カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

家なき子49話演出:若さがぶつかる作品作り

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

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  • 今回の話:

サブタイトル:「二人の母」

脚本:杉江慧子氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

フランスにいるミリガン夫人(以前レミと交流した富豪で、レミの実母)に会うため、イギリスからフランスへ戻ったレミ達は、汽車賃を稼ぐためリンゴ園で働くことに。

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フランスにいるミリガン夫人(以前レミと交流した富豪で、レミの実母)に会うため、レミ達はイギリスからフランスへ戻る。
アーチ状の物ごしの似た構図が、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、ベルサイユのばら(コンテ)にあり、興味深い。

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パン屋で、レミはパンを買う。飯テロは実に多い。ストロベリーパニック(脚本)、宝島(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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現状、イギリスの通貨しか持ち合わせがないレミ達だったが、マチヤ(レミの親友。風来坊)はパン屋を美人だとおだて、機嫌をよくしたパン屋はパンをくれる。味のあるモブは、おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)ほか、よく出る。アニメオリジナルキャラも多い。

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野原でパンを食べながら、レミとマチヤは、フランスからスイスに向かっているミリガン夫人に会うには、リヨンに行く必要があると話し合う。
ここも飯テロ。コボちゃん(脚本)、ガイキング(演出)と比較。

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素寒貧のレミ達は、リヨンに行く汽車賃を稼ごうと、大道芸を行うが、通行人のクシャミのはずみで道具が壊れ、レミが転倒する。
宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)ほか、コミカルなアクションはよく見られる。

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人々は秋の収穫で忙しく、レミ達の芸を見る客は少ない。売り上げが殆ど無かったレミ達は、ヤケクソ気味に歌いながら歩く。
歌を歌う場面は、はだしのゲン2(脚本)や元祖天才バカボン(演出)など、しばしば見られる。

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宿賃もなく、レミ達は風車小屋で寝ることに。レミは、マチヤに藁を投げて笑う。
無邪気に笑う描写は、色々な作品で目立つ。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ガンバの冒険(脚本)と比較。

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翌朝、レミ達は芸を行うも、見ているのは、リンゴを食べまくっている小さな女の子一人。
食いしん坊描写は多い。ガンバの冒険RIDEBACK(脚本)と比較。

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そんな中、ジョリクール(芸をする猿。二代目)は、女の子のリンゴを奪い、女の子からリンゴを投げられる。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、オヨネコぶーにゃん(脚本)ほか、イタズラ好きな動物は結構出る。

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売り上げ皆無のレミ達は、またもヤケクソになって、歌いながら歩く。
子供の子供らしい所作を描写するのが、高屋敷氏は上手い。宝島・ガイキング(演出)と比較。

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すると偶然、レミはバンジャマン(レミが世話になったアキャン家の次男)と再会する。再会を喜ぶ二人は、銃撃戦ごっこをする。
ここも高屋敷氏得意の、子供らしい所作。あんみつ姫(脚本)、宝島(演出)と比較。

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バンジャマンはレミに、ミリガン夫人に会ったことを話し、マチヤは驚いて、持っていたレミの帽子を落とす。
驚いて物を落とす表現は、ベルサイユのばら(コンテ)などにもある。

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バンジャマンは、サンカンタンでリンゴ園を営む叔父さんの元におり、丁度リンゴの競りに向かう所だった。
競りでの、手のサインが描写されるが、手の表現は頻出。宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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仕事を探しているというレミの話を聞いた、バンジャマンの叔父さんは、自分のリンゴ園で働かないかと言ってくれる。レミは、賃金交渉をしようとするマチヤを制し、話に乗る。
宝島(演出)、あんみつ姫(脚本)ほか、高屋敷氏はお調子者の描写に長ける。

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一方ミリガン夫人達は、レミが実子であるか確認するべく、バルブラン(レミの養母)の家を訪ねる。
水面に木葉が浮かぶ表現は、MASTERキートン(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)などにも見られる。

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バルブランは、搾りたての牛乳で作ったホットミルクで、ミリガン夫人達をもてなす。
飯テロも多いが、美味しそうな飲み物の描写も多い。ハローキティのおやゆびひめ(脚本)、宝島(演出)と比較。

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複雑だが覚悟を決めた心境で、バルブランは、レミが捨てられていた時の産着をミリガン夫人に見せる。
産着を手にしたミリガン夫人は、それを抱きしめる。
ここも頻出の、手での感情表現。RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(脚本)と比較。

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産着により、レミが実の子だと確認でき、ミリガン夫人は泣き崩れる。
一旦ルーセット(レミがバルブランに贈った新しい牝牛)が映るが、動物による「間」は多い。花田少年史めぞん一刻コボちゃん(脚本)と比較。

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ミリガン夫人の使用人である、ビビアンとアランは、今までの苦労が報われた、とミリガン夫人を祝福する。
おにいさまへ…めぞん一刻(脚本)など、忠実な使用人は、印象的なキャラが多い。

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その頃、レミ達はリンゴ園で働いていた。転んだマチヤを見て、皆は笑う。
朗らかな笑顔が広がる描写は、はだしのゲン2(脚本)、宝島(演出)ほか、数々の作品で強いインパクトがある。高屋敷氏は「笑顔」を重視する。

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ジョリクールと協力してリンゴを収穫するマチヤは、木から落ちたジョリクールを見て笑い、ジョリクールからリンゴを口に突っ込まれる。
ここも幼く無邪気な表現。宝島(演出)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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レミはレミで、リンゴを収穫中に梯子から落ち、バンジャマンの叔父さんがリンゴの籠をキャッチする。
やはりここも、コミカルなアクション。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ガイキング(演出)と比較。

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バンジャマンの叔父さんは、レミやマチヤの働きぶりを褒め、レミは照れる。ここも「笑顔」に拘りが見られる。
宝島・ガイキング(演出)と比較。

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一方、ミリガン夫人とバルブランは、それぞれのレミへの愛情を話す。
夕暮れの中語らう場面は、様々な作品にある。陽だまりの樹RIDEBACK(脚本)と比較。

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そして、ルーセットがもうすぐ子牛を産むのを、皆は楽しみにする。リーズ(レミが世話になったアキャン家の末娘。現在、ミリガン夫人に同行)はルーセットを撫でる。
撫でる所作は多い。マッドハウス版XMEN・じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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一方レミ達は、リンゴ収穫後の宴で芸を披露することになり、皆は盛り上がる。
ワンナウツ(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、朗らかで温厚なモブは、あらゆる高屋敷氏担当作で目立つ。

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まず、レミがハープを弾きながら歌い、皆は喝采する。
ランプが目立つ描写は数々ある。宝島(演出)、ワンナウツ(脚本)と比較。

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次に、マチヤがバイオリンを弾き、レミがタンバリンを叩く。
ここも、皆に笑顔が広がる温かい表現。ガンバの冒険あんみつ姫(脚本)と比較。

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マチヤとレミの軽快な演奏に合わせ、皆は楽しく踊る。
楽しそうな動作づけもまた、高屋敷氏は得意。宝島(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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夜、疲れたとベッドに転がり込むマチヤに、レミが大げさだとつっこむ。
ここも子供らしい所作。宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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そこにバンジャマンの叔父さんが来て、十二分すぎるほどの日当をマチヤとレミにくれる。
仕事前に提示した指1本のサインは、両手の指+片足の指ぶんの意味だと叔父さんは明かす。
優しいおじさん/おじいさんは、カイジ2期・はだしのゲン2(脚本)なども印象深い。

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マチヤは感極まり、バンジャマンの叔父さんに抱きつく。
ハグする場面は数多い。ど根性ガエル(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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バンジャマンは、叔父さんの粋な計らいを称える。
ここも無邪気で可愛い動作づけ。宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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翌朝レミ達は、汽車でリヨンに向かう。
太陽の描写は、とにかく要所要所で目立つ。RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-(脚本)と比較。

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一方リーズは、アーサー(ミリガン夫人の息子。足が不自由)が熱を出して苦しんでいるのに気付き、急いでミリガン夫人にジェスチャーで知らせる(リーズは病気で口がきけない)。
花瓶が割れる描写があるが、似た表現が、おにいさまへ…蒼天航路(脚本)などにもある。

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ミリガン夫人達は、急いで(アーサーが手術する予定の)スイスに向かうことにし、レミが来たら連絡するようバルブランに頼む。
バルブランとミリガン夫人は、手を握り別れる。
手と手の感情表現は頻出。おにいさまへ…陽だまりの樹(脚本)と比較。

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リヨン駅にて、ミリガン夫人達とレミ達は、すれ違うも互いに気付けなかったのだった。
ここもモブ描写に力が入っている。あんみつ姫(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)ほか、高屋敷氏のモブへの愛情は深い。

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  • まとめ

 とにかく温かで、無邪気で、笑顔が広がる、高屋敷氏の得意な空間が目一杯詰まっている回。最終回間近なので、割と同氏がやりたいことの集大成の感がある。

 特にリンゴ園での場面は、モブやゲストキャラ、メインキャラ全て生き生きと描写されていて、非常に朗らかで明るい。
高屋敷氏は、義理人情を全面に出す傾向があるが、それが十分出ている。

 山田洋次監督作品が好きと推察される高屋敷氏は、『男はつらいよ』(山田洋次監督)シリーズよろしく、旅先で会う人情溢れる人々を描きたい思いが強いのではないだろうか。実際それは、モブやゲストキャラの温かさに見事に反映されている。

 過酷な運命や出来事も多い本作だが、レミ達は子供らしさや笑顔を失わず、コミカルな場面も多く見られ、見ていて楽しい場面も沢山ある。そこには、そういった要素が得意な、高屋敷氏の貢献が大きいと思う。

 本作は、当時の子供たちに、4クールの長丁場を見てもらうための工夫が満載されている。シリアスのあとにコメディ、手に汗握るアクションのあとに情緒溢れる場面など、とにかくバランス調整が上手い。

 そのため、高屋敷氏と、もう一人の演出ローテである竹内啓雄氏の両極端な個性が、本作では功を奏している。似た布陣の出崎統監督作品、エースをねらえ!(高屋敷氏演出)では、竹内・高屋敷両氏の強烈な個性がいびつに出ていたが、本作はそれよりはおとなしい。

 それでも、竹内・高屋敷両氏の個性の違いは本作でも強烈で、シリアス・かっこよさ担当の竹内氏と、コミカル・子供っぽさ担当の高屋敷氏とでバッサリ分かれていて、場合によっては開始1秒でどちらの演出回かわかるほどである。

 出崎統監督はというと、竹内・高屋敷両氏の演出個性を尊重し、潰していない。
その根底には、いいものを作るには、色々な個性を取り入れたい思いがあり、長い付き合いで、一緒に作っている「同志」感があったのではないだろうか。

 実際、そんな出崎統氏のもとには多くの才能が集ったが、出崎統氏・竹内氏・高屋敷氏で演出を切り盛りしていた時代は特に、師匠や弟子というより、同志といった感じだったような雰囲気が、作品を通し伝わってくる。

 本作含め、そんな「若さ」溢れる作品は、今も色褪せていない。
高屋敷氏は、年を経るごとに技が研ぎ澄まされる仕事ぶりだが、それができるのは、本作のような「若さ」が成した仕事の感覚を、いつまでも忘れないからかもしれない。