カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

RIDEBACK6話脚本:もう一つの未来

アニメ『RIDEBACK』は、カサハラテツロー氏の漫画をアニメ化した作品。
元ダンサー・尾形琳を中心に、人型可変ビークルライドバック”を巡る混乱を描く。監督は高橋敦史氏で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏・飯塚健氏。

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本記事を含めた、当ブログのRIDEBACKに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23RIDEBACK

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  • 今回の話:

コンテ:鶴岡耕次郎氏、演出:吉野智美氏、脚本:高屋敷英夫氏。

大まかなコンセプト以外はアニメオリジナル。琳は偶然、ライドバック(人型可変ビークル)での暴走行為に手を染める堅司(琳の弟)を目撃し、後を追う。

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開幕、真夏の青空が映る。季節を感じさせる自然の「間」はよくある。グラゼニ・チエちゃん奮戦記・MASTERキートン(脚本)と比較。

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武蔵野文芸大学のライドバック(人型可変ビークル)部ガレージにて、珠代(ライドバック部3年生)はビールを飲み、ライドバック部顧問の岡倉に、フェーゴ(琳の愛機のライドバック)について尋ねるが無視される。ビールテロは頻出。めぞん一刻番外編・カイジ2期(脚本)と比較。

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一方、テロ事件で大立ち回りした“ライドバック少女”が琳だと確信したとの、佐藤(カメラマン)からの情報に、依田(ジャーナリスト)はいてもたってもいられなくなる。ハンドルを指で叩く描写があるが、手による感情描写はよくある。おにいさまへ…ワンナウツ(脚本)と比較。

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当の琳は、祖母の深雪と一緒に、母の命日ということで墓参りする。ここでも、夏の情緒を感じさせる空の描写がある。チエちゃん奮戦記・カイジ2期・めぞん一刻(脚本)と比較。

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琳の母の墓は、海の見える丘の上にある(アニメオリジナル)。おにいさまへ…(脚本)でも、似たようなロケーションの墓地が出てくる(アニメオリジナル)。

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琳と深雪の会話の中、船が映る。意味深な船の描写は多い(長年高屋敷氏が一緒に仕事した、出崎統氏が好む演出)。RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…・アカギ(脚本)と比較。このうち、おにいさまへ…は監督が出崎統氏。

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深雪は、怪我でバレエを断念した琳を案じており、大学で何か打ち込めるものを琳が始めたのなら、よかったと語る。生きがいあってこそ生きるということなのだという高屋敷氏のポリシーが垣間見える。

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一方、ライドバック暴走族のアジトでは暴走行為の準備が進められ、それに堅司(琳の弟)も参加する。ライトの点灯描写があるが、ランプがらみの描写は様々な作品にある。めぞん一刻カイジ2期・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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警察とGGP(世界を統治する革命組織)は、先のテロ事件の首謀者について会議する。キーファ(テロ組織BMAの戦士)が画面に映ると、ロマノフ(GGP日本司令)が顔色を変える。一瞬で感情が伝わる描写は、カイジ2期・ストロベリーパニック(脚本)ほかでも目を引く。

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夕刻、琳は親友のしょう子と会い、海岸で話す。主人公とその親友による、海岸での情緒ある会話場面は、おにいさまへ…(脚本)でもよく見られる。

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その後、依田は琳に接触する。そこへライドバック暴走族が通り、琳はその中に堅司を見つける。琳は、依田の車で堅司の後を追うことに。
並行するキャラの動向を捌き、最後にそれらを統合することに、高屋敷氏は秀でる。

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車を走らせながら、依田はただならない事態になっているのを感じ取る。鏡に顔が映るが、意味深な鏡描写は結構見られる。
F-エフ-・おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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警察とGGPは、正式稼働前の白ライドバック部隊を投入し、暴走族を制圧していく。
最中、再び意味深な鏡描写が入る。あしたのジョー2・グラゼニめぞん一刻(脚本)と比較。

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ライドバックに捕まった堅司を助けようと、琳は、暴走族が乗っていたライドバックを再起動させる。手が映るが、ここも頻出の、手による感情表現。ワンナウツ・RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…・はじめの一歩3期(脚本)と比較。

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ライドバックに乗った琳は、白ライドバックを翻弄する。それを見る横山(GGP士官)は笑みを浮かべる。アニメオリジナルで微笑を強調するのは多々見られる。おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(脚本)と比較。

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そして琳は、警官隊とGGPに完全に包囲されるのだった。舞台上のようなライティングは、しばしば見られる。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較(おにいさまへ…の場合は実際に舞台の場面だが)。

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  • まとめ

まず、大学が夏休みに入ったことを示す、夏の描写が色々ある。どんなに短い話やシリーズであっても、高屋敷氏は季節などの情緒を大切にする傾向があり、それが作品に深みを与えている。

あと、琳と深雪の会話の中で、生きる上で打ち込めるものがある事の大切さが表れており、相変わらずの高屋敷氏のポリシーが感じられる。これは、高屋敷氏が子供の頃から野球に打ち込んだ(高校野球部の監督も務めた)こととも関係があるかもしれない。

続いて、親友というものの大切さも今回表れている。おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)やグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でもそうだったが、原作を補って余りある、アニメオリジナルの友情表現の追加が印象深い。

また、様々なキャラの動向を捌きながら、最後に合流させる構成技術が、今回も炸裂。あれよあれよという間にキャラとキャラの点と線が繋がっていくのが小気味良い。

今回で、本作における高屋敷氏の脚本は最後。シリーズ構成は、後半脚本の飯塚健氏と共同だが、高屋敷氏としても飯塚氏としても、琳が“生きがい”を見つけていくことに重きを置いている感じがする。

原作では、琳はライドバックで“舞う”ことに狂気と破滅と美を見出だし、後戻りできない超常の領域に入っていってしまう。
一方アニメでは、琳は燃え尽きるまでライドバックで舞った後、再びバレエの道に戻ることが示唆されている。

あしたのジョー2では、出崎統監督と脚本の高屋敷氏は「丈はホセ戦(最終回)後旅に出た(後期OPに続く)」というスタンスのようで、どちらかというとポジティブである。それと同じようなポジティブさが、本作にもある。

原作のラストは、どちらかというと狂気をはらんで破滅的だが、本作(アニメ版RIDEBACK)の場合、エピローグで琳は「ただいま」と、しょう子の前に姿を現している。雑に言うと原作は破滅エンド、アニメはやや救いのあるエンドという感じである。

要は、あしたのジョー2(脚本)でやったことと同じような事を、高屋敷氏は本作でやっている。“打ち込める事”を“燃え尽きるまで”やることは熱く美しいが、そのキャラの“人生”は続いていくし、人生の決定権はそのキャラ自身にあるということも描かれている。

また、原作を一旦解体して、アニメオリジナルをつけて再構成したようなシリーズ構成の本作は、F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)のように、原作と異なる並行世界が楽しめる。

だが、とあるキャラの死は、原作通りで回避されない。しかもそのキャラは、原作と違って最初から出ているので、視聴者の愛着がわくようになっており、その死は一層ショッキングである。そうなるよう構成しているのも上手い。

「原作と異なりすぎる」と叩かれる事もある本作だが、なかなかコンパクトにまとまっており、何より琳に「その先の未来」があるifルートとして、原作の結末のショックを癒す力がある。大いに意義のあるアニメ化だったと私は感じた。