カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。discordアカウントは、まきも#3872 です。

めぞん一刻81話脚本:前面に押し出される擬似家族愛

(Togetterのバックアップです。修正や追加などで再構成しています。)

めぞん一刻は、高橋留美子先生原作のラブストーリー。アパート・一刻館の管理人で未亡人・響子と、一刻館住人の青年・五代の恋を描く。
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前回まで:

五代の就職活動は大苦戦。その最中、保育園のバイトなどを経て、子守の才能に目覚める。五代はその才能を生かし、保育士になる夢を追うことになる。ただ、保育園のバイトは仕方のない事情のため辞めざるを得なくなり、もう一方のバイト先のキャバレーで子守係をすることに。

響子は、夢を追い頑張る五代のため、色々あったが弁当を作ってくれる(以前も作った)。
というわけで、のっけから特徴の飯テロ&心のこもった贈り物。画像は心のこもった食べ物集。今回、ど根性ガエル演出、家なき子演出。

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バイト先のキャバレーにて、五代は呼び込み係&ホステスの子供達の子守係を頑張る。

そこへ、用事で上京して来た五代の祖母・ゆかり婆ちゃんと、一刻館住人が遊びに来る。五代はゆかり婆ちゃんに、保育士になる決意を語り(特徴:男の意志)、婆ちゃんは背中を押す。

保育士になる決意を語る場面とはいえ、五代のモジモジ動作は幼く可愛い(特徴)。
画像はモジモジ集。今回、エースをねらえ演出、カイジ脚本。 

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婆ちゃんは気前よく遊び、そんな婆ちゃんを見て、バイト先の先輩は、婆ちゃんを大切にしろと言う(特徴:お年寄りに優しい)。

場面は転じて朝、五代の恋のライバルで金持ちイケメン・三鷹響子を、テニスクラブへ行くため迎えに来る(三鷹は、響子の通うテニスクラブのコーチ)。

三鷹と五代は、響子を巡って火花を散らすが、原作より対決描写が男臭い(特徴)。同氏は同作品最終シリーズのシリーズ構成も務めており、要所要所で原作と異なる、男の世界を展開している。カイジ(シリ構)の、一条とカイジの対決と被る。 

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三鷹響子の母に気に入られていることや、自分の経済的な安定さを自慢するが、五代は響子の気持ちは未だ決していないと反発する。三鷹はそれでも、五代が響子と結ばれるには駆け落ちしか無いとバカにする。

カイジにおいて、一条がカイジをチンピラ扱いするのと被る。

テニスクラブにて、三鷹は新規会員を紹介される。新規会員は、三鷹の見合い相手・九条明日菜だった。三鷹は以前、明日菜に、結婚の断りを入れたのだが、それは親族には伝わっておらず、破談に到らなかった。明日菜は不屈の精神(特徴)で入会して来たのであった。

三鷹は、明日菜を紹介した叔父に、今度こそ縁談を破談にしたいと伝え、九条邸を訪問すると告げる。
一方五代はバイト先で子守を頑張っていた。特にホステス・かすみの子供達になつかれていた(特徴:疑似家族)。五代や子供の描写が可愛く幼い(特徴)。

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ど根性ガエル同氏演出回にて、梅さんが新しい父となる…とひろしが夢想する話がある。

今回はかすみが、五代が子供達のパパならいいのに、と言う。画像は今回と、ど根性ガエル演出。どちらも疑似家族愛を前面に出している。

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その頃三鷹は、九条邸を訪ねていた。そこには三鷹の両親も来ており、明日菜の両親と歓談していた。この状況では、三鷹は破談の話を切り出せない。全ては三鷹の叔父の策略であった(特徴:知略)。

明日菜が三鷹を追ってテニスクラブに入会したことは、一刻館住人である四谷や一ノ瀬を通じ、五代の耳にも入る。

五代はこの状況を考え、複雑な気分に。
翌朝五代は、改めて響子に、保育士試験を受けると宣言(特徴:前へ進む意志)。
響子はそれを応援。

場面は転じ、五代のバイト先のキャバレーのネオンが灯される。同氏の大きな特徴である、意思を持つランプ演出。カイジ2期脚本と比較。どちらも波乱の幕開けを告げる。

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五代は、かすみからこっそり手紙を渡される。勤務時間が終わったら読んで欲しいと頼まれ、五代は戸惑う。

ど根性ガエル演出でも、梅さんと、ひろしの母がデキていると誤解される話があり、それと被る。親愛で手をつなぐのも特徴。 

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かすみの手紙は、子供達を頼む、というものだった。どうやら客とデキて逃げたらしい。子供は五代を「パパ」と呼ぶ。ここで次回へ。

特徴の疑似家族。カイジ2期脚本でも、おっちゃん・カイジの疑似父子愛が前面に出ている。思いを込めた手紙も頻出。

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  • まとめ

本作においての高屋敷氏の構成は、五代・三鷹響子のターンが交互に描写されることが多い。これは、じゃりん子チエ脚本にて、複雑に絡み合うエピをさばいた経験が生かされている。
演出時代からの特徴である、ランプ演出や幼いキャラ描写も発揮されている。

以前のブログ記事にも書いたのだが、本作の脚本・最終シリーズ構成にて、高屋敷氏は原作と少し異なる、「男の世界・男の成長」を押し出している。五代が原作より幼く見えるのは、最終的に五代が大人の男に成長するための布石と思われ、それは高屋敷氏の得意分野。

また、原作と少し異なり、一刻館の住人などを含めた疑似家族愛を前面に出している。今回の、かすみ・彼女の子供達・五代の織り成す疑似家族も、同氏の特徴が大きく出ている。
これらを見るに、ラブストーリーというよりファミリードラマの側面が強い。

演出も脚本も、同氏作品は、血が繋がっていなくても温かい絆で結ばれている描写が強く出ている。代表的なものとしては、家なき子演出の、レミとビタリスの疑似父子関係がある。
カイジとおっちゃんの関係や、前述の、梅さんとひろしの関係も近いものがある。

じゃりん子チエ脚本で培った、「原作通りでありながら自分の出したいテーマを前面に出す」技(チエ監督の高畑勲氏が得意とする)は、本作でも如何なく発揮されている。一方で原作クラッシャーである出崎統氏(同氏の師匠)の特徴も少し受け継いでいる。

こういった、出崎系と高畑系のハイブリッドな所は、高屋敷氏の個性であり魅力の一つ。
じゃりん子チエ、めぞん一刻カイジなど、原作力の強いアニメ作品で、自分の個性やテーマを出す事は相当に難易度が高い事が、長らく見ていくと分かる。

そういった難易度が高い中、今回は、同氏の長年のポリシーである疑似家族愛に強いスポットが当たっている。
疑似家族愛と、男の成長は、高屋敷氏が構成する本作最終シリーズの柱となる…というのを多いに感じさせる回だった。