カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

宝島26話(最終回)演出:明日への翼

アニメ・宝島は、スティーブンスンの原作小説を、大幅に改変してアニメ化した作品。監督は出崎統氏。高屋敷英夫氏は、偶数回の演出を務める(表記はディレクター)。
今回の脚本は篠崎好氏で、コンテが出崎統監督、演出が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、宝島の記事一覧:

http://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%9D%E5%B3%B6

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  • 今回の話:

シルバー(元海賊)は分け前相当の宝を持って何処かへ消えたものの、ジム達は帰国。宝を国へ寄付した一行は、1000ポンドずつ報奨金を貰う。
そして10年後。立派な船乗りに成長したジムは、これから妻となるリリー(ジムの幼馴染)に、航海の途中でシルバーに会った事を話す…

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ジムの母は、ブリストルのホテルから届いた、ジムからの手紙を読む。
手紙は、高屋敷氏が重要視するアイテムの一つで、原作通りにしろ、オリジナルにしろ印象に残る。
陽だまりの樹・F-エフ-・カイジ2期・ミラクルガールズ・めぞん一刻(脚本)、家なき子(演出)と比較。

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国から報奨金を貰い、表彰されたジム達だったが、きらびやかな空気を好まないグレー(ナイフの達人)は密かに脱け出し、礼服を脱いで普段着に着替える。アイデンティティを示す物として、しばしば服がクローズアップされる。F-エフ-・チエちゃん奮戦記(脚本)でも、それが描かれた。

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祖国・アイルランドに帰ることにしたグレーは、シルバー(元海賊)側に付いた身として金を貰えず、落ち込むパピー(お調子者の船員)に、半分もの報奨金を分け与える。
カイジ2期最終回(脚本)で、殆どの金を仲間のために費やしたカイジに、やさしいおじさんが金を渡すシーンと重なってくる。

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グレーは、いつかまた会おうと言ってアイルランドへ向かう。ジムも、きっとまた会おうと言ってグレーを見送る。だが、これが今生の別れとなる。
再会を誓い合うも今生の別れとなるのは、蒼天航路(脚本)でも強調された。

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懐かしい故郷に帰って来たジムは、歌を歌いながら海岸を歩き、飛び上がって喜びを爆発させる。この動作付けが幼い。幼い芝居付けは高屋敷氏の十八番。なぜか(絵をいじれない)脚本作でも、これが炸裂する。カイジ2期(脚本)と比較。

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自室にて、ジムは亡き父の写真を見つめる。めぞん一刻最終回(脚本)にて、ヒロイン・響子との結婚を決めた五代が、ついに惣一郎(響子の、亡き前夫)の写真を見る場面を想起させる。どちらも、色々な経験を積んできたあたりが共通。

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全てが終わり、疲れたジムは眠る。
カイジ2期最終回(脚本)で、同じく過酷な経験をして疲れたカイジが眠るのと比較。
どちらも最終回というのが、感慨深いものがある。

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夕暮れ、ジムはリリーと話し込む。先の事はわからないと言うジムの言葉を耳にしたリリーの祖父は、ジムが将来、船乗りになると確信する。理解あるお爺さんも、高屋敷氏は色々な作品で強く印象づける。空手バカ一代(演出)、蒼天航路花田少年史(脚本)と比較。

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全ての始まりである、亡きビリー(元フリント海賊団副船長)が遺した宝島の地図を眺めていたジムだったが、風が吹いて、地図が海に落ちる。死した人の魂がこもっているような物の描写は多い。めぞん一刻・F-エフ-(脚本)、家なき子(演出)、ルパン三世3期(脚本)と比較。

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そして10年後。ジムは一等航海士となっていた。ジムのナレーションにより、宝島の冒険後の皆の様子が語られる。めぞん一刻最終回(脚本)では、五代のナレーションによって、五代と響子の結婚式後の皆の様子が語られるのだが、それと被る。

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残念なことに、グレーがアイルランド独立運動で戦死したことも語られる。グレーの最期、彼のトレードマークであるナイフとタイが映る。魂を持つナイフが忍者戦士飛影(脚本)で出たほか、元祖天才バカボン(演出/コンテ)でも、キャラクターのアイデンティティを示すものとして、帽子が意味深に映る。

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一方、トレローニ(ジムの村の富豪で、宝島の冒険に参加)は懲りもせず次の冒険を望み、リブシー(医者。同じく宝島の冒険に参加)がその話相手を務めていた。
老いてなお元気いっぱいな老人は多い。陽だまりの樹・F-エフ-・MASTERキートン・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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そして、全てを見守るような太陽が映る。全知全能な存在としての太陽は頻出。F-エフ-(脚本)、エースをねらえ!(演出)、あしたのジョー2(脚本)と比較。

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長い航海から帰ったジムは、トレローニとリブシーを訪ねる。シリーズ序盤の幼いジムと比べると驚きの成長ぶり。主人公の大きな成長は、シリーズ構成/脚本作でも非常に強く描かれている。F-エフ-・カイジ2期(シリーズ構成/脚本)、めぞん一刻(最終シリーズ構成/脚本)と比較。どれも序盤と最終回を比べたもの。

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ベンボー(ジムのペットの豹)も大きく成長したが、人懐こさは相変わらずで、リブシーを舐める。何かをペロペロ舐める描写も、色々な作品で見られる。
めぞん一刻はだしのゲン2・新ど根性ガエル(脚本)と比較。

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いつリリーと結婚するのかと、リブシーとトレローニから問われ、ジムは照れる。
どこか愛嬌が残っている大人を表現するのも、高屋敷氏は上手い。陽だまりの樹グラゼニカイジ2期(脚本)と比較。

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その後ジムはリリーに指輪を渡し、二人は結ばれる。心のこもった贈り物も、重要アイテムとして扱われる。ミラクルガールズ・コボちゃん(脚本)と比較。どれも、結婚にまつわる贈り物。

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ジムは、航海の途中でシルバーに会ったことをリリーに語る。

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ここから、ジムの回想となる。

港町の酒場にて、ジムとシルバーは互いに名乗らず腕相撲をし、シルバーが辛勝する。手から手へ心を伝えるのは、非常に重要な事として表される。忍者戦士飛影ワンナウツ・F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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ジムは、会いたかったと言ってシルバーに自分の名を明かすが、シルバーは、ジムのことは知らないと答える。

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その後。シルバーは老いたフリント(シルバーのペットの鳥)に飛ぶよう促し、フリントは弱々しくも飛ぶ。鳥は重要なキャラとして、様々な作品に登場。ルパン三世2nd(演出/コンテ)、コボちゃん(脚本)と比較。

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シルバーは、「その気になりゃあ、俺達はまだまだ飛べるんだ」と言い、歩いて行く。そして振り向く。その表情は、昔と変わっていなかった。

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ジムは、「いたんだよ…やっぱり!おれの…おれのシルバーが!」とリリーに語るのだった。

「完」の文字は、めぞん一刻最終回(脚本)でもインパクトがあった。

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  • まとめ

やはり予想した通り、序盤のジムの幼さは終盤に向けての「仕掛け」だった。
これがシリーズ構成作となると絶大な効果を発揮し、主人公の成長が劇的に描かれる。前述の通り、F-エフ-・カイジのシリーズ構成および、めぞん一刻の最終シリーズ構成にて、存分にその手腕が振るわれている。

こういった高屋敷氏の「成長」描写の上手さは、家なき子や本作の演出の経験が非常に大きいのだと確信できる。
その前を辿ると、元祖天才バカボン・まんが世界昔ばなし(演出/コンテや脚本)、ど根性ガエル(演出)などでのキャラクターの幼さ・可愛さの表現の秀逸さが目立つ。

そのような「幼さ・可愛さ」の表現が上手い上、家なき子や本作といった、主人公の成長がシリーズを通して描かれる作品に長期間(演出として)取り組んだことで、その才能と技術が研ぎ澄まされ、後にシリーズ構成作品で、それが花開いた感がある。

また、本作の監督の出崎統氏と同じく、高屋敷氏は「男の世界」が相当好きなのだと思う。
ただ、同氏が出崎統氏と大分違うのは、やはり可愛さ・幼さやコミカルさを前面に出して行く点。
これは監督の作風に埋もれない、同氏の強みだと言える。

あと、多くの高屋敷氏の担当作で、主人公と年上男性の結びつきが目立つのは、本作のシルバーの存在も大きいのではないだろうか(初期演出作の、ど根性ガエル空手バカ一代でも見られる特徴だが)。

キャラクターの成長を描く一方、どんなに年齢を重ねても失われない愛嬌や純粋さも目立つような仕組みになっている。こちらも、幼さ・可愛さの表現に長ける所から派生したものであると考えられるし、シリーズ構成作でも、それは遺憾なく発揮されている。

今回、移ろい行く年月によってジムやシルバーはじめ色々なキャラクターが年を取るが、皆、純粋さを失っていない。そう思うと、シルバーの言う「その気になりゃあ、俺達はまだまだ飛べるんだ」は胸を打つ。

そしてジムの言う「おれのシルバー」は、「見ている側それぞれのシルバー」でもあると思うと、色々考えさせられる最終回だった。