カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

コボちゃん63話(最終回)脚本:恐ろしさの片鱗

アニメ『コボちゃん』は、植田まさし氏の4コマ漫画をアニメ化した作品で、幼児のコボを中心にしたファミリーコメディ。
監督:森田浩光氏、シリーズ構成:城山昇氏。

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本記事を含む、当ブログの、コボちゃんに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B3%E3%83%9C%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93

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  • 今回の話:

サブタイトル:「コボとシゲルの絶交宣言!」
コンテ・演出:山田章夫氏、脚本:高屋敷英夫氏。

単身赴任中の父が倒れ、母がその世話に行ったため、シゲル(コボの親友)はコボの家に泊まることに。シゲルは父が心配でストレスを貯め、コボと大喧嘩してしまう。

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単身赴任中の父が倒れ、母が世話に行ったため、シゲル(コボの親友)はコボの家に泊まり、コボとロボットの玩具で遊ぶ。
高屋敷氏が脚本参加したロボットものは、忍者戦士飛影・太陽の使者鉄人28号・1980年版鉄腕アトムRIDEBACKで、同氏はロボットに愛着がありそう。

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内心、父が心配なシゲルは、夜分に布団から抜け出し、シゲルの母と早苗(コボの母)が電話で話しているのを立ち聞きする。早苗はシゲルの気持ちを察し、心配ないから寝るよう促す。子供に優しい大人は、チエちゃん奮戦記・マッドハウス版XMEN(脚本)ほか、色々な作品で目立つ。

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翌日、ハナコ・ヒロコ(コボの友達)と共に、ままごとで遊んでいたコボとシゲルだったが、シゲルはストレスからヒロコに八つ当たりし、それを咎めたコボと大喧嘩。忍者戦士飛影(脚本)では、主人公のジョウが、敵の策略により親友と決闘する話がある。

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その後、シゲルは自宅にこもり、早苗が差し入れた夕飯もいらないと言う。一方コボは、夕飯を黙々と食べる。飯テロは頻出。
じゃりン子チエグラゼニアンパンマンおにいさまへ…(脚本)と比較。

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シゲル一人では心配なので、竹男(コボの親戚。コボらと同居中)がシゲルの家に泊まることに。シゲルはそれを無視し、カップ麺を食べる。ラーメンテロも頻出。じゃりン子チエ(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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翌朝、家に戻ってきた竹男は状況をミネ(コボの祖母)に報告。また、彼はシゲルが手をつけなかった夕飯を代わりに平らげたと言う。ど根性ガエル(演出)、あしたのジョー2・あんみつ姫(脚本)などなど、食いしん坊描写は多い。

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耕二(コボの父)の発案で、ヒロコ・ハナコを呼び、コボ一家は河原でBBQする(竹男がシゲルをうまく合流させる手筈になっている)。ここも飯テロ。グラゼニカイジ2期・MASTERキートン(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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竹男は強引にシゲルを散歩に連れ出してBBQ組に合流し、腕力をもってシゲルをコボの隣に座らせる。会わせたい人に会わせるため茶番を打つのは、あしたのジョー2(脚本)のアニメオリジナル場面も印象深い。

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しかし、些細なことでコボとシゲルは言い争いになり、二人は取っ組み合いに。出崎統氏風の止め絵演出があり、高屋敷氏が出崎統氏と長年仕事したのを考えると面白い。あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)の止め絵演出と比較。こちらは監督が、本家の出崎統氏。

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その後、またもシゲルは(今度は鍵をかけて)自宅にこもり、冷凍ピザを調理して食べる。ここも飯テロ。RIDEBACK怪物王女カイジ2期・ストロベリーパニック(脚本)と比較。 

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竹男は、シゲルが鍵をかけているので、シゲル宅の庭にテントを張って泊まることに。耕二と岩夫(コボの祖父)は竹男に酒を差し入れ、ラーメンも食べようかと話すがシゲルに怒られる。酒テロも頻出。MASTERキートンめぞん一刻ワンナウツ・アカギ(脚本)と比較。

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翌日、それぞれ遊びから帰ったコボとシゲルは、橋で偶然会い、ジャンケンで勝った方が道を譲る勝負をするも決着がつかず。ジャンケン勝負は、家なき子(演出)や、めぞん一刻番外編(脚本)でも印象深い。

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自室に帰ったコボは、シゲルの忘れ物が目にとまり、それをシゲルに突き返す。シゲルもまた、コボから借りたものを叩き返す。その後シゲルは、コボから返された物を押し入れにしまう際、アルバムが目に入る。ここは話の持って行き方が上手い。

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シゲルはコボとの写真をアルバムから剥がし、破ろうとするが、できずに止める。
手による感情表現は頻出。ワンナウツグラゼニおにいさまへ…カイジ(脚本)と比較。

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また、父との写真を見るうち、シゲルは涙が零れる。F-エフ-(脚本)などなど、キャラが泣くまでの感情の持って行き方の上手さは、様々な作品で見られる。

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一方シゲルの母から早苗に電話がかかり、シゲルの父の身体に異常はなかったと判明。それを伝えに、コボがシゲル宅に行くとシゲルは不在で、彼が父に会いに行ったと察したコボは駅へと走る。夕暮れの中走るのは、花田少年史(脚本)、家なき子(演出)などにもある。

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電車に乗る直前に、コボはシゲルを引き止め、シゲルの父は病気ではなかったと伝える。それを聞いたシゲルは安堵で泣き出す。ストロベリーパニックあしたのジョー2・グラゼニカイジ2期(脚本)ほか、やはり泣くまでの感情の高め方が上手い。

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コボとシゲルは公園で語り合い、仲直りする。ブランコの場面は、エースをねらえ!(演出)によくあったほか、あしたのジョー2(脚本)にも出てくる。

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早苗達がコボとシゲルの心配をしていると、その二人が手を繋いで帰ってくる。ここも頻出の、手による感情表現。
おにいさまへ…・F-エフ-・MASTERキートンワンナウツ(脚本)と比較。

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すっかり空腹のコボとシゲルは、ご飯をモリモリ食べる。それを見たコボの家族は笑い出す。ここも飯テロ。アンパンマングラゼニ・F-エフ-・ワンダービートS(脚本)と比較。

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そして、夜空に星が輝くのだった。星をラストに持ってくるのは、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、1980年版鉄腕アトムめぞん一刻(脚本)にもある。

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  • まとめ

 最終回というのもあり、高屋敷氏が(当時)持てる引き出しを総動員しているのが感じられる。それにしても、(同氏の大きな特徴である)飯テロのオンパレードなのが凄い。流石「食」がライフワークの一つなだけある。

 仲が良かった二人が争い、最終的に仲直りするエピソードは、色々な高屋敷氏担当作品に見られ、今回も手慣れた感がある。
また、相変わらず5W1Hがしっかりした話運びになっており、同氏の手腕が遺憾なく発揮されている。

 最終回なのに、本作のシリーズ構成の城山昇氏ではなく高屋敷氏が脚本担当なのが意外だが、同氏は、エースをねらえ!家なき子・宝島(同氏演出)、あしたのジョー2・ワンダービートS(同氏脚本)の最終回を(監督やシリーズ構成でないのに)担当しており、最終回請負人的な面がある。

 最終回を、コボとシゲルの友情回にしたのは、なんとも男同士の友情描写が得意な高屋敷氏らしい。ファミリーコメディである本作のラストで「(血の繋がりのない)友情」にスポットを当てるのは、なかなかに変化球で珍しい。

 それと関係するが、高屋敷氏は長年、血の繋がりはなくても固い絆で結ばれている関係の尊さを強調してきた。それはカイジカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも然りで、こちらも同氏のライフワークと言える。

 最終回を請負うことにより、高屋敷氏は作品を「(いい意味で)乗っ取る」ことがある。それが顕著だったのがワンダービートSの最終3話(高屋敷氏脚本)だ。すっかり同氏の好みに話が染まっており、同氏の(いい意味で)恐ろしさが出ている。

ワンダービートSの高屋敷氏脚本回について、以前書いたブログ記事一覧はこちら↓

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%88S

 あまりにも有名な、あしたのジョー2最終回の脚本を高屋敷氏は担当しているが、そちらも、原作通りの結末なのに、それまでの(オリジナル含む)アニメの積み重ねで、どこか(原作と異なった)ポジティブな印象があり、そういった所も(いい意味で)恐ろしい。

あしたのジョー2最終回(高屋敷氏脚本)について、以前書いたブログ記事はこちら↓

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2021/04/25/135250

 最終回で、(いい意味で)作品を「乗っ取る」高屋敷氏の能力は、後のシリーズ構成作(カイジ含む)で花開いている。そういえば、同氏の「シリーズ構成」としての処女作は、めぞん一刻の最終シリーズで、ワンダービートSの少し後である。

 シリーズ全体の脚本を管理できるシリーズ構成ともなれば、「乗っ取る」までもなく、作品全体を見渡すことができ、ある程度のコントロールも可能だ。とにかく高屋敷氏のシリーズ構成は緻密で、よく計算されていて「恐ろしい」。今回は、その片鱗が見える回だった。