カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

新ど根性ガエル10A話脚本:書き手による救済

『新・ど根性ガエル』は、吉沢やすみ氏の漫画をアニメ化した作品(アニメ第1作がある)。シャツの中で生きるカエル・ピョン吉と、シャツの持ち主・ひろしを軸にしたギャグ話。
今回の演出/コンテは伊藤幸松氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、(本記事を含む)新ど根性ガエルに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E6%96%B0%E3%81%A9%E6%A0%B9%E6%80%A7%E3%82%AC%E3%82%A8%E3%83%AB

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  • 今回の話:

ガキ大将のゴリライモと、その腰巾着のモグラは、スネーク団という団を結成しているが、一向に団員は増えず、ゴリライモはやさぐれてしまう。そんな彼に、ひろし達は反発する。

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朝のバンク(使い回し)シーン後、町のガキ大将・ゴリライモと、その腰巾着であるモグラは、二人で結成したスネーク団の団結を誓い、朝日を浴びる。
まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)ほか、開幕太陽は頻出。

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ゴリライモとモグラは、スネーク団の活動として、校内の掃除をし、花を生ける。
おにいさまへ…あしたのジョー2(脚本)、空手バカ一代(演出)、ストロベリーパニック(脚本)など、花を活用した表現は結構出る。

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さらに放課後になると、ゴリライモとモグラは、スネーク団の団員を募集すべく演説する。規模が違うが、おにいさまへ…ストロベリーパニック(脚本)でも、学校を統べる団体が出てくるので、比較すると面白い。腰巾着がいるのも同じ。

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ゴリライモとモグラはパーティーの準備をして待つも、スネーク団入団希望者はゼロ。おまけに、ひろしにそれをバカにされる。パーティーが台無しになるのは、おにいさまへ…(脚本)のアニメオリジナル回にもある。

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すっかりやさぐれたゴリライモは、もとの暴力的なキャラに戻る。それに反発したひろし達は、校内放送でゴリライモを批判する。1作目ど根性ガエル(演出)でも、ひろし達は校内放送でゴリライモ批判を繰り広げている。

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怒ったゴリライモは、ひろし達を追いかけ、屋上に追い詰める。行き止まりに追い詰めるシチュエーションは、しばしばある。アンパンマン忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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ピョン吉(ひろしのシャツに貼りついているカエル)は、ゴリライモの弱点の出べそに噛みつくが、ゴリライモはあらかじめ対策していたので効かず。1作目ど根性ガエル(演出)でも、同じ展開がある。

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ひろしに飛びかかるゴリライモだったが、勢い余ってフェンスを飛び越えて落ちそうになり、ピョン吉につかまって耐える。高所から落ちそうになるのは、1作目ど根性ガエル(演出)やルパン三世3期(脚本)など、ちょくちょく見られる。

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ピョン吉は何とか根性でゴリライモを跳ね上げて救出する。忍者戦士飛影(脚本)でも、崖から落ちそうになった敵(後に仲間になる)を主人公が助ける展開がある。

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頑張ったピョン吉を、ひろしは称える。仲良しぶりが微笑ましい場面は、F-エフ-(脚本)、1作目ど根性ガエル(演出)、ガンバの冒険(脚本)などなど多い。

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九死に一生を得たゴリライモは泣き出すが、スネーク団再始動を決意。ひろし達は、ゴリライモの執念に感心するのだった。
1作目ど根性ガエル(演出)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、宝島(演出)ほか、キャラがガン泣きする場面は多々ある。

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  • まとめ

スネーク団が、おにいさまへ…ストロベリーパニック(脚本)に出てくる、学校を支配する団体と似た感じの活動(花を飾ったり)をしているのが面白い。もしかしたら今回の要素を、高屋敷氏がおにいさまへ…ストロベリーパニックに活かしたかもしれない。

また、校内放送でゴリライモを批判したり、ゴリライモが出べそを防御したりするのは、1作目ど根性ガエル19B話(演出)と同じ。この回は話も演出も傑作であり、高屋敷氏自身、かなり気に入っているようで、色々な担当作にオマージュが見られる。

ただ、1作目ど根性ガエル19B話(演出)は、先に酷いことをしたのがゴリライモとはいえ、ひろしの(頭を使った)復讐でゴリライモが非常に悲惨な目にあい、高所から落ちる。今回の場合、ピョン吉に助けられてゴリライモは落ちずに助かる。ここが、高屋敷氏の優しさなのかもしれない。

カイジ2期最終回(脚本)では、敗北した一条に、カイジが活を入れる場面を強調している。今回にしろカイジ2期最終回にしろ、主人公側の勝利で得られるカタルシスを大事にしつつ、敵や敗者にも目を向ける温かさが、高屋敷氏の担当作には時折見られる。

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こういった要素は、人間の色々な側面を描きたいという高屋敷氏の強い意志(演出参加した宝島の、ロマンアルバム記載のコメントより)から来るものなのかもしれない。
そもそも高屋敷氏は、善悪のラインを明確に引かない。

1作目ど根性ガエル19B話(演出)は復讐劇として痛快ではあるが、高屋敷氏の中に「やりすぎた」という思いがあったのではないだろうか。今回は脚本なので、どういう話にするかの主導権は、工程的に有利。それを活かしゴリライモを救済したのかもしれない。

この「キャラの救済」、結構な割合で高屋敷氏の担当作に出てくる。中には原作を大きく変えてまで救済しているキャラもいる。特にF-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)では、それが非常に目立つ。

そういった「優しさ」「温かさ」は、高屋敷氏の持ち味でもあり、私が好きな所でもある。これは、場合によっては監督など周囲のスタッフの作風に大きく逆らう事もある要素だが、それでも上手く融合し、良いエッセンスになっている。

また、高屋敷氏がよく提示するテーマの一つに、「孤独は万病のもと」というものがある。
(多少強引だが)割と良いことをしていたのに理解されず、ゴリライモとモグラが孤立してしまい、暴君に戻ってしまうのは考えさせられる。

そんなゴリライモは、皮肉にも敵対するピョン吉に助けられ九死に一生を得たことで号泣し、再起を誓う。敵対はしたが、ひろし達はゴリライモを「かまった」存在であり、結果的に彼を孤独から救う。つまり、ゴリライモは身も心も「救済」されたことになる。

結果的にゴリライモを助けたのはピョン吉だが、そのバックグラウンドにいる「話の書き手」の温かさも感じられる。高屋敷氏の、キャラを「救済」していく作風が顔を出していてるのが面白い回だった。