カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

家なき子39話演出:作家が作家たる所以

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

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  • 今回の話:

サブタイトル:「急げ!パリへ」

脚本:山崎晴哉氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

バルブラン(レミの育ての母)から、実の母の話を聞いたレミはパリへ向かう。道中、レミ達はリーズ(レミが世話になったアキャン家の末娘)のいるドルーズィーに寄る。

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レミは、再会したバルブラン(レミの育ての母)から、実の母の存在を知らされる。
火による「間」は色々な作品にある。ベルサイユのばら(コンテ)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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バルブランは、レミが来る少し前に、レミの実の母が派遣した弁護士が訪ねてきて、ジェローム(バルブランの夫)に、レミを探すよう依頼したと話す。
空手バカ一代(演出)、あしたのジョー2(脚本)ほか、雨の中のドラマは多い。

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回想の中で、ジェロームはバルブランに、とびきりの客が来たと語る。
背中で語る表現は結構ある。ワンナウツストロベリーパニック(脚本)と比較。

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場面は現在に戻る。マチヤ(レミの親友。風来坊)は、ジョリクール(芸をするサル。二代目)を抱っこしながら、レミの実の親を怪しむ。
動物を可愛がる描写は数々の作品で目立つ。あしたのジョー2(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ど根性ガエル(演出)と比較。

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再びバルブランの回想。ジェロームは、レミを探すための金も貰ったし、レミを見つければ更に金が貰えるとして、パリへ向かう。
窓越しに映す描写はよくある。ベルサイユのばら(コンテ)、ガイキング(演出)と比較。

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場面は現在に戻る。レミは、実の親の存在に動揺し、外に飛び出す。マチヤは心配する。
ここも、マチヤとジョリクールがかわいく、動物との触れ合いが上手い。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、マイメロディ赤ずきん(脚本)と比較。

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途方にくれるレミを、追ってきたマチヤが元気づける。
落ち込んでいるときに、親しい人が寄り添ってくれる場面は、様々な作品で印象深い。陽だまりの樹・F-エフ-(脚本)と比較。

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レミはマチヤに、バルブランを好きな気持ちと、実の母に会ってみたい気持ちとの間で揺れていると打ち明け、抱きついて泣く。
密接な友情描写は多い。ど根性ガエル(演出)、F-エフ-(脚本)と比較。

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そこにバルブランが来て、レミの幸せを願っているし、実の母の存在を悲しんでもいないと話す。レミは感涙する。
母の優しさは、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)、ど根性ガエル(演出)ほか、前面に出される。

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それを見たマチヤは、背を向けて密かに貰い泣きする。
ここも、背中で語る表現。グラゼニあしたのジョー2(脚本)と比較。

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その後レミはバルブランから、レミが拾われた時着ていた立派な産着を見せられる。
ジョリクールは、その産着を奪って着る。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、あんみつ姫(脚本)ほか、イタズラ好きの動物の描写も秀逸。

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ジョリクールの産着姿を面白がり、マチヤとレミは盛り上がる。
キャラの無邪気で幼い所作は、高屋敷氏の得意分野。ガンバの冒険あんみつ姫(脚本)と比較。

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翌朝、ジェロームに会うため、レミ達はパリへと旅立つ。バルブランは、彼らを見送る。
状況と連動する花の描写は割と見られる。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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レミ達を笑顔で見送っていたバルブランだったが、彼らの姿が見えなくなると泣き崩れる。
太陽の描写は頻出。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、じゃりン子チエ(脚本)と比較。

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一方マチヤは、以前根城にしていたパリに、また行けることを喜ぶ。
場を和ませる、陽気でコミカルな友達の描写は数多い。おにいさまへ…陽だまりの樹(脚本)と比較。

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パリの前に、リーズ(レミが世話になったアキャン家の末娘)のいるドルーズィーに寄ると言うレミを、マチヤは(リーズはレミの彼女だと言って)からかう。
からかい描写も上手い。RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)、宝島(演出)と比較。

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マチヤは更にレミをからかう。ここも、無邪気で幼い。
ガンバの冒険・新ど根性ガエル(脚本)と比較。

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追いかけっこをしながら、レミ達はドルーズィーに向かう。ここも無邪気でかわいい友情描写。
おにいさまへ…ガンバの冒険(脚本)と比較。

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夜、野宿をしながら、マチヤは、(産着の立派さを見るに)レミの実の親は金持ちかもしれないと話す。ティーポットが映るが、こういった物の「間」はよく出る。
宝島(演出)、めぞん一刻(脚本)と比較。

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一方、レミの実の母・ミリガン夫人(富豪。以前、互いに親子と知らずにレミと交流)と、執事のアランは、行方不明の息子を案じる。
忠実な執事は、おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)でも印象的。

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ミリガン夫人は、最近死んだ義弟から、遺産相続のしがらみで、ミリガン夫人の第一子・リチャード(レミ)を誘拐して捨てたことを明かされ、捜索を開始していた。子を想う母の姿は、おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)などでも強調されている。

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一方、ドルーズィーに着いたレミ達は、野原で花を摘んでいるリーズを見つける。
ここも、状況と連動する花の描写。RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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リーズに声をかけようとするレミを、ジョリクールとマチヤが制止する。
ここも無邪気で、「男の子」らしい友情描写。F-エフ-・新ど根性ガエル(脚本)と比較。

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マチヤは、レミとリーズの仲を散々冷やかし、レミの手をつねる。
手を使った感情伝達は頻出。おにいさまへ…陽だまりの樹(脚本)と比較。

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レミは、マチヤがマセていると反撃するが、マチヤは、レミがおくれていると返す。
ここも、密でかわいい友情。F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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女の子には音楽だというマチヤの提言で、レミはハープを弾きながらリーズの前に姿を見せる。
それを見たリーズ(病気で口がきけない)は全身で喜びを表現する。喜び方がかわいいのは、よく見られる。DAYS(脚本)、宝島(演出)と比較。

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レミとリーズは、手を取り合って再会を喜ぶ。全てを見守るような太陽の描写は多い。じゃりン子チエ・F-エフ-(脚本)と比較。

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レミとマチヤが奏でる音楽に合わせ、リーズは踊ってカトリーヌ(リーズの叔母)の家に向かう。
笑顔溢れる朗らかな雰囲気作りは、高屋敷氏の十八番。ストロベリーパニックガンバの冒険(脚本)と比較。

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その後レミは、リーズに旅のこと、会ってきたリーズの家族の事を話す。
ここも、笑顔のある和やかな関係性の描写が上手い。ストロベリーパニックおにいさまへ…(脚本)と比較。

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まだまだ話すことがあるので、レミ達はリーズをボートに乗せる。
人を抱っこする気遣いは、柔道讃歌(コンテ)にもある。とにかく、細やかなスキンシップが沢山ある。

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夕暮れ、運河のほとりに佇むレミとリーズを、マチヤは温かく見守るが、商売道具で遊ぶジョリクールを叱る。
動物とのコミカルな連携は、よく見られる。あんみつ姫(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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マチヤは水切りをして、石が3回はねればレミが実の母に会えると占う。結果は3回。
水切りは出崎統・哲氏が好む。高屋敷氏は野球経験者で、グラゼニワンナウツといった野球アニメのシリーズ構成・脚本も務める野球好き。そのためか、投げ方が野球っぽい。

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レミも、石が3回はねればリーズが幸せになると願かけして水切りをし、成功。
ここも投げ方が、高屋敷氏が愛する野球っぽい。ど根性ガエル(演出)、ワンダービートS(脚本)ほか、同氏は野球回も多く担当している。

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リーズもまた、石が3回はねればマチヤが幸せになると、水切りに挑戦する(レミが通訳)。マチヤは照れる。
照れる表現が、ベルサイユのばら(コンテ)、エースをねらえ!(演出)と重なるものがある。

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リーズの水切りも、見事3回はねる。マチヤは、リーズに感謝する。
帽子を使った感情表現は、時折見られる。RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(脚本)と比較。

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カトリーヌから、ご飯に呼ばれたレミ達は、カトリーヌの家まで競争する。
友達とかけっこするのは、はだしのゲン2(脚本)のラストシーンも強く印象に残る。

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途中、転んだレミを、リーズがハンカチで手当てする。それはミリガン夫人からレミが貰い、レミがリーズに贈ったもので、レミはミリガン夫人を思い出す。
思いのこもったハンカチやタオルは、おにいさまへ…ストロベリーパニック(脚本)にも出てくる。

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翌朝、レミ達はリーズとの再会を誓い、パリへと旅立つ。
ここも、手を使った感情表現。
ストロベリーパニック(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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マチヤは、水切りの占い通り、実の母に会えるとレミを元気づけるのだった。
コボちゃん(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)など、友達と走る描写は結構ある。

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  • まとめ

 レミの出自が明かされるわけだが、その暗くシリアスな部分が吹っ飛ぶほど、高屋敷氏が得意とするところの、子供の子供らしい無邪気さ・コミカルさ・明るさ・朗らかさに満ちている。

 とにかく高屋敷氏の担当作は、演出でも脚本でも、キャラが幼く無邪気で、かわいい所が目立つ。これは同氏の大きな強みであり、個性の一つだと、つくづく思う。

 何回か書いているが、苦み走ったハードボイルドさやケレン味、かっこよさや寂寥感、「死」の匂いなどが語られがちな出崎統監督作品で、高屋敷氏の可愛く朗らかで、「生」を感じさせる作風は物凄く目立つ。出崎統監督も、同氏のそこを重宝したのではないだろうか。

 かっこよさだけでも、かわいさだけでも、「死」だけでも、「生」だけでも、作品に偏りが出来てしまう。勿論、一点突破を狙う方法もあるが、(本作含めた)1970〜80年代初頭の出崎統監督は、様々に異なるスタッフの個性を活かしてバランスを取っている。

 そんな中で、高屋敷氏は頭角を現した。無邪気、かわいい、朗らか、コミカル、笑顔、成長、そして「生」といった同氏の主だった特色は、作品の「明」の部分として強く機能している。

 そもそも原作からして、『家なき子』は「かわいそうな子の話」というイメージが強いが、本作の高屋敷氏の演出回は、楽しくて朗らかで、かわいく、笑顔に満ちた印象が強烈に残る。それだけ、同氏のインパクトは大きい。

 本作には悲劇や不幸、死別も山程あるわけだが、それでも笑顔や子供らしさを失わずに「生きて」いくんだという、強い意志も感じられる。高屋敷氏には、「生」きることの強さ、たくましさ、楽しさを描いていきたい思いがありそうだ。

 はだしのゲン2(高屋敷氏脚本)も、原爆投下から間もない広島という過酷な環境なのに、印象に残るのは子供達の優しさ、強さ、笑顔、そして「生きる」ことだ。同氏の「伝えたいこと」は、とにかく強い。

 だからこそ、私は高屋敷氏の仕事に興味を持ったと言える。同氏を通じて、「表現をする者」の「強い意志と力」を思い知っているし、伝えたいことがあるからこそ「作家」なのだという思いを強くしている。