カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

蒼天航路21話脚本:戦士の成長、軍師の覚悟

アニメ・蒼天航路は、同名漫画のアニメ化作品で、曹操の生涯を描く。高屋敷氏はシリーズ構成も務める。
監督は学級王ヤマザキや頭文字D4期などを監督した冨永恒雄氏。総監督は、バイファムやワタルなどのキャラクターデザインで有名な芦田豊雄氏。

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曹操呂布を直接見たいと言い、大軍を率いて呂布の領である徐州(じょしゅう)へと向かう。

一方、曹操の命を受け、先に呂布軍と戦っていた劉備は、義兄弟の関羽張飛と共に呂布に下るが、呂布は彼等を投獄する。

劉備を生かしておけば曹操をおびき出すエサになるためであるが、狂戦士である呂布が、そんな冷静な判断を下せる事に、呂布の軍師の陳宮(ちんきゅう)も、劉備も驚く。

一方曹操は、かつてない大軍を知略を持って動かす準備を進める。

呂布陣営では陳宮が、曹操軍を迎え討つための布陣を敷いていた。夜、陳宮呂布と話す。このとき意味深に月が映る。高屋敷氏の大きな特徴である、重要キャラクターとしての月の描写。チエちゃん奮戦記脚本と比較。

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呂布は食事をしながら陳宮の話を聞く。高屋敷氏の作品は、おいしそうな食事シーンが多い。ここも、シンプルな食事なのに美味しそうに見える。監督作忍者マン一平、新ど根性ガエル脚本(コンテ疑惑もあり)、ルパン三世3期脚本と比較。

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陳宮は、内通者がいる可能性があるとして、自分一人に作戦を任せて欲しいと訴える。
呂布は、「曹操が憎いか」と陳宮に問い、陳宮は「憎い」と答える。呂布も、曹操が憎いと言い、茶碗を握り潰す。呂布がこういったコミュニケーションを取ることは滅多にないことなので、陳宮は感動する。

直訴が効き、陳宮は作戦指揮の全権を任される。
後日、夕陽が不吉に陳宮を照らす。ここも、太陽が重要な役割を担っており、高屋敷氏の特徴が出ている。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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夕陽や夕焼けが不吉を告げているのは陳宮も察していたが、呂布から作戦を一任されているのだから、と自らを奮い立たせる。

陳宮呂布に会いに行くと、呂布の(政務関連の)部下である陳珪(ちんけい)・陳登(ちんとう)が先客にいた。陳宮は前々から、この親子と曹操との内通を疑っており(実際、内通している)、彼等を怪しむ。
陳珪親子は、(呂布には似つかわしくない)籠城戦をするよう進言。そうすれば、民の心を掴むことができると言う。
民の上に立つ、つまり「王」になることは呂布の目標であるため、呂布は籠城戦をすることを決意。

陳宮は、たとえこれが陳珪親子の謀り事であろうとも、呂布の、「王」となりたい意志を汲み取り、呂布の決断に従うことにする。ここで、陳宮の兜の意味深アップがあるが、これも、物に意思や魂を持たせる高屋敷氏の特徴。家なき子演出、DAYS・めぞん一刻脚本と比較。

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陳宮は、「自分は呂布の軍師であるか」と呂布に確認する。呂布は、それを肯定。呂布に太陽光が射し込む。ここも、「太陽」が状況に連動して活躍している。はだしのゲン2脚本と比較。

呂布の言葉を聞いた陳宮は益々、「呂布の軍師」としての志を高めるのだった。

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また、ここは高屋敷氏の投げかけるテーマ、「自分とは何か」「自分の道は自分で決めろ」が表れているシーンでもある。

一方曹操は陳珪親子から、呂布が籠城戦を決意したという報告を受ける。

曹操は、戦いに生き、戦いにに己を求める「純粋戦士」たる呂布が、その衝動を抑えていることに感心し、そして警戒する。

時を同じくして、獄中の劉備も、呂布の籠城に驚く。だが、呂布の生涯のピークは今で、天下を取る気配がしない、と予想する。

かくして曹操軍と呂布軍の戦が始まった。

呂布はなんと、籠城戦にも関わらず、門を開けては単騎で無双し、また門を閉めるという行動に出る。この時、兵士が槍の束を持って呂布につき従い、槍を補充してくれる。こういった優秀モブの描写も高屋敷氏の特徴。太陽の使者鉄人28号脚本と比較。

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また、兵士から呂布へ槍を渡す手がクローズアップされる。手から手へ思いを伝える描写も、大きな特徴。カイジ(シリーズ構成)、ワンナウツMASTERキートン脚本と比較。

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人間離れした呂布の強さに、曹操軍の兵士達は萎縮してしまう。

そんな様を見て、曹操軍の猛将・夏候惇は歯がゆい思いをし、アイパッチがその勢いで破れる。ここも、「物」が心情と連動し、活躍している。MASTERキートンめぞん一刻脚本と比較。

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曹操は、呂布のやり方に苦笑し、呂布は攻略しにくい美女のようだ、と評する。

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高屋敷氏のポリシーの一つに「善悪を明確にしない」事が挙げられるが、それが表れている。

そうは言っても勝たなくてはならないので、曹操は軍師の一人・荀攸(じゅんゆう)に策を問う。

荀攸は、川を氾濫させて城を水攻めにすることを提案。筆頭軍師の荀彧(じゅんいく)は、荀攸の策は正しいが、徐州の民の反感を益々買ってしまうとして、曹操がどんどん憎まれていく事を悲しみ、泣く。高屋敷氏の作品は、泣くキャラが強調される。カイジ2期・太陽の使者鉄人28号脚本、元祖天才バカボン演出と比較。

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曹操は、百年先を見据えて戦をしなければならないとして、あえて憎まれ役となることを受け入れる。ここも、「善悪の区別は単純ではない」という高屋敷氏のポリシーが表れている。

そんな中、大地に雪が積もる。呂布軍は、周囲に曹操軍がいないことに気付く。彼等は、曹操軍が雪のせいで撤退したのだと思い込み、大喜びする。雪などの「天」が強調され、活躍するのも高屋敷氏の特徴。めぞん一刻脚本と比較。

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また、喜び方が可愛いのも特徴。太陽の使者鉄人28号あしたのジョー2脚本と比較。

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喜びも束の間、曹操軍の水攻めが開始される。自然を味方につけるのも、高屋敷氏の作品では、よく出てくるし、原作つきでは強調される。自然=キャラと捉えていることの表れ。ルパン三世3期脚本(オリジナル)でも、火山湖を決壊させる作戦が出てくる。

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かくして呂布呂布軍は、絶体絶命のピンチに陥るのだった。

  • まとめ

予測した通り、高屋敷氏はシリーズ構成の柱の一つとして、「善悪の区別は単純ではない」事を前面に出している。陳宮呂布の覚悟も、曹操達の覚悟も、等しく荘厳に描かれている。

また、呂布の軍師として全身全霊で彼に仕える生き方を選んだ陳宮の姿に、「自分とは何か」「自分の生き方は自分で決めろ」という、高屋敷氏がよく発するメッセージが込められている。

もともと陳宮曹操の軍師であったが、呂布に仕えることを自ら「選択」し、そして呂布と共に命を賭けることを「生き甲斐」とした。「生き甲斐」がある事こそ「生きる」こと、というテーマも、カイジ含め、高屋敷氏の作品によく出てくる。

次回、三国志の筋通り、呂布陳宮は一蓮托生、共に壮絶な最期を遂げることになるのだが、呂布に仕えたことを後悔しない、陳宮の立派な姿が描かれている。

一方で、自由な戦士だった呂布は、「王」、そして「龍」になるために努力し、「成長」している。そして努力が実り、将として、そして王として兵士に慕われるようになった。

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「成長」を描くのは高屋敷氏が得意とする所であり、少年や青年が「男」になる構成が多い。以前も書いたが、蒼天航路では、もっと踏み込んで、「男」が「王」に、そして「龍」に成長する様を描いている。

だが劉備が予想した通り、呂布の成長はピークに達してしまった感がある。そうなると、あとは龍として昇天するのみとなる。

そんな運命の悲しさはあるが、呂布陳宮が、自分で自分の生き方を選んだ事が、強く印象に残る回だった。