コボちゃん53B話脚本:繊細な女性心理
アニメ『コボちゃん』は、植田まさし氏の4コマ漫画をアニメ化した作品で、幼児のコボを中心にしたファミリーコメディ。
監督:森田浩光氏、シリーズ構成:城山昇氏。
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本記事を含む、当ブログの、コボちゃんに関する記事一覧:
https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B3%E3%83%9C%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93
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- 今回の話:
サブタイトル:「大見栄きったハワイ旅行」
コンテ/演出:笠山葉一氏、脚本:高屋敷英夫氏。
アキラ(コボの友達)は、家族でハワイ旅行に行くことに。だがその後、早苗(コボの母)は、アキラの母とアキラを(国内で)目撃してしまう。
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アキラ(コボの友達)は、家族旅行でハワイに行くことに。見送りのコボらは羨ましがる。ハワイといえば、高屋敷氏は、あしたのジョー2にてハワイが舞台の回の脚本を数本書いており、ハワイには思い入れがありそうだ。
翌日、早苗(コボの母)は、日本にいるはずのないアキラの母と、偶然鉢合わせる。帰宅後、それを早苗が話すと、皆から他人の空似ではと言われる。
F-エフ-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、飲み物に顔を映す表現は結構出る。
するとアキラからコボに電話がかかり、コボはアキラを羨ましがる。そこで耕二(コボの父)は、都心のホテルにある、ワイキキというレストランでステーキを食べようと提案。コボは大喜びする。
ガンバの冒険・あんみつ姫(脚本)など、食いしん坊描写は多い。
当日、ホテルで耕二を待っている間に、早苗はアキラと、アキラの母を目撃し、二人がパスポートを失くしてハワイに行けなかった事を知る。一方コボは、変装のカツラがずれたアキラを見て声をかけるが、アキラは他人のふりをして逃げる。ここは話の流れやテンポがいい。
アキラの母は、どうせ、いい気味だと思ってるんでしょ、皆に言いふらすんでしょ、と早苗に対して言い、嘆く。
そこで早苗は、人違いだと言って、他人のふりをして離れる。
あんみつ姫・おにいさまへ…(脚本)など、高屋敷氏は、女同士の繊細な描写に長ける。
そして耕二と合流したコボ達がレストランに入ると、アキラとアキラの母がおり、早苗は、急にお好み焼きが食べたくなったと言って、耕二・コボを急かしてレストランを出る。ここも、おにいさまへ…・ストロベリーパニック(脚本)に見られるような、繊細な女心が描写されている。
狐につままれた感じの耕二とコボをよそに、早苗は、お好み焼きを美味しそうに食べる。飯テロは実に多い。じゃりン子チエ・怪物王女(脚本)と比較。
後日、アキラはハワイ土産をコボらに渡し、意中の人であるハナコには貝殻のネックレスをあげる。
ハワイ土産といえば、あしたのジョー2(脚本)でハワイ土産を買う場面が印象的。また、宝島(演出)では、愛する人に珊瑚の指輪を渡す場面があり、それとも少し重なる。
一方アキラの母は、ハワイ土産だと言って早苗にステーキ肉を渡し、ハワイで、早苗に似た人がいて、その人はとてもいい人だった、と暗に早苗に感謝する。
ここも、ストロベリーパニック・おにいさまへ…(脚本)同様、女同士のデリケートなやりとりが描けている。
そして、コボの家の食卓にはステーキが並び、コボらは舌鼓を打つ。ここも頻出の飯テロ。カイジ2期(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)と比較。
その後、パスポートが見つかり、アキラの母とアキラは、本当にハワイに行けることに。早苗は、今度はパスポートなくさないようにね、と思いながら、彼女らを見送る。
巻き込まれやすくも優しい早苗の心根は、おにいさまへ…(脚本)の奈々子(主人公)を彷彿とさせる。
- まとめ
年代的に、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)に近いためか、繊細な女心を的確に捉えた描写が印象深い。先に述べたように、早苗のお人好しぶりは、おにいさまへ…の主人公・奈々子に通じるものがあり、比較すると面白い。
あと、とにかく食べ物が話に絡んでくるのが、実に「食」に拘る高屋敷氏らしい。ここまで拘りが徹底していると、清々しいものがある。
また、早苗と、アキラの母というキャラをよく掘り下げている。キャラの掘り下げは、高屋敷氏の十八番であり、こちらも、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)で見事な手腕が見られる。
グラゼニ(高屋敷氏シリーズ構成・全話脚本)でも、キャラを掘り下げる技術は徹底しており、その完成度は凄まじいものがある。高屋敷氏の手にかかれば、どんなキャラも深みが増す構成になっており驚かされる。
カイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、高屋敷氏の、キャラを掘り下げる技術は発揮されている。カイジは勿論のこと、後半の敵役である一条についての掘り下げが丁寧なのが、わかりやすい例だろう。
細やかな女性心理を捉える技術について、再び目を向けてみると、たまに高屋敷氏は、女性作家のような視点を見せることがあり驚かされる。口紅を塗ったり、鏡で身だしなみを整えたり、なかなかリアリティーがあり興味深い。
例えば、こういった場面だ。
画像上段はルパン三世2nd(高屋敷氏演出/コンテ)、下段はベルサイユのばら(同氏コンテ)。
かなり古くから見られる特徴なので、高屋敷氏の女性描写の優秀さは、(元夫人で脚本家の)金春氏の影響だけでないと考えられる。
何故、高屋敷氏が女性の細やかさ・繊細さを描くのに秀でるのかは謎であるが、鋭い観察眼の持ち主なのかもしれない。女性だけでなく、中高年、少年、男性、子供の描写も非常に丁寧だ。
これは、高屋敷氏のポリシーが「人間の色々な側面を描く」ことであるのと関係があるのかもしれない。あらためて同氏の観察力・洞察力・構成力の高さに唸らされた。