カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

家なき子41話演出:多面的な見方

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

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  • 今回の話:

サブタイトル:「やっと会えた パパとママ」

脚本:杉江慧子氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

ロンドンにいるガレー弁護士を訪ねれば、本当の両親に会えるという、ジェローム(レミの養父)の遺言に従い、レミ達はロンドンへ向かう。

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ロンドンにいるガレー弁護士を訪ねれば、本当の両親に会えるというジェローム(レミの養父)の遺言に従い、レミ達はロンドン行きの船のチケットを買う。
手による表現は頻出。ワンナウツ・F-エフ-(脚本)、宝島(演出)と比較。

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港町に着くまであまり寝てないため、マチヤ(レミの親友。風来坊)は欠伸する。
宝島(演出)、あしたのジョー2・めぞん一刻番外編(脚本)など、コミカルな仕草は、色々な作品で目立つ。

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ロンドン行きの船は早朝3時出港なので、レミ達は宿で休憩する。早速寝てしまったマチヤの荷物を、レミは優しくはずす。寝ている者に優しくする場面は、結構見られる。宝島(演出)、ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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レミは眠り、ミリガン夫人(以前レミが世話になった富豪)がレミの実母だとナレーションが入る。
白鳥の表現がベルサイユのばら(コンテ)に似ているほか、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)では白鳥の話がある。RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)には鴨が出るなど、鳥は頻出。

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レミが目覚めると、出港時間が近く、レミは慌てるが、マチヤ達は準備万端でレミを待ってくれていた。
ここもキャラのコミカルな描写が上手い。宝島・ど根性ガエル(演出)と比較。

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レミ達は急いで船に乗り込み、船員が急かしてくれる。端役でも、とにかく高屋敷氏担当作はモブが味わい深い。トンデケマン・あんみつ姫めぞん一刻(脚本)なども、モブが個性的。

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船はロンドンへ向け出港。マチヤはかっこつけてフランスに別れを言うが、すぐにおどける。高屋敷氏は、かっこよさに対し「照れ」が見られ、エースをねらえ!(演出)や、めぞん一刻(脚本)でも、美形キャラのくだけた一面を入れている。

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マチヤはレミに今の気分を聞き、わからないと言うレミに「そりゃそうか」と笑う。
高屋敷氏は「笑顔」を重視し、あしたのジョー2・ワンナウツ(脚本)などでも、キャラが素直な笑顔を見せる。

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レミ達がチケット指定の船室に行くと、そこには既に家族連れがおり、部屋番号が同じと判明。レミ達は追い出されてしまう。ここもモブが個性的。F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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船員は、部屋番号被りはよくあると笑い、毛布を貸してやるから甲板で星を見ながら寝たらどうだと言う。
こちらも個性派モブ。陽だまりの樹めぞん一刻(脚本)などでも、親切なモブが記憶に残る。

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その後、海が荒れて船は大揺れ。慌てるマチヤだが、船員は平然とする。
海に慣れている「海の男」の描写は、宝島(演出)が印象深い。

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ジョリクール(芸をする猿。二代目)とマチヤは気分が悪くなり、戸惑うレミに、それは船酔いだと船員が教えてくれる。
親切なモブは、空手バカ一代(演出/コンテ)や元祖天才バカボン(脚本)などにも出てきて、インパクトがある。

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レミは、船酔いするマチヤをさすって介抱する。優しい手つきの表現は多い。めぞん一刻番外編・ストロベリーパニック(脚本)、宝島(演出)と比較。

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夜明け、船員がレミにコーヒーを入れてくれる。
高屋敷氏といえば飯テロだが、おいしそうな飲み物も沢山出る。宝島(演出)、はだしのゲン2(脚本)と比較。

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また、船員はレミに、いま豪華客船とすれ違う所だと教えてくれる。
頭に手を置く、頭に触れる親愛表現はしばしば見られる。チエちゃん奮戦記・蒼天航路(脚本)と比較。

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レミは豪華客船に手を振り、豪華客船の客も手を振る。奇しくもそれはアーサー(ミリガン夫人の息子、つまりレミの実弟)だったが、霧で互いに、それに気付けず。爽やかに手を振る挨拶は、ガンバの冒険・まんが世界昔ばなし(脚本)も印象に残る。

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その後レミはマチヤを、ミリガン夫人はアーサー(足が不自由)を優しく介抱する。
ここも、「手」に優しさが出ている。ハローキティのおやゆびひめ・ストロベリーパニック(脚本)と比較。

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ロンドンに着いたレミ達は、目的地であるガレー法律事務所がある通りを、バッキンガムの衛兵に訪ね、衛兵は無言で方向を教えてくれる。ここも、モブが優秀。あしたのジョー2・MASTERキートン(脚本)でも、モブが優しい。

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ガレー法律事務所のあるビルに着いたレミ達だが、ここにきて緊張しているレミを、マチヤが励ます。
そばにいてくれる陽気な友達の存在は、RIDEBACK陽だまりの樹(脚本)でも強調されている。

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そして、レミはガレー弁護士に会う。ガレーは、ドリスコルという夫婦から、レミを探すよう依頼を受けたと話す。
マチヤがウィンクしているのが細かい。ウィンクなどの軽妙な仕草は、時折見られる。あんみつ姫おにいさまへ…(脚本)と比較。 

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レミ達はガレーと共に、馬車でドリスコル夫妻のもとに向かうことに。マチヤは、嬉しいかとレミに問い、レミはわからないと答える。
ここも、気のおけない友情描写。RIDEBACKめぞん一刻(脚本)と比較。

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ドリスコル夫妻の家は貧民街にあった。ドリスコルは喜び、マチヤをレミと間違えてハグする。
1980年版鉄腕アトムおにいさまへ…(脚本)ほか、ハグや抱きつきはよくある。

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マチヤに、レミはこっちと指摘されたドリスコルは、あらためてレミをハグする。レミは、全く嬉しさを感じず戸惑う。
ここも頻出の鳥演出。ベルサイユのばら(コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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ガレーに礼を言って別れ、自宅にレミ達を招き入れたドリスコルは、妻のローラに、早く姿を見せるよう急かすが、ローラは化粧中。メイクする女性の描写は、ルパン三世2nd(演出/コンテ)や、めぞん一刻(脚本)などにもあり、どれもリアルで丁寧。

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自分一人では間が持たないとローラを急かすドリスコルの足を、ローラは踏んづける。
ここも、キャラのコミカルな一面を出すのが上手い。宝島(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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ようやく姿を見せたローラは、レミとマチヤに歓迎のキスをしまくる。
女性の強引なアプローチは、ルパン三世2nd(演出/コンテ)や忍者マン一平(監督)にも出てくる。

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猿が苦手なローラは、ジョリクールにキスされ悲鳴を上げる。
舌を出すジェスチャーは、よく出る。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ハローキティのおやゆびひめ(脚本)と比較。

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一方、ドリスコルの弟・デビッドは、警官に追われていたが、なんとか逃げおおせる。
モブ警官は、めぞん一刻コボちゃん(脚本)なども印象的。

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ドリスコルのもとに帰ったデビッドは、色々怪しげなことを言い、ドリスコルに口を塞がれる。ここもコミカルさに重点を置いている。エースをねらえ!ガイキング(演出)と比較。

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ドリスコルはレミ達を寝室に案内し、レミの持っていた(ジェロームから貰った)金を、預かっておくと言う。
欲望に正直なキャラは、宝島(演出)やカイジ(脚本)などにも出てきて、目立つ。

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居間に戻ったドリスコルは、デビッドを締め上げ、不用意な発言をするなと叱る。
お調子者、または、お調子者の演技をするキャラは、宝島(演出)やカイジ(脚本)などにもいて、強烈なインパクトを残す。

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手持ち無沙汰で、商売道具の知恵の輪をいじるマチヤに、レミは、知恵の輪をやらせてほしいと頼む。
なんとなく互いに心情を察し合う友情は、あしたのジョー2(脚本)にもある。

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マチヤは、どう見てもドリスコル夫妻が怪しいことや、レミが嬉しそうでないことを指摘するが、レミはそれを遮る。
現実に引き戻してくれる友達の存在は、おにいさまへ…(脚本)でも大きい。

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レミは、疲れたので寝ると言い、マチヤはレミが取り落とした知恵の輪を拾う。ここも動作づけが細かい。
動作づけは、ガイキング・宝島(演出)も丁寧で細かい。

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夕刻、ドリスコル夫妻はご馳走を用意する。一方、マチヤは何処かへ外出。
飯テロは実に多い。MASTERキートンアンパンマン(脚本)と比較。

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散歩していたと言って、ドリスコル宅に戻ったマチヤは、陽気に振る舞う。
ここも、コミカルな描写が上手い。ど根性ガエル(演出)、ガンバの冒険(脚本)と比較。

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宴の席で、マチヤは陽気にダンスし、ドリスコル一家は盛り上がる。
陽気に踊る場面は、じゃりン子チエ(脚本)や元祖天才バカボン(演出/コンテ)など、しばしば見られる。

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寝室に入ったマチヤは、表情を変え、ドリスコル夫婦はレミの本当の両親ではないと言う。
様子が豹変するのは、カイジ2期・MASTERキートン(脚本)でも強烈。

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マチヤは、レミが寝ている間、役所でドリスコル夫妻の戸籍を調べ、彼らに子供がいないことを突き止めたのだ。
いざという時頼りになる友達の存在は、陽だまりの樹あしたのジョー2(脚本)などでも強調されている。

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それを聞いたレミは、では何故ドリスコルが自分を探したのかと問い、マチヤは、そこがまだわからないと言う。
ここも、手を使った感情表現。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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その頃、ドリスコル一家は怪しい者達と会っており、ビッグ・ベンの鐘が不吉に鳴り響くのだった。
状況とリンクする「物」の間は多い。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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  • まとめ

 今回も、存在感のあるモブが多く出てくる。とにかく温厚だったり親切だったりするキャラが多く、そこが、山田洋次監督作品が好きっぽく、義理人情を重んじる傾向がある高屋敷氏らしい。

 あと、キャラのかっこよさを演出するのに長ける出崎統監督と長年一緒に仕事したのに、高屋敷氏は、「かっこよさ」を数段階ずらした、キャラのコミカルさや陽気さ、笑顔を重視しており、そのギャップがつくづく面白い。

 どんなにニヒルでクールなキャラでも、高屋敷氏は、屈託ない笑顔や、コミカルな一面を出すことに力を入れる。それがキャラや作品に深みを与えていて、キャラには色々な側面があることを教えてくれる。

 モブの個性についてもそうだが、とにかく高屋敷氏は、各々のキャラの形成や中身に並々ならぬ拘りがありそうだ。
経験的に、または本能的に、キャラ形成の重要性を知り尽くしているところがある。

 シリーズ構成作ともなると、そういった、高屋敷氏のキャラ形成力、構成力は凄まじく、どの時点でキャラ(特に主人公)の魅力が開花し、どの時点で成長し、どのように視聴者の心を動かすかが、緻密に計算されており、いつも感嘆させられる。

 F-エフ-・カイジグラゼニ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、それは顕著で、滅茶苦茶な性格(F-エフ-)、犯罪行為や怠惰さ(カイジ)、卑屈で金にこだわる(グラゼニ)といった、序盤の主人公のマイナス面を吹き飛ばし、キャラの魅力を引き出す構成になっている。

 いわば、キャラの魅力の倍々ゲーム状態で、ある一定のポイントに達すると、その魅力が爆発する仕組み。
そのポイントは、話数的にも割と共通していて(大体、半クールか1クールあたり)、その計算力は驚異的。

 キャラが作品を引っ張り、視聴者を夢中にさせることができるのは、どの人気作でも確認できる。勿論、キャラだけで話がスカスカでも困るが、キャラに魅力が無ければ作品に勢いが出ないことを、高屋敷氏は熟知しているのではないだろうか。

 本作について話を戻すと、マチヤがレギュラーになってから、高屋敷氏の得意分野である、無邪気さ、可愛さ、コミカルさ、朗らかさの表現が更に冴えて、キャラが生き生きとしてきた感じがする。

 本作のように演出作の場合は、芝居づけや雰囲気で、脚本作の場合は、台詞や心理描写、話、構成などで、高屋敷氏は「キャラの形成」に余念がない。同氏の多面的にキャラを見ていく能力と技術は、色々な作品に「強み」となって表れている。