カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

コボちゃん57A話脚本:キャラが深まる一瞬

アニメ『コボちゃん』は、植田まさし氏の4コマ漫画をアニメ化した作品で、幼児のコボを中心にしたファミリーコメディ。
監督:森田浩光氏、シリーズ構成:城山昇氏。

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本記事を含む、当ブログの、コボちゃんに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%B3%E3%83%9C%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93

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  • 今回の話:

サブタイトル:「再び受験生上京す」
コンテ:わだへいさく氏、演出:小林孝志氏、脚本:高屋敷英夫氏。

香川に住むコボの親戚・末男が、再度東京の大学を受験するため、コボの家に泊まりに来る。

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香川に住むコボの親戚・末男が、受験のため再度コボ宅に泊まりに来る。末男の1回目の受験時(進学意欲がなかったため受験をサボったが、東京に魅了され再受験を誓った)の話は高屋敷氏脚本(15A話)であり、うまく整合性が取れている。

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末男は、合格したらコボの家に下宿したいと語る。コボは、竹男(コボ家に同居中の、コボの親戚)はもうすぐ結婚するから1部屋空くと言い、竹男は照れる。原作では竹男は実際結婚する。高屋敷氏は、めぞん一刻あしたのジョー2(脚本)ほか、結婚ネタに縁がある。

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末男の1校目の受験日当日。末男は遅くに帰ってくる。昨年のこと(受験せず観光していた)があるので、岩夫(コボの祖父)らは訝しむ。ここも、15A話(脚本)と整合性があり、きっちりしている。

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岩夫とコボは、末男の2校目の受験日に、末男を尾行。末男は試験会場から出ると歌舞伎町へ。岩夫が(昨年の受験時のこともあり)末男を問い詰めると、末男は、自信がないから神社めぐりをしていると答える。ここも15A話(脚本)から発展しているのが面白い。

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そして末男の3校目の受験日当日。末男が唯一自信のある大学なのであるが、彼は途中で、ひったくりにカバンを奪われる。
末男は必死に犯人を追うが見失う。太陽の「間」があるが、こういった表現は宝島(演出)、F-エフ-(脚本)ほか数々の作品に見られる。

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末男は急いでタクシーで試験会場に向かうが、渋滞に巻き込まれ、タクシーを降りて走る。だが、結局試験に間に合わず。木葉が風に舞うが、グラゼニおにいさまへ…(脚本)ほか、こういった表現は結構見られる。

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夜、東京の悪口を言いながら末男はヤケ食いする。飯テロは実に多い。じゃりン子チエおにいさまへ…グラゼニストロベリーパニック(脚本)と比較。

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末男の嘆き節は止まらないが、おかわりを貰うと一瞬目を輝かせる。食いしん坊描写は頻出。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、ガンバの冒険・RAINBOW-二舎六房の七人-・あんみつ姫(脚本)と比較。

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一通り、ご飯を食べ終えると、末男は北国を旅すると言い出し、旅費は京都・奈良観光用の金があるから、それを使うと言う。あしたのジョー2(脚本)では、幼少時代の丈が北国を旅した時の回想場面(アニメオリジナル)があり、それのセルフパロディ的。

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荷物をまとめながら、末男はコボに、東京で生きていて凄い、とポツリと言う。背中で語る表現は、しばしば見られる。グラゼニワンナウツストロベリーパニック(脚本)と比較。

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後日、警官がコボの家に、以前末男が盗まれた荷物を届けに来る。中身は、御守りや絵馬の山。すると丁度、末男から電話がかかり、もう香川に帰ったと言う。
ここは伏線が回収され(荷物の中身)、話のテンポがいい。

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末男は岩手の盛岡に行ったものの、寒さに耐えかねてすぐ帰ったと、岩夫に電話で話す。岩夫らは呆れるのだった(ちなみに末男は上京前に地元の私大に合格しており、すっかり立ち直っている)。
岩手は高屋敷氏の故郷で、同氏の地元愛が感じられる。

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  • まとめ

 とにかく、末男の上京1回目のエピソードである15A話(高屋敷氏脚本)と整合性が取れているのが面白い。高屋敷氏は、自身の仕事の一つ一つをキッチリ覚えているタイプの作家なのではないかと推察できる。

 以前書いた、コボちゃん15A話(高屋敷氏脚本)についてのブログ記事はこちら↓

https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2021/12/26/135040

 あと、15A話(高屋敷氏脚本)と併せて、末男というキャラをよく掘り下げている。
キャラの掘り下げは高屋敷氏の十八番で、流石の手腕と言える。

 なんとも図々しくて、ちゃっかりしていて、それでいて悪びれず、明るくて子供の相手が上手い、という末男のキャラが、うまくまとめられているのが凄い。
割と“クズ要素”多めの末男だが、どこか憎めない作りなのも絶妙。

 “クズ描写”に関しては、15A話(高屋敷氏脚本)でもそうだったが、カイジ1期(同氏シリーズ構成・脚本)の1話のカイジの“クズ描写”と同じく、高屋敷氏は(何故か)それが上手い。カイジの場合は、落とす所まで落として、シリーズを通して上げて行くのが非常に巧み。

 今回においても、“上げる”わけではないのだが、末男がコボにポツリと弱音を吐く場面が、彼がただの“クズ”ではないのを、一瞬にして描写しており驚異的。短時間でも、シリーズを通した長丁場でも、高屋敷氏はキャラを掘り下げることができる。

 あと、高屋敷氏は故郷の盛岡の高校で野球部の監督を5年務めるなど( https://togetter.com/li/1816701 )、地元愛が強い。今回、まんま盛岡が出てくるのは、そのあたりを知っておくと、より面白い。

 また、末男の抱く、東京に対する愛憎は、高屋敷氏自身の感情も乗っているのではないだろうか。同氏の御友人のブログには、同氏が、東京に疲れベトナム移住を考えたことがあると書かれている( http://blog.livedoor.jp/yomei713/archives/51020566.html )。

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 その一方で、高屋敷氏の故郷である盛岡を「寒い」と酷評する末男を通じて、北国の厳しさ・寒さも主張しており、そのあたりも興味深い。同氏が故郷にも東京にも、それなりの愛憎を抱えているのが見て取れる。

 2020年に、高屋敷氏は盛岡にある第一学院高等学校で特別授業を行っており( https://www.daiichigakuin.ed.jp/campus/morioka/blog/51586/ )、同氏の地元愛は今もなお強いようだ。これは少なからず同氏の作風に関係があるので、やはり知っておくと面白い。

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