とのシンクロは驚異的。何故なのかは不明なので、奇跡とか怪現象とかで片付けたくもなるが、似たようなシチュエーションにて、脚本から想像される画が共通しているのかもしれない。

あと、鳥に関して。出崎哲・統兄弟と長く仕事し、共に沢山の出崎鳥演出をしてきた高屋敷氏は、その中で、鳥にストーリー性を持たせる独自性を見出したと言える。高屋敷氏と鳥に関しては、こちらの過去記事を参照。

出崎兄弟の好む巨大夕陽演出にも、高屋敷氏はキャラづけやストーリーを付加している(太陽=全てを見ている重要キャラ)。

この、「ストーリーを付加」する能力が、後に役職を脚本に絞っていくことに繋がるのではないだろうか。しかもその「脚本」は、演出経験に裏打ちされた、アニメにしやすいものだからこそ、最終映像が「脚本」なのに似てくるのかもしれない。それにしても不思議な現象なので、興味は尽きない。

そして、中高年の人に優しくせよというポリシー。監督作忍者マン一平の一平にしろ、カイジにしろ、ルパンにしろ、皆、中高年の人に優しい。そういう主人公であってほしいと、思いを託しているように感じる。

原作つきであろうとも、こういった、自身が理想とする主人公像を作り上げることが可能だということにも気付かされた回だった。