コボちゃん28A話脚本:伝える力
アニメ『コボちゃん』は、植田まさし氏の4コマ漫画をアニメ化した作品で、幼児のコボを中心にしたファミリーコメディ。
監督:森田浩光氏、シリーズ構成:城山昇氏。
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- 今回の話:
サブタイトル:「恐怖の歯医者攻防戦」
コンテ:野間吐晶氏、演出:志村錠児氏、脚本:高屋敷英夫氏。
虫歯になってしまったコボだが、怖がってなかなか歯医者に行けない。
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岩夫(コボの祖父)は、ピアスを開けた、という女性達の会話を耳にする。ピアスのアップがあるが、あしたのジョー2・F-エフ-・グラゼニ(脚本)ほか、物による「間」は多い。
岩夫は、体に穴を開けるピアスが好きではないと話し、虫歯で歯に穴があいているコボは落ち込む。そして幼稚園にて、コボは歯医者に行くよう先生に言われるが、友人達に歯医者は怖いと脅かされる。ここは話のテンポがよく、高屋敷氏の技術が光る。
コボは歯医者に行きたくないと駄々をこね、体に穴を開けるのはよくないと岩夫が言っていたと屁理屈をこねる。
屁理屈が発展した形の頓知や知略を使うキャラは、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)やカイジ2期(脚本)ほか、数々の作品で目立つ。
そこで、同じく虫歯持ちの竹男(コボ一家と同居中の、コボの親戚)が、コボと一緒に歯医者に行くが、治療される竹男を見てコボは逃亡。竹男はミネ(コボの祖母)らに平謝りする。グラゼニ・カイジ2期(脚本)ほか、土下座場面は印象に残る。
早苗(コボの母)は、デパートに行くと言ってコボを歯医者に連れていく計画を立てるが、立ち寄った銀行で、ペンを持つ早苗を見て歯医者を想像したコボは逃亡。失敗したが、なかなか賢い作戦。まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、ワンナウツ(脚本)ほか、知略キャラは強調される。
めげない早苗は、今度は、服を作るから寸法を測ると言ってコボを捕まえるが、コボは木にしがみついて抵抗。これも失敗ではあるが賢い。元祖天才バカボン(演出/コンテ)、カイジ2期(脚本)など、色々な作品で、知略の重要性が描かれている。
頑なに歯医者に行くのを拒むコボだが、歯磨き中に、歯に激痛が走りコップを落とす。ショックなどでカップやコップを落とす描写は、おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)ほか結構ある。
翌朝、歯痛でコボは幼稚園を休む。すると、友人達が見舞いに来る。友達や家族、仲間が集まってくれる温かさは、ど根性ガエル(演出)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、強く前面に出される。
シゲル(コボの親友)は、虫歯が悪化して歯を失ったりしたら、女の子にモテないとコボを諭し、コボは、自分がハナコ(コボの憧れの女の子)に嫌われるのを想像。異性の為に奮起するのは、ガンバの冒険(脚本)や、ど根性ガエル(演出)など時折見られる。
早苗は、コボの友人達にケーキとジュースを出す(歯痛のコボにはなし)。飯テロは実に多く、おいしそうなケーキの描写も数多い。アンパンマン・おにいさまへ…(脚本)と比較。
コボの友人達は、コボを励まして帰る。色々言われて、最悪の結果を想像したコボは、ついに歯医者に行くことにする。
友達の有り難みは、RAINBOW-二舎六房の七人-・あんみつ姫(脚本)ほか、様々な作品で強く表現されている。
待合室で、怖がっていたらハナコに軽蔑される、としてコボは「ボクも男だ」と覚悟を決める。子供や少年が「男」として決意を固める描写は、家なき子(演出)、DAYS(脚本)など、印象深いものが多い。
治療に挑むコボだったが、絶叫。その衝撃で花瓶やゴミ箱などが倒れる。
衝撃で「物」が倒れたり割れたりする表現は、おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)ほか多用される。
後日コボは、歯医者での体験を大げさに語り、クラスメイト達は虫歯を怖がる。
めぞん一刻・F-エフ-(脚本)ほか、高屋敷氏は、モブやサブキャラを目立たせる特徴がある。
今度は早苗が虫歯になったと聞いたコボは、早苗を歯医者に連れていこうと張り切るのだった。ドタバタオチは、オヨネコぶーにゃん・新ど根性ガエル(脚本)ほか、比較的尺の短い作品でしばしば見られる。
- まとめ
シンプルではあるが、知略の攻防が見られる。これがアカギ・カイジ・ワンナウツ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)といった、凝った知略や心理的駆け引きが展開される作品に繋がって行くと思うと面白い。
また、友達の有り難さが伝わってくるコンセプトも、色々な作品で友情や仲間愛、人間愛を強く訴える高屋敷氏らしさが出ている。なにしろ、1970年代の、ど根性ガエル(高屋敷氏演出参加)から出ている要素で、歴史は長い。
あと、歯医者に行くということを通じて、コボが少し成長するというのも、家なき子・宝島(高屋敷氏演出陣)、F-エフ-(同氏シリーズ構成・全話脚本)といった、少年や青年が「男」になる成長譚を表現するのが上手い、高屋敷氏の特徴が見られる。
本作は30分2話構成で尺が短く、オムニバス方式で、時空もループする日常ホームコメディ。その中でキャラの「成長」を描くのはかなり難易度が高いと思われるが、それでも高屋敷氏は、それに挑んでおり、熱意が感じられる。
知略攻防戦にせよ、友情にせよ、キャラの成長にせよ、今回入っている要素は、カイジやF-エフ-といった、高屋敷氏のシリーズ構成担当作では存分に、濃密に描かれている。今回は、そういった作品のコンパクト版としても楽しめる。
高屋敷氏が、その技術と才を存分に発揮できる場は、長丁場のシリーズ構成(およびその脚本)だが、本作のような尺の短い作品でも、キッチリまとめる技術が凄い。よく考えたら、同氏のキャリア初期である、ど根性ガエルも30分2話構成なので、手慣れているのかもしれない。
それにしても、短い尺にせよ、長丁場のシリーズにせよ、自身が伝えたいこと、訴えたいことを、順序立ててギュッと詰め込める高屋敷氏の技術には、相変わらず驚かされる。それだけ何かを“伝えたい”という意志が同氏にあるのだと思われ、興味が尽きない。