カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

超獣機神ダンクーガ5話脚本:文芸面からのキャラ作り

超獣機神ダンクーガ(1985年放映)は、獣戦機と呼ばれる特殊なロボットを駆る“獣戦機隊”が、異星からの侵略者と戦うオリジナルロボットアニメ。総監督は奥田誠治氏。今回のコンテは日下部光雄氏で、演出は栗山美秀氏。そして脚本が高屋敷英夫氏。

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  • 今回の話:

異星・ムゲ帝国から侵略されている地球は、超テクノロジーの結集であるロボット兵器・獣戦機での抵抗を続ける。そして、獣戦機の4人目のパイロットとして司馬 亮が加入する。

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冒頭、葉月博士(異星からの侵略者・ムゲ帝国に対抗するロボット・獣戦機の開発者)は獣戦機のチェックをし、イゴール長官(獣戦機隊長官)から、コンピューターに任せてはどうかと言われる。
葉月博士は、「最後は自分の目で確かめないと睡眠不足になります」と答える。
グラゼニ(脚本)では、手書きにこだわる松本アナの台詞が強調されていた。

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一方、獣戦機のパイロットである忍(主人公)と雅人(最年少。お調子者)は将棋ゲームに興じる。
ゲームに興じる場面は多い。ワンダービートS忍者戦士飛影・キャッツアイ・カイジ(脚本)と比較。この中では、カイジはかなり特殊だが。

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忍と雅人のやりとりは幼く、沙羅(獣戦機パイロット。紅一点)は呆れる。
ワンナウツ(脚本)でも、大の男達(プロ野球選手)の子供っぽい会話に、ベテランの児島が呆れる場面があり、重なるものがある。
キャラの幼さを引き出すのは、高屋敷氏の得意分野。

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そこへ緊急召集がかかり、敗色濃厚だった忍は笑顔を見せ、ゲームの電源を切る。
ここも幼い。高屋敷氏は、笑顔を重要視する。
忍者戦士飛影あしたのジョー2・ワンナウツ(脚本)と比較。

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忍達は、カンザスシティでムゲ帝国に抵抗しているゲリラ隊を援護するよう命じられる。
イゴール長官の話に、忍は「もう少し静かに喋ってくれないかなー、もう」と愚痴る。ここも子供っぽい。高屋敷氏は、無邪気さを前面に出す。F-エフ-・ワンダービートS(脚本)と比較。

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カンザスシティに到着した忍達は戦闘を開始。「将棋では逃げ回ってるくせに」など、これまた忍と雅人の幼い会話がある。こうした軽口や、子供っぽいやりとりは色々な作品に見られる。F-エフ-(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)と比較。

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忍から、地上で敵を叩くように言われた雅人は、敵の多さを見て、「うわー、お仕事いっぱーい」と言う。若いながらも自分の「仕事」を自覚しているのは、グラゼニ(脚本)のアニメオリジナルのモノローグ「これが僕の仕事です」に繋がるものがある。

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忍達の戦闘は成功し、任務完了となる。
それを、白バラを持つ謎の青年が見守る。
意味深な花の表現は多々ある。F-エフ-・おにいさまへ・あしたのジョー2(脚本)・空手バカ一代(演出)と比較。

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青年はバラをくわえる。おにいさまへ…(脚本)でも、謎めいたキャラ・れいがバラをくわえているシーンがある。
高屋敷氏が長年一緒に仕事した出崎統氏の作品には、キャラが花や草をくわえる場面が度々ある。おにいさまへ…も監督が出崎統氏。

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基地に帰った忍達は、コーヒーを飲む。雅人が「一仕事終わった後のコーヒーは格別だねー」と言うのだが、色々な作品に、コーヒーを美味しそうに飲む場面がある。宝島(演出)、マッドハウス版XMEN・おにいさまへ…(脚本)と比較。

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そこへ、先程のバラをくわえた青年が現れる。彼の名は司馬亮。忍達と同じ士官学校出身で、獣戦機隊の新しいメンバーだった。ここも、おにいさまへ…のれいが重なる。それにしても、どちらもじわじわ来る。

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亮は以前、武者修行の旅に出ており、忍は「地の果てで禿鷹のエサになっちまったかと思ってたぜ」と言う。
ヒルなキャラと血の気の多いキャラの対立はしばしばあり、F-エフ-(脚本)の聖と軍馬の関係にも見られる。ルーツは、あしたのジョー(1・2とも高屋敷氏脚本参加)の力石と丈だろうか。

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その頃、ムゲ帝国の将軍・デスガイヤーは、侵略戦での失態をムゲ帝王から責められていた。
敵側のボスが部下を叱責する状況は、忍者戦士飛影カイジ(脚本)にもある。人間の色々な側面を描くのは高屋敷氏のポリシーで、敵側の苦労を描くのは、その一環かもしれない。

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一方、獣戦機隊の面々はビリヤードをする。マッドハウス版XMEN(脚本)にも、ビリヤードをする場面がある。とにかく高屋敷氏は、キャラ達の束の間のレクリエーションの様子を切り取ることが多い。

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亮は、それとなくシャピロ(沙羅の恋人だったが、敵に寝返った)がいないことを話題にし、忍はそれを諌める。
随分優しくなったもんだ…と亮に言われた忍は「へー、褒めてくれるんだ」と返す。ここも子供っぽい。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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我慢ならないとして、忍は亮に殴りかかるが、返り討ちにあう(しかも手加減される)。
ここも、F-エフ-(脚本)の軍馬と聖を彷彿とさせる。

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そこへ緊急召集がかかり、忍達はロサンゼルスへ向かうことに。ろくにマニュアルを読んでいない亮も「何も知らん方がスリリング」だと出撃。
戦闘が開始され、雅人は穴に落とされて苦戦する。落とし穴作戦は、ど根性ガエル(演出)が思い出される。

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獣戦機は、ピンチに陥るとアグレッシブモードになり、獣型に変形して攻撃力がアップする。雅人も沙羅もアグレッシブモードを発動させ、ピンチを脱して無双。
忍者戦士飛影(脚本)でも、獣型メカ(黒獅子)が無双。一部スタッフ(大張氏など)も共通する。

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沙羅の機体・ランドクーガー(アグレッシブモード)が太陽を横切る。
何かが太陽に映える状況は、様々な作品にある。蒼天航路(脚本)、ルパン三世2nd(演出/コンテ)、忍者戦士飛影(脚本)と比較。

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忍もまた、ピンチ時にイーグルファイター(忍の機体)のアグレッシブモードを発動させ無双。アグレッシブモード発動シーンはバンク(使い回し)なのだが、なんとなく、F-エフ-(脚本)の軍馬、カイジ(脚本)のカイジと比較すると面白い。どれも普段とのギャップがある。

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忍達は、雑魚を一ヶ所に集めて壊滅させる。その最中、亮がビルの下敷きになるが、彼も本能的にアグレッシブモードを発動させ無事。だが、手にしたバラは散る。ここも意味深な花描写。宝島(演出)、おにいさまへ…(脚本)と比較。

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デスガイヤーの再度の失態にムゲ帝王は怒り、これから作戦の指揮をシャピロに任せると宣言。シャピロはほくそ笑み、自身が抱く野望を再確認するのだった。
野心あふれる美形キャラは、忍者戦士飛影カイジ2期(脚本)でも印象に残る。

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  • まとめ

まず、キャラの幼さが目立つ。今までの回と比べても幼い(特に忍)。何故こうなるのかといえば、高屋敷氏自体、キャラの幼さを引き出すのが上手いという他に、本気/覚醒モードとのギャップを見せる意図があるのではないだろうか。

高屋敷氏は、シリーズ構成作や長期参加作において、キャラの幼さ・無邪気さを最初に印象づけておいて、覚醒させたり、終盤に大きく成長させたりして、視聴者を驚かせる手法を使うが、今回はそれの短縮版ともとれる。

一方、初登場となる亮はニヒルさが目立つようになっている。(作品自体で最初から決まっていたのだろうが)旅に出ていた設定といい、ズタ袋といい、あしたのジョー1・2(高屋敷氏脚本参加)の矢吹丈を思わせるのが面白い(性格は力石に近いが)。

ところで、高屋敷氏は忍者戦士飛影でも、後に4人目のパイロットとなるダミアンが初登場する回の脚本を書いている。
忍者戦士飛影の制作年は、ダンクーガとほぼ同時期なので、なかなか興味深い共通点。

本作の亮にしろ、忍者戦士飛影のダミアンにしろ、高屋敷氏が得意とするところの、キャラの掘り下げが行われている。
今回の亮は、まだまだ謎めいているものの、要点(武術の達人、斜に構えている、ニヒル、経験豊富、忍と両極端など)は押さえている。

亮以外のメンバーについてもキャラの掘り下げは行われており、休憩したり、ゲームをしたりといった獣戦機隊の日常を見せている。普段から子供っぽい雅人はともかく、忍に茶目っ気があるのは意外。ゲームを通して素顔や本質が明かされるのは、カイジも然り。

グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)では、1話にして夏之介の掘り下げが相当深く行われており驚かされたが、今回含め高屋敷氏は、たった1話でもキャラの掘り下げを行える。その能力が数十年積み上げられた上にグラゼニがあるのだから、見事なのは必然と言える。

思えば、高屋敷氏の比較的初期の脚本作であるガンバの冒険でも、レギュラーの幼い部分が描かれたり、ゲストキャラの掘り下げが成されていた。人間の色々な側面を描く事を、同氏がポリシーとしているのは納得。

ちなみにスタッフ面では、本作の総監督である奥田誠治氏も、高屋敷氏も、ど根性ガエルエースをねらえ!に参加している(奥田氏はコンテや原画、高屋敷氏は演出)。この縁も面白い。

超獣機神ダンクーガは、とにかくキャラ人気が爆発した作品。デザインや作画に目が行きがちだが、文芸面からのキャラ作りに目を向けてみるのも一考。
高屋敷氏脚本回は今回のみだが、キャラ作りの一端を担っているのがわかった回だった。