カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

新ど根性ガエル6A話脚本:話の分解と組成

『新・ど根性ガエル』は、吉沢やすみ氏の漫画をアニメ化した作品(アニメ第1作がある)。シャツの中で生きるカエル・ピョン吉と、シャツの持ち主・ひろしを軸にしたギャグ話。
今回の演出/コンテは亀井典氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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当ブログの、(本記事を含む)新ど根性ガエルに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E6%96%B0%E3%81%A9%E6%A0%B9%E6%80%A7%E3%82%AC%E3%82%A8%E3%83%AB

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  • 今回の話:

些細なことで、ひろしは京子(ひろしのガールフレンド)やピョン吉(ひろしのシャツの中で生きているカエル)とケンカするが、京子のピンチに駆けつける。

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ある朝、晴天なのに傘を持って登校するひろしを見て、梅さん(寿司職人)は不思議がる。
アンパンマングラゼニ(脚本)など、晴天に風情を持たせる描写は多々ある。

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今日も今日とて遅刻したひろしに怒り心頭の南先生(数学/体育教師)は、ひろしを出席簿で叩こうとするが、ひろしは傘で上手くガードする。咄嗟でも知恵を上手く使う者は、アンパンマン(脚本)の、ばいきんまん等多い。

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ひろしは、ピョン吉(ひろしのシャツの中で生きているカエル)が雨を予知したので、傘を持ってきたのだった。
予知通り雨が降り、ひろしは早速、ガールフレンドの京子と相合い傘しようとするが、そこへ同級生のケイコが声をかけ、京子はむくれる。雨の中の恋模様は、めぞん一刻あしたのジョー2(脚本)など印象深い。

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結局、意地を張った京子をよそに、ひろしはケイコと相合い傘して帰る。見かねた五郎は自分の傘を京子に差し出すが、京子はそれを無意識に折る。女の嫉妬に周囲が巻き込まれるのは、めぞん一刻(脚本)的。

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京子は雨の中濡れて帰ろうとするが、ゴリライモ(ガキ大将)が、自分の上着を彼女にかける。あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)、空手バカ一代(演出)ほか、雨の中のドラマは、よく出てくる。

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後日、京子はひろしにツンツンする。そこへケイコが表れ、ひろしを家に招く。
このあたりの修羅場感も、めぞん一刻(脚本)ぽい。初代ど根性ガエル(高屋敷氏演出参加)も修羅場があり、めぞん一刻の脚本・最終シリーズ構成で、その経験を大いに活かしているのかもしれない。

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結局ここでも、ひろしはケイコの誘いに乗る。ピョン吉はそれを咎め、ひろしとケンカする。仲がいいからこそのケンカは、初代ど根性ガエル(演出)、F-エフ-(脚本)ほか、様々な作品で強調が見られる。高屋敷氏は、ケンカを友情の一要素と捉える傾向がある。

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京子は、神社の境内でたそがれる。そこにゴリライモとモグラ(ゴリライモの腰巾着)が現れる。
落ち込んでいる所に友達や仲間が寄り添うのは、初代ど根性ガエル(演出)やF-エフ-(脚本)ほか、数々の作品で見られる。

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ゴリライモは、蛇がプリントされたシャツを京子にプレゼントし、自分が結成したスネーク団に誘う。ゴリライモの夢想が入るが、花咲く草原で遊ぶのは、ガイキング(演出)と重なる(ガイキングの場合は現実)。

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一方ひろしは、ケイコと、彼女の母がピョン吉の雨予知を頼ろうとしただけだった事を知り、いじける。
川や池に石を投げるのは、おにいさまへ…(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)など、しばしば見られる。

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そこへ五郎が来て、ゴリライモが(蛇シャツを着せようと)京子に無理強いしていると、ひろしに報告する。早速ひろしはゴリライモに突進するが、彼に足をかけられ転ぶ。ここも咄嗟の知恵。アンパンマン・トンデケマン(脚本)ほかでも、咄嗟の知恵が目立つ。

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五郎は、事の次第をピョン吉に知らせる。最初は知らぬふりをしていたピョン吉だったが、結局ひろしに加勢する。
キャラの仲間思いな面は、RAINBOW-二舎六房の七人-・カイジ2期(脚本)などでも強調が見られる。

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大乱闘の末、ひろし達はゴリライモ達に勝利し、ひろしとピョン吉は笑い合う。
無邪気な友情は、ガンバの冒険(脚本)はじめ、印象深く表現されることが多い。

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一方敗北したゴリライモ達は山にこもり、ピョン吉のようにシャツに蛇を貼り付けようとするのだった。友達同士で、山で試練を積もうとするのは、家なき子(演出)やチエちゃん奮戦記にもあり、重なるものがある。

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  • まとめ

本作はバンク(使い回し)場面が多く、実質的な尺は10分以下。
それを感じさせず、色々な筋がスッキリ整頓されているのが流石。高屋敷氏は、キッチリ計算された構成が持ち味。

サブタイトルは『ゴリライモはねらっていた』なのであるが、京子が意地を張って、ひろしと喧嘩し一人になったのを見計らって、ゴリライモが京子をスネーク団に誘うのは、中々凝っている。高屋敷氏は、とにかく知恵を働かせる展開を好む。

アンパンマン(脚本)では、敵役のばいきんまんが悪知恵を使いアンパンマンを追い詰める展開が多い。
今回も、悪知恵を使うゴリライモが、ひろし達に最終的に敗北。ピョン吉がゴリライモの弱点(出べそ)を突いたのが勝因の一つであり、主人公側も知恵を使っている。

このように、高屋敷氏の脚本は、話の筋もさることながら、戦闘においても「なんで負けるか・なんで勝つか」の論理がキッチリしていることが多い。このことは、理詰めの勝負が肝なカイジのシリーズ構成・脚本にも生きている。

一方で、熱い場面や、理屈では片付けられない友情も、高屋敷氏はクローズアップする。これは、比較的初期の脚本作であるガンバの冒険でも見られる要素。つまるところ“理屈なしの男の子の友情”を描くことに長ける。

熱血の代名詞的なところがある、あしたのジョー(1は無記名脚本、2は最終回含む脚本参加)でも、友情を超えた友情が描かれているが、一方で、話はキッチリとした筋立てになっている。熱くなりすぎて話がそっちのけという事態にはなっていない。

思うに、描きたいもの(友情や人情、知恵)が前提にあっても、それを表現するための「作戦」を立てるのが、高屋敷氏は非常に上手いのではないだろうか。これがシリーズ構成作ともなると、非常に複雑で長期間に渡る「大作戦」になる。

結果、シリーズ構成作だと、非常に巧妙に「作品全体としての盛り上げ所」や「テーマの出し所」「クライマックス」「エピローグ」などのポイントが設置されている。これには毎回、感嘆させられる。

高屋敷氏は、シリーズの最小単位を3話と捉えている節がある。ならばエピソードの最小単位は、今回のような10分前後の尺なのではないだろうか。さらにその中に4つくらいのプロットを組み込むのだから凄い。

グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)では、30分2話構成と、30分1話構成を上手く組み合わせて、3、6、12…など、3の倍数の話に盛り上げ所を持ってきている。これも、話の最小単位を熟知しているからできる技とも言える。

グラゼニのシリーズ構成で見せた妙技は、今回のような、非常に短い尺での作劇経験の積み重ねの賜物なのがわかる。あらためて、高屋敷氏の「計算」の見事さが実感できた。

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ところで、本作の1B~4話は脚本が無記名ですが、私の予想通り、高屋敷氏の脚本らしいです。コンテで判明したらしいのですが、確かな情報ソースを掴めなかったので、今の所、この分の特集はスキップします。この場で、詳しい情報を募集します。何か知っている方は教えてください。