カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

DAYS3話脚本:鋭い観察眼

アニメ『DAYS』は、安田剛士氏の漫画をアニメ化した作品。高校からサッカーを始めた柄本つくしを中心としたサッカー物語。監督・シリーズ構成は宇田鋼之介氏。

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本記事を含む、当ブログのDAYSに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23DAYS

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  • 今回の話:

サブタイトル:「お前とサッカーするのはめちゃくちゃ楽しいぜバカ野郎」

コンテ:二瓶勇一氏、演出:えんどうてつや氏、脚本:高屋敷英夫氏。

つくしが属する聖蹟高校サッカー部は、他校のサッカー部と合同の合宿に参加する。

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つくしが属する聖蹟高校サッカー部は、他校のサッカー部との合同合宿に参加。初日の夕飯はカツカレー。原作通りだが、飯テロは実に多い。コボちゃんグラゼニ花田少年史(脚本)と比較。

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つくしは、皆で食べるカツカレーは美味しいと感動。原作では吐くが、アニメではカット。食にこだわる高屋敷氏の意志を感じる。また、美味しそうな描写は数多。RIDEBACKグラゼニカイジ2期・MASTERキートン(脚本)と比較。

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他校の生徒が、風間(サッカーの天才で、つくしの親友)の悪口を言っているのを耳にした、つくしは立ち上がるが、風間に手を掴まれ制止される。手から手への感情伝達の強調は、色々な作品で目立つ。ルパン三世3期・怪物王女おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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風間は、やかんの湯を、悪口を言っていた他校の生徒にかける。そして乱闘寸前になるが、中澤(聖蹟サッカー部監督)に止められる。原作通りだが、高屋敷氏は液体ぶっかけに縁がある。F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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その後、つくしは大浴場に入る。そこには丁度、来須(聖蹟サッカー部一年)もいた。
洗面器の「間」がアニメオリジナルで入るが、状況と連動する「物」の「間」は結構出る。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-・めぞん一刻カイジ・F-エフ-(脚本)と比較。

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また、浴場の絵の「間」がアニメオリジナルで挿入される。こういった、絵の表現はしばしば見られる。カイジ2期(脚本)、エースをねらえ!(演出)、グラゼニ(脚本)と比較。

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来須は、風間は常人とは持ってるものやセンスが違うし、努力や練習ではそれは得られないと、つくしに話す。原作通りだが、アニメは描写が濃厚な感じがある。グラゼニ(脚本)では、原作改変でシャワー室での友情場面があり、裸の付き合いは強調が見られる。

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つくしが合宿部屋に帰ると、相部屋の風間が、中澤にしぼられたと語り、その後女性のおっぱいについて持論を展開。
原作通りだが、高屋敷氏は子供っぽさを老若男女に付与するのが得意。怪物王女(脚本)、宝島(演出)と比較。

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消灯後、風間は、聖蹟サッカー部は一人に依存したり荷を負わせたりしないから良いと話す。ハッとなったつくしは、風間に声をかけるが、風間はいつの間にか入眠。
原作では、つくしは来須らの言葉を回想するが、アニメでは削られ、表情で表現。削り所が上手い。

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深夜、トイレに行きたくなり起きたつくしは、風間がいないことに気付く。風間を探しに行くと、風間は密かにサッカーの練習をしていた。
大切な人と濃厚な時間を過ごすのは、F-エフ-・ストロベリーパニック(脚本)も印象深い。

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つくしは風間に声をかける。努力家なんだねとつくしが言うと、風間は、これはボール遊びで、努力なんてしたことないと返す。ほぼ原作通りだが、言葉とは違う、ボールでの心のやりとりが強調されている。ボールでのコミュニケーションは、おにいさまへ…(脚本)にもある。

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つくしも風間の「ボール遊び」に付き合う。風間は、つくしが楽しそうにボールに触れるのを見て、自分は救われたと内心思う。そして彼は、つくしの上げたボールに合わせ見事なシュートを決める。原作通りだが、シュートでのコミュニケーションは、おにいさまへ…(脚本)と重なる。

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朝、集合時間に遅れたら連帯責任で全員走らされる、と来須らが慌てている頃、つくしと風間は練習場で眠りこけていた。大切な人と朝を迎えるのは、怪物王女ストロベリーパニック(脚本)でも印象的。

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その後、大宮実業高校と聖蹟高校の練習試合が行われる。聖蹟は主力を温存し、ルーキー主体で挑む。緊張したつくしはトイレへ駆け込む。大宮の生徒は、風間憎しで、彼の友達であるつくしとの握手を拒否。つくしはトイレ後手を洗うの忘れたと言い、皆は脱力。
ここは、アニメでトイレに行く場面を追加したのが上手い。

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試合開始後、素人丸出しのつくしは大宮の生徒に笑われる。
だが来須の「固まってんじゃねえぞ」という声(アニメオリジナル)に突き動かされ、つくしは、自分のできること(走りまくる)をしようと決意。ここも、追加が良いアクセントになっている。また、風間や中澤が映るのもアニメオリジナル。

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来須は、無尽蔵に走り泥臭いプレーをするつくしに感化され、自分が憧れていたスマートなプレーを捨て、泥臭く行こうと決意。そして、つくしの上げたボールにヘディングを合わせ、先制点を決める。原作通りだが上手くまとまっている。キャラの掘り下げは高屋敷氏の十八番。

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聖蹟は快勝。なおもつくしを揶揄する大宮の生徒達に向かい来須は、つくしが自慢の仲間だと宣言。つくしは感動。笑顔はアニメオリジナル。アニメオリジナルの笑顔は、要所要所で見られる。おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。

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その後、つくしが「勝ったね」と来須らに声をかけると、彼らは、つくしに一斉にダメ出しをする。集団のバカ可愛さは、ワンナウツ(脚本)でも強調されている。

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その夜つくしは、水樹(聖蹟高校サッカー部キャプテン)にキックのコツを聞く。
理論は苦手だが、怪我明けでボールを触りたい水樹は、つくしの実践練習に付き合うことに。原作通りだが、微笑ましい関係性は様々な作品で目を引く。陽だまりの樹・F-エフ-(脚本)と比較。

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久々にボールを触った水樹は笑顔になる。ここも原作通りだが、先輩の素直で可愛い面を主人公が目にする場面は、ストロベリーパニック(脚本)にもあり、重なるものがある。

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理論ではなく感覚的な水樹の指導を、段々掴んだつくしは、最終的に威力のあるキックのコツを掴む。
グラゼニ(脚本)でも、何かと主人公を気にかける先輩・徳永の存在が強調されている。水樹も徳永も、声が浪川氏なのが面白い。

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つくしは、チームの足を引っ張ったことが申し訳ないし、皆の力になりたいから上手くなりたいと涙を流し、水樹はそれを黙って見守る。
グラゼニ(脚本)の徳永も、後輩思いで優しい一面がアニメオリジナルで強調されている。

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チームの皆に見つかり、二人の練習はお開き。つくしが昔の水樹に似ていると3年の皆に言われた水樹は、それはつくしに失礼だ、自分は無力な時泣くだけだった。努力をするつくしは強くなる…と語る。ここは原作と順序を変え、引きを強くしているのが巧み。

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  • まとめ

 話の圧縮が驚異的。長年、高屋敷氏は密度の濃い脚本を書いてきたが、この年代(2010年代)になると、その技術は熟練されたものになっている。

 風間→来須→水樹と、3人分のキャラの掘り下げを、1話内でやりとげているのも唸らされる。RAINBOW-二舎六房の七人-(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)でも、複数キャラの掘り下げを1話内で完遂している回があり、それを彷彿とさせる。

以前書いた、RAINBOW-二舎六房の七人-の該当回についてのブログ記事↓
https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2019/08/11/140022

 また、先に述べた通り、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)やストロベリーパニック(同氏脚本参加)といった、ある意味閉鎖されたホモソーシャルを描いた作品と、本作が少し重なるのが面白い。

 男同士の友情描写が上手い高屋敷氏が、その技術を女同士の関係に転用したのが、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)やストロベリーパニック(同氏脚本参加)だが、それが巡りめぐって、本作が「男同士の百合」の様相になっているのも興味深い。

 あと、所々にアニメオリジナルを挟んだり、原作の場面順序をアニメで変更したりと、細かいテクニックも巧み。
アニメにするにあたり、原作をなぞるだけではいけないという気概が伝わる。

 話を圧縮するために、大宮実業高校のマネージャーの出番が削られているが、代わりに風間や先輩、中澤の様子をインサートし、キャラを立たせているのも良い。
とにかく高屋敷氏は、どんな時もキャラの掘り下げに余念がない。

 余裕があれば、風間、来須、水樹それぞれのエピソードを複数話にすることもできたかもしれないが、本作は2クール+OVA3話なので、そうもいかない。そんな中、どんなに尺が短くてもキャラを掘り下げられる高屋敷氏が今回の脚本なのは適任と言える。

 高屋敷氏は、どこをピックアップすればキャラが立つのかを見極める技術が凄まじいから、キャラの掘り下げが上手いのかもしれない。たった一瞬でキャラを深めることすら、同氏には可能だ。

 そもそも高屋敷氏は、観察眼が非常に鋭いのではと推察する。キャラの一挙手一投足に目を配り、キャラへの理解と探求を怠らない姿勢が、同氏のキャラの掘り下げの秀逸さに繋がるのかもしれない。