読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

カイジおよび福本作品、そのアニメが好きで、シリーズ構成の高屋敷英夫さんが、子供の頃からアニメのクレジットで凄くよく見る名前なので調べてみたものの膨大すぎてまとめきれなくなってきたので、自分のブログよりここに切り離してまとめることにしました。ツイッターアカウントは@makimogpfbです

めぞん一刻56話脚本:最小限の情報で多くを語る紙

#めぞん一刻 エースをねらえ! カイジ めぞん一刻 出崎 高屋敷英夫

めぞん一刻は、アパート「一刻館」に住む青年・五代と、一刻館管理人で未亡人・響子との、山あり谷ありのラブコメ(原作・高橋留美子先生)。高屋敷氏は最終シリーズ構成と脚本を担当している。監督(最終シリーズ)は吉永尚之氏。

今回は、五代に惚れている女子高生・八神の恋心の行方と、三鷹(五代のライバル・イケメンで金持ち)の見合い話が、平行して描かれる。

前回55話で、八神は一刻館に強引に泊まりに来る。すったもんだの末、八神は響子の部屋に泊まることに。そこで八神は響子に、五代の事が好きなのでは、と問い詰めると、響子は戸惑いながら「別に…」と答えてしまう。
それなら、と八神は翌朝、五代にベタベタしながら登校(五代は八神の高校で教育実習をしている)。響子は密かに嫉妬するのだった。(55話についてのブログはこちら)

そして今回は、八神が五代にベタベタしながら登校する所から始まる。この日は五代の教育実習最終日。

五代と同じ屋根の下で夜を過ごした、と友達に宣言した八神は、同級生達に囃したてられる。響子の部屋に泊まった事実も言ったものの、五代の部屋に泊まったという噂が、クラス中に広まってしまう。

八神は、親しい友達には、響子の所に泊まった事の詳細を話す。その回想冒頭にて、高屋敷氏特徴の、ランプのアップ・間がある。演出時代からの特徴で、挙げればキリが無いのだが、今回はコボちゃん脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20161205164542j:image

五代の事が好きなのか、と響子に問い詰めたところ、「別に…」という答えを導き出すことができ、アドバンテージを取ることができた、と八神は満足する。だが八神の友達は、教育実習が終わったら、五代と中々会えなくなると指摘。八神はそれを聞き、色々と考えさせられる。

その頃三鷹は、見知らぬ相手との見合い話を叔父に勝手に進められ、困惑していた。こうして、五代と三鷹の話が同時進行する。こういった、複数平行するエピソードを上手くさばく手腕も、高屋敷氏の特徴。じゃりん子チエ脚本あたりから、その傾向が強い。

三鷹はテニスクラブのコーチをしており、響子や一ノ瀬(一刻館住人・主婦)は、そのテニスクラブに通っている。テニスクラブにて、五代と八神の騒動を一ノ瀬から聞いた三鷹は、ライバルの失速を内心喜ぶ。

ここのテニスシーンで、高屋敷氏演出回のエースをねらえ!で出た演出と同じ、ボールが太陽に重なる場面が出て来る。下段がエースをねらえ!の高屋敷氏演出回。

f:id:makimogpfb:20161205171552j:image

脚本から絵の管理はできない筈だが、こういった、演出時代と同じ特徴が映像に出力されるのが毎度不思議でならない。ただ、今回のコンテは、あしたのジョー2演出陣の大賀俊二氏なので、ジョー2脚本陣だった高屋敷氏とは、意思疏通しやすいのかもしれない。そして二人とも出崎統氏と長年仕事し、出崎演出に強く影響を受けているのが共通(エースをねらえ!あしたのジョー2の監督は出崎統氏)。

話を戻すと、テニスクラブに三鷹の叔父がやって来て、見合い話が更に進められる。その話は、響子含めたテニスクラブの皆の耳に入る。三鷹は、会うだけ会ってみると宣言。響子の気を引くという魂胆もあった。

三鷹は響子に、五代と自分、どちらを選ぶか決断を迫るが、響子からはっきりとした回答を得られなかった。それでも響子の前ではクールに決めようとする三鷹だったが、響子が連れて来た惣一郎(犬)のおかげですっかり三枚目になってしまうのだった(犬が苦手)。

一方五代の教育実習先では、実習最後の日ということで、クラスの皆で感想文を書くことに。委員長である八神は、それを集めて五代に提出しに行く。その際八神は、自分はどうかしていた、と五代に別れを告げる。クラスの皆に囃したてられ、熱が覚めてしまったのだ。身構えていた五代は拍子抜けする。

いよいよ学校を去る時が来て、五代は、大変な目には遭ったが八神に会えて楽しかったと述懐する。去っていく五代を密かに見守っていた八神は、無意識に涙をこぼす。涙のアップ・間が、同氏特徴的。ここでは、涙を一キャラクターとして捉えている。涙ということで、カイジ脚本と比較。

f:id:makimogpfb:20161205173502j:image

帰宅した五代は、八神にアッサリ別れを告げられたと響子に話す。

その頃八神は、川縁の土手に一人佇み、考え事をする。ここの夕日や、舟の横切りが、出崎演出的。また、夕日の意味深なアップ・間は高屋敷氏特徴的。これも上記に述べた、コンテの大賀氏との意思疏通で出たものかもしれない。

f:id:makimogpfb:20161205175646j:image

五代の部屋にて、五代と響子は、クラスの皆からの感想文を開ける。紙を重要キャラクターと捉えるのが高屋敷氏特徴。下記画像は紙特集(挙げればキリがない)。今回と、じゃりん子チエ・カイジ脚本。

f:id:makimogpfb:20161205180401j:image
感想文の殆んどは、八神と五代の仲をからかうものだった。わいて出た他の一刻館住人にもそれを見られ、五代は慌てる。

そんな中、八神の感想文を開くと、そこには「Long good-bye 永遠にさよなら」と書かれていた。五代は少ししんみりする。ここも、紙が意思を持つようなアップ・間がある。下記画像は、意思を持つ紙達。今回と、じゃりん子チエ1、2期脚本、カイジ脚本。どれも、伝える力が強い。

f:id:makimogpfb:20161205181247j:image

想いを伝える紙ということで、カイジ脚本と比較。カイジの場合は、兵藤会長からカイジへのメッセージを、当たり籤が強く伝えている。

f:id:makimogpfb:20161205181828j:image

どちらも、見た目の情報量は少ないのに、内包している想いは膨大。アップや間を取ることで、その想いの強さを表している。毎度のことだが、こういった個性が脚本から出力されているのが怪。だが、言葉より映像で伝える「脚本」が、毎度面白い。

八神のメッセージを読み取り、五代がしんみりしている所へ、突然八神がやって来る。バッグを五代の部屋に忘れたので、取りに来たのだった。そして八神は感想文に書き足しをし、「So long! Good-bye(またね!さようなら)」という文にして、「永遠にさよなら」を消す。

八神は、無意識に涙を流した事を受け止め、この恋を諦めないことにしたのだった(同氏特徴・不屈の精神)。こうして八神は、元気に去っていった。

そんな八神を見て一ノ瀬は、三鷹のお見合いといい、八神といい、響子は大変だと話す。

一ノ瀬の言葉で、三鷹の見合い話を知った五代は喜びを隠せない。同氏特徴で、喜び方が幼く可愛い。これも、演出だけでなく、絵を管理できない脚本からでも色々な作品で出る謎な特徴。あと、作画的にも話的にも、五代は原作より、幼く可愛く描かれている気がする。

f:id:makimogpfb:20161205183856j:image

三鷹の見合い話を喜んでしまった五代だったが、三鷹の事を気にする響子を見て、まだ結婚するわけではない、と励ます。響子は気を良くして立ち去る。

響子が去ったあと、四谷が開けたビール缶の意味深なアップ・間がある。

f:id:makimogpfb:20161205190134j:image

これも特徴で、状況などを表すキャラクターとして「物」が活躍する。 

四谷・一ノ瀬・朱美は、いつものごとく五代の部屋で飲むのだが、ここも特徴のビール・飯テロ。また、もう一つの特徴である疑似家族愛も表れている。

f:id:makimogpfb:20161205190500j:image

一ノ瀬や朱美は、見合い話を機に、三鷹と響子の仲が却って深まるかもしれない、と五代を煽り、からかう。動揺する五代を肴に、一刻館住人達の酒盛りは夜更けまで続いたのだった。

場面は転じて、三鷹の見合いが始まる。ここでも、鹿威しの意味深なアップ・間がある(特徴)。

f:id:makimogpfb:20161205201903j:image

そして、今後の波乱を予兆するように、ラストも鹿威しの音で〆ている。カイジ破戒録7話脚本のラストで、揺れるランプに鐘のSEが被さる演出に通じるものがある。

  • まとめ

とにかく、紙と、紙に書かれた文字の威力がクローズアップされた回だった。カイジ1期26話脚本にて、兵藤会長がカイジにプレゼントした当たり籤と比較すると面白い。どちらも見た目の情報量が極端に少ないのに、沢山の想いを伝えている。

また、八神が無意識に流した涙は名シーン。涙のアップ・間により、涙が八神に色々な事を伝えているような感じになっている。

紙・文字にしろ、涙にしろ、やはり「喋らないもの」を、意思を持つキャラクターとして高屋敷氏は活躍させている。

あと、平行進行する五代と三鷹のエピソードを上手くさばき、最後に合流させるという、脚本技術上の特徴も光っていた回だった。

そして今回も、何やら五代が原作より幼く可愛い。やはりこれは高屋敷氏のシリーズ構成方針かもしれない。ほぼ原作通りでありながら、無邪気な青年が恋を通し、男として成長する様子を描く意図があるように思える。

家なき子や宝島などの演出にて、少年が男へと成長するのを描くのが同氏は巧みだったが、それがシリーズ構成になっても生きているのを、今回も実感した。