カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

DAYS7話脚本:守備範囲の広さ

アニメ『DAYS』は、安田剛士氏の漫画をアニメ化した作品。高校からサッカーを始めた柄本つくしを中心としたサッカー物語。監督・シリーズ構成は宇田鋼之介氏。

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本記事を含む、当ブログのDAYSに関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23DAYS

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  • 今回の話:

サブタイトル:「せめて少しでも恩返しがしたい」

コンテ:岡田達也氏、演出:黒田晃一郎氏、脚本:高屋敷英夫氏。

つくしが属する聖蹟高校サッカー部は、インターハイ東京予選を勝ち進む。

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インターハイ東京予選1次トーナメントを、つくし属する聖蹟高校サッカー部は勝ち進み、大活躍の風間(サッカーの天才で、つくしの親友)はサッカーを楽しむ。
それを見守る中澤(聖蹟サッカー部監督)の存在がアニメは強い。元・高校野球部監督の高屋敷氏は、彼に思い入れが強そうだ。

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試合後、中澤は部員達に、明日は完全オフ日にすると言い渡す。すると部員達は大喜び。喜び方が原作より幼い。また、ハグするのはアニメオリジナル。ハグはよく出る。ストロベリーパニックグラゼニ(脚本)と比較。

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風間はアイスを食べながら、オフに一緒にスパイクを見に行かないかと、つくしを誘うが、つくしは、やりたいことがあると言う。ほぼ原作通りだが、じゃりン子チエ(脚本)で、テツとヒラメ(チエの親友)がかき氷を食べる場面の微笑ましさに重なるものがある。 

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つくしの「やりたいこと」は学校の外周を走り込むことで、風間は驚く。走るつくしの背中の強調があるが、背中で語る場面はよく出る。ストロベリーパニック花田少年史(脚本)と比較。

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風間が(スパイクを買った後)つくしの様子を見に戻ると、つくしはまだ走っていた。無理するなと風間は言うが、つくしは、(楽しいサッカーに)必死でしがみつかないと一瞬でなくなってしまうと訴え、風間はハッとする。アニメでは、つくしの語気が強まっている。

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つくしは、(末端である)自分は必死でやらないと、自分にはそれしかないと訴える。目で訴えるのが、アニメでは強調されている。「目が死んでいない」描写は、しばしば見られる。あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)と比較。

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風間は、つくしの言葉を反芻し、必死で求め続けなければ手元に何も残らないことを自分も知っていたのに、と思う。手のアップはアニメオリジナル。手での感情表現は頻出。あしたのジョー2・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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風間は、つくしに付き合って走ることにする。(風間が買った)スパイクの「間」があるが、こういった「間」は多い。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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つくしと一緒に走りながら、風間は笑顔を見せる。笑顔はアニメオリジナルで、こういった、「原作にはない笑顔の追加」は色々な作品に見られる。高屋敷氏は、「笑顔」を重視する傾向にある。グラゼニRIDEBACK(脚本)と比較。

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だが、風間は何か固いものにぶつかる。それは生方(聖蹟サッカー部マネージャー)であった。オフなんだから落ち着け!『ブッダ』読め!と、つくしと風間は生方に説教される。ライトはアニメオリジナル。
ライトの表現は、様々な作品にある。グラゼニカイジあしたのジョー2(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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そして、聖蹟サッカー部はいよいよインターハイ東京予選準決勝の日を迎える。円陣の場面で、聖蹟キャプテンの水樹の背番号が強調されている。ここも、背中が「語る」。グラゼニカイジワンナウツ(脚本)と比較。

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円陣はビシっと決まったかに見えたが、つくしがトイレから帰ってきていなかった。やり直すのは恥ずかしい、となり、中澤は脱力。ここも中澤が何となく原作より存在感があり、高屋敷氏の思い入れが窺えなくもない。

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つくしはトイレで、桜木高校サッカー部の成神に会う(名乗らないので、つくしには謎の人物)。成神は背伸びして、つくしより背が高いと宣言。アニメでは幼さが増している。高屋敷氏は、キャラに幼さを付与する傾向がある。ガンバの冒険ダンクーガ(脚本)と比較。

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成神は、ゴールして得点を上げることが大事だと、つくしに主張する。
手を洗う「間」がアニメでは挿入されるが、こういった描写は、しばしば見られる。コボちゃんストロベリーパニック(脚本)と比較。

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試合が始まるが、怪我明けということで水樹はベンチスタート。水樹は足をガタガタさせて苛立つ。ここも「幼さ」が目を引く。じゃりン子チエ(脚本)、宝島(演出)と比較。

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観客席では、犬堂(つくしとフットサルしたことがある)や成神ら、桜木高校サッカー部が試合を観戦。犬堂の微笑する口元が映るが、これも原作にない笑顔。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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試合が始まると、風間の活躍に、相手の蟻明高校が苛立ち始める。アニメオリジナルで試合内容を補完する技術は、グラゼニ(脚本)にも見られる。

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苛立つ蟻明高校はラフプレーを連発し、聖蹟高校は消耗。疲労を懸念した中澤は、大柴(聖蹟サッカー部2年)とつくしを交代させる。ここも中澤が目立つほか、やはり背中の強調がある。

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ガチガチに緊張するつくしだったが、ベンチ外メンバーの応援などもあり、「頑張る」と奮い立つ。ここは感情の強調が見られる。原作から一段階、感情を強めるのは、グラゼニ・F-エフ-(脚本)などにも見られる。

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大柴は、もっと出たかった!と交代を悔しがる。ここも幼い。めぞん一刻番外編・マッドハウス版XMEN(脚本)と比較。

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皆の思いを背負ったつくしは、必死に走りまくる。風間は、そんなつくしを褒め、笑顔を見せる。風間が褒めるのはアニメオリジナル。やはりここも、「笑顔の追加」。
RAINBOW-二舎六房の七人-・RIDEBACK(脚本)と比較。

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尋常ではない走りを見せるつくしを、犬童が見守る。観客席を効果的に見せるのは、はじめの一歩3期・あしたのジョー2(脚本)でも印象深い。

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そして風間のシュートのこぼれ球に、つくしがヘディングで合わせて押し込む。ここも背中の強調がある。おにいさまへ…グラゼニ(脚本)と比較。

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つくしのヘディングは決まるかと思われたが、彼は相手DFと交錯し倒れる。ジャッジはCK。つくしに駆け寄る風間が強調されている。主人公を想う、先輩や友達の強調は、グラゼニRIDEBACK(脚本)ほか、色々な作品にある。

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つくしは交代したくなくて、担架から落ちる。蟻明の選手達は、つくしを侮辱し、嘲笑する。つくしの悔しさが強調されている。ここも、原作から一段ギアを上げた、感情の強調。グラゼニカイジ2期(脚本)と比較。

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そんなつくしを、水樹は抱き上げ、よくやったと労う。いわゆる「王子様」的な先輩の見せ場は、ストロベリーパニック(脚本)と重なる。こちらは女同士。

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よくもうちの部員を笑ってくれたな、5分で終わらせる、と水樹は宣言してピッチに入る。よく見ておけ、と笠原(聖蹟3年)は後輩達に言う。笠原の出番はアニメオリジナル。以前つくしにレギュラーを奪われた形の笠原をここで出すのは上手い。

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蟻明側は、水樹に3人のマークをつける。その3人に、水樹は、慕っていた祖父の思い出話をする。水樹の口元の笑みがアニメオリジナルで挿入される。ここも「笑顔の追加」。グラゼニ・F-エフ-(脚本)と比較。

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水樹は、たかだか3人で自分を止められると思ったのか、と、スピードとパワーで蟻明の3人を圧倒。RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)で、後輩の無念を晴らすため反撃する六郎太の姿に重なるものがある。

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水樹は高く跳躍し、見事なヘディングシュートを決める。犬堂が、大柴が、これが聖蹟キャプテン・水樹だと評する。犬童の水樹評を、原作とタイミングを変えてここに持ってきているのが上手い。

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そして聖蹟は勝利。つくしが走り回ったから、蟻明の選手達は足が死んでいたのだ、と水樹はつくしを称える。先輩と後輩の絆は、RAINBOW-二舎六房の七人-・ストロベリーパニック(脚本)でも強く描写されている。

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試合後、つくしは、成神が桜木高のトップストライカーだと風間に教えられる。出崎統氏風止め絵演出っぽいのが面白い。
あしたのジョー2・おにいさまへ…(脚本)と比較。こちらは監督が出崎統氏。 

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  • まとめ

 相変わらず話の密度が濃くて驚かされる。色々なキャラの掘り下げが、もれなく丁寧なのも驚異的。高屋敷氏はキャラの掘り下げが上手いが、その技術が遺憾なく発揮されている。

 あと、先に延べたように、高屋敷氏は高校野球部の監督を(5年間も)務めたことがあり、聖蹟サッカー部監督である中澤に相当思い入れがあるのを感じる。監督目線は、実体験も入っているのではないだろうか。

高屋敷氏の野球経験については、以前まとめた:
https://togetter.com/li/1816701

 前半は風間とつくし、後半は水樹とつくしの関係性をクローズアップしているのも上手い。あと、先述の通り、ストロベリーパニック(高屋敷氏脚本参加)やRAINBOW-二舎六房の七人-(同氏シリーズ構成・脚本)の、キャラ同士の絆と比較するのも面白い。

 前回( https://makimogpfb2.hatenablog.com/entry/2022/03/27/140005 )も書いたが、もともと男同士の友情を描くのが上手い高屋敷氏が、おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)やストロベリーパニック(同氏脚本参加)で百合をこなした後、本作で「男の百合」を展開しているのが興味深いところ。

 ストロベリーパニック(高屋敷氏脚本参加)では、主人公・渚砂と、渚砂の親友である玉青、皆の憧れの先輩である静馬の関係性が丁寧に描かれたが、玉青を風間、静馬を水樹に当てはめると、何かしっくりくる。

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 そういった「男の百合」要素があったかと思えば、終盤は水樹の「漢(おとこ)のかっこよさ」でも魅せる。これは、あしたのジョー2(高屋敷氏脚本陣)やRAINBOW-二舎六房の七人-・カイジ1、2期(同氏シリーズ構成・脚本)にもある、高屋敷氏の真骨頂。

 それと関連するが、水樹の活躍への盛り上げ方が上手い(犬童の解説のタイミングを原作から変更するなど)。高屋敷氏は、キャラの魅力をどうしたら引き出せるかを心得ている感がある。カイジ・F-エフ-・グラゼニ(同氏シリーズ構成・脚本)でも然り。

 もともと野球部だったためなのか、高屋敷氏はホモソーシャルを描くのが抜群に上手い。それに百合要素を絡めたのが、おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)であり、百合に特化したのがストロベリーパニック(同氏脚本参加)。

 そもそもからして高屋敷氏は、ともすれば同性愛に近いような友情表現をする傾向にあり(しかも天然で)、それが、おにいさまへ…(同氏脚本・シリーズ構成陣)とストロベリーパニック(同氏脚本参加)で花開いた感がある。

 男の友情→BL→百合→男の百合…という遷移は、アニメ史的に見ても面白いかもしれない。それだけ高屋敷氏のキャリアが長く、かつ、同氏の守備範囲が広いのだと、あらためて実感する。