カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

忍者マン一平監督13話(最終回):死人すら生きがいを求める。生きるとは何か

Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。モバイルだと、クリックしても画像が大きくならないのですが、urlをクリックするとtwitterの大きい画面で見えます。)

 

忍者マン一平13話について。最終回。打ちきりとはいえ、大晦日で終わるので、きりのいい所ではある。ありきたりの大晦日話でなく、話が二転三転して内容が約20分に超圧縮されてるのも特徴的。脚本は浦沢義雄氏、コンテ小和田良博氏、演出はしもとなおと氏(既述)。

この小和田氏・はしもとなおと氏、そして今回原画にいる、四分一節子氏は、出崎哲監督の「キャプテン」の主要スタッフ。高屋敷氏が出崎哲氏を大好きっぽいだけに、なにか縁を感じさせる。実際、忍者マン一平出崎哲氏的回転演出が沢山出た。

 

冒頭から同氏特徴、ものいわぬ静物=キャラである事の種明かし。墓石がくしゃみして、幽霊が出てくる。しかも腹がへっており、人間的であるのも特徴的。そして皆を見てる。他作品でも何か(無機物や自然)が見てる画は多数。

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一平達が皆で秘密基地の大掃除をしているが、「皆でやれば楽しいもんだな」(仲間愛)という台詞が高屋敷氏の特徴を表している。浦沢氏脚本は、以前の回もだが高屋敷氏の作家性や特徴を確実に捉える事が多い。今回の幽霊も、高屋敷氏の作品によく出てくる可愛いおじさん。

一平達を見守り、一平達の人間関係を把握した幽霊(名は山田)は、空腹を満たそうとして、アゲハちゃんに化けて皆の家に行き、食べ物にありつこうとする。そのため、飯テロ(特徴)の連続。また、化けの皮の中の本性・本質の表現も、高屋敷氏特徴の一つ。

親しい人物に化けて散々飲み食いする話は、高屋敷氏演出の元祖天才バカボンにもあり、可愛い仕草をおっさんと子供とで差別化する演出の絶妙さが出ていた。→https://t.co/43p0sH2okc
今回も、外見がアゲハちゃんで仕草がおっさんの差別化がある。

下記画像は、高屋敷氏特徴の、可愛く幼い集。ど根性ガエル演出の頃から、手足をバタバタさせたり、ジャンプしたり、手を握ったり、といった特徴がある。ジョー1脚本疑惑・ならびに演出の手伝い疑惑回でもその特徴はある。 https://t.co/re3kgCdxZU

そして、毎回不思議なのは、カイジワンナウツなど、絵を管理できない脚本でもこういった同氏の可愛い・幼い動作演出(大人含む)が出ているところ。シリーズ構成なら、監督と密に話をする事は当然あるだろうけど、ゲスト脚本でもそうなる。

話を戻すと、山田は、食べ物にありつけず行き倒れる。アゲハちゃんに化けたままだったため、一平と三平に助けられる(特徴:ぼっち救済)。正体がバレても、一平と三平は山田に食べ物を与え、愚痴も聞くなど、お人好し(特徴)。人の家で泥酔は、元祖バカボン同氏演出回にもある。

下記画像は何年かぶり?の食事&ビールを味わう幽霊の山田と、禁欲からのビール→豪遊のカイジ(脚本)。そして飯テロ集。今回と、カイジ・ジョー2脚本。禁欲からの反動で暴飲暴食は、高屋敷氏脚本・演出で多数ある。 https://t.co/xKzQqLtzvC

一方、一平がアゲハちゃんを家に連れ込んだと誤解した伝宅達は、アゲハちゃんと間違えたまま山田を拉致し、時限爆弾を一平宅に置く。一平は、全てを見ていた手下のウサギのブッピの言葉を理解し(特徴:言語を超えた会話)、忍術で爆弾を処理。そして山田救出へ動く。

一方伝宅達は、拉致してきたのがアゲハちゃんではないことに気づき、現代社会にお化けなんていらないと、怪人に改造する手術をしようとする。この、いきなりなマジキチ展開が浦沢氏の特徴なんだろうか。一方、山田を救出に来た一平・三平に、伝宅トリオは完全敗北。

 一平が伝宅達をまとめて瞬殺したのが最終回らしいといえばらしい。山田は、世話になった礼に、一平ほか仲間含めて、旅行をプレゼントしたいと言い出す。喜び集まる一平達だが、行き先はあの世なので、行くには死ぬ必要があると、山田は色々な死に方を提案し皆を襲う。

怖がり逃げ惑う一平達を見て、山田はお化けとしての本分を取り戻し、生き甲斐?を感じる(特徴)。こうして、皆でドタバタし新年を迎える。
ところで高屋敷氏は山田洋次監督が大好きっぽいが、山田洋次監督作に「馬鹿が戦車でやってくる」というのがあり、この場面でも戦車が出る。

下記が山田洋次監督作「馬鹿が戦車でやって来る」にあやかったっぽい戦車シーン。偶然にも、この幽霊の名前も「山田」。次々と死に方を紹介する山田のシーンが浦沢氏の狂気っぽい? https://t.co/3spE58DMWT

 

幽霊の山田=山田洋次監督リスペクトかもしれない事は、今回書いているうちに気付いた。
あと、ルパン三世3期の高屋敷氏脚本に「ルパンが戦車でやってきた」というサブタイの回があり、また、ジョー1脚本疑惑、ど根性ガエルコンテ疑惑回で寅さんがまんま出てくる。

高屋敷氏の演出・脚本は、おじいさんに優しくする話が多く、忍者マン一平でも、おじいさんに優しい。これが、はだしのゲン2脚本では爆発し、うつ病老人を子供達が家族として迎えるまでの優しさとなる。カイジも、カイジのおっさんに対する優しさは天使レベル。

今回は、皆が怖がることでお化けとしての生きがい?を見つけた山田の話だが、高屋敷氏シリ構・脚本のアカギやカイジにおいて、アカギや鷲巣は、互いに生き甲斐を見つけ、雀士の本分を取り戻す。カイジも、生きるとは何かを問いかけ、彼なりの悟りを開いていく。

一見狂気にしか見えない、幽霊山田の豹変だが、こうして見ていくと、過去・未来の作品とつながっていることがわかる。死人すら生き甲斐を求め、それを取り戻す喜びを味わうのは、カイジにおいてもカイジが、希望(原作では「望み」)に生きるのが気持ちのいい人生ってもんだろ、と言うのに繋がる。

以前の浦沢氏脚本回で、高屋敷氏の演出や脚本で何故手を握る演出が多いのかの答え(手を握れば友情が生まれる)が出て驚いたが、アカギやカイジで、高屋敷氏が原作に忠実でありながらも封入したテーマ「生きるとは何か」を、浦沢氏は今回開示した。

今回で忍者マン一平は最終回となるが、一見高速打ち切りになったマイナー作であっても、高屋敷氏が携わった数々の演出や脚本の意図や意味の種明かしが沢山あり、同氏の作家性を追うためには、大変貴重な作品だった。男児向けならではの下品ネタはちょっと苦手だったが。