カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

コボちゃん43A話脚本:クズ描写の意図

アニメ『コボちゃん』は、植田まさし氏の4コマ漫画をアニメ化した作品で、幼児のコボを中心にしたファミリーコメディ。
監督:森田浩光氏、シリーズ構成:城山昇氏。

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本記事を含む、当ブログの、コボちゃんに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B3%E3%83%9C%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93

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  • 今回の話:

サブタイトル:「ジュースとオシッコ」
コンテ・演出:小華和ためお氏、脚本:高屋敷英夫氏。

シゲル(コボの親友で隣人)がコボの家に泊まりに来るが、コボもシゲルも、成り行きでジュースを飲み過ぎ、おねしょしてしまう。なんとかごまかそうとする二人だが…

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親の用事で、シゲル(コボの親友で隣人)がコボの家に泊まることに。ヒロコ(コボの友達)もそれに便乗し、3人はコボ宅で遊ぶ。喉が乾いたので、コボはジュースを取り出すが、早苗(コボの母)から、おねしょするからコボは飲むなと言われる。ここは話のテンポが良い。

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コボだけでなく、シゲルもまた、内心おねしょが心配でジュースに手をつけない。ヒロコだけがジュースを飲む。高屋敷氏といえば飯テロだが、飲み物も美味しそうに描写する。ハローキティのおやゆびひめ・はだしのゲン2・めぞん一刻(脚本)、宝島(演出)と比較。

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ヒロコは、おねしょを心配してるんでしょと、コボとシゲルの図星を突く。それを否定するため、コボとシゲルはジュースを飲むことにする。その様子は、まるで酒の席。酒の場面は実に多い。カイジ2期・グラゼニ・アカギ・ルパン三世3期(脚本)と比較。

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ヒロコに煽られるまま、コボとシゲルは、どんどんジュースを飲んでしまう。ここもまるで、酒のような飲みっぷり。酒テロは頻出。めぞん一刻番外編・チエちゃん奮戦記・グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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夜、ジュースが尿となるまで起きて、トイレに行こうと計画するコボとシゲルだったが、結局寝てしまう。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、カイジ2期(脚本)、ど根性ガエル(演出)、ガンバの冒険(脚本)ほか、眠りこけて失態を晒す場面は結構ある。

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夜明け前に目を覚ましたコボとシゲルは、自分たちが、おねしょしてしまったことに気付く。おねしょネタは、オヨネコぶーにゃん(脚本)や、忍者マン一平(監督)にもある。

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コボとシゲルは、こっそり布団を(隣の)シゲルの家に運んで干し、(電気をつけると怪しまれるので)暗がりの中、シゲルの家でパンツをはき替える。子供ながら手の込んだ作戦展開は、ルパン三世2nd(演出/コンテ/脚本参加)やカイジ2期(シリーズ構成・脚本)に通じるものがある。

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日が昇り、コボとシゲルは、なんとかおねしょを隠蔽することに成功する。
太陽の「間」があるが、こういった表現は多い。F-エフ-(脚本)、まんが世界昔ばなし・元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。

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だが、幼稚園での発育測定で服を脱いだコボとシゲルは、自分達がシゲルの母の下着を着ていることに気付く。二人は皆に笑われ、恥をかく。裸での苦境は、F-エフ-・カイジルパン三世2nd(脚本)、ど根性ガエル(演出)など色々な作品で目立つ。

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その後、シゲルの家に干した布団と服を確認していたコボとシゲルは、予定より早く帰宅したシゲルの母に現場を見られ逃走。だが逃げた先でも、ヒロコにおねしょがバレそうになり逃走。ここも話の流れがスムーズ。

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コボはパンツを脱いでシゲルに投げ、ばれないようにシゲルの母に返しといて、とトンズラしようとし、シゲルは「卑怯者」とコボを追いかけるのだった。なんとも主人公と思えぬクズっぷりを見せるのは、F-エフ-・カイジ(脚本)でも印象深い。

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  • まとめ

 おねしょと言えば、忍者マン一平(高屋敷氏監督)で、怪しいジュースに仕込まれた「おねしょ菌」で、ジュースを飲んだ子供達が、おねしょしてしまうという、なんとも色々ひどい回がある。それをルーツとした話展開の感がある。

 ジュースなのに、まるで酒の席のような描写があるのは、飯テロと同じくらい酒テロ(特にビールテロ)が多い高屋敷氏らしさが出ている。本当にいつもながら、同氏の飲食へのこだわりは凄まじい。

 目的も原因もひどいものだが、子供ながらに凝った作戦を敢行するのは、手の込んだ作戦を好む高屋敷氏らしさが出ている。一旦ピンチになったりするのも、作戦行動中に事態が二転三転する展開を見せるのが上手い、同氏の技術が発揮されている。

 ルパン三世2nd(高屋敷氏演出/コンテ/脚本参加)や3期(同氏脚本参加)、カイジ1・2期(同氏シリーズ構成・脚本)など、凝った作戦がコアとなる作品でも、ピンチや盛り上げ所、成功のカタルシスなどの構成の上手さが目立つわけだが、今回はそのシンプル版と言える。

 今回は、煽りに乗ってしまうと失態をおかし、恥を隠蔽しようとすると更に恥をかくといった教訓も少しはあるが、全体的に、コボとシゲルがバカをやってしまうというバカ話にはなっている。男の子がバカをやる話は、高屋敷氏の得意分野でもある。

 あと、ラストにコボがトンズラしようとするクズっぷりを見せるのは、先述の通り、F-エフ-・カイジ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)での見事な「クズ表現」と比較すると面白い。

 F-エフ-・カイジ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)では、序盤の主人公のクズっぷりが、シリーズ中盤や終盤の、主人公の覚醒・成長を「魅せる」ための「種」として機能しており、そのシリーズ構成の見事さは必見である。

 思うに高屋敷氏は、優等生的キャラより、どこか未熟だったり、酷い所があるキャラを好む傾向があるのかもしれない。これは、善悪のラインを明確にしないという同氏のポリシーとも関係がありそうだ。

 優等生といえば、1980年版鉄腕アトム(高屋敷氏脚本参加)のアトムは優等生だが、高屋敷氏は、義憤や直情がアトムの欠点となってしまうことを繰り返し強調しており、そちらはそちらで興味深い。

 火の鳥鳳凰編(高屋敷氏と金春氏の共同脚本)でも、二人の主人公・茜丸と我王の業の深さと、色々な側面が描かれている。突き詰めていけば、「人間の複雑さ」を訴えていくことも、高屋敷氏のライフワークの一つと言える。

 このことは、高屋敷氏が「キャラの掘り下げ」を得意としていることと無関係ではないだろう。今回はシンプルなバカ話ではあるが、優等生どころか少しクズっぷりが見え隠れするキャラ描写を見るに、人間の多様さを同氏が重視していることがわかるので、その点から見ると面白い。