カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

家なき子31話演出:恐るべき洞察力

アニメ『家なき子』はエクトール・アンリ・マロ作の児童文学作品をアニメ化した作品。過酷な運命のもと旅をする少年・レミの成長を描く。
総監督は出崎統氏。

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本記事を含めた、当ブログの家なき子に関する記事一覧:

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%81%8D%E5%AD%90

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  • 今回の話:

サブタイトル:「ありがとう マチヤ」

脚本:杉江慧子氏、コンテ:出崎統監督、演出:高屋敷英夫氏。

雹被害で花栽培業が破綻したアキャン家(レミが世話になった一家)は一家離散。レミは再び旅をし、パリでマチヤ(以前レミと意気投合した風来坊)と再会する。

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雹被害で花栽培業が破綻したアキャン家(レミが世話になった一家)は一家離散。
レミは再び旅に出ることを決意し、パリへ向かう。意味深な並木道の描写は結構ある。グラゼニめぞん一刻・F-エフ-(脚本)と比較。

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パリでは、マチヤ(以前レミと意気投合した風来坊)が地下を根城に一人で何とか生活していた。
広がる波紋の描写は、しばしば見られる。おにいさまへ…(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)、花田少年史(脚本)と比較。

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マチヤは、腹の足しにならないと愚痴りつつ、林檎を食べる。林檎を食べる場面は、宝島(演出)やF-エフ-(脚本)ほか、色々な作品にある。また、とにかく高屋敷氏は「食べること」にこだわる。

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パリに着いたレミは、借金返済ができなくなり収監されたピエール(アキャン家の大黒柱)を訪ねる。
ピエールは、子供たちの様子をレミから聞き泣く。泣く中高年男性の描写が上手い。あしたのジョー2・カイジ2期(脚本)と比較。

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面会時間の終わり際に、ピエールはレミに銀時計を渡す。手から手へ思いを伝える表現は頻出。あしたのジョー2・ワンナウツ(脚本)と比較。

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レミとピエールは、互いに涙を流し別れる。別れの場面は、宝島(演出)やRAINBOW-二舎六房の七人(脚本)ほか、印象に残るものが多い。

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一方マチヤは、ターゲットとする紳士に近づき、(自分の持っている)知恵の輪を解きたくなるよう誘導する。
おじさんの愛嬌ある描写は多い。宝島(演出)、ワンナウツ(脚本)と比較。

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解けなかったら金を貰うとふっかけ、マチヤは(解けないよう細工された)知恵の輪を紳士に貸し、音を上げた紳士から金をせしめる。知恵の輪詐欺は、(原作通りだが)じゃりン子チエ(脚本)にもあり、比較すると面白い。

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パリに着いたレミは、キオスクで地図を買おうとするが、高いため、店主に値切り交渉をする。店主が個性的。
F-エフ-・陽だまりの樹(脚本)ほか、高屋敷氏はモブを目立たせる。アニメオリジナルキャラも多い。

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レミが旅をしていると聞いた店主は、旅は男の夢だと語る。店主の語りの間、鳥が飛ぶが、鳥を使った表現は数々の作品に見られる。RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)と比較。

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旅をするレミに感心した店主は、自分の使い古した地図をタダでくれる。
どうも高屋敷氏は地図が好きなようで、ガンバの冒険じゃりン子チエ(脚本)ほか、地図の描写はよく見られる。

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地図をもらったレミははしゃぐ。子供の子供らしい描写は、高屋敷氏の得意分野。ガイキング(演出)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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喜びも束の間、レミは酔っ払いにぶつかり、因縁をつけられてしまう。街の人は、レミに同情する。ここもモブに味がある。空手バカ一代(演出/コンテ)、F-エフ-(脚本)と比較。

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旅芸人なら芸をしろと酔っ払いに言われ、レミは芸をする。たまたま、それを見つけたマチヤは、陰で見守る。
光が射し込む描写は多々ある。ハローキティのおやゆびひめ(脚本)、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)と比較。

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酔っ払いはレミに、楽器の演奏ばかりで面白くないとケチをつける。すると、街の人達はレミを擁護する。ここもモブが目立つ。
あしたのジョー2・ワンナウツ(脚本)と比較。

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カピ(芸をする犬。賢い)は、レミのポケットから時計を取り出し、(カピの得意な)時間当て芸をしようと提案する。
動物との名コンビネーションは、じゃりン子チエ(脚本)や、まんが世界昔ばなし(演出/コンテ)などにも見られる。

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カピは見事に時間当て芸を成功させ、街の人達は感心する。ここもモブが光る。
ストロベリーパニック・はじめの一歩3期(脚本)と比較。

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それでも酔っ払いはケチをつけ、見てやったから銀時計を寄越せと言い出す。レミは咄嗟にポケットに手をやる。手での感情表現は多い。怪物王女(脚本)、柔道讃歌(コンテ)と比較。

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すると、樽に乗ってマチヤが割り込み、自分が芸を見せると宣言する。
王子様的、ヒーロー的なキャラの活躍は、RAINBOW-二舎六房の七人-・DAYS(脚本)ほか、印象的なものが多い。

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久しぶりに会えたと、マチヤはレミに目配せする。
男同士の友情はクローズアップされる。F-エフ-・DAYS(脚本)と比較。

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マチヤは、香辛料の瓶で手品をすると言って酔っ払い達を自分に近付けさせ、香辛料を彼等にぶっかける。
カタルシスある、悪役への反撃は、カイジ2期(脚本)でも強調されている。

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マチヤはレミと共に逃げ出す。
マチヤがトドメに投げた香辛料の瓶は酔っ払いの口に命中。街の人達は拍手喝采する。ここもモブが味わい深い。ベルサイユのばら(コンテ)、MASTERキートン(脚本)と比較。

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マチヤとレミは、安全な所まで逃げる。マチヤは、スカッとした、と笑う。
高屋敷氏はキャラの「笑顔」を大切にする。ストロベリーパニック・DAYS(脚本)と比較。

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マチヤとレミは、互いの近況を話し、ベンチに寝転がる。ここも友情が微笑ましい。宝島(演出)、新ど根性ガエル・F-エフ-(脚本)と比較。

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レミはマチヤを旅に誘うが、マチヤはパリを離れたくないと言う。
太陽が映るが、全てを見ているような太陽の描写は頻出。ガンバの冒険・F-エフ-・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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話しながら、レミとマチヤは眠りに落ちる。眠りこける描写は、よく出る。F-エフ-・カイジ2期(脚本)と比較。

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日が暮れる前にパリを出る予定のレミを見送ろうとするマチヤだったが、泣いている子供を見つけて足を止める。カイジ(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、人情は強調される。

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子供はセバスチャンといい(正式名は長い)、母親とはぐれたと泣く。
マチヤは一人でセバスチャンの母親を探そうとするが、レミは一緒に探すと言う。ここも友情が微笑ましい。おにいさまへ…・F-エフ-(脚本)と比較。

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マチヤとレミはセバスチャンを連れて街中を歩き回り、セバスチャンの母親を探す。途中、セバスチャンの正式名を端折ったレミは、マチヤに注意される。
ここも可愛い友情描写。陽だまりの樹RIDEBACK(脚本)と比較。

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レミとマチヤの奔走の甲斐あって、セバスチャンは母親と再会する。
キャラの善行は、F-エフ-(脚本)でも大幅なアニメオリジナルを入れて強調されている。

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マチヤは、セバスチャンを助けられたのはよかったが、レミの出発が遅れてしまったと言いながらカピを撫でる。レミは、夜明けに発つことにすると返す。
撫でる仕草は、要所要所で印象に残る。マッドハウス版XMEN・チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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レミとマチヤは、ハープとバイオリンで合奏する。バイオリンを弾きながらマチヤは、レミと旅に出ようかなと言う。
音楽で心を通わせる場面は、怪物くん・アンパンマン(脚本)も印象深い。

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夜明け、レミ、カピ、マチヤは旅に出るのだった。
ここも太陽が目立つ。はだしのゲン2・グラゼニ(脚本)と比較。

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  • まとめ

 今回から、(ちょくちょく出ていた)マチヤがレギュラーに加わる。マチヤの加入で、高屋敷氏が得意とする「男の子らしい所作」や「かわいい友情」の表現が冴え渡っている。

 マチヤの巧妙な詐欺手口や、カタルシスのある悪役撃退術、そして人情は、カイジカイジ2期(高屋敷氏シリーズ構成・脚本)にも繋がるものがあり、比較すると楽しい。

 いわばマチヤはジョーカーというか切り札というか、とにかく存在感のあるキャラ。そのキャラの「魅力」を引き出す工夫は、そこかしこに見られる。キャラの掘り下げや引き立ては、高屋敷氏の十八番。

 本作では演出からのアプローチだが、脚本やシリーズ構成に回ると、高屋敷氏は実に計画的に、綿密にキャラの魅力を出していく。とにかく、段階的にキャラを引き立てる手腕が見事で、視聴者側はキャラに魅了されていく。

 実際、私がカイジカイジ、F-エフ-の軍馬、グラゼニの夏之介(いずれもアニメは高屋敷氏シリーズ構成・脚本)にはまってしまったのも、高屋敷氏の(キャラを引き立てる)シリーズ構成による所が大きいと思う。それくらい、キャラの魅せ方が上手い。

 コンテンツの出来不出来には「キャラの力」がかなり重要だとはよく言われるが、高屋敷氏も、キャラを立たせることの重要性を、かなり重視している作家だと思う。演出にしろ脚本・シリーズ構成にしろ、キャラメイクが非常に秀逸。

 話あってこそのキャラ、キャラあってこその話。とにかくキャラによって作品はかなり左右される。高屋敷氏は、シリーズ構成や脚本といった文芸面からでも、積極的にキャラメイクする。

 いや、文芸側(シリーズ構成や脚本)に回ってからが高屋敷氏のキャラメイクの本領が、より発揮されているといっても過言ではない。恐ろしささえ感じる。とにかくシリーズ構成でのキャラの魅せ方が計算されている。

 例えば、何を言うか、どんな仕草をし、どんな行動をするか。そういった積み重ねが、キャラを形成していく。その「積み重ね」が高屋敷氏は抜群に上手い。

 高屋敷氏は、キャラを徹底的に洞察するのではないだろうか。その結果、アニメでのキャラはこうする、こう動く…と、原作を変えることもあり、その塩梅も実に見事で驚かされる。

 高屋敷氏は、よく「笑顔」を追加する(アニメオリジナルも多い)。これもまた、キャラを洞察した結果、ここでキャラは笑顔を見せるだろうと判断したのだと考えられる。
画像はグラゼニ・F-エフ-・おにいさまへ…忍者戦士飛影(同氏脚本)。 

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 高屋敷氏の秀逸な「キャラメイキング」、それは恐らく才能と長年の経験の賜物の一つ。強力なキャラを形成することで、作品に多大な貢献をしてきたと考えられ、やはりそれは凄まじいものがある。