カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

忍者戦士飛影 32話脚本:キャラとしての火山が怒り爆発。過酷な現実の中でも人間性を失うなというメッセージ

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくなりませんが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見えます)

 今までの話としては、下記あたりがポイント。

  • 伊賀に行くも、ラドリオ星が求める忍者はいなかった
  • 色々あったがジョウ達はエル・シャンクに残る
  • 零影を駆るイルボラが京都を襲った。イルボラはジョウが自由に飛影を召喚できることを、まだ知らない。

地球連邦のロンドンとサンパウロ基地が、ザ・ブーム(字数関係でザブームと書く)軍の襲撃を受け壊滅。一報を聞いたジョウは歯みがき中。ジョー2やDays脚本でも見られる、緊迫を中和するコミカル描写(特徴) 。https://t.co/VA7376S22F

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最近(2016)、高屋敷氏はDays脚本を書いているので嬉しい。Days3話、つくしをバカにした他校生徒をこらしめたため監督達に怒られた後の風間の歯みがきシーン・おっぱい考察は、風間のことを心配する、つくしの不安を和らげる効果があるし、幼い(特徴)。 

話を戻すと、基地の壊滅を受け、全世界の首脳達が緊急会議を開く。会議には、北米代表かつ、唯一ジョウ達エル・シャンクの味方であるサナダ父子も出席(北米代表の息子・ローニンはジョウの幼馴染)。だが、ジョウ達の敵である、火星司令ハザードも出席していた。

ハザードは、エル・シャンクを潰せばザブームは攻撃を止めると、北米以外の首脳達をそそのかす。そそのかされた連邦は、北米が従わない場合、全世界が北米を敵とする、と決議。北米市民3億人とエル・シャンクを天秤にかけられ、サナダ父子は苦悩する。

サナダは苦悩の結果、北米市民の命を守る方を選択する。ハザードは更に、ジョウの親友であるローニン・サナダに、エル・シャンク攻撃を命じる。ローニンを信じ、会議の結果を待ち続けるジョウだが、エル・シャンクのクルーのガメランはローニンに疑念を抱く。

ガメランは、ローニンは怖じ気づいて裏切りの算段をしているのではないかと、疑問を投げ掛ける。そして「友情なんてそんなもんよ。まともに信じていると火傷をする」と言う。 面白いのは、同氏カイジ脚本でも、原作通りだが似た内容を岡林が言う所。

今回脚本とカイジ脚本、台詞比較。

岡林「友情や口約束で貰えるのは旅先からの絵ハガキや土産、あるいは思い出というガラクタ…そんな程度のもの」

ガメラン「友情なんてそんなもんよ。まともに信じていると火傷をする」 

確かに現実はそういう側面もある。それでも主人公はそれを認めてはならないという同氏の主張が、今回もカイジも読み取れる。カイジ原作の福本先生にもそういう主張はある。そのためか、岡林もガメランも殴られる。 https://t.co/aGp3cS0xxP

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友を侮辱されて怒るのは、最近の同氏のdays脚本でもある。風間は、つくしをバカにした連中に湯をぶっかける。カイジの仲間思いも同様。 また、同氏脚本カイジ12話にて、カイジは、「裏切らなきゃ裏切られる」と苦悩しながらも、人を押さないという決断をする。

このように、オリジナルでも原作つきでも、同氏が主張したい所が同じなので、奇跡的なシンクロが起こり続けるのだろう。また、原作つきで、しかも原作に忠実なままで、自分の主張を出すのは相当な手腕が必要。それについては、同氏のチエ脚本経験が生きている。

追い詰められたローニンは、単身エル・シャンクを攻撃する。だが、戦闘機が壊れて不時着。そして、ローニンはジョウに日本刀を渡して、決闘を申し込む。剣での決闘が、同氏のベルばらコンテを彷彿とさせる。 https://t.co/NoLBTj7oVQ

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決闘の末、ジョウがローニンの剣を弾き飛ばす。負けを認めたローニンは介錯をジョウに頼む。涙ながらに負けを認めるローニンが、カイジ1期同氏脚本のカイジっぽい。二人とも泣く。 https://t.co/V7VQUheD0X

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同氏脚本ルパン3期でも、仲間のゲリラを裏切った次元の旧友(ギャランコ)が、次元と決闘する。ギャランコもローニンも決闘に負け、死を望むが、次元もジョウも、とどめをささない。(特徴:自殺防止) https://t.co/PWs8gvZ2oM

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ルパン3期脚本も、今回も、悲劇の決闘を見守る卑劣な敵がいるのも共通(レプトル将軍・ハザード)。見た目も少し似てるw また、介錯をするかしないか、剣が「見ている」(特徴:物もキャラ)。 https://t.co/FEHavh205R

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事情をローニンから聞いたこともあり、とどめを刺せなかったジョウは、立場は違えどお前はかけがえのない親友だと叫び、エル・シャンクで去る。落ち込むジョウがチエ・めぞん一刻脚本、ベルばらコンテ等と重なる怪。 https://t.co/mloDnPcBYr

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悲しむ間もなく、イルボラの乗る零影と、雑魚メカ群が襲ってくる。ジョウ達は火山島を戦場に選び、あらかた雑魚を片付ける。そしてイルボラ対ジョウの一騎討ちとなる。ここも同氏ベルばらコンテを彷彿とさせる。 https://t.co/GzXSHmCKCu

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ジョウはイルボラに、自分とローニンの友情を引き裂くことはできないとアネックスに伝えろ、と言う。一方イルボラは、戦争においては、どんな友情や絆も引き裂かれることがある、と反論。ジョウはそれを否定し、イルボラを倒す寸前まで追い詰める。

ここで、イルボラにとどめを刺すのを邪魔するように、火山が噴火する(特徴:自然=キャラ)。イルボラもジョウも撤退を余儀なくされ、決着つかず。しかもエル・シャンクは燃料切れのピンチになり、次回へ。

次回予告にて「死亡率80%の病気」というのがあるが、ど根性ガエルに出る台詞「死亡率90%の風邪」のパロと思う(三家本氏演出回だが)。ど根性ガエルのはブラフだけど、飛影のはマジ。しかも実在の病気。過去作パロが散りばめられているのも特徴。

  • まとめ

火山は同氏脚本に頻出。鉄人28号太陽の使者脚本の海底火山、ルパン3期脚本の火山湖、今回。鉄人28号、ルパン3期は、敵を倒す火山だが、今回はとどめを刺させない火山。画像は今回とルパン3期脚本。https://t.co/kY8HPnPSjz

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今回、ローニンとジョウ、イルボラとジョウの、2つの決闘が描かれ、どちらもジョウはとどめを刺せなかった。前者は、事情を知っていることもあり、ジョウは自らの意志でとどめを刺さなかったが、後者は、キャラとしての火山が、イルボラとジョウの決着を邪魔した。

絆が引き裂かれる事もあるという、イルボラの現実的主張をジョウが否定する瞬間、ジョウがイルボラを追い詰めることができたのも興味深い。友情に懐疑的なガメランをジョウが殴る場面もあるし、現実を認めつつ主人公は義理人情を通せという主張が見える。

火山が噴火したのは、裏切り裏切られ、絆が引き裂かれる戦いに対し、火山が怒ったように見える。もし火山が噴火せず、ジョウがイルボラを殺していれば、ジョウの人間性が失われていただろう。また、カイジ同氏脚本でも、人の醜い争いを見て、カイジの怒りが爆発する。

同氏ベルばらコンテと、今回脚本との、剣のアクションを比較してみた。同氏脚本は比較的アクションの指定はあまりないみたいに見えるが、剣をはじき飛ばすあたりは指定した?そこそこ画が共通するのも怪。 https://t.co/lVP7dg5dqX

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今回やカイジ脚本を見ていると、過酷でシビアな現実を描きつつも、主人公は決して信頼や友情、義理人情を失ってはならないという、同氏の強いメッセージを感じる。しかも主人公達は、シビアな現実を体験した上で、まっすぐな信念を曲げない。

今回は、友やライバルにとどめを刺せなかったジョウと、人間競馬で人を押さない決断をしたカイジに共通点を見出せた回だった。他も共通点多数。オリジナル脚本でも原作つき脚本でも、強調の具合によって自分の主張は出せるのだというのを感じた回でもあった。