カイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんの軌跡

アニメカイジのシリーズ構成・高屋敷英夫さんに興味を持って調べてみたら、膨大な量の担当作があることがわかりましたので、出来る限り同氏担当作を追跡しています。ツイッターアカウントは@makimogpfbです。

めぞん一刻番外編脚本:強烈な天然燃料

アニメ・めぞん一刻は、高橋留美子氏の漫画のアニメ化作品で、アパート・一刻館管理人の未亡人・響子と、一刻館住人・五代のラブストーリー。今回は番外編OVA。監督は四分一節子氏で、脚本が高屋敷英夫氏。

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本記事を含めた、当ブログのめぞん一刻に関する記事一覧:

その1↓

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%E3%82%81%E3%81%9E%E3%82%93%E4%B8%80%E5%88%BB

その2↓

https://makimogpfb2.hatenablog.com/archive/category/%23%23%E3%82%81%E3%81%9E%E3%82%93%E4%B8%80%E5%88%BB

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  • 今回の話:

とある夏休み、三鷹(主人公・五代のライバル)のクルーザーが沈没。

流れ着いた浜辺で、五代達はサバイバル生活をすることに。

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冒頭、一刻館(主人公・五代の住むアパート)の住人である四谷は公園でビールをあける(アニメオリジナル)。ビールテロは頻出。カイジ2期・グラゼニMASTERキートン・ミラクルガールズ(脚本)と比較。

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続いて、一の瀬(一刻館の住人)もビールをあけ、過去を回想する。本作の構成は現在→過去→現在→現在が進行…となっていて、現在パートはアニメオリジナル。アニメオリジナルを絡めた器用な時系列操作は、グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも見られた。

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ここから過去回想パートに入る。序盤、三鷹のクルーザーで、一刻館の皆と三鷹はパーティーをする。響子(一刻館管理人で未亡人)を取り合う五代と三鷹は、些細な事で張り合う(アニメオリジナル)。F-エフ-・ルパン三世(脚本)、宝島(演出)ほか、幼い張り合いは結構ある。

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賢太郎(一の瀬の息子)は、ご馳走を一心不乱に食べる(アニメオリジナル)。飯テロは頻出。カイジ2期(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)、チエちゃん奮戦記(脚本)と比較。

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パーティーで皆が酔って暴れたため、クルーザーは沈没してしまう。沈んで行くビール缶が映るが、「物」による「間」は、よく出てくる。DAYS・RAINBOW-二舎六房の七人-・F-エフ-(脚本)と比較。

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皆は浜辺に流れ着く(酒だけは大量に引き上げることができた)。賢太郎は、惣一郎(響子の飼い犬)と浜辺で遊ぶ。絵面が宝島(演出)と重なる。年齢問わず、高屋敷氏は幼い所作をキャラにさせるのが巧み。

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翌朝、四谷はどこからか飲み水を持ってくる。それを見た三鷹と五代は、食料を取って来てみせると響子にアピールし張り合う。ここも原作より幼い。ど根性ガエル(演出)、DAYS・グラゼニ(脚本)なども、男の無邪気で幼い所作が目立つ。

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五代は、惣一郎が三鷹と一緒に行動したがっている、と言って(犬が苦手な)三鷹を追い詰める。咄嗟の悪知恵が働くキャラは、ルパン三世・新ど根性ガエル(脚本)、元祖天才バカボン(演出/コンテ)ほか、色々な作品に出てくる。

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三鷹と惣一郎は迷コンビネーションで魚を沢山とる。釣果が僅かだった五代は、火を起こすことにするが失敗。腫れた五代の手を、響子が取る場面があるが、グラゼニワンダービートS・F-エフ-(脚本)など、手による感情伝達はよく出る。

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五代が必死で火を起こそうとしているのを見ていた四谷だったが、ライターを取り出して火をつける。火の「間」も数々の作品に出る。RAINBOW-二舎六房の七人-・カイジ2期・F-エフ-(脚本)と比較。

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何はともあれ、皆は魚を焼いて食べる。アウトドア・サバイバル系飯テロも多く出てくる。あんみつ姫(脚本)、宝島(演出)、1980年版鉄腕アトム(脚本)と比較。

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その後も、三鷹と五代は些細な事で、響子を巡って張り合う。やはり同性同士の幼いやりとりが上手い。ど根性ガエル(演出)、おにいさまへ…グラゼニ(脚本)、宝島(演出)と比較。

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そんな折、遊覧船を見かけた五代・三鷹・響子は必死に助けを求めるが、遊覧船の人々は、それをただの挨拶と捉える。カイジ(脚本)、ベルサイユのばら(コンテ)ほか、味のあるモブ描写は多い。

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絶望する五代・三鷹・響子をよそに、四谷・一の瀬親子・朱美(一刻館住人)は、浜辺の裏手にある茶屋で飲み食いする。ここも、頻出の飯テロ。カイジ2期・グラゼニあんみつ姫(脚本)と比較。

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一行が流れついた所は無人島ではなく観光地であった(四谷は早くに気付いていた)。そうとも知らず、五代と三鷹は張り合い続けるのだった。互いにボロボロになるのが、あしたのジョー2・はじめの一歩3期(脚本)のボクシングを彷彿とさせる。

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時は現在に戻る。四谷の誕生日ということで、四谷・一の瀬は買い出しに行き、響子・五代・三鷹はそれを一刻館で待つ(アニメオリジナル)。電灯が映るが、ランプの「間」は頻出。カイジ2期・あしたのジョー2・RAINBOW-二舎六房の七人-(脚本)と比較。

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響子が四谷の為に用意した、ご馳走が映る(朱美と会った一の瀬と四谷は、公園で飲み始めてしまっていた)。ここも頻出の飯テロ。MASTERキートンカイジ2期・グラゼニ(脚本)と比較。

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どちらが四谷達を探しに行くかを巡り(残った方が響子と二人きりになれる)、三鷹と五代はジャンケンする。無邪気(?)にジャンケンする場面は、家なき子最終回(演出)にもある。

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三鷹と五代のジャンケンは続き、響子は眠くなる。ダンクーガ(脚本)では、男性陣の幼いやりとりに、紅一点の沙羅が呆れる場面があり、重なってくる。

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こうして、夜は騒がしく更けて行くのだった。風鈴が映るが、ここも「物」による「間」。空手バカ一代(演出)、コボちゃんおにいさまへ…(脚本)と比較。

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  • まとめ

アニメオリジナルを交えて、現在パートと過去パートで構成する技術は、グラゼニ(シリーズ構成・全話脚本)でも見事なものが見られる(特に3話と5話)。本作を見ても、高屋敷氏が時系列操作を得意としているのがわかる。

あと、三鷹と五代のやりとりが(原作より)子供っぽく幼いのが本作のハイライト。つくづく思うが、高屋敷氏は(年齢問わず)キャラの幼く可愛い部分を引き出すのが本当に上手い。

同じ人(響子)を好きになったのだから、どこか共通するところはあるはずで、三鷹と五代の張り合いは、何か微笑ましいものを感じさせる。正直、原作にはない、そこはかとないBLの空気すら感じさせる。

BLというか、もともと高屋敷氏は、男同士のじゃれ合いを描くのが、初期のど根性ガエル(演出)のころから非常に上手い。演出時は芝居付けで、脚本時は会話や話作りで、色々な「仲睦まじさ」を演出している。

推測するに、これは(何度か書いているが)、高屋敷氏の野球経験(元球児、高校野球部監督)による所が大きいのではないだろうか。それをベースにしたホモソーシャル描写が上手いというか。

現に、アカギ・カイジワンナウツグラゼニ(シリーズ構成・脚本)は男だらけの世界、おにいさまへ…(脚本・シリーズ構成陣)・ストロベリーパニック(脚本)は女だらけの世界だが、どちらのホモソーシャルも面白く描けている。

翻って、ストレート恋愛ものの権化であり、男女比も偏っていない、めぞん一刻でも、こんなに「男同士のやりとりの微笑ましさ」が目立つのは凄い。いわば高屋敷氏はBLや百合の天然燃料を投下する才がある。

正直なところ、高屋敷氏の担当作を追っていくと、ちょっと背中を押されたらBLや百合の沼に落ちそうになることが何度もある。そのくらい、同氏の「天然燃料」は強烈。実際、BLファンや百合ファンを惹き付ける作品も多く担当している。

天然とか天賦の才とかで片付けずに考えてみると、高屋敷氏は、キャラの魅力を引き出したり追加したりするのが上手く、かつまた、友情や親愛の表現が巧みだということなのだろう。

ストレートラブコメで、五代と響子が結ばれるに決まっている、めぞん一刻において、何故だか三鷹と五代のやりとりの微笑ましさにばかり目が行くというのも、何か高屋敷氏らしく、新鮮な感覚だった。

ちなみに本作監督の四分一節子氏は、出崎哲氏の右腕的存在のベテランで、出崎哲氏は出崎統氏の実兄。高屋敷氏は出崎哲・統氏と一緒に仕事することが多く、その人脈を考えるのも面白い。