カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

DAYS11話脚本:シリーズの単位

アニメ『DAYS』は、安田剛士氏の漫画をアニメ化した作品。高校からサッカーを始めた柄本つくしを中心としたサッカー物語。監督・シリーズ構成は宇田鋼之介氏。

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本記事を含む、当ブログのDAYSに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23DAYS

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  • 今回の話:

サブタイトル:「この輝くような日々を明日に繋げるために」

コンテ:竹之内和久氏、演出:久藤瞬氏、脚本:高屋敷英夫氏。

インターハイ東京予選決勝、つくし属する聖蹟高校サッカー部は桜木高校サッカー部と対戦。つくしは、スタミナ切れの大柴(聖蹟サッカー部2年)と交代して試合に参戦する。

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全てを出しきった大柴(聖蹟サッカー部2年。FW)は、つくしと交代。大柴の姉や観客は、大柴を称える。大柴の姉の描写はアニメオリジナル。原作にない観戦者の描写は、あしたのジョー2・F-エフ-(脚本)でも巧み。

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緊張するつくしだったが、サッカーパンツが脱げてしまい、聖蹟側は一気に場が和む。笠原(聖蹟サッカー部3年)は微笑む。笠原の描写はアニメオリジナル。主人公を見守る先輩の姿をアニメオリジナルで挟むのは、グラゼニ(脚本)にも見られる。

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生方(聖蹟サッカー部マネージャー。1年)は、誰かつくしのサッカーパンツの紐を結んであげて、と言い、今帰仁(なきじん。聖蹟サッカー部1年。控えGK)がそれを行う。今帰仁は、緊張するつくしを心配する。
ここはアニメオリジナルで、原作の補完が上手い。

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ピッチに入ったつくしは、臼井(聖蹟サッカー部3年DF。副キャプテン)に、中澤(聖蹟サッカー部監督)からの伝令を耳打ちする。それを受け、聖蹟チームは陣を引き、カウンターを狙う。耳打ち場面はアニメオリジナル。試合内容を補完するアニメオリジナルは、グラゼニ(脚本)にもある。

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風間(つくしの親友でFW。サッカーの天才)は、再び犬童(桜木高校サッカー部キャプテン)のマークにつく。アニメオリジナルで、小百合(つくしの幼馴染)の反応が入る。あしたのジョー2(脚本)も、アニメオリジナルの観戦者描写が秀逸。

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風間は、つくしとの見事なコンビネーションを見せる。聖蹟ベンチ外メンバーは沸き立つ。ベンチ外メンバーの反応は、アニメで強調が見られる。やはりここも、あしたのジョー2(脚本)の、アニメオリジナルの観戦者描写と比べると面白い。

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つくしは桜木高校サッカー部GKの近藤と1対1になるが、成神(桜木高校サッカー部FW)にシュートを阻まれる。成神は、つくしが初心者なのを近藤に話し、サッカーは面白い、と顔を輝かせる。近藤は、成神とつくしが似ていると口にする。モノローグを台詞に変更するのは、高屋敷氏の脚本作で多々見られる。

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聖蹟は、桜木の猛攻を受ける。試合の解説として、アニメでは生方のモノローグが入る。戦いをまっすぐ見つめる女性キャラは、あしたのジョー2(脚本)でも目立っている。

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君下(聖蹟サッカー部2年。トップ下)が気を配り、臼井が必死に防戦するも、犬童と成神は超人的なコンビネーションを発揮。成神は勝ち越し弾を決める。近藤の喜ぶ姿はアニメオリジナル。ここも、うまく原作の行間を埋めている。

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成神は、犬童との絆を誇らしく思い、勝ち誇るも、センターサークルにボールを置くからどいてくれ、とつくしに言われる。
聖蹟の選手達は誰一人諦めておらず、臼井は君下を蹴って活を入れる。臼井の台詞は、順序の組み換えや追加がある。ここも原作補完が上手い。

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犬童は、聖蹟の選手達の闘志を受け止め、水樹(聖蹟サッカー部3年。キャプテン)は、(こちらは全力で行くから)死ぬ気で守れ、と桜木側に宣言。
頼もしい先輩の姿は、ストロベリーパニック・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも印象的。

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リスタート前つくしは、子供の頃の、猫との体験を思い出したと風間に話し、風間は、祝勝会で詳しい話を聞かせてくれと言う。ほぼ原作通りだが、親友との微笑ましい関係は、RIDEBACKじゃりン子チエ(脚本)などでも目立つ。

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風間は、たぐいまれなるテクニックとスピードを見せ、つくしは、そんな風間を頼もしく思う。アニメでは、風間の台詞に少し追加がある。ここも、秀逸な原作補完。

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つくしは、笠原ら聖蹟ベンチ外メンバーが、走ってつくしを応援しているのに気付き、仲間や先輩達に思いを馳せる。
はじめの一歩3期(脚本)でも、主人公の一歩が、ライバルや仲間に感謝する場面がある。どちらもほぼ原作通りだが、盛り上げ方が上手い。

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そしてつくしは、いつも側にいる風間の存在を心強く思う。色々もまれ、絆を強くする主人公と、その親友(風間は、もう一人の主人公でもある)の姿は、ストロベリーパニック(脚本)でも強調された。

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生方も興奮し、中澤は「止まるな」と、つくしに向かって叫ぶ。足がもつれそうになりながらも、つくしは踏ん張る。
中澤の反応はアニメオリジナル。高校野球部の監督だった高屋敷氏は、中澤に思い入れがあるようだ(本作の他の高屋敷氏脚本回でも、そう推察できる)。

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つくしと風間はワンツーを決め、その後ボールは水樹へ。ベンチに下がった大柴の描写がアニメオリジナルであるが、ここも、あしたのジョー2・RIDEBACK(脚本)同様、秀逸なアニメオリジナルの観戦者描写。

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犬童は水樹を警戒。守備を水樹に集中させるが、ギリギリまで引き付けた所で、水樹はボールを風間にパス。
犬童の反応がアニメオリジナルで所々追加されており、ここも巧みな原作補完が見られる。

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風間がシュートすると桜木側の誰もが思ったが、風間は土壇場で、つくしにパス。
つくしは、子供の頃仲の良かった野良猫が姿を消したこと、父が事故死したことを思い出す。ほぼ原作通りだが、流れるような話運びや盛り上げ所の配置が見事。

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「日々」を生きるとは、失うものを数えていくことではなく、それ以上に大切なものを増やしていくことだ…と、つくしは思う。その間、周囲の人物が映るのは原作通りだが、ワンナウツグラゼニ(脚本)のアニメオリジナルエピローグと雰囲気が重なる。

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「この輝くような日々を明日に繋げるために」今日ここで勝つんだ、と、つくしはシュートを放つ。
ほぼ原作通りだが、「明日」や「未来」がキーになる締めは、あしたのジョー2(脚本)、宝島(演出)、カイジ2期・RAINBOW-二舎六房の七人)-(脚本)など多く、感慨深い。

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  • まとめ

 本作のタイトルである“DAYS”(日々)の意味が明らかになる重要回。忍者戦士飛影でも、高屋敷氏はタイトル回収回の脚本を担当しており(飛影の名前の由来は大したものではないが)、縁を感じる。

 また、今回も細かいアニメオリジナルを使った原作補完が流石。特に解説や状況説明は、原作の吹き出しをただただなぞるだけではない工夫が見られるし、色々なドラマ性も加味されている。

 その代表的な例が、以前つくしにレギュラーの座を奪われた形の笠原や、後の戦いを、つくしに託した大柴のクローズアップだ。こういった掘り下げは本当に見事で、毎度のことながら脱帽する。

 あと、高屋敷氏が中澤に思い入れがあるようなのは、以前も書いたが、高屋敷氏の野球経験についてのまとめを再度紹介する:

https://togetter.com/li/1816701

 本作における高屋敷氏脚本回は、今回で最後だが、9・10・11(今回)話と3話連続で一つの戦いを書く方式は、あしたのジョー2の最終3話や、はじめの一歩3期11・12・13話(いずれも高屋敷氏脚本)と重なるものがある。

 (何度か書いているが)あしたのジョー2最終3話がベースなのか、高屋敷氏は、シリーズ構成作でも「3話」を「シリーズ」の最小単位として捉えている節がある。本作9話~今回も「3話」で、試合開始~クライマックス(終わりではないが)を上手く組み立てている。

 それもあってか、今回終盤は、まるで最終回のような(最終回ではないが)盛り上がりを見せる。こういった、(今までの積み重ねも考慮に入れた)盛り上げポイントの配置の上手さについても、毎度唸らされる。

 そして、原作通りだが「明日」がキーになっているのも興味深い。「前に進む」「未来」「明日」は、高屋敷氏担当作でキーになっていることが多く、感慨深い。高屋敷氏自身、前面に出したい要素でもあるのだろう。

 本作については、高屋敷氏はシリーズ構成ではないが、任された範囲の原作をただただなぞって仕事を終えるのではなく、どのように原作を取捨選択し、どう補完し、どのテーマを目立たせるかがしっかりしており、高屋敷氏の、たぐいまれなる技術が確認できた。