コボちゃん48B話脚本:恋愛模様を捌く
アニメ『コボちゃん』は、植田まさし氏の4コマ漫画をアニメ化した作品で、幼児のコボを中心にしたファミリーコメディ。
監督:森田浩光氏、シリーズ構成:城山昇氏。
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本記事を含む、当ブログの、コボちゃんに関する記事一覧:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B3%E3%83%9C%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93
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- 今回の話:
サブタイトル:「火花散らす五角関係」
コンテ:わだへいさく氏、演出:小林孝志氏、脚本:高屋敷英夫氏。
遊園地にて、コボとアキラ(コボの友達)がハナコ(コボの想い人)をめぐって争い、それにヒロコ・ケンジ(コボの友達)が絡んで複雑な人間模様に。
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遊園地の券を貰った耕二(コボの父)だったが、期限日は用事。そこで早苗(コボの母)は、竹男(コボの親戚。コボらと同居中)に、花田先生(竹男の想い人)をダシにして同伴してもらえと言う。些細だが、頭を使う大事さは、カイジ・ワンナウツ(脚本)等でも強調される。
当日。生憎、花田先生は用事で留守で、竹男は失望。コボは、憧れの存在であるハナコを誘うが、アキラ・ヒロコ(コボの友達)もついてくる(アキラもハナコが好き)。(大人含めた)幼い恋の争いは、めぞん一刻番外編・オヨネコぶーにゃん(脚本)などでも見られる。
遊園地に行く電車の中で、アキラは手品でバラを出し、ハナコにプレゼントする。バラを使ってキザさを表現するのは、おにいさまへ…・ダンクーガ(脚本)にもある。
遊園地に着くと、アキラが先手を取ってハナコを誘い、コボは後れを取る。一方ヒロコがコボに積極的にアプローチするが、コボは気が乗らない。複雑な恋愛模様は、新ど根性ガエル・めぞん一刻(脚本)など、高屋敷氏は多く取り扱っている。
さらにアキラはハナコにマメに気を使い、コボは取り残される。そしてコボは、色々コナをかけてくるヒロコを置いて逃げ出す。どんどんこじれる人間関係は、おにいさまへ…・ストロベリーパニック(脚本)でも見事に描かれている。
アキラとの張り合いが続くコボは、たまたま遊園地に来ていたケンジ(コボの友達で、お坊ちゃん)に会う。ここの、コボとアキラの恋の争いも幼く、めぞん一刻・グラゼニ(脚本)を彷彿とさせる。
ケンジが(押しているスケジュールのため)バイオリンの稽古を始めると、ハナコは感心。事態は益々ややこしくなる。
バイオリンでエレガントさを表現するのは、おにいさまへ…(脚本)にもある(アニメオリジナル)。
クレープを食べながら、コボは今度こそハナコを誘って一緒にアトラクションに乗ろうと決意する。それを察したヒロコは不機嫌になり、クレープをがっつく。チエちゃん奮戦記・じゃりン子チエ(脚本)ほか、食とメンタルの関係は強調される。
アキラは、竹男がコボを呼んでいると嘘をつき、コボが竹男の所に行っている隙にハナコを誘う。ここも、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、アンパンマン(脚本)などと同様、知恵を使うことが強調されている。
コボとアキラの戦いは更にヒートアップし、二人はゴーカート勝負をすることに。高屋敷氏はレースアニメであるF-エフ-のシリーズ構成・全話脚本を務めており、それのオマージュ的なものがある。
だが、コボとアキラの争いに巻き込まれたケンジが、カートから放り出される(幸い軽傷)。F-エフ-(脚本)でも、レース中に、主人公の友達が巻き込まれて事故を起こすくだりがあり(アニメオリジナル要素あり)、やはりセルフパロディ感がある。
ハナコはケンジに同情し、コボとアキラに「乱暴な人って大嫌い」と宣言する。
色々なニュアンスを含む「嫌い」は、めぞん一刻(脚本)でも印象深い。
一方、こまめに花田先生を(電話で)誘っていた竹男だったが、花田先生は結局来られず。ハナコにフラれて失意のコボ・アキラとともに、竹男も嘆く。
大人でも子供っぽいリアクションをするのは、めぞん一刻番外編・あんみつ姫(脚本)ほかでも目立つ。
数日後、幼稚園を休んでいるケンジをコボ・アキラ・ヒロコが見舞うが、ケンジは(ハナコを好きになり)恋煩いしていただけだった。コボとアキラは、恋敵が増えたと、ため息をつく。
人間関係がどんどんこじれるのは、やはり、おにいさまへ…(脚本)を思わせる。
- まとめ
先に述べた通り、複雑な恋愛模様や人間関係は、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)や、めぞん一刻(同氏脚本・最終シリーズ構成)を思い出さずにはいられない。
サブタイトルにもある通り、複雑な「五角関係」を、わずか10分弱の尺の中で描ききる、高屋敷氏の手腕は流石。恋の争いに関しては相当に、めぞん一刻(同氏脚本・最終シリーズ構成)で技術を磨いたのではないだろうか。
整理すると、今回扱われた五角関係は、
ヒロコ→コボ→ハナコ←アキラ・ケンジ
となる。それに加えて、竹男→花田先生も扱っているのだから、高屋敷氏の、人間関係を捌ききる技術は、やはり凄い。
高屋敷氏の担当作の中でも、人間関係の複雑具合は、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)が究極だと思っている。
後に、それを活かした形でストロベリーパニック(同氏脚本陣)があり、系譜を辿るのも面白い。
じゃりン子チエ(高屋敷氏脚本陣)あたりから、高屋敷氏の、複雑に絡み合うドラマを捌く技術が開花した感があり、それに恋愛や友情、ライバル関係を付加した形なのが、めぞん一刻(同氏脚本・最終シリーズ構成)やF-エフ-(同氏シリーズ構成・全話脚本)とも取れる。
本作(コボちゃん)は、年代的には、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)に非常に近い。タイミング的に、今回の脚本は、おにいさまへ…の直後あたりに執筆されたのではないか。となれば、五角関係など、同氏にとっては可愛いものなのかもしれない。
これらを年代順に整理すると、じゃりン子チエ(高屋敷氏脚本陣)→めぞん一刻(同氏脚本・最終シリーズ構成)→F-エフ-(同氏シリーズ構成・全話脚本)→おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)→コボちゃん(同氏脚本陣)となる。改めて、高屋敷氏の経験の豊富さに驚かされる。
とにかく高屋敷氏は、プロットやドラマ、人間関係が複雑に絡み合う作品を非常に多く取り扱っている。そう思うと、なかなか(いい意味で)恐ろしいものがある。
今回は、やりようによっては、短い尺でも複雑な人間関係は描けるのだということがわかり、かつまた、それをやってのけられる高屋敷氏の技術・経験・才能が確認できる回だった。
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- こちらも紹介:
以前書いた、F-エフ-(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)に関するブログ記事一覧↓
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23F-%E3%82%A8%E3%83%95-
以前書いた、おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)に関するブログ記事一覧↓