カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

『あしたのジョー2』47話(最終回)脚本:旅人

アニメ『あしたのジョー2』は、高森朝雄梶原一騎)氏原作、ちばてつや氏画の漫画をアニメ化した作品(第2作)。風来坊の青年・矢吹丈がボクシングに魂を燃やし尽くす様を描く。監督は出崎統氏。

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  • 今回の話:

コンテ:出崎統監督、演出:竹内啓雄氏・大賀俊二氏、脚本:高屋敷英夫氏。

丈とホセ(バンタム級世界王者)の試合は白熱し、最終ラウンドが終わる。判定の時、丈は…。

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丈対ホセ(バンタム級世界王者)の試合は中盤~後半に入る。血しぶきが放送席に飛んでも、実況は怯まず実況を続ける(アニメオリジナル)。根性のある名実況描写は、らんま1/2(脚本)にも見られる。

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試合の凄絶さに耐えきれず、葉子(白木ジム新会長)は会場を出て自家用車に駆け込む。運転手が味のあるキャラをしている。おにいさまへ…めぞん一刻ワンナウツ(脚本)など、高屋敷氏は地味キャラを引き立てる。

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とにかく車を走らせるよう運転手に頼んだ葉子は、丈の試合を伝えるラジオを運転手につけさせたり切らせたりするが、逃げない決意をし、会場に戻る。手による感情表現は頻出。ワンナウツ・はじめの一歩3期(脚本)と比較。

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試合は引き続き白熱し、丈を慕うドヤ街(丈の地元。東京の下町)の子供達は必死に丈を応援する(アニメオリジナル)。ガイキング・宝島(演出)、あんみつ姫(脚本)ほか、高屋敷氏は子供の扱いに長ける。

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試合は12ラウンドが終了。葉子はリングサイドに落ちたタオルを拾い、それを段平(丈の属するジムの会長)に渡さず、丈を激励する。ここも、手による感情表現が強調されている。おにいさまへ…ワンナウツ(脚本)と比較。

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13ラウンドが始まると、満身創痍ながらホセに必死で立ち向かう丈に、ドヤ街の子供達や段平は声援を送る(アニメオリジナル)。はだしのゲン2・グラゼニ(脚本)ほか、高屋敷氏は主人公の周囲のキャラの扱い方が秀逸。

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何度も立ち上がってくる丈に恐れを抱き始めたホセは錯乱し、反則をしてしまう。
はじめの一歩3期(脚本)で、一歩のしぶとさに苛立った沢村(一歩の対戦相手)が反則をするのと重なってくる。どちらも原作通りだが、比べると面白い。

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14ラウンド目、焦燥するホセは、まるで幻影と戦っているような感覚に陥る。限界を超えた勝負の世界は、F-エフ-(脚本)でも大いに表現されている。

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最終15ラウンド、丈は伝家の宝刀・クロスカウンター、そしてトリプルクロスカウンターを決める。ここも、アニメオリジナル交えて周囲の反応の描写が巧み。

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最終ラウンドを終えた丈は、「あんたに貰って欲しいんだよ」とグローブを葉子に渡す。手から手へ思いを伝える描写は多い。F-エフ-・おにいさまへ…MASTERキートン怪物王女(脚本)と比較。

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判定により、試合はホセの勝ちとなるが、ホセは疲弊しきってしまう。F-エフ-(脚本)でも、聖(主人公・軍馬のライバル)が病気で白髪になってしまう描写がある(原作では毛が抜ける)。

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段平は丈の健闘を称えるが、丈の様子がおかしい事に気付く。アニメオリジナルで、それに周囲も気付く。ここも、キャラの扱いが上手い。原作では、そもそも紀子(丈の元ガールフレンド)とドヤ街の子供達の描写が無いので貴重。

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丈を見た葉子は、手に抱いていた丈のグローブを落とす(アニメオリジナル)。魂が宿ったような物の描写は多い。F-エフ-・おにいさまへ…・RAINBOW-二舎六房の七人-・グラゼニ(脚本)と比較。

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望み通り真っ白に燃え尽きた丈は、安らかに佇む。夕陽がインサートされるが(旅に出る丈のイメージ)、全てを見ているような夕陽の描写はよく出る。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)、宝島(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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燃え尽きた丈を映しながら、物語は終わる。「完」が出るエンドつながりで、宝島(演出)、めぞん一刻(脚本)と比較。どれも名場面。

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  • まとめ

そもそも本作の後期OPは、この最終回の続きという説がある(燃え尽きるまでボクシングをやった丈が旅に出る)。また、このOPの“夕暮れの廃車場”は、カイジ(シリーズ構成・脚本)EDにオマージュがある。

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カイジED演出は名手・鈴木典光氏であるが、カイジEDも最終回後のカイジの描写があったり、先述のように廃車場の描写があったりと、本作後期OPとコンセプトが同じ。シリーズ構成の高屋敷氏が関われるかは謎だが、比較すると面白い。

あと、まんが世界昔ばなし『幸福の王子』(演出/コンテ)のラストでは、絶命したツバメと王子像の魂が天に回収され、その後天国から町を見守るのだが、なんとなくこれも本作のラストと重ねてみると興味深い。

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私としては、「丈にとってのボクシング」が(燃え尽きるまでやったことで)死に(だからグローブが落ちる描写がある)、その魂が天に回収され、太陽となって、旅立つ丈を見守る…と、高屋敷氏の作品を見てきた身として本作のラストを解釈したい。

丈の生死やその後については諸説あるが、丈にとっての青春が終わったことは、はっきりと示されている(サブタイトルも「青春はいま…燃えつきた」)。F-エフ-(シリーズ構成・全話脚本)でも、「青春の終わり、そして旅立ち」が見事に描かれている。

丈の生死については、高屋敷氏としては「生きて旅をしていて欲しい」と願っているのではないだろうか。マイメロディ赤ずきん(脚本)でも、狼が(死なずに)旅を続けていることを示唆するラストになっており、丈を引きずっているのが窺える。

「最終回後、丈が旅に出た」というのは、いきなり出てきたものではなく、本作45・46話(高屋敷氏脚本)から丁寧に積み上げられた要素。また、原作をささやかにフォローするアニメオリジナルでもある。

アニメオリジナルといえば、45話~今回に至るまでの最終3話(高屋敷氏脚本)において、高屋敷氏は実にうまく紀子・西(丈の旧友)・ドヤ街の子供達(原作では試合会場にいない)を扱っていて、その手腕に感心する。

これもまた、適当に出しているわけでなく、彼等がなぜそこにいるかを、じっくりシリーズを通して描写してきたからと言える。高屋敷氏含む、脚本陣の連携が感じられる。

そして、本作で描かれた「生き様」は、めぞん一刻最終シリーズ・F-エフ-・アカギ・カイジグラゼニワンナウツ・RAINBOW-二舎六房の七人-のシリーズ構成・脚本に存分に活かされている。どれも熱く「生きる」ことの大切さが描かれ、ラストが感慨深い。

限りある人生をどう生きる(生きた)か…を、高屋敷氏は色々な作品を通して何十年と描き続けている。本作は、その代表作の一つであり、カイジにも繋がっている、はずせない名作であるのは間違いない。