カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

DAYS10話脚本:媒体への理解

アニメ『DAYS』は、安田剛士氏の漫画をアニメ化した作品。高校からサッカーを始めた柄本つくしを中心としたサッカー物語。監督・シリーズ構成は宇田鋼之介氏。

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本記事を含む、当ブログのDAYSに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23DAYS

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  • 今回の話:

サブタイトル:「この程度の挫折ごときで俺は負けない」

コンテ:竹之内和久氏、演出:うえだしげる氏、脚本:高屋敷英夫氏。

つくし属する聖蹟高校サッカー部は、インターハイ東京予選決勝で強豪・桜木高校サッカー部と対戦。先制点を上げるが…

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つくし属する聖蹟高校サッカー部は、インターハイ東京予選決勝で、水樹(聖蹟サッカー部キャプテン)の見事なゴールで先制。
だが、対する桜木高校サッカー部は、キャプテン・犬童の人間性もあり明るい。ガンバの冒険じゃりン子チエ(脚本)ほか、高屋敷氏は幼いやりとりが得意。

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つくしは、以前犬童と交わした会話を思い出す(アニメオリジナル)。
ちょっとした追加で、どんどんキャラを掘り下げていく技術は、色々な高屋敷氏の担当作に見られる。

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観客席には、大柴(聖蹟サッカー部2年。現時点はFW)の姉が到着。この場面はアニメでの追加で、うまく原作を補完している。
あしたのジョー2(脚本)でも、そもそも原作で描かれなかったキャラを観客席に登場させるなどの補完が見られた。

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風間(つくしの親友。サッカーの天才)は、犬童のマークにつき、挑発的に笑う。笑うのはアニメオリジナル。「原作にない笑顔」は色々な作品にある。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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だが犬童は、あっという間にマークをぶっちぎり、同点ゴールを決める。桜木高校サッカー部のベンチ外メンバーが沸き立つ。アニメでは桜木高校サッカー部の反応が原作より目立っている。ワンナウツあしたのジョー2(脚本)なども、周囲のキャラの反応が強調されている。

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犬童は、爽やかながらも風間を煽り返す。風間は、自分の心を折るために、犬童が、わざと1対1の勝負に持ち込んだのだと察し、負けるものかと奮起する。
つくしの反応が、アニメで追加されている。こういった細かな差し挟みは、高屋敷氏の担当作によく見られる。

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その後も犬童は突き放すように、技術と力で聖蹟メンバーを圧倒。そんな中、風間は自分の複雑な過去を思い出す。風間の回想の中で、ぬいぐるみが映るが、こういった表現は、おにいさまへ…(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)にも出る。

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それでも風間は、つくしの努力と頑張りを間近で見てきたことを思いながら奮闘し、犬童のシュートを顔面で防ぐ。
ここも、つくしの反応が若干アニメは強くなっていて、細かい調整が見られる。

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前半が終了し、先の顔面ブロックで鼻血が止まらない風間は、生方(聖蹟サッカー部一年。マネージャー)からタオルをもらう。
生方と風間のやりとりは、アニメでの追加。ここも、行間を埋めるアニメオリジナルが巧み。

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レギュラー陣の頑張りに感動しつつ、自分の無力さに涙を流すつくしに、大柴は頭突きし、勝つ、それだけだと言う。
頼もしい先輩との交流は、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも丁寧に描かれている。

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ハーフタイム。桜木高校サッカー部の方は、成神(桜木サッカー部エースストライカー)が、犬童がなかなかパスをくれないとつっかかる。ここは原作と場面順序が異なるし、アニメオリジナルの台詞もある。アニメと漫画の違いを理解した改変は、色々な高屋敷氏担当作に見られる。

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犬童はキャプテンシーを発揮し、適格にチームに指示を飛ばす。ここも、ちょこちょこ細かいアニメオリジナルがある。
原作つきアニメは、原作をなぞるだけではないことがわかる。こういった技術は、数々の高屋敷氏担当作で目立つ。

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一方聖蹟高校サッカー部側は、君下(聖蹟サッカー部2年。トップ下)が、風間と大柴の消耗を危惧し、犬猿の仲の大柴に喧嘩をふっかける。ほぼ原作通りだが、君下が、短気でも色々目を配れる人間なのがわかるように組まれているのが上手い。

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つくしは、君下と大柴の喧嘩にハラハラするが、ハーフタイム終了とともに、一年が頑張っているのだから、何としても勝つ、一時休戦だ、と、君下と大柴は宣言。
魅力的な先輩の姿は、おにいさまへ…ストロベリーパニック(脚本)でも印象深い。

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風間は、先輩達を頼もしいと称えつつ、自分は意外と負けず嫌いのようだ、とつくしに言う。ほぼ原作通りだが、先輩キャラだけでなく、親友キャラの魅力を組み立てていくのも上手い。ストロベリーパニック(脚本)にも、それは見られる。

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後半、リスクを承知で、聖蹟は前線が積極的にプレスをかける。
大柴はピッチを駆け回り、聖蹟ベンチ外メンバーや、大柴の姉は驚く。大柴の姉の反応が、原作より目立つ。RIDEBACKあしたのジョー2(脚本)ほか、観戦者のクローズアップが(アニメオリジナル含め)上手い。

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大柴もまた、風間と同じく、つくしの頑張りに感化されており、必死の全力プレーを見せる。
ここも、先輩の魅力の組み上げ方が、ストロベリーパニック(脚本)同様に上手い。

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君下はゴール手前で力尽き、ボールはラインを割る。ボールの「間」があるが、こういった「間」は多い。グラゼニおにいさまへ…(脚本)と比較。

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完全にスタミナ切れの大柴は、つくしと交代。「ムカつく」としながらも、大柴は、つくしに後を託すのだった。
先輩が後輩に思いを託すのは、RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)でも濃厚に描かれている。

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  • まとめ

 前半は風間、後半は大柴の掘り下げを軸にしつつ、色々なキャラの魅力を深めていくのが、やはり流石(キャラの掘り下げは高屋敷氏の十八番)。

 以前も書いたが、やはりストロベリーパニック(高屋敷氏脚本参加)と比べると、共通項があって面白い。どちらも、主人公の親友や先輩の魅力を引き立てていく作りで、その組み上げ方が秀逸。

 この側面について遡れば、おにいさまへ…(高屋敷氏脚本・シリーズ構成陣)や、エースをねらえ!・宝島(同氏演出)が思い浮かぶ(宝島は、親友ポジションが動物だが)。とにかく高屋敷氏は、キャラの色々な側面を描くのに長ける。

 また、「原作をただただなぞるだけでは、いい“アニメ”にならない」といった気概が感じられる。このテクニックは、じゃりン子チエ(高屋敷氏脚本陣)でも絶妙な塩梅で使われている。

 一見原作に忠実に見えて、「アニメ」という媒体に合わせて細かに改変し、オリジナルを入れ、場面順序を組み換えるなどの工夫は、カイジ(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)にも使われている。

 こうしたテクニックやセンスは、もっと評価されるべきではないだろうか。原作つきアニメは、原作をなぞるだけでは、いいアニメにならないのだ。
原作通りに見えたとしても、そこにはアニメを成立させるための並々ならぬ工夫がある。

 こういった工夫は、一朝一夕で出来る芸当ではない。高屋敷氏の場合は、膨大な経験と、持てるセンスで、それが巧みにできている。また同氏は、それが年々研ぎ澄まされて行っているのが凄まじい。

 「アニメ」を成立させるために、「原作」をどう変えるか──それはずっとついてまわることで、作品ごとに異なる。
媒体を理解し、何ができ、何ができないのかを把握するのが大事なのかもしれない。高屋敷氏は、その第一人者と言える。