カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

ワンナウツ2話脚本:「勝負」に対する姿勢

アニメ・ONE OUTS(ワンナウツ)は、甲斐谷忍氏原作の漫画をアニメ化した作品。謎めいたピッチャー・渡久地東亜の活躍を描く。監督は佐藤雄三氏で、シリーズ構成が高屋敷英夫氏。
今回の演出・コンテは池田重隆氏で、脚本が高屋敷氏。

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  • 今回の話:

渡久地(謎めいた投手)とのワンナウツ(投手と打者で行う賭け野球ゲーム)勝負に敗れた児島(一流プロ野球打者)は、山にこもって己と向き合い、とんでもない条件で渡久地に再戦を申し込む。

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謎めいた投手・渡久地と、一流プロ野球打者・児島の、大金を賭けたワンナウツ(投手と打者二人で行う賭け野球)勝負は、フルカウントの状況に。
次は渡久地最高の球が来ると言って、勝負を仕切るビッグママは煙草を取り出す。凝った煙草描写は多い。めぞん一刻・F-エフ-・あしたのジョー2(脚本)と比較。

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児島のトレーナー・木野崎は固唾を飲んで勝負を見守り、次の渡久地の球はスライダーと予想するが、ビッグママはそれを一笑に付す。
感情を込めて金網を掴むのは、しばしば見られる。空手バカ一代(演出)、F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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渡久地の勝負球が投げられた瞬間、ビッグママの持つ煙草の灰が落ちる。
色々な作品で、このような煙草の「間」がある。グラゼニめぞん一刻カイジ(脚本)と比較。

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渡久地の決め球は、相手の心理を読んだ超スローボールで、児島の敗北となる。
奇しくもグラゼニ(脚本)では、色々な経験則と天然要素で、最後に開き直ってど真ん中ストレートで打者を仕留める、原武という投手が出る。どちらも原作通りであるが比較すると面白い。

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意味深にボールが映る。こういった物の「間」は数々の作品で効果的に出る。
グラゼニ・DAYS・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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渡久地は児島の心理を完全に読んだのだとビッグママは解説し、煙草を踏み潰す。
この動作は様々な作品に見られる。1980年版鉄腕アトム・太陽の使者鉄人28号(脚本)と比較。

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ある意味屈辱的な敗北を喫した児島は、怒りを込めてバットを握りしめる。
手による感情表現は頻出。おにいさまへ…グラゼニワンダービートS(脚本)と比較。

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渡久地は、以前の「野球をナメてる」という児島の言葉を蒸し返し、児島の方こそ勝負をナメてると言う。
ここは、物事や人間には色々な側面があるという高屋敷氏のポリシーにマッチ。
宝島(演出)、F-エフ-・蒼天航路(シリーズ構成・脚本)でも強調されていた。

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この勝負の後、児島は何処かへ姿を消す。ホテルの児島の部屋には野球道具が残されたままだったという、アニメオリジナルのナレーションがあるが、持ち主のアイデンティティを示す「物」の強調はよくある。F-エフ-・グラゼニおにいさまへ…(脚本)と比較。

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児島が消えてから一週間。雨が降る中、木野崎はビッグママの営むバーにて、沖縄に来た意味が無いと嘆く。
雨はアニメオリジナル。雨でドラマを盛り上げる手法は、よく使われる。
F-エフ-(脚本)、空手バカ一代(演出/コンテ)、エースをねらえ!(演出)と比較。

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渡久地は人の心を読めるのかもしれない…とビッグママは解説。
グラスの「間」があるが、これも数々の作品で描かれる。グラゼニ・RAINBOW-二舎六房の七人-・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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そんな折、木野崎の携帯が鳴る。高屋敷氏は、電話に大きな役割を持たせる。おにいさまへ…あしたのジョー2・MASTERキートン(脚本)と比較。

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また、ここでAパートが終了するのが上手い。

中根(児島の練習相手の二軍投手)から、児島が山に籠っているという連絡を携帯(原作では口頭)で受けた木野崎は、児島のもとへ駆けつける。
山ごもりは原作通りだが、山や洞窟で修行したり、隠居したり、気を引き締めたりするキャラはよくいる。空手バカ一代・宝島・家なき子(演出)と比較。

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雨が降りしきる中、児島は己を見つめ無心になるために、ひたすら薪を割っていた。木野崎はそれに気圧され、児島を連れ戻せず。
山が映るが、山をはじめ自然の「間」も多々ある。チエちゃん奮戦記・花田少年史蒼天航路(脚本)と比較。

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そして数日後、今度自分が負けたら即引退、勝ったら渡久地の「右腕を貰う」条件で、児島は渡久地にリターンマッチを申し込む。渡久地はそれを呑む。
煙草+灰皿描写があるが、これもよくある。めぞん一刻・DAYS(脚本)と比較。

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木野崎は、こんな勝負は無茶だと児島に訴えるが、児島は薪を千本割る修行を通して活路を見出だしつつあった。
児島は、斧を握りしめる。ここも、手による感情表現。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)、宝島(演出)と比較。

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そして夜。後の(原作通りの)展開の伏線として、蝶が映る。蝶や蛾の意味深描写は多い。長年一緒に仕事した、出崎統氏がよく使う演出でもある。おにいさまへ…(脚本)、空手バカ一代(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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ランプが映る。ランプ描写は非常に多い。空手バカ一代(演出)、おにいさまへ…・F-エフ-・カイジ2期・はじめの一歩3期・めぞん一刻グラゼニ(脚本)と比較。

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薪割り一千本まで、あと一本という所で蝶に気を取られ、児島は負傷してしまう。
薪が転がる。これも、物の意味深な「間」。DAYS・おにいさまへ…・F-エフ-・グラゼニ(脚本)と比較。

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そして勝負の日。原作通りかつ重要な伏線として、ボールとバットが映る。これも独特な「間」がある。
カイジ2期・F-エフ-・花田少年史グラゼニ(脚本)と比較。

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木野崎の回想が挿入される。怪我を心配する木野崎に対し児島は、これで迷いなく外角狙いに集中できると言う。
手から手への感情伝達は、数々の作品で目を引く。カイジ2期・おにいさまへ…(脚本)、宝島(演出)、MASTERキートン(脚本)と比較。

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そして時は現在に戻る。渡久地は内角高めを攻め、児島の怪我は最初から見抜いていたと言う(先程のボールとバットの意味深カットが伏線)。彼は、次も内角高めだと宣言するのだった。投手が打者を威圧する場面は、グラゼニ(脚本)でも印象深い。

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  • まとめ

いつもながら、煙草や手の描写が目立つ。絵に関与できない脚本なのに不思議なことだが、実際挙げればキリが無いほど色々な作品にある表現で、比較すると面白い。

敗北後の児島の山ごもりは、空手バカ一代36話(演出)のゲストキャラ・セオロを思い出さずにはいられない。セオロの場合は、異種格闘勝負で相手を殺してしまったための山ごもり。セオロも児島も、己と向き合う。

己と向き合い、己を超えるというのは、ありとあらゆる作品で高屋敷氏が訴えかけるテーマの一つであり、今回もそこの強調が見られる。よくよく考えれば、このテーマは70年代から今日まで見られるもので、同氏の強い思いが感じられる。

投手と打者の、心の読み合いの表現はグラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも上手い。高屋敷氏は実際の野球経験(元高校球児であり、高校野球部監督も務めた)があり、それも活かされているのではないだろうか。

グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)では、打者の心理の裏をかいて、最後はド真ん中を投げ込む原武の技術を、同じ投手として見抜いた夏之介が原武からHRを打つ。渡久地の超スローボールは、投手なら打てるものなのかもしれず、そう考えると面白い。

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また、今回も出て来たランプ描写(アニメオリジナル)であるが、これも並々ならぬこだわりを感じる。蛾や蝶と絡めるあたりも空手バカ一代36話(演出)と大いに重なるものがあり、ゾクッとくる。

そして、シリーズ全体の骨子になっている要素として「勝負」がある。
渡久地は、どこまでも「勝負」に厳正な男として描かれており、曰く「勝負をナメてる」児島が、勝負に対し真摯に向き合うようになったのを見て、再戦の申し込みを受ける。

このような、渡久地の「勝負」に対する拘りは、本作(アニメ版ワンナウツ)最終回の伏線にもなっていて、シリーズ構成の妙に唸る。
高屋敷氏は、最初と最後をキッチリ揃える傾向があり、今回も最終回に向けての伏線が張られているのが改めてわかる回だった。