カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

太陽の使者鉄人28号23話脚本:大地が「選んだ」者

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

「太陽の使者鉄人28号」は、鉄人28号のアニメ第2作。

少年・金田正太郎は、父が遺した鉄人28号と共に、インターポールの一員として悪と戦う。監督はゴッドマーズ監督の今沢哲男氏。

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九州の地熱エネルギー基地が、天馬に乗った武者のような巨大ロボット(ヒュウマロボ)に襲われ壊滅するという事件が発生。
大塚警部と正太郎は早速現場に向かう。大塚警部と正太郎は名コンビで、なんとなくカイジ脚本の、カイジとおっちゃんの関係にも生かしている感じ。

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エネルギー基地を襲った者達はヒュウマ一族と名乗っており、正太郎達は彼等の拠点を探すべく、九州一帯を飛行機で調べる。
地図を見ながら航空機で飛ぶシチュエーションが、ルパン三世2nd演出と似てくる。他作品の演出や脚本にもよくあるので、好きなシチュエーションなのかもしれない。

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正太郎達の動向はヒュウマ一族に察知されており、族長・ハヤテはヒュウマロボで正太郎達の飛行機を襲う。間一髪、正太郎が鉄人に飛行機を受けとめさせ、正太郎達は助かる。鉄人の優しい手つきが、まんが世界昔ばなしの、ガリバー旅行記脚本を思わせる。

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だが正太郎達はヒュウマ一族に包囲され、鉄人を操作するコントローラーとも分断されてしまう。為す術がない鉄人は谷底に落下。
ハヤテは更にムチで正太郎の手を痛め付け、一時的に操縦できなくさせる。男くさい対決姿勢がカイジ脚本の一条とカイジを思わせる。 

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ハヤテは、2000年前に九州を支配していたヒュウマ一族の再興が目的だと言い、この地から立ち去れと正太郎に警告し去る。
岩石に埋もれた鉄人の腕のアップ・間が同氏特徴を感じさせる。めぞん一刻脚本と比較。どちらも物をキャラとして捉えている。

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正太郎達は一旦撤退し、敷島博士(正太郎の父の友人)から、ヒュウマ一族の伝説を聞く。
伝説によれば、太古の昔にヒュウマ一族は巨神を使い九州を支配していたらしい。説明映像が太陽のアップから始まるのが高屋敷氏的。元祖天才バカボン演出と比較。 

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高屋敷氏は今回「脚本」なのに、不思議なことだが、説明映像の影絵調が、まんが世界昔ばなしの高屋敷氏演出作「11わの白鳥」の雰囲気に似ている。

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話を伝説の方に戻すと、ヒュウマ一族の行いは火や空の神の怒りを買い、火山が爆発。巨神は岩に封印されたという。
これも自然をキャラクターとして捉えている高屋敷氏のポリシーが出ている。忍者戦士飛影でも、怒りを表すように火山が噴火する展開がある。

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正太郎達は、伝説をもとにヒュウマ一族の拠点を発見する。だがハヤテに見つかり、命までは取らないから去れと、奇妙な術で叩き出される。
そこへ救援のヘリが到着。太陽を背にした画は同氏作品に多い。元祖天才バカボンルパン三世2nd演出、忍者戦士飛影脚本と比較。 

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正太郎達がハヤテの術で眠らされていた間に、ハヤテ達は第2のエネルギー基地を襲撃。次のエネルギー基地への襲撃を止めるべく、正太郎は鉄人を直ちに再起動。
これは、警官の一人がコントローラーを持ってきてくれていたおかげ。同氏特徴の優秀モブ。らんま脚本のモブも優秀。

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鉄人との戦闘に突入したハヤテは、阿蘇山へ鉄人を誘い出す。マグマに鉄人を落とす作戦だったが、もみ合った双方がマグマに転落。ヒュウマロボはマグマに耐えられず爆発。
散り際にハヤテと悪鬼の顔が重なるが、沼に一条の顔が重なる、カイジ2期脚本と比較。

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一方、鉄人は無事にマグマから生還。
正太郎は、もっと話し合えたらこんな事態は避けられたかもしれない、と憂う。善悪の区別は簡単ではない…という高屋敷氏のポリシーの表れ。1980年版鉄腕アトム脚本の、善悪の判断がつかないロボットの死と比較。

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大塚警部は、正太郎の言動に、「それは思わん方がいい」と言う。
二人と鉄人は崖に佇むのだった。このビターな余韻も、1980年版鉄腕アトム脚本13話のラストに通じるものがある。

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  • まとめ

今回、同作18話脚本の海底火山、忍者戦士飛影の活火山、ルパン三世3期の火山湖、と同氏作品に火山がよく出てくるのは興味深い。
自然をキャラクターと捉え、様々な活躍をさせるのは高屋敷氏の特徴だが、火山も重要キャラなのかもしれない。

また、ヒュウマ一族の伝説にて、「空や火の神」が「怒って」、巨神を岩に封印したとある。
やはりこれも、自然をキャラクターと捉える高屋敷氏のポリシーが出ている。
また、ヒュウマロボと鉄人の決戦の場も、活動が活発になった阿蘇山

いわば、阿蘇山が今回の戦いに「怒って」いる。
そして、それを戦術に生かそうとしたハヤテはそこそこ頭が切れる。カイジ2期脚本でも、地盤をカイジが味方につけた事が強調されている。
蒼天航路ワンナウツ脚本も、自然を味方につける。

本シリーズは正太郎が鉄人によく無茶をさせるが、今回もそうで、鉄人とヒュウマロボは双方マグマに落ちる。
それでもヒュウマロボが爆発し、鉄人が生き残るのは、大地がどちらを生かすか、キャラクターとして「選択した」とも取れる。

そもそもヒュウマ一族は太古の昔にも「空や火の神」(=自然)を怒らせており、今回も鉄人というより自然の前に敗れたともいえる。
思えば本作のタイトルは「太陽の使者」鉄人28号。もともと鉄人は「自然」に愛されているということかもしれない。

それとは別に、ヒュウマ一族の長・ハヤテは、正太郎達の命までは取らないなど、中々男気のある武人として描かれており、ここにも「善悪は単純ではない」という高屋敷氏のテーマが表れている。
そのため、正太郎もハヤテの最期を少し悼む。

ただ、子供向けなので、大塚警部に「それは思わん方がいい」と言わせている。だが、それを受けた正太郎が複雑な笑顔を見せる所に、やはりビターな雰囲気が漂っている。
後年、深夜の大人向けの作品を手がける事が多くなる兆しが出ている。

カイジ2期最終回脚本では、地下に行く一条に対し、カイジが「這い上がって来い」と発破をかける様が強調されている。
これは一条がまだ生きているからこそ、かける事ができた言葉であり、今回のハヤテに正太郎が言えなかった事とも言える。

カイジ2期脚本・シリーズ構成の沼編では大地が味方し、今回は、大地が鉄人を「選んだ」わけで、やはり自然という「もの言わぬもの」の活躍が大きいわけだが、興味深いところである。演出だけでなく、「脚本」でもこれを出せる所が面白い。

今回は、高屋敷氏の「自然をキャラクターとして扱う」ポリシーが色濃く出ているわけだが、「火山」はその「感情」を表現しやすい。
だから、同氏作品には火山がよく出るのかもしれない。
とにかく今回は、火山が重要な役回りをする回だった。